池内恵(さとし)「イスラーム国の衝撃」感想。
ISIS分析。2015年02月05日読了。
ISIS(イスラム国)に関する本の2冊目。
ISISはどのような過程を経て出来上がった組織なのか、アルカイダと何らかの関係があるのか、シリアの反政府主義者がなぜイラクに流れたのか、外国人戦闘員がなぜ集まってくるのか、これからの中東はどうなっていくのか、について書かれている。
9.11以後、アルカイダと、アルカイダを匿ったアフガニスタンのタリバン政権は崩壊した。アフガニスタンでは、2002年頃からパキスタンとの国境近くに逃げたタリバンが反撃の機会を伺っていた。2004年に、ビン・ラディンの広報宣伝を担当していたスーリーという人物がジハードを体系化し、1600ページに及ぶ「グローバル・イスラーム抵抗への呼びかけ」というタイトルでネットに公開した。
ISISの前身組織は「イラクのアルカイダ」(ビン・ラディンのアルカイダとは違う組織)で、2003年のイラク戦争(アメリカがサダム・フセインを殺した戦争)を機に、アフガニスタンから追われたジハード戦士がイラクに集まってきた。ヨルダン人のザルカーウィーが指導者で、イラク戦争後、イラク再建に乗り出した国連に対しても攻撃を加え、シーア派を異端と断じ、シーア派に対するテロを正当化した。ザルカーウィーは2006年にアメリカの空爆で死亡したが、組織はその後も活動を続けた。(注:本書に書かれている内容はもっと複雑です)
2003年のイラク戦争前のイラクはバアス党の一党独裁で、スンナ派が要職を占めていた(バアス党自体はスンナ派の組織ではない)。
イラク戦争後はシーア派主体の政権になり、バアス党出身者はことごとく解雇された。
スンナ派が人口の多くを占める地域では、シーア派主体の政権に不満が出ていた。そこに「イラクのアルカイダ」などの反米武装組織が入り込んだ。その後、治安の悪化に対処するためスンナ派が自警団を作り、アメリカがその自警団を政府公認の民兵組織として機能させ、いったんは宗派の垣根を越えてイラクが国家として機能しだしたように見えた。
しかし、「アラブの春」の余波を受けシリアが内戦状態に突入したことで、事態が変わってくる。
シリアの政権もバアス党で、アサド大統領はシーア派から分派したと言われているアラウィー派。シリアの内戦での反政府組織「自由シリア軍」が有名だが、この組織は寄せ集めで実力に乏しく、反政府組織はスンナ派武装集団に変わっていった。(シリアの多数派はスンナ派)
シリアの反政府スンナ派武装集団には、「アラブの春」に看過された若者だけでなく、ロシアのチェチェンやアフガニスタン、旧ユーゴのコソボで戦ったジハード戦士も参加してきた。
シリアの反政府組織は乱立し、反政府組織同士での戦闘になることもあった。アサド政権は自分の陣地である首都ダマスカス近郊を守るのに忙しく、同士討ちしてくれるのならラッキーと、反政府組織を放って置いた。
そんなシリアに「イラクのアルカイダ(この頃には既にイスラム国と名乗っていた)」が入り込み、シリア内戦に関与し始めた。その後は、イラクとシリア両方に拠点を持ち、石油施設を抑え資金源とし、無法地帯となっているためジハード戦士が密入国しやすく、ISISはどんどん拡大していった。(建前上、ISISがシリアに逃げ込んでしまえば、イラクの治安維持部隊は国境を越えて追いかけられない)
ISISは残虐すぎるということで、アルカイダ本家からも絶縁されている。また、ISISを名乗る前に様々な組織との合体、分離を繰り返している。本書ではその経緯についてや、ISISの主張しているカリフ制などについても書かれている。
なかなか分かり易い本だった。
7点/10点満点
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