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2016/03/26

ロジャー・サロー、スコット・キルマン共著/岩永勝訳「飢える大陸 アフリカ」感想。
現代的飢餓分析。2016年01月26日読了

◆内容(「BOOK」データベースより)→Amazonからコピペ

一九八四年、エチオピアではおよそ一二〇〇万人が飢えに苦しみ、多くの人が命を落とした。その二〇年後、同じエチオピアで前回を上回る規模の飢餓が起きた―。世界は、とくに先進諸国は、飢餓という最も根源的な苦しみをなくすその術を知ってはいたが、実行しなかったのだ。アフリカで慢性的に起きている飢餓の多くは、機能不全におちいった人類文明がひきおこした“人災”なのだ。「ウォールストリート・ジャーナル」紙の記者である著者が、豊富な現場取材を通して、新しいコンセプトで援助を始めたビル・ゲイツやU2のボノの活動を報告するとともに、「飽食の空白域」といわれる飢餓が、国際社会の不均衡なパワーバランスと、先進国の無知と怠慢と都合によって、いかに引き起こされているかを鮮明に描き出す。

◆著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)→Amazonからコピペ

サロー,ロジャー
20年間、「ウォールストリート・ジャーナル」紙の海外特派員を経験。1986~91年は、主に南アフリカで取材し、アパルトヘイトの終末を人道的な立場から執筆した。その記事によって、アフリカの20ヵ国以上をふくむ、およそ60ヵ国に活動の場を広げた

キルマン,スコット
20年以上、「ウォールストリート・ジャーナル」紙上で農業について執筆し、アメリカ政府とその農産業部門が国際社会に与える影響を記録してきた。貿易、バイオテクノロジー、食糧安全保障、補助金、農村経済についても執筆してきた

岩永/勝
1951年生まれ。京都大学大学院修士課程修了。米国ウィスコンシン大学にて農学博士号を取得。現在、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)、理事長。専門は植物遺伝育種学。過去30年間、海外(米国、ペルー、コロンビア、イタリア、メキシコ)で研究生活を送る。2006年に「日本農学賞・読売農学賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


◆感想

アフリカ諸国、特にエチオピアでは食糧不足による飢饉が何度も発生している。エチオピアは本来農業国で、政策に間違いがなければ、全国民(9000万人以上)を食べさせるだけの食糧を生産できる豊穣な土壌がある。

この「政策に間違いがなければ」は、エチオピア一国の政策を指すのではなく、食糧の輸出入を行っている先進国と、国連の政策も含まれる。

2007年、先進国(たぶんOECD加盟30国の合計値)の農業補助金は2600億ドルに達した。30兆円である。先進国の農家は、補助金によって農作物の輸出コストを安く設定できる。アフリカ諸国の農家が自分たちの作った農作物を国内で売買するより、先進国の補助金農作物の方が安い。従ってアフリカ諸国の農作物仲買人は、自国の農家から買わず、先進国の補助金農作物を買う。すると自国の農家は十分な収入を得られず、新しい農機具も買えず、灌漑施設も作れず、さらには翌年の種すら十分に買えず、衰退していく。

アフリカ諸国は、1960年から続々と独立を果たしたが、ほとんどの国で経済政策は失敗した。その結果、アフリカ諸国は先進国や国連から支援金(無償の寄付金、無利子の貸し付け、有利子の貸し付けなど色んなパターンがある)を受け取るようになる。その支援金には「農業補助に使ってはならない」という制限付きのものが多い。なぜなら、支援する国は「農作物を輸出する」ので、アフリカの農家が生産性を上げ輸出市場でライバル関係になっては困るからである。


エチオピアの農家は穀物が採れすぎて価格が暴落した時、刻一刻と値が下がっていくので、明日売るより今売った方がまだマシだ、と安値で売りさばく。儲けはない。なぜ投げ売りしなければならないのかというと、

1) 穀物は保存が利くのに、エチオピアにはまともな穀物保管所がないため、腐る前に売らなければならない。

2) 先物取引所がないため、常に時価で売るしかなくなる。(そして翌年の収入の目処が立たないため借金できないから農機具の新調や種の購入資金にも事欠くことになる)

では干魃などで飢饉になった場合は、

3) エジプト(実は農業大国である))がナイル川の水利権を持っているため、ナイル川を利用できない(干魃の影響を受けやすい)。つまり灌漑設備を整えるのが非常に大変。

4) エチオピアの飢饉に対し国際NGOなどが「エチオピアに食糧を送ろう!」とキャンペーンを展開し、無料で穀物をばらまく。僅かながらでも収穫があった農家は、無料配布される穀物には太刀打ちできないので、離農するしかなくなる。


本書は、1940年代から1960年代にかけて、アメリカの農学者ノーマン・ボーローグとロックフェラー財団が主導した「緑の革命」(麦やトウモロコシの高収穫種の開発、化学肥料の研究)により、世界中で農業生産性が向上した話から始まり、

