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2017/01/31

ドン・ウィンズロウ/峯村利哉訳「ザ・カルテル(上)」感想。
メキシコ麻薬戦争小説。2017年01月11日読了。

本屋に行ったら、本書が平積みされていた。

ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳「犬の力・上」2014年04月13日読了。8点
ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳「犬の力・下」2014年04月14日読了。7点

の続編である。メキシコ麻薬戦争の当事者(取り締まる側と、取り締まられる側)を扱った、超一級の小説であった「犬の力」。個人的にはラストが気に入らなかったのでちょっと辛めの採点をしたが、

2014年に書いたブログより
>物語は、1997年、メキシコのある集落で、一族19人が麻薬マフィアに惨殺されたシーンから始まる。一族にマフィアの裏切り者がいた。裏切り者は、バナナのように顔の皮を剥がされて殺されていた。アート・ケラーは、自分の落ち度でこの事態を招いたと悲しむ。

この真相はそうとう後にならないと出てこないが、小説の仕掛け(開けっ広げな伏線)としては有効だった。

その続編である。これは読まなくてはならない。

とはいうものの、文庫本なのに1冊1200円+税。めちゃくちゃ値段が高い。ちなみに上巻は632ページ。ページ数を考えるとやむを得ない価格なのかな。

それと、訳者としての力量が素晴らしかった「犬の力」の訳者、東江(あがりえ)一紀氏が他界してしまったので、誰が翻訳するのかによって読後感が大きく異なるだろうという不安もちょっとあった。(引き受けた翻訳家=峯村利哉氏だって、東江氏と比べられる重責を覚悟のうえで引き受けられたのだろう)

「犬の力」は1975年から1999年までの戦いを書き、ラスト数ページに、2004年の主人公の心境が書かれている。

さて本書。

知っている人は知っていると思うが、メキシコ麻薬戦争はここからが本番である。19人の死に主人公アート・ケラーが心を痛めたいたのが前著「犬の力」。

しかしメキシコ麻薬戦争(全く知らない人はwikipediaを読んでね)では、1年で1万人以上が殺されている。麻薬組織同士の抗争VS警察(ほとんど買収されている)VSメキシコ軍(やっぱり買収されている)VSメキシコ政府直轄の麻薬撲滅チーム(親族が麻薬組織に殺されているので絶対に買収されない)という泥沼。

各勢力は、始めはただ敵対勢力を殺していたが、だんだんとエスカレートし、生きたままガソリンをかけて焼き殺す、生きたままチェーンソーで両手両足首を切って殺す、生きたまま額の髪の生え際を切って顔面の皮をはいで殺す。イスラム国も真っ青な方法で殺しまくった(というか、イスラム国の残虐さはメキシコ麻薬戦争を参考にしたと思われる)

まあ、そういうグロい部分も多いが、読み始めたら止まらなくなった。5日で読んでしまった。

「犬の力」をちょっと辛めの採点にしたのは、私が「犬の力」を読んだ2014年の時点で、メキシコ麻薬戦争は小説(「犬の力」)よりも酷くね? と違和感を抱いたからだと思いだした。


8点/10点満点

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2017/01/30

小川忠「インドネシア イスラーム大国の変貌」感想。
ルポ。2017年01月06日読了。

2016年9月に出版された本。著者は2011年9月から2016年3月まで世界交流基金ジャカルタ日本文化センター所長。それ以前にも1989年から93年まで4年間、世界交流基金の職員としてインドネシアに赴任。

その著者が2016年までの最新のインドネシア情報をコンパクトにまとめたのが本書。

非常に良い。

p16
ナショナリズムは民族ナショナリズム、宗教ナショナリズム、領域ナショナリズムに大別でき、インドネシアは領域ナショナリズムを基盤とする。

→インドネシアにはキリスト教徒や仏教徒もいるので宗教で国をまとめているのではない。また民族もいろんな人種が混ざっている(マレー系、ジャワ系、中国系、インド系、ミクロネシア系等々)ので民族ナショナリズムでもない。このエリアに住んでいる人は皆インドネシア人として一致団結しよう、という領域ナショナリズムである。


p19
インドネシアの憲法で宗教に関する記述は、「唯一神への信仰」とあるのみ。

→つまりユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、上座部仏教などを信仰している事。逆にいえば、無宗教はダメ。

p40
1948年から62年まで西部ジャワで、1949年から65年まで南スラウェシで、53年から62年までアチェで「イスラーム国家」の樹立を求める反乱が続発した。

