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2014/06/17

伊藤正孝「アフリカ ふたつの革命」。
ルポ。2014年05月20日読了。

伊藤正孝氏は、朝日新聞でアフリカの特派員を務めていたジャーナリスト。
1936年生まれで、1960年のビアフラ内戦取材、70年にアパルトヘイト下の南ア潜入、エチオピア革命取材、75年にアンゴラ内戦取材、78-80年にエリトリア人民解放戦線取材。をした人。

現代の日本の新聞社では、新聞社のトップから取材を許可されないような危険な場所に行き、取材を行っていた人。

氏の本は3冊読んでいる。

「南ア共和国の内幕 アパルトヘイトの終焉まで(増補改訂版)」

南アルポ。2012年02月21日読了。10点満点

「ビアフラ 飢餓で滅んだ国」
ビアフラ戦争ルポ。2012年09月11日読了。10点満点

「アフリカ33景」
アフリカ取材エッセイ。2012年12月10日読了。9点


本書は、エリトリア(下図参照)の独立戦争を取材したものである。

エリトリアは、
第二次世界大戦前イタリア領、
戦中にイギリスが奪取、
戦後はイギリスの保護領、

エチオピアは第二次世界大戦の最中、イタリアやイギリスに統治された時代もあるが、(日本と同じように)基本的にずっと独立を守っており、

1952年にエチオピア・エリトリア連邦を形成、

1962年にエチオピアがエリトリアを(武力)併合し、エリトリアはエチオピアの一州になる。

これに猛反発したエリトリア人がエリトリア人民解放戦線(EPLF)などの反政府軍を組織し、エチオピア政府軍と戦い、1991年に独立を勝ち取る。

ちなみにこの地域を図示するとこんな感じ。

Somaria

現在ソマリアは、ソマリアと、ソマリランド(旧イギリス領ソマリランド)と、プントランド(旧イタリア領ソマリランドの角の先っぽ部分)の概ね3つに分断されていて、中でもソマリランドは1991年に独立宣言し、独自通貨も発行されている
→高野秀行「謎の独立国家ソマリランド」は名著です。


長くなりましたが。

本書の第1部は、エリトリア独立のために闘っていたエリトリア人民解放戦線に従軍取材(78年、79年、80年)した圧巻のルポである。

エチオピアはハイレ・セラシエ皇帝が統治する王国(エチオピア帝国)だったが、1973年に軍事クーデターで失脚している。クーデター後は軍事政権になった。本書の第2部は、このエチオピアクーデターのルポである。


エリトリアは、真夏の気温が50度を超え、世界で最も暑くて苛酷な地域である。サハラはゴビなどの砂漠地帯よりも苛酷と言われている。著者の表現では、湿った地面に数十匹固まったハエがいるが、「ハエすら飛べない暑さ」(p65)である。

エリトリアは岩山が多く、しかも上記のような暑さの中、食うモノにすら事欠く独立闘争のゲリラ兵士と行動を共にし、身の危険を幾度も感じながら取材する著者の姿勢は圧巻であり、書かれている内容は圧倒的である。


(p86)に興味深い話が載っていた。

エチオピア政府軍を脱走し、エリトリア人民解放戦線に投降した兵士の話で、

エチオピア政府は、モロッコから独立を求めて闘っている西サハラ(ポリサリオ解放戦線)を承認した。なぜ、同じような立場のエリトリアを承認しないのか。政府軍兵士は、皇帝を打倒した軍事政権や、介入してきたソ連への不信が、投降した理由とのこと。

一兵士でも分かるダブルスタンダード。為政者の浅はかさ。


(p249)には、クーデター後のエチオピアでは食糧不足が深刻化し、アジスアベバの街中で売っているのはイスラエル製のスパゲティだった、と書かれている。

エチオピアはエチオピア正教というキリスト教が多数派なので、イスラエル(ユダヤ教)からの支援も受けやすいのかな、と思ったり。


いろいろ間違いがあるやもしれませんが、本書は圧巻です。


9点/10点満点

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