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2015/07/29

サイモン・シン/青木薫訳「フェルマーの最終定理」感想。
数学ノンフィクション。2015年06月11日読了。


本書は10点満点。

私の人生オールタイムベスト10に入る。


中学生で習うピタゴラスの定理

32 + 42 = 52
52 + 122 = 132

の数式は、中学数学を学んだ者なら誰もが一度は覚えたはずである。


本書で扱う
フェルマーの最終定理
とは、

3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組が存在しない、という定理である。

1600年代半ばにフランスの数学者フェルマーは、古代ギリシャの「算術」という数学書の余白に、関連した着想や新しい定理を書き込んでいた。

フェルマーの最終定理も、「算術」の余白に記されていたが、余白が足りなかったためフェルマーはその証明を省略していた。


一見、とても簡単そうに思えるこの定理は、数千人の数学者がその証明に挑戦したが、誰も証明できなかった。


この定理が提唱されてから360年後、イギリスの数学者アンドリュー・ワイルズが、(数学者として適度に論文を発表しつつ、誰にも内緒で黙々と取り組むこと)7年かけて、1993年に証明したと発表、1995年に証明が認められた。


本書は、アンドリュー・ワイルズが証明するまでのノンフィクションである。


文句なしに面白い。翻訳も含めて、何もかもが素晴らしい。


数学の知識は多少必要だが、高校1年生くらいの知識があればじゅうぶん読むことができる。


このような素晴らしい本を今まで知らなかったとは痛恨の極み。(Amazonのレコメンド機能で本書が表示され、評価があまりにも良いので買った。Amazonやるじゃん)


10点/10点満点


※以下、ネタバレにつき、これからこの本を読まれる方はすっ飛ばして下さい。


※面白い素数
31
331
3331
33331
333331
3333331
33333331
は全部素数、だけど、
333333331=17×19607843 なので素数ではない


※円周率(ライプニッツの公式。インドの数学者が15世紀に発見)

π=4(1/1-1/3+1/5-1/7+1/9-1/11……)


※天秤を使って1~40kgまで計るのに、何個の分銅が必要か

1kg、3kg、9kg、27kgの4個。


フェルマーの素数定理

3以上の素数はすべて、
4n+1
4n-1
で表せる。

前者は必ず x2 + y2 = その素数、となる。(そうなの?ホントに?)

※フェルマーの最終定理の証明過程

・1640年、n=4 はフェルマー自身が証明

・1749年、オイラーがフェルマーの素数定理を証明

・1753年、n=3 について、オイラーが証明

・1800年頃、n=5 について、ソフィ・ジェルマンが証明(但しジェルマンは女性であったため、生前は正当な評価を得ることはなかった。)

・1832-1840年、n=14、つまりn=7 について、ディリクレ、ラメ、ルベーグ、コーシーらが証明

・1847年、ラメとコーシーが争うように「フェルマーの最終定理の証明は間近」と学会で発表したのに対しクンマーが、虚数を考慮するとその証明は成り立たないと指摘

・クンマーは、現在(1847年頃の)数学テクニックではフェルマーの最終定理は証明できない、ことを証明した。

クンマーの解析によると、フェルマーの最終定理を証明するのに障害となるのは、nが非正規素数の場合であること、そして100以下の非正規素数は37、59、67だけであることを示した。

・nは無限大(かつxyzも無限大)なので、nを個別に手計算で証明することの大変さに比べて、第二次世界大戦で(ドイツの暗号エニグマを解いた)コンピュータが登場し、手計算があまり意味をなさなくなったこともあり、以降、個別証明は衰退

・1953年生まれのアンドリュー・ワイルズは、幼い頃からフェルマーの最終定理に魅了されていた。

・1975年、大学院生になったアンドリュー・ワイルズは、楕円曲線(楕円方程式)に関する研究を指導教官ジョン・コーツから勧められる。

・x2 = y3 - 2
は楕円方程式で、この整数解はただ1組だけである。52 = 33 - 2

これを証明したのがフェルマーである。

・ワイルズは楕円方程式の整数解を求めるのに、5進数や7進数を使った。5進数はE5、7進数はE7と表す。(本書ではE系列という書き方をしている)