→インドネシア独立直後、多数派のイスラム教を国教としなかったことに不満を持つ国民があちこちで暴動を起こしていたとのこと。前述の宗教ナショナリズムを採用しなかったということ。もし独立時、イスラム教で国をまとめようとしていたら、現在のパキスタンのような状況になっていたのだろうと推測。(インドネシアは国をまとめるのに宗教を使わなかったので、西側先進国も支援しやすかった)

p76
ユドヨノ政権が誕生してから教育に力を入れた。就学率が如実に上昇している。
初等教育 2004年90%→2014年92%
中等教育 2004年55%→2014年83% (注:日本でいう中学と高校)
高等教育 2004年17%→2014年32% (注:日本でいう専門学校、短大、高専、大学)

→本書とは別に仕事案件でインドネシアを調べていたら、インドネシアの15歳から24歳は人口の17%、約4400万人いる。大ざっぱな計算ではあるが、その32%が高校より上の学校に行っているのでその数1400万人。単純な人数でいったら、日本の大学在学者数より多いのかも。

ちなみにインドネシアの出生率は数年前2.6→2015年データでは2.13まで下がってきているので、各家庭が子供の教育にかけるお金はこれまで以上に増える。

p160
フランス「シャルリ・エブド」のムハンマド(モハメッド)風刺画の端を発したテロは、テロという卑劣な行為で言論の自由を脅かしたということで、インドネシアの穏健派ムスリムの間でも同情論があったが、「シャルリ・エブド」の風刺画が公開されたら、一気にトーンダウン。

→こんな奴らをかばうんじゃなかった的な話です。言論の自由はある。けど侮辱は侮辱である。侮辱を暴力で解決していいのか?という話になりがちだけど、侮辱は言葉(絵)の暴力です。まあここいらは、たぶん100年かかってもお互い分かり合えないところだけれども。

p177
世界で日本語を学んでいる人の数(2012年)は398万人。そのうち87万人がインドネシア。うち84万人は中学、高校で学んでいる。これはインドネシアの高校カリキュラムで、高校で第2外国語(第1はもちろん英語)を必修としたから。ただし2013年から第2外国語の必修が外れたので、これから下がるとの予測。

p188
1977年に福田赳夫首相がマニラで東南アジア外交の理念について演説した「福田ドクトリン」は評価が高い。

→ぜんぜん知りませんでした。

p193
日本がインドネシア独立を支援したので、インドネシアは建国以来の親日家である、という人世代前のインドネシア人がきいたら笑ってしまうような歴史観が日本に存在している。

→第二次世界大戦時、日本は石油目当てでインドネシア征服した。1980年代はその記憶が残っている人が大勢いた。

敗戦後、朝鮮戦争特需で日本の商業界は活気づき、傲慢な猛烈サラリーマンが傲岸不遜な態度で商売をしていた。

それらの記憶が残っている1980年代までは、インドネシアはそれほど親日ではなかったとのこと。


面白かった!


9点/10点満点

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2017/01/29

ジリアン・テット/平尾光司監修/土方奈美訳「愚者の黄金」感想。
ルポ。2017年01月02日読了。

2017年最初の一冊(読み始めたのは年末からだけど)は、日本ではリーマンショック(2008年)と呼ばれている、アメリカのサブプライム住宅ローンの崩壊(2007年)に端を発した世界金融危機についての、ものすごく丹念に取材したルポ。

本書は、1994年6月にJ・P・モルガンの世界中の若い社員がフロリダに集まったところから始まる。彼らはスワップ部門に属していた。デリバティブの一部門である若い彼らには、これからの金融界を担う新しい商品の開発を任された。

そこで生まれたのがクレジット・デフォルト・スワップCDS。すさまじく単純化していうと、

銀行が融資を行うのに際し、貸し倒れリスクが高い場合、普通は利息を高くして貸し出す。しかし相手が長年取引している名門企業で、高い利息に不満を言ってきた場合、銀行は悩む。

そこでCDS。これは名門企業が倒産するリスクを数値化し、倒産しない限りずっと配当がもらえます、でも倒産したらパーになる。という証券。J・P・モルガンがCDSを作ったばかりの頃は、CDSは一般に流通させるものではなく、保険会社や資金がある大手企業に直接売り込んで(相対あいたい取引)、引き受けてもらっていた。

