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2015/05/09

高野秀行「恋するソマリア」感想。
ソマリア潜入ルポ。2015年02月10日読了。

本書は、「謎の独立国家ソマリランド― そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア」2013年03月14日読了。5点(内容9点・比喩1点)/10点満点、の続編である。

ソマリアは現在、大きく3つの国内国に分断されている。北部、ジブチの隣がソマリランド。アフリカの角に当たる部分がプントランド。南部ソマリアがいわゆるソマリア本体で国際的に認められている暫定政権がある。ソマリランドは英国植民地、プントランドと南部ソマリアはイタリア植民地。ソマリランドは独立を宣言しているが、国際的には承認されていない(こういう形での独立を認めてしまうと、雨後の竹の子の如く独立を希望する小国家が乱立してしまうため。南スーダンは、スーダン政府公認の下、分離独立の住民投票を行い、99%の賛成票が得られたので独立できた)


本書は、ソマリランドのケーブルTV局のジャーナリストと行動を共に、治安としてはかなり安全な部類に入るソマリランドだけではなく、プントランドや、南部ソマリアまで踏み込んだ記録である。

著者らしく、戦場ルポでもなければ、地誌学的な研究でもない。ソマリアのことがいろいろ知りたくなったから、日常生活から政治まで知ることができるのなら何でも見聞きしてやろう、というノリである。

AMISOM(アフリカ連合によるソマリアミッション)軍に同行取材する形で南部ソマリアに行った際は、イスラム過激派アル・シャバーブからロケットランチャーで攻撃される経験もした。

だがそういうところより、日常に何気ない部分の描写が面白い。

p113
「半年前は1ドル=33,000ソマリアシリングだったのが、今は1ドル=19,000ソマリアシリングと二倍近くに高騰している。昨年(注:20012年かな?)の「大飢饉キャンペーン」で世界中から莫大な援助物資と義援金が流れ込み、ドルが暴落したのだという。」

p136
「ソマリアを知らない外国人にはひじょうに意外なことだが、内戦と無政府状態が二十年続く戦国都市モガディショでは民政がたいへん発達している。電気・水道・学校・病院は主に各氏族の有力者が運営している。携帯電話はネットも当たり前のように普及している。市内や国内外の諸都市を結ぶバス・飛行機も普通にある。 (中略) ただし、氏族社会で全てがうまくいくわけではない。中でも政府軍兵士や民兵による「イスバーロ(自主検閲)」と「ゴミ問題」はいつも紛糾の種だ。」


松本仁一「カラシニコフ」2005年11月28日読了。10点満点
で、ソマリアに携帯電話会社が3社もあると書かれていて非常に驚いた。


本書はソマリアが舞台なので、高野秀行ファンとソマリアに関心がある人以外はなかなか手を出しにくいのだが、ソマリアに何の興味もない人でも十分面白く感じる本に仕上がっていると思う。

高野秀行の特長であるマニアックな取材対象、何をしたいんだかよく分からない飄々とした雰囲気、くだらないことに情熱を傾ける姿勢を変えずに、万人受けする内容に仕上がっている。

これから先、知名度がどんどん高まって行くような気がする。


9点/10点満点

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