・遡ること、1955年。日本の志村五郎と谷山豊は、「すべての有理数体上に定義された楕円曲線はモジュラーであろう」という、谷山志村予想を日光の国際シンポジウムで発表する。(本書ではモジュラーをM系列という書き方をしている)

・ここでいう予想とは、数学的に証明はされていないが、たぶん正しいであろうと思われること。定理は数学的に証明がされたこと。数学的に証明されるまでは、十中八九間違いないと思われることであっても、あくまで「予想」である。

・モジュラーは、それ自体が超高等数学(数学科の大学院生でも理解できるか否かのレベル)で、その概念を理解することすら難しい。

・数学的には、楕円とモジュラーは別領域と思われていたが、谷山志村予想が徐々に広まり、「谷山志村予想が成り立つと仮定すれば、××も成り立つ」という派生論文が世界中で数百も出る。

・1984年、ゲルハルト・フライは、「谷山志村予想」が証明されれば、そのまま「フェルマーの最終定理」の証明につながる。という歪な楕円方程式を提示。

・ということで、アンドリュー・ワイルズは「谷山志村予想」の証明に取り組む。

・1811年生まれのフランスの天才数学者にして革命家のエヴァリスト・ガロアは、5次方程式の解を見つけようとするなかで、弱冠20歳にして群論を生み出す。だがガロアは21歳で、女を取った取られたの決闘で負けて死ぬ。

・1988年、日本人数学者宮岡洋一が、フェルマーの最終定理を証明したと発表するも、その後の検証で証明に不備があった。宮岡は、微分幾何学というアプローチで証明しようとしていた。

・ワイルズは、フェルマーの最終定理の証明に取り組んでからの3年で、ガロア群を楕円方程式に応用し、楕円方程式を無限の要素に分解して、すべての楕円方程式の最初の要素はモジュラーだということを証明した。

・その後ワイルズは1年かけて、楕円方程式を分析するための手段である岩沢理論を研究した。岩沢理論を拡張すれば、ドミノ倒しのようにフェルマーの最終定理の証明に至るのではないかと考えた。しかし、その手法には失敗した。

・かつての指導者コーツから、コリヴァギン=フラッハ法という楕円方程式に関する論文を知る。

・それまでワイルズは「フェルマーの最終定理」の証明を試みていることを誰にも内緒にしていたが、数学者ニック・カッツに打ち明け、コリヴァギン=フラッハ法をもっと突き詰めるための大学院生向け講座を開いた。大学院生向けの講座というのは隠れ蓑で、ワイルズ自身がコリヴァギン=フラッハ法を勉強するための講座で、最終的に聴講生はニック・カッツ一人になってしまった。

・ワイルズは、コリヴァギン=フラッハ法を使って「谷山志村予想」を証明することを達成した。それはつまり、「フェルマーの最終定理」の証明につながった。7年かけたこの成果を、1993年6月に、ケンブリッジで披露した。

・大喝采に包まれたが、コリヴァギン=フラッハ法に穴があることが分かり、ワイルズは欠陥の修正を行うことになった。

・欠陥の修正は想像以上に困難な作業で、ワイルズは諦めかけた。が、不完全だった岩沢理論と、不完全だったコリヴァギン=フラッハ法を両方を組み合わせれば完全になると気付いた。

・そして遂に、欠陥を修正した最終証明が発表され、他の数学者の検証を経て、証明は完全であると認められた。

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2015/07/28

富坂聰「中国 無秩序の末路」感想。
中国モノ。2015年06月03日読了。


私イチオシの中国ウォッチャー、富坂聰氏の本。


週刊現代レベルのネタが23本書かれている。


気楽な読み物として読むにはちょうど良い本。


4点/10点満点

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2015/07/27

津上俊哉「巨龍の苦闘」感想。
中国もの。2015年06月03日読了。

著者は、1957年生まれ、1980年東大卒、通産省入省、1996年在中国日本大使館参事官、などを経て通産省を退官した人。中国のエキスパート。

中国の情勢は、中国が発表する公的情報+αで分析可能である、というような本。

(p111-の抄録)
中国の物価上昇は、GDPの伸び率よりも高い。
実質的には、中国の預金者は富を収奪されていて、借り手(特に国有企業)が有利な状況(というよりは、補助金に近い)であった。

