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2014/01/02

ローレンス・ライト/平賀秀明訳「倒壊する巨塔(下) アルカイダと「9・11」への道」感想。
ルポ。2013年12月09日読了。

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倒壊する巨塔〈下〉―アルカイダと「9・11」への道

私的10点満点のルポ。

正確に言うと、上巻の方が圧巻だった。しかし下巻も、いままで読んできたルポ本と比較すると10点を付けるべき内容である。


9.11のテロが起こってからしばらくすると、CIAとFBIは事前にアルカイダがテロを計画していたことを事前に察知していたが、CIAとFBIの連携の無さ(連携が悪いのではなく、無かった)が原因でテロを防げなかった、的な報道がなされた。

下巻である本書は、アルカイダ側の動きを追いかけることと平行して、FBIの対テロ部長オニールの動きと、FBIはどのような情報を掴みどのようにテロを防ごうとしていたのか、なぜCIAと連携できなかったのか、などについて書かれている。

(p28)
エジプトでは、イスラム過激派がムバラク大統領を蹴落とそうとしていた。ムバラクが会議でエチオピアに行くことになった。エジプトの過激派は、会議の1年以上前からエチオピアにメンバーを送り込み、現地の女性と結婚させ、時を待っていた。
それを側面支援するスーダン情報部は、エチオピアのスーダン大使館に武器を運んでいた。
空港から首都に向かう道路でムバラクを襲う計画は失敗し、エチオピア政府は調査を行い、スーダンの関与を突き止め国際社会に暴露した。スーダンは国連から経済制裁された。

(p38-41)
スーダンは自国の評判を回復するため、ビンラディンをスーダンから追い出すことにした。
ビンラディンには行き場が無かった。エジプトは人目に付きすぎる。ソマリアが有力候補だったが、ソマリ人はアラブ人を毛嫌いしている。結局アフガニスタンに行くことになった。
スーダン政府は、ビンラディンがスーダンに投資した案件の山分けを開始した。総額1億6000万ドル相当の投資が全部没収された。

ビンラディンはタリバンが共産主義者ではないかと疑い(共産主義は神を否定する及びソ連と戦った経緯からビンラディンは共産主義が嫌い)、タリバンはビンラディンのことがよく分からなかったが羽振りの良いスポンサーだと思っていた。

(p51)
アフガニスタンでタリバンが全土を制圧したのには、サウジアラビア(のトゥルキー王子)とパキスタンの支援があったから。


(p91)
1996年にスーダン出国後、ザワヒリは神出鬼没になった。12月、チェチェン紛争(ロシア政府が、ロシア内のチェチェン共和国(=イスラム多し)の独立を阻止するために徹底的な弾圧を行っている内戦)に参戦するためロシアに入国しようとした。しかし、ビザがなかったため国境で捕まり、ロシアに拘留された。

この失敗により、ザワヒリのジハード団から逃げ出すものが増えた。経済的にも安定収入がないため、じり貧になりつつあった。ザワヒリはアフガニスタンにいるビンラディンと合流する道を選んだ。

(p101-106)
ザワヒリは元もと反エジプト政府の過激派である。ザワヒリら反エジプト勢力は、エジプト政府に打撃を与えるため、観光客をターゲットにテロを行った。日本人も犠牲になった「ルクソール事件」等である。

しかしこのテロは、結果的に失敗に終わった。観光業はエジプトの重要産業である。このテロにより、エジプト国内からのイスラム過激派に対する支援は無くなってしまった。

アフガニスタンから指令を出していたエジプト人グループ(ザワヒリら)は、なぜルクソール事件以降、支援が無くなったのか理解できなかった。彼らは仲間内だけで作り上げた独自のロジック(※後述)にはまり込んでいた。


この後、
・タリバンとサウジアラビアでビンラディン引き渡しの密約が交わされた(見返りにタリバンは4駆400台などを渡し、タリバンはマザリシャリフというシーア派の街を攻撃し、5~6,000人が虐殺した)

・1998年、ケニアとエチオピアのアメリカ大使館が爆破テロにあった。爆弾を作ったのはザワヒリの部下。

この爆破テロ事件の被害者は大半がアフリカ人であり、イスラム教徒であった。目的が今ひとつ分からないこのテロは、全世界のイスラム教徒に恐怖と狼狽を与えた。

・何かが起こりそうな気配を感じ準備をしていたFBIは、「遂に始まった」と爆破テロの8時間後にはケニアに捜査人員を派遣していた。

・(p137)爆破テロの1年前に、アルカイダのメンバーがCIAに爆破計画があることを漏らしていた。CIAは信頼性に欠けるとして、この情報を無視していた。

・モニカルインスキーとの不倫騒動で揺れるクリントン大統領は、この事件の背景にスーダンが関係していると断定し、スーダンにミサイル攻撃を行った。


※(p159)イスラムの教えでは、人を殺すことは固く禁じられている。自殺も禁じられている。ジハード(聖戦)や自爆攻撃は、イスラム過激派が作り上げた手前勝手なイスラム解釈に基づいている。
イスラムの宗教的権威は、ファトワーという宗教見解を出すことが出来る。
ビンラディンにも、その側近にも、ファトワーを出すほどの宗教的権威者は誰一人いない。


・パキスタン政府は爆破テロ事件の背後にビンラディンが居ることを突き止め、タリバンの指導者オマル師にビンラディンに引き渡しを再度求める。オマル師は「引き渡しを約束したのは通訳のミス」などと言って逃げる。


等々の経緯があり、ビンラディンはいつまでもアフガニスタンに居続け、テロを指揮し、

CIAとFBIの不仲もあり、ビンラディンが何か大きなことをやらかしそうだと分かっていながらアメリカは防げなかった。


取材で様々なことが分かる。
取材した内容を丁寧にまとめ上げる。
ルポ本として上梓する。

本書の完成度の高さに言葉も出ない。


10点/10点満点


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