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2016/05/04

マッケンジー・ファンク/柴田裕之訳「地球を「売り物」にする人たち――異常気象がもたらす不都合な「現実」」感想。
ルポ。2016年04月05日読了。


地球温暖化が起きている。

進化論を認めない(主にアメリカの)キリスト教福音派(原理主義)は、地球温暖化の原因が二酸化炭素であることを認めない。(キリスト教原理主義者は、生物は神が創造したと信じているので進化論を認めない。地球温暖化の原因は神の御心によるものであり、二酸化炭素が原因ではないと考える)

本書は、地球温暖化が起こり世界がどのような事態になるのかを、温暖化の是非については触れることなく、ただ冷静に現実を書いている。

本書の邦題は「地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」」であるが、これは、ビル・クリントンが大統領だった時の副大統領アル・ゴアが出演した地球温暖化についての映画「不都合な真実」に引っかけていると思われる。(ちなみに映画「不都合な真実」はアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、この出演を含めた総合的な環境問題への取り組みが評価されたアル・ゴアはノーベル平和賞を受賞している)

しかし本書の原題は「Windfall」=風で落ちた果実(を得る幸運)=たなぼた、という意味なので、邦題がイマイチである。


著者は本書を書き上げるのに、6年間取材を積み重ねたとのこと。

以下、内容列挙 (地球儀もしくは Google Earth を見ながら読むとベターです。MAPではダメです)


◇北極の氷が溶ける

→今まで氷に閉ざされ通れなかった北西航路(グリーンランドとバフィン島の間を通る航路)という海路が使えるようになる。ここを通ると、ニューヨークと上海の間の航路が、パナマ運河を通る航路より6400kmも短くなる。(Google Earth を使ってざっくり測ると、パナマ運河経由で太平洋横断が20000-21000km、北西航路経由でアラスカとソ連のベーリング海峡を抜けカムチャッカ半島と日本の横を抜けて行くと14000-15000km)

→北極の海底には石油が大量に埋まっているが、海上油田を開発しようにも、氷が邪魔して作ることができなかったが、氷が溶けたら油田開発ができるようになる。北極海に面している国はアメリカ(アラスカ)、カナダ、ロシア、ノルウェー、デンマーク(グリーンランド)の5カ国である。

※北西航路は主にカナダ領海


◇温暖化で氷床や氷河が溶け、グリーンランドは独立する

→世界最大の島グリーンランドは、島の81%が氷床で、どんどん溶けている。氷床が溶けることで地肌が露出し、そこを調べるとレアメタルや様々な鉱物資源が眠っていることが判明した。あと10年くらい経ち、もっと氷床が溶けると採掘が可能になる。世界の鉱物資源会社は、グリーンランドの採掘権を先買いしている。

→温暖化によって、今までグリーンランド近海にはいなかったタラやニシンが獲れるようになってきた。魚が獲れると、魚の加工工場も必要になる。それらは重要な雇用先になる。

→そして、そういう収入源がうまれることにより、グリーンランドはデンマークから独立を目指せるようになってきて、実際独立を目指している。


◇ヨーロッパのアルプス山脈で雪が降らなくなってきている

→ウインターリゾートであるアルプス周辺の山町(オーストリアとかスイスとかイタリアとかフランス)は、雪がないと商売あがったりになる。仕方がないので人工降雪機を使って雪を降らせる。その人工降雪機のメーカーが、灼熱の中東イスラエル製である。

イスラエルは砂漠地帯なので淡水が必要。海水からできる氷の結晶は淡水でできている(塩分を含まない)という原理を利用し、真空凍結方式というのを開発し、海水から淡水を作り出す技術を開発した。

が、真空凍結方式はあっという間に逆浸透膜方式に市場を奪われてしまった。しかし真空凍結方式を応用して雪(というか氷)を作り出すことができるようになり、それを降雪機として利用する。らしい。(この部分は今ひとつよく分からない表現が続いた)


◇世界の淡水は、氷河に左右されている

→南米のボリビア、ペルー、エクアドルは、アンデス山脈の、
→インドのガンジス川、インダス川、ブラマプトラ川、中国の揚子江、黄河はヒマラヤ山脈の、
→ナイル川はキリマンジャロの、

山頂にある氷河や万年雪が春に溶けて、川に流れてくる。ダムに水を溜め、発電と淡水に利用している。しかし、万年雪がなくなり、氷河が溶け始めてきた現在、ダムに十分な水が溜まらず、発電や飲用水の確保に苦労している。

温暖化が進むと、これらの川の周辺国(中国、インド、パキスタン、バングラデシュなどの人口大国が全て該当する)では、水を確保するために多大な費用と労力をかけなくてはならない。

海水淡水化だけではなく、淡水を確保して供給することは、兆円単位の莫大なグローバルビジネスになる。例えば既に世界74カ国で水道を提供するヴェオリアという会社は、温暖化が進み干魃が深刻になってくると、今まで以上に売上も利益も向上する。淡水市場は成長産業なのだ。


◇温暖化で氷床が溶けると、海面が上昇する

→バングラデシュは低地が多く、サイクロンがくる度に大きな被害を出している。海面上昇に伴い、被害を受ける面積がどんどん拡大してきている。

→同じように国土が低地だらけのオランダは、防波堤(護岸壁)を国中の海岸線に設置し、なにがっても海水が国土に浸入しないよう対策している。

→オランダは、そのノウハウを輸出しようと、世界中に売り込んでいる

→バングラデシュでは、海に近い場所の農地が、海水に侵されてどんどん使えなくなっている。このような場所に住んでいた農民は、仕方なく移住する。移住先はバングラデシュ内だけではなく、インドにも行く。インドでは、バングラデシュ移民に侵入を防ぐため、インド-バングラデシュ国境全てに国境フェンスの設置をしている。

これで本書の半分くらい。このような事例をとにかくたくさん紹介している。

地球温暖化は善か悪か? ということには触れずに、とにかく地球温暖化によって今何が起きているのかについて、丹念に取材した成果を書き記している。


非常に面白かったが、翻訳が今ひとつだったのが残念。


8点/10点満点

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