(p154)
中国の裁判所(法院)と検察院は、その予算を市(レベル)が握っていたので、市が敗訴となるような判決を出した瞬間にクビになる。ということが分かっているので、市が被告となるような訴状はそもそも受け取らない。

(p185)
中国は、G7が主導している国際金融秩序(ブレトンウッズ体制)に沿った形で、国際的な地位を高めようとしていたが、米国議会の理不尽な反対で頓挫し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立する羽目になった。


納得出来る話も多いけど、週刊現代レベルの話も多く、プラスマイナスが相殺されての5点評価。


5点/10点満点

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2015/07/26

佐藤優「世界史の極意」感想。
うんちく。2015年05月31日読了。

本書のタイトルは大袈裟です。極意と言うほどのモノではないです。

主に宗教的な視点から、ヨーロッパを中心とした世界史のごく一部を解説してみます。という程度です。

私的に目新しかったところは、

オーストラリア(豪)は、非核武装政策を執っているため、原子力潜水艦を他国から買うことができない。通常の潜水艦を売っているのはドイツ、オランダ、スウェーデンで、性能的にはどれも貧弱。太平洋を股にかけて航行できるディーゼル潜水艦を作っているのはロシアと日本。安全保障上ロシアから買うことはできないので、必然的に日本の潜水艦が欲しい。なので、武器輸出を可能にするため(日本で)法改正が行われた。


15-17世紀の中欧はハプスブルク家(カトリック)が絶大な権力を持っていた。それに対抗すべく、プロテスタントのデンマークやスウェーデンが南下して、三十年戦争に参加した。カトリックのスペインはハプスブルク家側に付いたが、同じカトリックのフランス・ブルボン王朝はハプスブルク家と対立していたので、プロテスタント側に付いた。


イエズス会(カトリック)は、打倒プロテスタントを目指して「プロテスタント征伐十字軍」を作った。

ロシア正教の本拠地は現ウクライナのキエフ。

これらの余波で、正教対カトリックの戦争になるところだった。

(正教は、カトリックともプロテスタントとも異なる宗派)
(キリスト教は大ざっぱに言うと、カトリック:正教:プロテスタント=2:1:1 の割合)
(正教には、ロシア正教、ギリシャ正教、グルジア正教、アルメニア正教など、分派がいっぱいある)


パレスチナには大きな二つの政党があり、穏健派のファタハと、過激的なハマスである。

ファタハはヨルダン川沿いの地区で主導権を握り、ハマスはガザ地区(海沿い)で主導権を握っている。

ハマスは、ヨルダン王室の転覆を狙っている。

ヨルダンにはパレスチナ難民が多くいる。

ヨルダンはイスラエルと良好な関係である。

パレスチナ難民の多くは、イスラエルの暴虐によって難民になったので、イスラエルと良好な関係を維持しているヨルダン王室は裏切り者である。

というようなこと(や、その他たくさんのこと)が書かれている。


4点/10点満点

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2015/07/25

廣瀬陽子「未承認国家と覇権なき世界」感想。
国際情勢。2015年05月27日読了。

廣瀬陽子せんせえは、1972年生まれの旧ソ連(特にコーカサス)研究家で、現在は慶応大学の准教授。

廣瀬陽子「ロシア 苦悩する大国、多極化する世界」2013年03月17日読了。5点

廣瀬陽子「強権と不安の超大国・ロシア」2013年11月26日読了。6点

廣瀬陽子「コーカサス 国際関係の十字路」2013年11月29日読了。9点

を読んでいる。


旧ソ連は崩壊によって、ロシアを含む15の国(※)に分裂した。

※ロシア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、ベラルーシ(白ロシア)、アゼルバイジャン、グルジア、タジキスタン、モルドバ、キルギス、リトアニア、トルクメニスタン、アルメニア、ラトビア、エストニア


旧ソ連は、ソビエト連邦であり、ソ連崩壊に伴い独立を宣言できたのは、連邦を構成する社会主義国家のみである。ソ連時代に自治共和国だった地域は、独立を認められていない。


