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2015/11/10

トム・リード/金子宣子訳「「ヨーロッパ合衆国」の正体」感想。
EU解説。2015年10月24日読了。

原著2004年、日本語訳2005年に出版された本。

現在のEUは1993年11月1日のマーストリヒト条約の発効によって発足し、ユーロの発行は2002年1月1日にユーロ加盟国で一斉に切替が行われた。

本書は、EUと、EUの共通通貨であるユーロが、アメリカ人に想像以上に強力な存在になっていることを、ワシントン・ポストのロンドン支局長でアメリカ人の著者が、普通のアメリカ人向けに書いた本。


序盤はEU構想は誰がどのように考え出したのか、その歴史を詳しく書いている。


第二次世界大戦の加害者西ドイツと被害者フランスというヨーロッパの2大国が、歴史的な感情を抜きにして商売を効率よく進めるために、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、至りを加えた6カ国で1951年に欧州石炭鉄鋼共同体設立条約(調印国間で共同市場をつくる条約)を締結したのがEUの始まり。

貿易業務の簡易化(関税の廃止)、品質基準の明確化、戦争の戦略物資になる鉄鋼と石炭の取引透明化による西ドイツの暴走の監視、などの条項が盛り込まれたことより、戦争で疲弊したベルギーとフランスは石炭を西ドイツに売り、西ドイツは鉄鋼を作って重工業が復活し、鉄鋼を運ぶためオランダの港湾が活況になる。

経済的にひとつになることで得られるメリットは、その後ヨーロッパ各国に認識されるようになり、EU創設へとつながっていった。


また、EUが組織として発展できた理由のひとつに、NATOの存在がある。

NATOは、冷戦が終結した今(注:2004年)でも、予算の60-85%をアメリカが拠出している。さらに、10万人を超えるアメリカ軍人がヨーロッパに駐留している。

EU加盟各国が戦争に巻き込まれるような事態が発生しても、とりあえずはNATOがあるので、EU各国、特に小国が戦費に悩むことはない。


EUは公用語が20言語あり(注:2004年。2015年では24言語)、EUに関係するすべての書類は20カ国語で作成され、EUの会議では20カ国の相互同時通訳が必ず同席して、同時通訳する。

EUが存在するおかげで、翻訳や通訳の仕事が増えたのだそうだ。(まあ、こんな細かいことはどうでもいいか)


10年前の本だが、興味深く読めた。良書。

8点/10点満点

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