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2014/02/04

リンダ・ポルマン/大平剛訳「クライシス・キャラバン」感想。
NGOは銭ゲバ。2014年01月28日読了。

本書の原著はオランダ語らしい。
で、翻訳が酷い。そうとう酷い。


国際赤十字の創始者アンリ・デュナンはナイチンゲールを尊敬していた。
デュナンが赤十字の元となる団体を作ろうとしたとき、ナイチンゲールは反対した。

デュナン=赤十字は、戦場で傷ついた兵士は「(政治的な立場は横に置いて))誰であろうとも助けるべき」とするのに対し、ナイチンゲールは、むやみやたらに兵士を助けてしまうと、戦争が長引くだけである。だからデュナンの考え方に反対、であった。

今、世界の趨勢は赤十字の考え方である。

ルワンダで大虐殺があった。ルワンダから大量の難民がコンゴのゴマに流れ着いた。赤十字を筆頭に、国連や国境なき医師団など有象無象の国際NGOが難民の支援を行った。

コンゴのゴマに居たのは、虐殺した方だったのに(※)。

虐殺を指揮した兵士、民兵もたくさん居たのに、国際NGOは支援した。

ルワンダの首都キガリに居た、虐殺された方には見向きもしなかった。

ニュースになるような状況で国際NGOが難民を支援していると、寄付者から金が集まる。難民の正体は関係ない。難民を支援していることがテレビや新聞などで報道されることが大事なのだ。

こういう状況下で国際NGOが活躍するためには、凄惨な現場に行くための通行許可証をもらうため、弾圧している側にお金を払う。
凄惨な現場に行くためのトラックは、弾圧している側の指定業者を使う。
凄惨な現場で安全に活動するため、弾圧している側の人物をボディガードに雇う。

同じような状況は、ボスニアでも起こり、東ティモールでも起こり、スーダンでも起こっている。

ナイチンゲールが否定していた赤十字の思想は、ナイチンゲールが心配していたとおりになってしまった。


というようなことが書かれている本。国際NGOが寄付金を食いものにする利権集団と化していることは、
伊勢崎賢治氏「武装解除」9点、
国際貢献のウソ」7点、ディーン・カーラン/ジェイコブ・アペル「善意で貧困はなくせるのか?」8点、
ヒュー・シンクレア「世界は貧困を食いものにしている」9点、
ダンビサ・モヨ「援助じゃアフリカは発展しない」7点など、いくつかの書籍で指摘されている。


この手の本は誤解を受ける。

「生きるか死ぬかの絶望的状況に置かれた人に対し、救いの手をさしのべるのは人間として当たり前だ。グダグダ理屈をこね回してなにも行動しないより、たとえ結果的に悪い方向に向かったとしても、行動する方がマシだ」

と主張する人たちが居るからである。U2のボノあたりが典型。


本書が主張するのは、「行動しない方がよっぽどマシ」ってこと。


国際NGOが紛争地に入って、避難民を支援する
→支援する際、弾圧している方に賄賂を渡す
→その賄賂が、弾圧する側の飯代、武器代になる
→国際NGOが避難民を助け続ける間、ずっと弾圧する側にお金を与え続けている
→結果として、紛争はいつまで経っても終わらない

→別の場所で、もっと悲惨な紛争や災害が起きる
→国際NGOは掌を返したように、今まで居た紛争地から消える
→紛争地では、国際的にもっと注目を集めるような事態が起きなければならない
→人が死ぬのじゃ物足りない、手足を切り落として、殺さず生かしたまま放置しよう(シエラレオネとか)
→紛争が悲惨になる

→国際NGOは手っ取り早く寄付者に報告するための成果が欲しい
→紛争地の現場で、英語が出来る、仕事が早い、コネがある、などの有能な現地人を、現地相場の20倍くらいの給与を払って引き抜く
→現地の政治を担う有能な人材が根こそぎ国際NGOに引き抜かれ、現地の政治体制が崩壊
→別の場所で、もっと悲惨な紛争や災害が起きる
→国際NGOは掌を返したように、今まで居た紛争地から消える
→国際NGOに雇われた現地スタッフは、国際的なコネを使って世界各地に散る
→現地の政治体制の崩壊は止まらない


8点/10点満点

※ルワンダ内戦は、フツ族(人口8割強の多数派)がツチ族(少数派)を数百万人殺した。圧勝と思って調子に乗っていたフツ族は、ウガンダ軍と手を組んだツチ族反乱軍が首都キガリに侵攻していることを軽視し、気がついたらツチ族に首都制圧された。ツチ族の逆襲を恐れたフツ族(虐殺した方)は、コンゴに逃げ出した。国際NGOが助けたのは、虐殺した方。

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