エチオピア、マリ、スーダン、スワジランド、ジンバブエのアフリカ諸国に於ける(上記した)理不尽な補助金制度の問題点と、アフリカ諸国の拙い農業政策の実態、

この状況を何とかしなければ、とアイルランド人(アイルランドは1800年中頃にジャガイモ飢饉を経験している)が中心となって立ち上がり、世界中でアフリカの飢饉を救おう戸キャンペーンが展開され、遂に国連(の事務総長コフィー・アナン)を動かしたこと、

などが書かれている。


本書は、アフリカ諸国、特にエチオピアの飢饉を主軸においているが、基本的には世界の農業の実態と、世界の農業政策についての本である。


420ページ。読み応え十分である。


9点/10点満点

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2016/03/06

サイモン・シン/青木薫訳「暗号解読(下)」感想。
ノンフィクション。2016年01月16日読了。


インターネットの「公開鍵」と「暗号鍵」の意味が分からない人へ。


本書を読めばその理論が全て分かる。ベリサインの存在理由も全て分かる。


私は今までインターネット公開鍵の意味をよく理解できなかったが、


本書を読めば完璧に理解できた!


プログラマは本書を絶対に読め! というくらいの名著。素晴らしい。脱帽。


原著サイモン・シン、翻訳青木薫 の組み合わせは名著ばかりだ。


10点/10点満点

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サイモン・シン/青木薫訳「暗号解読(上)」感想。
ノンフィクション。2016年01月12日読了。


プライバシーを守るため、インターネットには暗号化が必須。

ではその暗号化っていったい何?

ということを、暗号の歴史そのものを振り返ることによって、非常に分かり易く説明したノンフィクション。

私の読書人生、生涯ベスト10に入れるべき傑作「フェルマーの最終定理」を書いたサイモン・シンの著書。訳者も同じ青木薫氏。


第1章

紀元前5世紀、ギリシャとペルシャの戦争に関してヘロドトスが記した「秘密の書記法」について。単純に文字を入れ替えてめちゃくちゃな記号の羅列に変換するというもの。
AとZを入れ替えて文章を記す
BとYを入れ替えて文章を記す……

なんの文字を入れ替えたのか、その規則性が分からなければなかなか解けない。規則性を紙に書いたり、同じ規則を何度も使うと内容がばれるので、キーワードを決めるやり方が広まった(キーワードは伝書役の奴隷が相手に伝える)

ジュリアスシーザー JULIUS CAESAR をキーワードにすると、重複語を除いて以下のように置換する。(置換前の文章を平文という)

平文 a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z
暗号 J U L I S C A E R T V W X Y Z B D F G H K M N O P Q (R以降は、アルファベット順に並べる)

この方法で1000年は上手くいった。

が、アルファベットの出現頻度を解析することで解読が可能になった。英語で考えると、普通に書かれた文章で最も多く出てくるものは e 、2番目は t 、3番目は a である。

上記「秘密の書記法(アルファベット換字式暗号)」は、アルファベットを1対1で置換するため、暗号化された支離滅裂な文字列から出現頻度の高い文字を順番に当てはめていけば、いずれ内容ある単語に行き着く。つまり解読が可能になる。このことが記された最も古い文書は、9世紀のアラブの科学者である。

ヨーロッパでは1200年頃まで、まだこの解読方法に到達していなかった。

そんなこんなで(端折ってスマン)、1586年のスコットランド女王メアリーが暗号を使ってイングランドに反旗を翻した廉(かど)で処刑される。


第2章

(ヨーロッパの)暗号作成は新たなステージに突入した。2段換字である。一度換字しためちゃくちゃなアルファベットを、異なる手順で更に換字するのである。

ここで新たな問題が発生した。換字の手順=暗号を復元する手順を受け取り側にどうやって伝えるか、ということである。やがてヴィジュネル方陣という方法が考案され、広まった。

それを解読する側は、出現するアルファベットの冗長性に着目し、同じアルファベットの組み合わせがあるか、ある場合それは何度出現するか、何文字おきに出現するか、同じ組み合わせの文字数は何文字か、などを総合的に分析し、しらみつぶしに調べていったら正解としか考えられないパターンが見つかり、それを手がかりに発信元が同じ人物の機密文書を次から次へと見破っていく。


第3章

なんか暗号が見破られていると気付いた発信者は、機械を使って暗号化と復元を行う暗号機の開発に乗り出した。19世紀終わり頃の話。


第4章

機械化しても見破られる場合があることに気付いたドイツ人は、第二次世界大戦で大活躍したエニグマ暗号機を作り出す。


というような感じで話は進んでいきます。


このブログで本書の魅力が伝わらない場合、それは単に私の筆力不足です。本書はめちゃくちゃ面白い!


9点/10点満点

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