つまり、

ソ連邦←社会主義国家(連邦構成国)←自治共和国←

という序列である。


これが原因で、旧ソ連構成国家は、ソ連時代に自治共和国だった地域が、独立要求して困った事態になっている。

ウクライナ
 クリミア自治州が独立(もしくはロシアへの帰属)を求めている

アゼルバイジャン領内に
 アルメニア人が多く住んでいるナゴルノ・カラバフ自治州がある

アルメニア領内(飛び地)に
 アゼルバイジャン人が多く住んでいるナヒチェヴァン自治共和国がある。

グルジア領内に
 アブハジア自治共和国
 アジャリア自治共和国
 南オセチア共和国 がある

モルドバとロシアの国境付近に
 沿ドニエストル共和国 がある

ウズベキスタン領内に
 カラカルパクスタン共和国 がある


というようなことも書かれている。


が、本書でもっとも重要なことは、旧ユーゴのコソヴォの扱い(独立を認めるか否か)に関して、国連加盟諸国がダブルスタンダードを是とする非常に曖昧な決定を下したことが、今日に至るまでの混乱の原因であると説いていることである。


コソヴォに住んでいる人はアルバニア系住民が多く、アルバニアはヨーロッパ最貧国でマフィアが多く、コソヴォもアルバニアマフィアが跋扈していた。

しかし、ヨーロッパ先進国は、旧ユーゴ解体に伴うユーゴ内戦の戦犯をすべてセルビアに押しつける為、アルバニアマフィアが跋扈するコソヴォの国家独立を承認してしまった。


このダブルスタンダード
(内戦をきっかけとした地域の国家独立宣言は、国連加盟国は絶対承認しない。なぜなら、こういうことを認めると、為政者と政治的に対立している部族が自分の勢力範囲を独立国家として認めるように要求してくるからである。唯一の例外がコソヴォである)
ががまかり通ってしまうと、世界は今以上の混乱に陥る。


世界の枢軸を担う国々は、この混乱をどうするのか!


というような話が、割りと分かりやすく書かれています。


7点/10点満点


余談ではありますが、旧ユーゴが崩壊していた時のセルビアやモルドバを舞台にした海外(イギリス)ドラマ「セックス・トラフィック」2007年07月15日鑑賞8点。は、国連PKO部隊が(旧ソ連や旧ユーゴの貧困層をヨーロッパの金持ちに売り飛ばす)人身売買に関与していたという事実(告発?)ベースの社会派ドラマです。

アカデミー賞を取った「トラフィック」とは異なります。

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2015/07/24

武村政春「巨大ウィルスと第4のドメイン」感想。
ブルーバックス。2015年05月18日読了。

なんで今まで発見されなかったの!?

というくらい巨大なウィルスが1992年に発見されたらしい。

それをイロイロと解析していくうちに、

そもそもの話として、ウィルスとは生命体なのか?

そもそもの話として、生命の定義とはなんぞや?


みたいなことがこの学会内で湧き上がっていたらしいが、


本書は、こういうことの専門家である著者が「読者はこういうことを知りたがるであろう」という仮想Q&Aに手前味噌解説をしている本。


で、その仮想Q&Aが悉く的外れな印象。


端的に言うと、とてもつまらなかった。


3点/10点満点

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2015/07/23

桑嶋幹「よくわかるレンズの基本と仕組み 第2版」感想。
光学入門書。2015年05月15日読了。

2015年3月後半に2週間インドネシアの(マナドとブナケン)に行った後、レンズの勉強を始めたのです。

その際読んだ数冊の技術書のうち、一応完読したのが本書。


近視に使われているのは凹レンズ、


冬瓜に使うのが凸レンズ。


なんですって。知りませんでしたよ。


で、本書で得た知識をもとに、AutodeskのFusion360という3DCADでレンズを設計したのがこちら。

Lens


原理を知ると、設計も簡単になります。


※Fusion360の操作はそれほど簡単ではないですよ。自分のやりたいことができるようになるまで、100時間くらいはかかると思った方が良いです。

7点/10点満点

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2015/07/22

船戸与一「残夢の骸 満州国演義9(完結)」感想。
歴史冒険小説。2015年05月11日読了。

1970年代まで、日本では「犯罪」が絡んだ小説はすべてミステリというカテゴリーに一括りにされていた。

1976年から大映が西村寿行原作の「君よ憤怒の河を渉れ」「犬笛」「黄金の犬」、1979年から角川映画が大藪春彦の「蘇る金狼(松田優作)」「野獣死すべし(松田優作)」「汚れた英雄(草刈正雄)」が公開され、また同時期にフレデリック・フォーサイス原作の映画「戦争の犬たち」などの洋画も公開され、この辺りからバイオレンス小説(今で言う冒険小説)というジャンルが認知されるようになった。