名門企業が銀行への借金を完済させたらCDSはそこで終わり。元本は引き受け先の会社に戻ってくる。

通常銀行は自己資本規制(貸出残高の8%(国によって違う?)はキャッシュを持っていなければならない)により、常に数百億円から数兆円のキャッシュを持っていた。これを貸し出せないのはもったいない。そこで銀行が倒産することをCDSにして売ったらどうなる? ということをFRS(連邦準備制度)とのバトルを経て、FRSが折れて、自己資本規制を下回ってもCDSで保障されてりゃ余ったキャッシュを貸しても良い。

ということになり、全世界中の銀行が狂喜乱舞。

でもCDSを作り出したJ・P・モルガンは中途採用をほとんど行わない保守的な銀行だったため、世界の動きがイマイチわからなかった。(J・P・モルガンはチェース・マンハッタンに買収されJPモルガン・チェースになった。その経緯なども詳しく書かれている)

世界中のメガバンクが独自のCDSを大量に作り、証券化し、一般人手を出せるようになり、挙句の果てにはJ・P・モルガンが「これはやったらアカン」と判断していたプライム住宅ローン(※)でもCDSが設定され、

※プライム住宅ローン:サラリーマンのように定期収入がある人向けの住宅ローン。
 サブプライム住宅ローン:住宅ローンの審査に落ちた人向けに、高利息で貸し出す住宅ローン。通常は変動金利を用いていて、ローン借り入れ後5年くらいは低金利、6年目から金利が倍増となる。

これはまずいんじゃないの?とJ・P・モルガンのチームが懸念していたら、サブプライム住宅ローン危機が発生し、世界金融危機につながった。

というお話。

ルポなので実在する多くの銀行員に取材し(J・P・モルガンが多いけど、いろんな銀行員の話が載っている)、金融工学と呼ばれる難しい学問を何とか平易な言葉で表している。

これは素晴らしい名著だ。ルポとしての真実味、金融工学を平易な言葉で伝える力(日本語翻訳も非常に良い)、そしてルポでありながら登場人物に魅力を与える著者の文章力。

この本を一冊読むだけで、大学の経済学学部の単位がもらえそうなくらいの圧倒的な内容である。

素晴らしい。

べた褒めなのに10点満点じゃないのはなぜ?

それはやっぱり難しいから。平易な言葉で書かれていても、金融工学が難しいのは変わらない。この本を読んでいる途中で何度wikipediaを開いたことか。

そして今、知ったような気になってこの感想文を書いているけど、読んでから既に1か月経っていて、この感想文に書いたことが間違っていないかビクビクである。(「理解した」と「たぶん理解した」にはすごい隔たりがあるんだよね)


9点/10点満点

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2017/01/28

エルヴェ・ファルチャーニ/アンジェロ・ミンクッツィ/芝田高太郎訳/橘玲解説「世界の権力者が寵愛した銀行 タックスヘイブンの秘密を暴露した行員の告白」感想。
回顧録。2016年12月23日読了。

著者はフランス・イタリアの二重国籍を持ちITエンジニアで、スイスのHSBC(銀行)のプライベート・バンキング部門の情報システムで働いており、そのときに知ったHSBCのプライベート・バンカー(超富裕層のみを対象とする銀行員)の脱税幇助を告発した人。脱税者にはフランス人、スペイン人が多く、日本人もいた。

原著は2015年に出版された。

単純にスイス警察に告発しても埒が明かない(スイスの法律は銀行の顧客データを守る)ことを知っていた著者は、仲間とともに脱税者(脱税していない顧客も含まれる)のデータをクラウドにアップし、フランスのマントン(イタリアとの国境に近く、モナコの隣)の著者の両親の家でクラウドデータにアクセス。

このデータにアクセスすることはスイスの法律に違反しているので、スイスの警察がフランスの憲兵と一緒にマントンにやってきて事情聴取しようとするが、フランスの憲兵がそれを阻止。(注:スイスはEU非加盟)

最終的にはスペインで捕まる。

なぜこんなまわりくどいことをしたかというと、フランスやスペインの警察が間に入ることで、フランスやスペインの警察が証拠であるクラウドデータにアクセスし、一人の犯罪者(著者)から公式に得た証拠から、芋づる式に脱税の証拠を手に入れさせるためである。違法に入手したデータは証拠にならない。


