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2014/07/01

服部正也「ルワンダ中央銀行総裁日記(増補版)」感想。
偉大な記録。2014年05月30日読了。

1918年生まれの著者は、東京帝国大学法学部を出て出征、海軍大尉としてラバウルで終戦を迎え、そのままラバウル戦犯裁判弁護人となる。1947年に復員、日本銀行に務める。

1964年、国際通貨基金から、ルワンダ中央銀行の総裁として赴任しないかと要請され、1965年赴任。

1971年に帰国。その後、世界銀行に転出し、1980年に世界銀行副総裁。1983年退任。

という経歴を持った、中央銀行のスペシャリストである。

本書は、ルワンダ中央銀行総裁として赴任した6年間の出来事を、日記を元になるべく客観的に記した本である。なお本書は、1994年のルワンダ大虐殺に関する記述を加えた「増補版」である。


ルワンダに関してなにがしかの興味を持っている日本人なら、絶対読んで置くべき一冊。という話をどこかで読んで購入。私の持っているのが2010年の版なので、(10年以上積ん読している本がたくさんある私にしては)比較的最近買った本である。


ルワンダが独立し、中央銀行を作るに当たって、中央銀行を運営できるレベルのルワンダ人銀行員がいなかったため、ベルギー人(旧宗主国)やその他外国人(ドイツ人やフランス人など)の中央銀行員がアドバイザーとして就任していた。ルワンダ中央銀行総裁として派遣された著者は、そのアドバイザーたちの能力の低さに驚く。


著者がルワンダ中央銀行に就任した当時は、ルワンダの通貨であるルワンダフランは、フランスフランとの固定相場であった。しかし、実態はルワンダフランが安く、建前上の通貨価値と実態がかけ離れていて、輸出入で問題を抱えていた。そんなとき、ルワンダと同じような経緯で独立した隣国(南=地図上では下に位置する)ブルンジが、自国通貨を切り下げた。国際的な圧力として、ルワンダフランも通貨切り下げを要求されていた。


通貨の切り下げを行うか否かは政治問題である。しかし、当時のルワンダ政府には、正しい切り下げができるか否かを判断できるだけの経済知識を持った人物がいなかった。そこで、中央銀行総裁である著者が、いつ、幾らの切り下げをすべきかを決め、ルワンダ大統領に進言した。大統領は、著者を信頼し、著者の進める方向でルワンダフランを切り下げた。

そこに至るまでに、著者は、(当時の)ルワンダ経済は何が強みで何が弱みか、を詳細に検討し、輸出の目玉となる商品を見つけ出し、輸出は農産物(コーヒーが主)で、ということは農業を発展させなければこの国はダメになると考え、なぜ輸出がうまくいかないのかを考え、それは物流がうまくいっていないからで、突き詰めると(当時の)ルワンダにあるトラックが大きすぎて農家を回るには燃料を食いすぎるということに辿り着き、それならばトラックを輸入しようと日本を含めた各国のトラックメーカーに小型トラックの見積もりを依頼し、ふざけた値段をつけた欧州のメーカーを追い出し日本のトラックを国庫で買い、物流が円滑になるような物流会社を設立させた(設立したのはあくまでルワンダ政府)。

輸入はベルギー人のだらけた商社が独占していて、そこは為替差益やルワンダの貧弱な税制(関税の貧弱さも含む)につけ込んで利益を貪っていた。そこに割り込もうとするインド人商人がいた。それとは別に、ルワンダ人も金融機関から金を借りられれば隣国からいろんなものを仕入れて売る知識はあったが、金を借りられないので(普通の市中銀行がとても貧弱だった)、現金払いできる範囲でしか商人として活動していなかった。こういうインド人商人やルワンダ人商人にも金を貸すよう、中央銀行総裁として市中銀行にお願いして、商人たちは商売に励めるようになった。ベルギー人商人は特権に胡座をかいた商売をしていたので、通貨切り下げ後の変動に対処しきれなかった。


というような感じで、これが中央銀行総裁の仕事か?! というような領域にまでずんずんメスを入れていく著者の仕事は圧倒的である。(注:本書を読んでからブログに書くまで時間が空いたのでちょっとうろ覚え)


本書はある意味自伝なので、著者と敵対する側の見解は書かれていない。そういう面から見ると、本書の全てを是として読むのは多少の危険をはらんでいる。だろう。


だがしかし、終戦後20年経った頃の日本人のパワー。

モーレツな中年オヤジのパワー。

日本が経済大国としてのし上がった根源たる、日本男児ここにあり!的なパワー。


それを感じずにはいられない。

圧巻の書。


9点/10点満点

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