このジャンルを得意とする作家には、北方謙三、志水辰夫、逢坂剛、大沢在昌、佐々木譲、高村薫などのベストセラー作家が居る。

船戸与一(功労賞的に直木賞を受賞している)も、冒険小説を得意とした作家である。


その船戸与一は、今年、2015年4月22日、癌で没した。享年71歳。


本書は、日本が満州を属国化する前の1920年代から、終戦後の1945年までの満州を舞台にした小説で、2007年に第1巻が出て、著者が死ぬ前に最終刊である本書を上梓した。


この本を書き上げる前に死ねない。そういう著者の執念を感じる。


船戸与一らしい救いようのないない終わり方をしているが、船戸与一の著作を何冊も読んでいる人ならば、実に船戸与一らしい終わり方だと思うだろう。


巻末に、13ページに及ぶ参考文献一覧が記載されている。また、「あとがき」に、資料を読めば読むほど、どれが本当の史実なのかが分からなくなってきた、的な事も書いている。


本書は、主人公である敷島四兄弟を狂言回しに据え、基本的に史実と思われることをなぞらえている(船戸与一が調べた範囲での)満州史実である。


圧巻である。

7点/10点満点


第1巻

第2巻

第3巻

第4巻

第5巻

第6巻

第7巻

第8巻

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2015/07/21

石井光太「浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち」感想。
ルポ。2014年04月30日読了。

今年(2015年)は、第二次世界大戦終戦(1945年)から70年の節目の年になる。

私は1966年生まれなので、戦争は知識として知っているだけである。

私の父親は昭和9年(1934年)生まれ、母親は昭和12年(1937年)生まれだが、両親ともに出生地が北海道の網走近郊なので、戦争に伴う悲惨な体験はしていない。

早坂隆が戦争に参加した自分の祖父にインタビューした「祖父の戦争」のように、私も自分の両親に戦争のことを尋ねたことがあるが、「網走(正確には女満別)はたいしたことなかったよ」と言うだけで、詳しくは教えてくれない。教えてくれない理由を父は、「俺も子供だったから、細かいことはぜんぜん分からないんだよ」と言う。


1934年生まれの私の父親は今年81歳である。その父親でも、戦争についてはよく分からないと言う(当時まだ小学生だったから)。

本書は、私より一回り近く年下の石井光太氏(1977年生)が、知識として知っている終戦直後の上野の混乱を、当事者が生きている間に直接取材をしたいと思い立ち、上野で「浮浪児」と呼ばれていた当時の子どもたちの足跡を追い、インタビューを受けてくれる人を探し出し、当時(終戦食後の上野)の状況を再現した本である。


終戦前の東京大空襲(1945年3月10日に大爆撃、4月、5月にも爆撃)により、多くの子どもたちが両親と生き別れ、もしくは死に別れになり、親とはぐれた子どもたちは自分で生きることを余儀なくされる。その中には5-7歳の幼い児童もいた。

親とはぐれてしまった児童(中学生以下)は、生きる為に食べ物を盗む、危ない目に遭わないよう徒党を組む、その他いろんなことをする。

そして終戦を迎えるが、玉音放送の意味はさっぱり分からない。だが戦争が終わり、アメリカ進駐軍がやってくることは分かった。

大人でも混乱するこの時代に、親とはぐれてしまった子どもたちがどう生きてきたのか。


学問的な本ではないので、戦後の混乱をすべてを網羅しているわけではない。

しかし、その一端を知るには十分な本である。


相変わらず石井光太はいい仕事をするな。


石井光太の取材姿勢には賛否両論あり、この本にもたぶん批判はあるのだと思うが、私は良書と思う。


8点/10点満点

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2015/07/08

ちょっとしたメモ

日本人が世界中で働けるのは、日本に四季があり、

北海道で夏25度、冬-15度、
関東で夏35度、冬-5度、
九州で夏35度、冬0度、

という幅広い温度に対応できているから。

赤道近くの国(例えばインドネシアやマレーシア、シンガポール、フィリピン)の気温は1年を通じてだいたい25-30度で固定されていて、雨季と乾季で多少のズレはあるにせよ、こういう国の人たちは日本の冬の気温になかなか対応できない。もちろん何年も日本に住んでいる外国人なら冬対策もそれなりにバッチリでしょうが。

