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2014/10/19

モイセズ・ベラスケス=マノフ/赤根洋子訳「寄生虫なき病」感想。
科学ノンフィクション。2014年09月06日読了。

本書は見た目以上にボリュームがある。文字がみっしりと埋まっている。

1行48文字×1ページ21行×463ページ=約46万文字、400字詰め原稿用紙1166枚である。(参考文献含まず)

◆内容(amazonから引用)
寄生虫、細菌、ウイルス。彼らを駆逐する公衆衛生の向上によって、確かに感染症は激減した。しかし、一部の科学者たちは、まるでそれと反比例するように新たな病が増えていることに気づいていた。花粉症、喘息、アレルギー、そして自己免疫疾患。これらの病は、果たして「寄生者不在」によるバランスの乱れが原因なのだろうか?自らも自己免疫疾患を患う著者は、あらゆるジャンルの膨大な研究とインタビューから、「寄生者不在の病」の全貌に迫ってゆく。そして、ついには自ら寄生虫を腸内に感染させる治療法に挑んだ。果たしてその結末は?
◆引用終わり


(p17)
アレルギー疾患の有病率は、最も高い国とひくい国で、約20倍もの差がある。
アルバニア(ヨーロッパ最貧国)にはアレルギー疾患の子供はほとんどいないのに対し、オーストラリアの子供の4人に1人がアレルギー疾患を抱えている。
Ⅰ型糖尿病ではもっと顕著になり、最も高いフィンランドと最も低い中国を比べると、約350倍の差になる。
病気にかかりやすい民族、遺伝のせいなのだろうか?

しかし、有病率の低い国(アルバニアや中国)から高い国に移住した世代の二世代目は、有病率が地元住民と同じ程度に高くなる。

(p29)
日本の子どもたちにアトピー性皮膚炎が増えていた1990年代、藤田紘一郎はボルネオ島の子どもたちにアトピーもアレルギーもないことに気付いた。ボルネオの子どもたちの多くは、寄生虫に感染していた。この二つの事実に何か関連性があるのではないかと藤田は考えた。

(p72)
イタリアのサルデーニャ島(人口約160万)は、島民の430人に一人が多発性硬化症患者である。270人に一人がⅠ型糖尿病である。どちらも自己免疫疾患である。

サルデーニャ島で自己免疫疾患が増え始めたのは1950年代で、この頃、この島からマラリア(ハマダラカが媒介する寄生虫疾患)が根絶された。マラリアが根絶された直後から、自己免疫疾患が増え始めた。

(p106)
2004年アメリカで、クローン病や潰瘍性大腸炎患者60人に、三週間に一度、ブタ鞭虫(という寄生虫)の卵2500個を飲ませる臨床試験を行ったところ、40%以上の患者に症状の改善が見られた。

宿主の健康状態が悪いことは、寄生虫にとっても都合が悪いので、寄生虫は宿主の健康を改善するような働きをするのではないか?


……

寄生虫を駆除しすぎたために、住環境を衛生に保ちすぎたために、先進諸国で暮らす人びとの体内から人体に有益な微生物(寄生虫を含む)が無くなってしまい、1950年頃には稀な病気(アレルギー≒自己免疫疾患)が増えたのではないか?

これは、世界中の医学研究者が、冗談ではなく本気で研究している題材らしい。

本書は、巻末の参考文献だけで44ページもある。

生物学者福岡伸一氏の解説で、「本書は、科学ジャーナリストによる一般向けサイエンス本だが、専門家でも驚くほど、広汎・詳細に「不在の病い」、つまり寄生虫や常在菌がいなくなることによって、逆に引き起こされる異常事態、について現在解明されつつあることを調べ尽くし、緻密なまでに分析・議論している。つまりこれを読めば必要なことが全て把握できる、現時点での決定版的解説書であるといえる。」

と絶賛している。


あまりにも参考事例が多いので途中で読むのに疲れてくるが、とても有益な本である。


なお、本書を買うかどうか迷っている方は、福岡伸一氏の解説を読んでから決めると良いと思います。


9点/10点満点

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