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2013/04/19

ヒュー・シンクレア/大田直子訳「世界は貧困を食いものにしている」感想。
マイクロファイナンスの腐った実態内部告発。2013年04月

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世界は貧困を食いものにしている

1日2ドル未満で暮らしている家庭を絶対的貧困層という(絶対的貧困の定義はいろいろあり、一昔前までは1日1ドル未満だったが、物価の上昇とともに代わってきて、今は1日2ドル未満で暮らす家庭とされている)。全世界の人口はおおよそ70億人で、そのうち10億人~15億人くらいが、絶対的貧困層である。

1日2ドルで暮らすということは、1ヶ月60ドルであり、年間730ドルである。

絶対的貧困層は、このわずかな金でまず食いものを買い、次に家賃、次に子供の教育、最後に衣服を買う。余る金はないので、誰かが病気になっても病院に行けない。

この層は、まず真っ先に父親がメシを食う。日本的な考えでは、まず真っ先に子供にメシを食わすと思われがちだが、父親が空腹でまともに働けないと、1日2ドルすら稼げなくなってしまう。なので、まずは父親がメシを食う。同様に、父親が病気になったら、子供の飯よりも優先して、父親の病気を治す薬を買う。

こういう貧困家庭にとって、100ドルは大金である。

例えば毎日10ドル分の商品を仕入れ12ドルで販売して2ドルを稼いでいる商売人の場合、100ドルあれば、商品を大量に仕入れて販売できる。毎日100ドル分の商品を仕入れて120ドルで販売すれば、毎日20ドル稼げる。

しかしこういう家庭(商売人)は、その100ドルがない。

その100ドルを貸しましょう。

といのがマイクロファイナンスである。

バングラデシュのムハマド・ユヌスが創設したグラミン銀行が始まりと言われていて、ユヌスとグラミン銀行は、貧困層を救う画期的な手段を開発したとしてノーベル平和賞をもらった。

3月1日に、ディーン・カーラン/ジェイコブ・アペル「善意で貧困はなくせるのか?」を読み終えた。

この本では、開発経済学の会社である著者が、マイクロファイナンスは絶対的貧困層にとって、貧困から抜け出す効果があるのかないのかを、マイクロファイナンスで金を借りる貧困層から、数万人を無作為抽出し、その効果を図った実験記録である。

結果として、マイクロファイナンスは貧困層を救うと言いきることはできない、との結論だった。


で、本書「世界は貧困を食いものにしている」である。

本書は、大学でたまたまマイクロファイナンスについて学び、2002年からずっとマイクロファイナンス業界で働いてきた著者ヒュー・シンクレアが、マイクロファイナンス業界はおかしい、間違っている、倫理観がない、貧困者を食いものにしている、と感じ始め、業界内部の自浄作用を期待して内部告発などを行ったが、逆に業界幹部(大金持ち)がら訴えられるなどの抵抗を受けた記録である。

マイクロファイナンスは金儲けになる。という発想から大手のファンドが多数流入し、集めた資金の運用先がなくて困るくらいの状態になっているのが、今のマイクロファイナンスである。

マイクロファイナンスに出資するファンドを立ち上げる。そこに金を投じる(主に先進国の)人びとは、通常のファンドと異なり資産運用成績がマイナスになってもしょうがないと考えている。

こういう状況だとファンドマネージャーは楽である。だから資金はどんどん集まる。

しかし、運用先がない。


結果的に、現状は、

ファンドや寄付金、政府系の援助金などを合わせて、全世界で700億ドルの資金が、世界中のマイクロファイナンスに投資されている。

マイクロファイナンスは金融である。

平均金利は、著者の計算によると年50%である。(貧困層を本気で救う気のあるマイクロファイナンスは20%程度だが、普通のマイクロファイナンスは年利90~200%)

つまり、絶対的貧困層から、毎年350億ドルもの利子を吸い上げているのが、今のマイクロファイナンスなのである。


冒頭に書いたが、全世界の人口はおおよそ70億人で、そのうち10億人~15億人くらいが、絶対的貧困層である。


彼らは、100ドルの資金を捻出することができないのである。


ファンドに流入している700億ドルを単純にばらまいただけでも、一人当たり50ドルくらいになる。絶対的貧困層にとっては大きな金額だ。

ところが今のマイクロファイナンス業界は、絶対的貧困層から一人当たり25ドルくらいの利子を吸い取っているのである。


銭ゲバ野郎どもが。


他、著者の見解として、

例えば毎日10ドル分の商品を仕入れ12ドルで販売して2ドルを稼いでいる商売人の場合、100ドルあれば、商品を大量に仕入れて販売できる。毎日100ドル分の商品を仕入れて120ドルで販売すれば、毎日20ドル稼げる。

しかし周りの同業者がそれを許すはずもない。

従って、毎日100ドル分の商品を仕入れても105ドルでしか販売できず、毎日5ドルしか稼げなくなる。


さらに言えば、本書及び「善意で貧困はなくせるのか?」両書籍で指摘されていることとして、世界中の貧困層がすべて起業家ではない。起業家の素質があるのはわずかで、それ以外は、マイクロファイナンスから借りた金で嗜好品や贅沢品を買っているのだ、と指摘している。

その率は95%。つまり、マイクロファイナンスで起業に成功するのは、金を借りた人の5%にすぎないのだ。


他、
・NPO法人(利益を追求しない法人)として設立したマイクロファイナンスが、
・善意の投資家(を束ねた利益追求の権化たるファンド経由で)から得た金でマイクロファイナンスを運営し、
・マイクロファイナンスは世界中どこでも規制が緩いから(もしくは規制がないから)、
・年利100%~200%の暴利で貧困者を次から次へを食いものにし、
・でも貧困者は世界中に何億人もいるから、食いものにする貧困者には事欠かない。
・そのうちNPO法人は、マイクロファイナンスから銀行へ転業し(注:マイクロファイナンスは金貸しだけど、他人の金を預かる=銀行業ではない。通常どこの貧困国でも、銀行業を営むには届け出と厳重な審査が必要)、
・転業に伴い株式を発行し、上場して大儲け。

と言う流れが世界中で見られるのだそうだ。


※4/20少々修正入れました。
※4/21マイクロファイナンスに言葉を統一しました。(正確にはマイクロクレジットとマイクロファイナンスは異なるらしい)


9点/10点満点


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