というようなことを著者視点で書かれているのだが、すさまじく読みづらい。

時系列は行ったり来たりだし、法的な側面の説明も少ないし、仲間の存在などの前後関係も説明不足。

橘玲氏の解説がなかったら投げ出したくなるほど読みづらかった。


それでも投げ出さなかったのは、プライベート・バンカーの「金持ちから得られる手数料収入(=自分の給料)が何物にも勝る」的な価値観が面白かったから。

でもこの本は他人には勧められないなあ。


6点/10点満点

2016年に読んだ本の感想がようやく終わりました。次回更新から2017年分になります。

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2017/01/27

NHK「東海村臨界事故」取材班「朽ちていった命 被曝治療83日間の記録」感想。
ルポ。2016年12月21日読了。

1999年9月30日、茨城県東海村にある核燃料加工施設「JCO」で臨界事故が発生した。臨界事故とは、ある程度まとまった量の放射性物質(何もしなくても核分裂して中性子を放出)が、制御できないままに連鎖反応を起こすことである。

(もう少し説明すると、放射性物質が核分裂し放出された中性子が別の放射性物質にぶつかり、ぶつかった別の放射性物質はぶつかったことをきっかけに核分裂し新たな中性子を放出する。これは普通の現象である。連鎖反応とはこれが連続的に起こる現象。原子力発電はこの現象を人為的にコントロールしている。臨界事故とは、連鎖反応を人為的にコントロールできなくなった状態をいう)

臨界事故を防ぐために、核燃料加工工場では正規マニュアルに従って作業する。しかしJCOは作業を簡略化するため裏マニュアルを用い、更に事故当日は裏マニュアルすら無視したやり方で作業していた。加工作業を行っていた3人が1-20シーベルト被曝し、病院に緊急搬送された。(ミリシーベルトやマイクロシーベルトではない。マイクロシーベルトの100万倍以上の被曝である)

3人は国立水戸病院に運ばれたのち、千葉市にある放医研(放射線医学研究所)に転送された。

本書は、3人の中で最も被曝量が大きかったA氏の治療記録である(本書では本名が書かれているが、ネットにある公式記録などでは本名が載っていないので、当ブログも本名は載せない)。

入院2日目、A氏に目立った変化はなく、まだ普通に喋ることができた。

3日目、放医研から東大病院に転院。右手が腫れていてA氏も痛いと言うが、まだ普通に喋っていた。

5日目、看護婦がA氏の結婚のなれそめを聞くなど、まだ会話ができた。

7日目、A氏の骨髄細胞の染色体を写した顕微鏡写真が届いた。染色体が完全に壊れていた。すなわち、今後新しい細胞が作られることが無いということである。妹から採取した末梢血幹細胞の移植を行った。

11日目、A氏はまだ喋ることができた。しかし、胸に貼った医療用テープをはがすと、その部分の皮膚が丸ごとくっついてきた。以降、医療用テープは使えなくなった。呼吸の状態が悪くなってきたため、酸素マスクを使うことになった。顔に密着させるので、付けている間は苦しい。A氏は「もう嫌だ」「やめてくれ」「帰りたい」「俺はモルモットじゃない」との言葉を漏らす。

国内で未承認の薬が何種類も投与されていた。

18日目、まだA氏の意識はある。「痛いですか」の問いに、首を縦や横に振っていた。末梢血幹細胞の移植の効果が現れ、白血球が増えた。

20日目、A氏はローリングベッドという、床ずれを防ぐベッドに移され、全身が火傷のような症状を示してきたため、皮膚を圧迫しないようなパッドで周りを固められた。鎮静剤で寝たきりの状態が長く続くようになった。

26日目、根付いたはずの妹の末梢血幹細胞だったが、染色体が壊れているのが確認された。

この頃には、全身の皮膚から染み出した体液が1日1リットルを超えていた。


このような描写が続き、59日目に心停止するも、心臓マッサージで心臓は再び動き出す。だが意識はもうない。
A氏は83日目に亡くなった。

読んでいる途中から、治療と人体実験の境目は一体どこなのか考えさせられた。


7点/10点満点

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2017/01/26

ランド・ポール/浅川芳裕訳「国家を喰らう官僚たち アメリカを乗っ取る新支配階級」感想。
米国論。2016年12月15日読了。

著者のランド・ポールは、アメリカの現職上院議員(共和党)。2016年の大統領候補として共和党の予備選挙に出馬するも、トランプに敗退した。

本書は、アメリカのバカげた官僚組織について、豊富な実例をもとに徹底糾弾している本である。

アメリカは銃社会である。公務員が公務で銃を使えるかどうかに関しては、アメリカ人を含めて世界中の大多数の人が警察や軍隊だけだと思っている。しかし、農務省、魚類野生動物局、環境保護庁などの官庁が完全武装したSWAT(特殊部隊)を持っていると聞いたら驚くに違いない。

農務省(USDA)は、農業製品について監督している。無殺菌牛乳を生産している酪農家が、無殺菌牛乳の危険性を知った上で購入している人に販売したところ、無殺菌牛乳の販売は許可されていないとして農務省SWATが酪農家を急襲し、無殺菌牛乳を押収した。

ギブソン社のギター工場が魚類野生生物局(FWS)の武装工作員に急襲され、ギターの原材料を差し押さえられた。最終的に判明した差し押さえ理由は、マダガスカルから違法な木材を輸入したから。しかし、なぜ魚類野生生物局が?

