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政治経済論。2014年01月15日読了。 »

2014/01/19

ダロン・アセモグル/ジェイムズ・ロビンソン/鬼澤忍訳「国家はなぜ衰退するのか(上)」感想。
政治経済論。2014年01月08日読了。

「繁栄する国」と「貧困が溢れる国」の違いは何か。
なぜ違いが生まれたのか。

従来、以下のような分析がなされてきた。

地理的な要因であると主張する説では、熱帯地方の国々はいつでも果実が実っているので、食べる物に事欠かないから、人びとがあまり働かない、などと説く。

(地理説の一つが、日本でもベストセラーになったジャレド・ダイアモンド「銃・病原菌・鉄」である)

人種の優劣が要因であると主張する説では、勤勉な人種と怠け者の人種が存在し、怠け者は働かない、と説く。

宗教による考え方の違いが要因とする説では、宗教で禁じられていることが多いと、人びとは何事を行うにも禁忌を破ることが出来なくなり、自由な発想の妨げとなる、と説く。


本書は、これらの説は間違っていて、
「国家が貧困を免れるのは、適切な経済制度、特に私有財産と競争が補償されている場合に限られるのである」(p11)という説を主張している。上下2冊のボリュームを使って著者の考え方を徹底的に検証している。


アメリカとメキシコの国境にある町ノガレス。
アメリカのアリゾナ州ノガレスは、世帯の平均年収が約3万ドル。大人の大半は高校を卒業している。電気、ガス、水道、電話、などは当たり前に使える。
メキシコのソノラ州ノガレスは、世帯年収がアメリカの1/3(約1万ドル)。大人の殆どは高校を卒業していない。犯罪率は高く、賄賂が蔓延っている。


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この二つの町は、元々はメキシコの町だった。メキシコがスペインから独立(1821年)した後、この一帯はメキシコの州だった。1853年、アメリカはこの一帯をメキシコから買った(ガズデン購入というらしい)。

ここでノガレスはメキシコとアメリカに分割された。

元もと同じ町である。人種は同じ。気候も同じ。宗教も同じ。なぜ貧富の差が付いたか。それは政治制度の違いと、自由経済のありなしである。

メキシコも言葉の上では民主主義で自由経済である。

しかし、根本的なところ、政治の発達の経緯、経済の発達の経緯が、アメリカとメキシコでは全く異なる。

メキシコは、1521年にスペイン人コルテスがアステカ皇帝を処刑し、以降300年にわたってスペイン人が支配していた。300年の間、スペイン人は現地住民を奴隷のように仕えさせた。スペイン人とその血をひく子孫はエリートであり、エリートの系譜はメキシコ独立後も受け継がれた。エリートは政治体制を握っていた。メキシコのエリートではない住民が政治に不満を持っても、エリートに握りつぶされた(暴力を含む)。

一方アメリカは、イギリス人入植者が、イギリスから独立する過程などを経て、中央集権制度の政治体制を作り、自由な経済競争が出来る環境を整えた。政治は合議制であり、民意を反映しない政治家は選挙で落選する公平な政治制度ができあがった。


メキシコのエリート支配は今も続いており、端的な例は、ビルゲイツを上回る世界一の金持ち、メキシコの携帯キャリアの王様カルロス・スリム・ヘルの存在である。

カルロス・スリムが経営する携帯電話会社テルメックスは、元もとメキシコの独占通信会社(国営?)だった。1991年に民営化された。その際入札したのがカルロス・スリムであった。入札で最高値を付けたわけではないのに、カルロス・スリムが落札した(様々な政治的なコネを使って)。以降、カルロス・スリムの独占に異議を唱えるため、独占禁止法に訴え出ても、政治の力で握りつぶされた。カルロス・スリムはメキシコの携帯電話を独占し続けている。しかし、政治的なコネで得た独占は、何のイノベーションも生み出さない。カルロス・スリムはアメリカに進出したが、アメリカの流儀を破ったため、市場から追い出された。


ある国が貧しいか裕福かを決めるのは経済制度である。

しかし、その経済制度を決めるのは、政治と政治制度である。


ここまでが第1章。


第2章は、地理説、文化説、無知説などでは、国家間の貧富の差は説明できない、本書の説が正しいと主張する。

第3章は、上記ノガレスと似たようなケースとして、韓国と北朝鮮を例に出し、収奪的な経済制度・政治制度(北朝鮮)と、社会の多元性と包括的な経済制度・政治制度(韓国)を説明する。

第4章は、黒死病がヨーロッパにもたらした変化が、東欧と西欧に違いを生み出したこと、中国と日本はどこで異なる発展を遂げたのか、などを説明する。

第5章は、収奪適制度の下で発展を遂げた例としてのソ連、コンゴのレレ族ブショング族、南米のマヤ族などを見る。

第6章は、ヴェネツィア、ローマ帝国について。

第7章は、歴史的転換点がどこにあったのか、イギリスの名誉革命と産業革命について。

第8章は、オスマン帝国では印刷が長らく禁止されていた。これは支配者が、印刷による本の普及で、普通の人びとに思想が広まることを恐れたためであり、印刷の禁止によってオスマン帝国はヨーロッパと比べ発展が遅れ、結局滅びた。産業のイノベーションを阻害する行為は、支配者に共通してみられる現象であり、そういう国々は歴史的に殆ど衰退もしくは滅亡の道を辿る。


的な事が書かれている。


時代も場所もあっち行ったりこっち行ったりして、非常に読みづらい本である。

8点/10点満点


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