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2014/03/22

ネイト・シルバー/西内啓訳「シグナル&ノイズ」感想。
統計学。2014年03月09日読了。

重量700gもあり、正味500ページ、参考文献を含めると590ページもなる分厚い本。通勤電車で立って読むには重かった。

著者ネイト・シルバーは、アメリカの野球MLBが大好きで、仕事の合間に野球の各種記録を自分のPCに打ち込み、データベースを作っていた。その後、有望選手をデータから導き出すシステム「PECOTA」を開発し、2006年「PECOTA」はダスティン・ペドロイアという選手を有望選手ランキング4位に予測した。

ペドロイアは170cmくらいしかない背の低い選手で、MLB関係者もスポーツ記者も、誰も活躍するとは予測していなかったが、2008年にMLBの新人王を獲っている。

このことがきっかけとなり、著者ネイト・シルバーは2008年のアメリカ大統領選(オバマvsマケイン)を予測するシステムを開発し、全米50州中49州で予測が当たり、データ分析→予測を行うプロフェッショナルとして世界中から注目を浴びるようになった。


本書は、データ分析・予測のプロフェッショナルが説く、「データが増えれば増えるほど、ノイズも増える。ノイズをノイズと分析できずに、ノイズを本当のデータと思い込んでしまうと、とんでもない予測をすることになる」という話である。

著者は、予測にはベイズの定理が役にたつと説く。

ベイズの定理は、9.11のテロに当てはめた例がいちばん分かり易かった(p271-)

911テロの1機目

・事前確率
 テロ攻撃で高層ビルに飛行機が衝突する可能性の初期見積もりX
 X=0.005%
・新たな事象が起こる
 テロリストが高層ビルを攻撃しているという条件下で、ビルに飛行機が衝突する確率Y
 Y=100%
 反対に、テロリストが高層ビルを攻撃していないという条件下で、ビルに飛行機が衝突する確率Z
 Z=0.008%
・事後確率
 XY/(XY+Z(1-X) ……コレがベイズの定理
 =38%

なお、XYZの確率は、それぞれ適当な値を想定して埋める。


911テロの2機目
 X=38%
 Y=100%
 Z=0.008%
・事後確率
 XY/(XY+Z(1-X)
 =99.99%
 
1機目がテロの可能性は38%だけど、2機目が突っ込んだことによって、テロの可能性が99.99%まで跳ね上がった。


というように、ベイズの定理を利用し様々な事柄を予測することは、ある程度まで可能であるというのが著者の理論。

今まで全く起きていないことを予測するのは難しいが、過去に何度か発生していることであれば、過去に遡ってベイズの定理を当てはめていき、事象が発生する度に事後確率を計算し直し、それを繰り返す事によって予測精度が上がっていく。

ということを、
アメリカの住宅バブル崩壊(リーマンショック)、

大統領選の予測(テレビに出演する予測屋は、当たっても外れても視聴者が事後検証することは少ないので、実はかなり適当な予測をしている)、

野球の予測システム(野球はスポーツの中でも有数のデータ蓄積量があり、また、データがかなり実力を当てている)、

天気予報(天気の変化は実は結構単純な出来事の積み重ねで起きている<気温が上がる→地表の水分が蒸発する→上昇気流が起きる→雲になる→雨が降る、など>ので、コンピュータでかなりの所まで予測可能だが、コンピュータを持ってしても計算し尽くせないほど、計算量が膨大)、

巨大地震(地震自体がいつどこで起きるかを予測することは、天気よりはるかに難しいが、数千年~数万年のスパンで考えると、いつ頃どのくらいの巨大地震が起きそうか、ということは何となく見当が付く)

経済予測はなぜ当たらないのか((たぶんアメリカ)政府は毎年45,000もの経済指標を発表する。指標が多すぎる)

インフルエンザの流行予測(先進国と途上国では、保健所の検査結果や分析の精度に差がありすぎる)

ギャンブルの予測(優秀なギャンブラーは、期待値で賭ける)

チェス、コンピューターvs人間(コンピュータのプログラムミスによる失敗を、人間は「理解できないほど高度な手」と読んだため、コンピュータに負けた)

オンラインポーカー(著者は一時期、オンラインポーカーで稼いでいた(今は法で賭けポーカーは禁止されている)。オンラインポーカーは、10人の参加者がいる場合、勝てるのは上位1名のみ、2位はトントン、3位以下は負ける。従って、自分より弱いカモの多い場で稼ぐのが鉄則)

金融市場(過去の成績が良かったからと言って、将来の成績も良いとは限らない。予測は難しい)

地球温暖化はウソ(石油会社が1年で3億ドルものロビー活動をしています)

テロの統計学(テロの被害者数を見ると、巨大地震と同じようなグラフを示す。911のような巨大テロは、311の東日本大震災くらい希有な出来事)


分厚いことと、ときどき誤訳があることを除けば、興味深い内容でした。


8点/10点満点


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