また魚類野生生物局は、ホンジュラスからロブスターを輸入したアメリカ商人を急襲した。ホンジュラスの法律に違反した未成熟なロブスターだからという。しかし、当のホンジュラス政府は「違法じゃないですよ」と公式回答した。にもかかわらず、魚類野生生物局はこの商人を犯罪者として廃業に追い込んだ。

環境保護庁(EPA)は、自宅の庭を整地した移民を急襲し逮捕した。理由は「水質清浄法」違反。移民の自宅の庭は法律で保護されるべき「湿地」であり、湿地は許可なく土壌改良してはならない。その土地がからっからに乾いていても、一番近くの川まで10㎞離れていても、環境保護庁が湿地と認定した土地は湿地であり、整地することすら許されないのだ。


というようなことがてんこ盛り。うろ覚えでこの感想文を書いているので、細かなところは齟齬があるやもしれず。ご了承賜りたく。


しかしアメリカ、ひどいね。というかバカだね。

ちなみに作家(兼出版社旅行人社長)の蔵前仁一さんも本書のレビューを書いています。


7点/10点満点

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2017/01/25

川島博之「電力危機をあおってはいけない」感想。
電力論。2016年12月11日読了。

東日本大震災が発生した2011年の10月に出た本。「「作りすぎ」が日本の農業をダメにする」と同じ著者。

農業と違って本書はイマイチ。それでも、

温室効果ガスを25%削減するという鳩ポッポの公約は、日本の人口はこれから減っていくのだから、放っておいても達成できる。

バイオマスエネルギー(生ごみや間伐材などを使って発電する)に関して、2011年2月に総務省評価局が「過去5年で6兆5500億円が税金がバイオマス関連事業に投入されたが、見るべき成果は何もなかった」とこき下ろした。

など、いくつか興味深いところもあったが、全体的にイマイチ。


5点/10点満点

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2017/01/24

デイナ・プリースト/ウィリアム・アーキン/玉置悟訳「トップシークレット・アメリカ」感想。
米国防。2016年12月09日読了。


◆内容紹介(Amazonより引用)
9.11以降、テロとの闘いという大義名分のもとに、アメリカでは雨後の筍のように機密機関が生まれ、膨大な「最高機密」を扱うプログラムが立ち上げられた。1200を超える政府組織、25万人以上の従業者、そして政府から業務を請け負う民間会社の人員を含めると、じつに85万人以上の人間がなんらかの「最高機密」にアクセスしているという異常事態となっている。無数の最高機密に覆われ、ジャングルのごとき迷宮と化したアメリカの現実を、ワシントンポストのベテラン記者らが精緻な取材によって暴き出す。

◆感想

アメリカ国内には実に多くのトップシークレットがある。価値のない情報までトップシークレットに指定されてしまったため、膨大な数のトップシークレットが生まれてしまった。

トップシークレットとは何ぞや?いったいどのくらいの情報がトップシークレットになっているのか? をワシントンポストのデイナ・プリースト氏と元アメリカ陸軍情報分析官ウィリアム・アーキン氏が調べたルポ。

上述の内容紹介にあるように、トップシークレットにアクセスできる人物は85万人に上る。ここまでくるともはや機密情報でも何でもない。

本書はそういうアメリカ官僚の無駄を暴き出した本。呆れちゃいますね。でも他所の国のことなので、日本人である私にあまりビビッと来るものが無かったというかなんというか。

以下は私が面白いと思った箇所。

p36-37
大統領はCIAに指示を出すとき、事前に議会の承認を必要としない。大統領が求めれば、CIAは外国政府を転覆することさえ試みる。それが失敗した例がキューバ、北ベトナム、ニカラグア、アンゴラなどであり、成功した例がチリ、グアテマラ、コンゴ、イラン、そして2回成功したのが、よりによってアフガニスタンだ。

p51
CIAと外国のパートナーとの関係は、メディアが伝えるよりずっと強固だ。とくにイギリス、オーストラリア、カナダ、ドイツ、ヨルダン、ポーランド、フランス、サウジアラビアなどの情報機関との関係は鉄壁と言えるほど堅い。