サハラ砂漠や中近東の砂漠は、1年の気温変動(年較差)より日較差の方が大きく、昼間は50度、夜は10度、というような極端な状態にあるが、砂漠なので湿度は低い。日中40度を超えるようなクソ暑い砂漠を生きている人たちでも、日本の真夏の湿気を帯びた35度は耐え難いと漏れ聞く。

逆にノルウェーなどの北欧や、中国島北部、シベリア出身の日本在住者は、(関東の)2月下旬や11月下旬に半そでで歩いていたりする。気温は10-15度くらい。晴れていたら暑い、暑いから半そでは当たり前、なんだとか。当然ながらこういう地域の出身者は日本の夏がまったく以てぜんぜんダメである。まあ、当たり前。


日本以外にも四季のある国は多く、アメリカの一部、オーストラリアの一部、ヨーロッパの一部(フランスとかスペインとかイギリスは該当する)、韓国、中国の一部、まあ、数え上げたらきりがない。


まあ何が言いたいかというと、四季がある国が輸出産業(というかグローバル製造業)を手がけている場合、成功する可能性が高い。ということである。

こういう物事の見方は、環境決定論という。


という自分用のメモ。

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2015/07/02

吉岡明子・山尾大編「「イスラム国」の脅威とイラク」感想。
イラク政治研究。2015年04月23日読了。

本書は、ISIS(自称イスラム国)はなぜ生まれたのか?

を、イラク国内の政治問題から分析した本です。


普通の人が読んでもまったく面白くない本です。


専門的な内容が多すぎです。イスラムの知識がある人で、尚且つ中東政治に多少なりとも関心がある人向けです。


かいつまんでイラクの政治体制を記すと、

イラクに住んでいる人は、凄まじく大ざっぱに言うとイスラム教スンナ派1/3、シーア派1/3、クルド人1/3で、クルド人はイスラム教スンナ派だけれども、アラブ人ではないのでアラブ人のスンナ派からも虐げられていた。

で、サダム・フセインは宗派によらない世俗主義(宗教なんて関係ないね、力のある奴が支配するんじゃー)で、実態としてイラクはスンナ派が政権および政治の中枢(官僚組織)を担ってきた。


が、サダム・フセインをブチ殺したいが為だけに仕掛けたアメリカの対イラク戦争で、サダム・フセインは負けた。イコール、スンナ派の政治中枢も負けた。

その後アメリカはスンナ派(性格にはバアス党党員)を政権中枢から一掃し、これは比喩ではなく一掃し、市役所の職員から教師に至るまで、スンナ派(バアス党党員)は全員職を失った。


かわりにシーア派の連中が持て囃された。能力があろうが無かろうが関係なし。


で、バグダッドを中心としたイラクの政治中心部がシーア派(アメリカ庇護下)とスンナ派(サウジアラビア庇護下)で駆け引きをしている間に、

それまではスンナ派がイラクを支配していた
→アメリカがスンナ派政治体制をぶち壊した
→シーア派が台頭した
→スンナ派が多数派の地方は不愉快

というような過程を経て、シリアの混乱で負けたISIS(スンナ派過激主義者)はイラクに逃げ込み、イラクでスンナ派の聖地を作ろう!

ということで過激な行動を始めたら、予想外にスンナ派イラク国民から支持されちゃったので、シーア派ブチ殺せー、クルド人もブチ殺せー

ということになったのだよ。


ということを間接的に書いている本である。


本書はイラク政治に関する極めてまじめな大学院生以上向けの解説書である。

しかし、出版社の意向なのだろう、一般の人が読んで構わないようなタイトルがつけられている。

タイトルに惑わされてはならない。本書に書かれていることはかなり難しい。


個人的には興味深く読めた。ここまでイスラム本を数十冊読んできているので難しさは感じなかったが、でもこのタイトルは酷いと思う。お気楽なエッセイ新書と同じ感覚で読むと「なんだこの本、さっぱりわけ分かんないよ、ああ金を損した」という展開になるので、普通の人は注意されたし。


8点/10点満点

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