CIAは大統領権限だけで動かせるのか。それはなかなか恐ろしい(でもトランプはCIAに喧嘩売ったからなあ)


6点/10点満点

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2017/01/23

川島博之「「作りすぎ」が日本の農業をダメにする」感想。
農業論。2016年12月03日読了。

端的にいうと、世界中で食糧は余っている。

ということを世界各国のデータ(FAO=国連食糧期間など)から導き出し、かなりの説得力をもって

「日本(&アジア)の農業は生産性が低いから、世界市場で価格競争力が無い」

という話に結びつけています。つまり、日本の農家が儲からないのは、需要はそれほど変動しないのに、同じ作物を同じ時期に出荷するから値崩れする。ちょっと時期をずらせば高値で売れるのに、収穫に携わる人手の問題とかいろんな問題があって、結局みんな同じような時期に出荷する。だから農家は儲からない。

例として挙げられていたのは、兼業農家(普段はサラリーマン、土日は農家)の場合、収穫と出荷は土日に偏重する。だけど野菜を買う主婦は毎日買いに来る。だから月曜日と火曜日は野菜が安い。

的なことが書かれていて、なるほどなあと思ったのである。

この考えはそのままグローバル農家戦略に通じ、世界的に需要が活発なのに供給が追い付かない野菜(根菜は保存がきくのでどちらかというと保存がきかない野菜の話)野菜を作れば、野菜輸出にかかるいろんな面倒ごとに対処しなければならないけど、日本の農家だってもっと儲けられますよ。

というような話になる。

そうなんだよ。私の中学生の同級生で、大学出た後農家を受け継いだ彼は、近隣の中国や台湾や韓国に生鮮野菜を出荷する方法を必死で練っていて、それが実って今や年商数億(利益ではない)。

日本は儲けを度外視した兼業農家に頼りすぎなんじゃないですかねー。


8点/10点満点

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2017/01/22

架神恭介/辰巳一世「完全教祖マニュアル」感想。
宗教分析。2016年11月30日読了。

宗教の教祖になるためのマニュアル本である。

本書は徹頭徹尾マニュアルとしての体裁を保っている。もちろんパロディだ。

世界中にいろんな宗教がある。だが意外と根底にあるもの(思想)は同じようなことだったりする。それを分析し、マニュアル本という体裁をとってパロディ化したのが本書。

キリスト教(カトリック)が硬直していたのでプロテスタントが生まれた。しかしプロテスタントよりもっと早い段階、西暦150年にモタノス派という一派が「今のキリスト教の状況は硬直化している、原点回帰せよ」という運動を起こす。こういう連中は異端と断罪され虐げられたが、現在でも東方正教会諸派として世界各地に残っている。

イスラム教の断食は有名だが、仏陀も断食していたし、仏教諸派も修行の一環で断食とかあるじゃん。

仏教発祥の地インドでは、仏教は主張が難しすぎて庶民に根付かなかった。で、日本にやって来た仏教(浄土教)は、「南無阿弥陀仏と唱えれば極楽に行って成仏できるよ」と庶民にも分かりやすい方法で布教した。

などのことが書かれている。半分笑いながら楽しく読みました。


8点/10点満点

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2017/01/21

モハメド・オマル・アブディン「わが盲想」感想。
自伝エッセイ。2016年11月28日読了。

本書の著者は盲目のスーダン人で、19歳のとき国際視覚障碍者援護協会の招聘で来日。福井県立盲学校で日本語や、日本語の点字や鍼灸を学ぶ。その後筑波技術短期大学を経て東京外語大に入学。同大学院を経て、現在は同大学特任助教。

本書は盲目のスーダン人が、盲人向けの日本語入力ソフト(漢字変換FEP)を使って日本語で書いたエッセイである。

スーダンは親族のつながりを重視するため、いとこ婚(=近親結婚)が多いため身体障碍者が生まれやすい環境にある。スーダンで先天的盲人は珍しい存在ではなく、それゆえ盲人の扱いや盲人の生き方は日本より進んでいる部分もある(らしい)。

著者は生まれたときは弱視だったが12歳で失明。

本書は、スーダンで大学に通っていた著者が、ひょんなことから日本が盲人留学生を募集していることを知り、意を決して応募。父親をなんとか説得して来日。日本の文化に苦しみながら馴染み、イスラム教徒でありながら酒におぼれ、これではいかんと兄弟経由でスーダン人在住のスーダン女性と電話でお見合い(見てはいないか)、猛烈アタックの末、結婚。奥さんも来日。

というようなことを、ぶれることなく徹頭徹尾面白おかしく綴っているエッセイである。

※スーダンは北部にある政権はイスラム教徒でイスラムごり押し。南部はキリスト教徒が多数派。それゆえ宗教対立が激しく、南部の一部は南スーダンとして独立した

エッセイなので内容は紹介できない(エッセイは著者が書く文章を楽しむジャンルなので、紹介しても意味がない)。

あまりに面白くて、読み始めたら止まらなくなり1日で読んでしまった。とだけお伝えする。


8点/10点満点

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2017/01/20

池内恵「中東 危機の震源を読む」感想
中東分析。2016年11月27日読了。

2009年に出版された本。イスラム研究家としての池内センセの知名度が上がり、ISISが台頭してきた2015年に増刷になった。この手の本が出版から6年もたって増刷ってのは珍しいんじゃなかろうか。

本書は、新潮社の月刊誌フォーサイトに2004年から連載されていた「中東・危機の震源を読む」の53回分(約4年半)の原稿を連載順に並べたもの。フォーサイトは以前定期購読をしていたが、今は紙媒体はやめてしまってWebマガジン(基本有料、一部無料記事あり)になっている。国際情勢のエキスパートが数多く執筆していて、日本有数の優れた情報源。

本書を出版にあたって内容を再構成するなどは一切なく、単純に連載順に並んでいる。そのため前半部(書かれた時期が古い)(は「この先、○○国の政権は厳しい局面を迎えるだろう」的な文言が出てくるのだが、後の章(書かれた時期が新しい)で「やはりこのように事が進んだ」的な解説が出てくる。結果が分かっていることなので、読んでいてちょっとムズムズした。

全体的には、池内センセの目線を知る本、という印象。悪くはないんですけど、ムズムズするのです。


6点/10点満点

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2017/01/19

白石隆「崩壊 インドネシアはどこへ行く」感想。
近代史。2016年11月19日読了。

著者の白石隆氏は「海の帝国―アジアをどう考えるか」2013年01月10日読了。7点(難しかったー)。を書かれた人で、東南アジア、中でもインドネシア政治研究のエキスパート。現在はJETROのアジア経済研究所所長

本書は、インドネシアの独裁者スハルト政権が崩壊した(1998年)翌1999年に出版された本。

スハルト政権時、スハルトファミリー&取り巻きがどのようにインドネシアを食いものにしていったのか、スハルト退陣を受けて3代目大統領となったハビビが出版時点でどのような政治運営を行っているのか、などが書かれている。

インドネシア政治のディープな話なので内容紹介は割愛。

スハルト政権崩壊はもう19年も前のことになる。今のインドネシア経済の最前線にいる40代の人たちはスハルト政権下の良い面と悪い面を両方見ている。30代の人はスハルト政権末期の悪い面を覚えている。20代の人はスハルト政権のことをよく知らない。10代の人はスハルトを知らない。ハビビの後、ワヒド、メガワティ、そしてスシロ・バンバン・ユドヨノ(この第6代大統領は評価が高い)、そして現大統領のジョコ・ウィドドと、インドネシアは確実に西側民主主義政治が根付いてきている。

これからのインドネシアを担う人材は、政治の力で豊かな社会を作れると確信しているに違いない。

インドネシアなんてイスラムで子だくさんで貧乏人がたくさんいる、と思っているあなた。それは間違い。古い。

今のインドネシアは人口が2億5800万人(日本は1億2700万人)、
そのうち24歳以下が1億1000万人(日本は2900万人)、
大学進学率が32%(調査機関によっては40%を超えたとも)(日本は約50%)、

単純計算してください。大学生の数では、日本はすでにインドネシアに抜かれている可能性が高いのですよ。

また出生率が2.6(調査機関によっては2.13という数字も)(日本は1.41)と先進国の数字に近づいてきています。これの意味するところは、少ない人数の子供にたっぷり教育費をかける、ということがインドネシアでも起きているのですよ。


7点/10点満点

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2017/01/18

宮岡伯人「エスキモー 極北の文化誌」感想。
民俗誌。2016年11月17日読了。

言語学者である著者が、少数民族であるエスキモーの言葉を調べるためアラスカに数年滞在調査し(アラスカ大学で日本語講師兼エスキモー語研究者として在籍)、エスキモー語とエスキモー文化を紹介した1987年に出版された本。

p48
1982年の推定で、エスキモー人口はソ連1,200人、アラスカ34,700人、カナダ23,000人、デンマーク(グリーンランド)42,000人。合計で約10万人。

p62によると、この少ない人口でありながらエスキモー語は9つの言語に分類されるのだそうだ。

エスキモー語の特長として、例えば日本語で「あの熊」という表現が実に26通りもあるとのこと(p138)。住んでいる場所が年中雪や氷におおわれている台地で、白夜(や極夜)の季節ともなると北とか南という方角表現すら意味をなさないため、明確な指示詞が発達したのだろうとのこと。

出版された1987年の時点でエスキモー文化は廃れかかっていると書かれている。2017年の現在は一体どうなっているのだろう。


6点/10点満点

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2017/01/17

墓田桂「難民問題 イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題」感想。
国際情勢分析。2016年11月11日読了。

2016年2冊目の10点満点

◆内容(Amazonより)
2015年9月、トルコ海岸に漂着した幼児の遺体は世界に衝撃を与えた。
シリアなどイスラム圏出身の難民を受け入れる輪が、ドイツを中心に広がる。
だが11月のパリ同時多発テロをはじめ、欧州各国で難民と関係した事件が相次いで発生。
摩擦は激化し、EU離脱を決めた16年6月のイギリス国民投票にも影響した。
紛争や弾圧に苦しむ難民を見過ごして良いのか、しかし受け入れる余裕はない――欧州の苦悩から日本は何を学ぶか。

【目次】
第1章 難民とは何か
1 歴史のなかで
2 保護制度の確立へ
3 21世紀初頭の動向

第2章 揺れ動くイスラム圏
1 アフガニスタンからの連鎖
2 「アラブの春」以降の混乱
3 脅威に直面する人々
4 流入に直面する国々

第3章 苦悩するEU
1 欧州を目指す人々
2 限界に向かう難民の理想郷
3 噴出した問題
4 晴れそうにない欧州の憂鬱
5 問題の新たな展開

第4章 慎重な日本
1 難民政策の実情
2 シリア危機と日本
3 関連する課題と今後の展望

第5章 漂流する世界
1 21世紀、動揺する国家
2 国連の希薄化、国家の復権

終 章 解決の限界


◆感想
読み終わった後Amazonレビューを見たら、けっこう評価が分かれている。総合では★4つだけど、★1つや★2つの評価もある。

私は10点満点をつけた(Amazon基準だと★5つ)。

難民という概念はどこから始まったのか。本書では紀元70年のユダヤ戦争(ローマ帝国vsユダヤ)から説明を始めている。

第一次世界大戦後に、国際赤十字委員会(ICRC)からの要請で国際連盟が難民を保護する活動を開始。国際連盟が国際連合に代わり、現在の国連難民高等弁務官へと発展し、パレスチナ難民への対処が本格的な第一歩となる。

現在のシリアにつながるイスラム圏の動乱に関しては、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)が端緒であったとし、そこからシリアまで一気に話を持っていく。

イスラム系の難民がなぜEUに行きたがるのか。EUはなぜ大勢の難民を受け入れたのか。EU加盟国間で意思にずれがあるのはなぜか。

そしてそれらを鑑み、日本の過去がどうであったのか(ベトナム戦争のボートピープル)、現在の対応はどうなのか、未来はどうすべきなのか。

これらを新書の枠の中で、削るべきところはばっさり削り、難しすぎず易しすぎない、著者の主張したいところはきちんと主張する。

この手の本を何冊か読んでいる私にとって、復習を兼ねながら新しい知識を得られる、実にちょうど良い本であった。

素晴らしい。


10点/10点満点


のだが、この本を読んだ後の2016年末に、NHK-BS世界のドキュメンタリー「オーストラリア 難民“絶望”収容所」を見たら、ちょっと印象が変わってしまった。

オーストラリア(豪州)は、現在世界で最も過激な難民排除政策をとっている。Newsweekの関連記事

例えばミャンマーのロヒンギャ族(仏教国ミャンマーのイスラム教徒・少数派・アウンサンスーチー政権下でも軍や警察に弾圧されている)が船にすし詰めになってオーストラリアに来る。オーストラリアは難民受け入れを拒絶し、パプアニューギニアのマヌス島または太平洋の島国ナウルに設置した難民センターに強制収容している(両国にはオーストラリア政府から数十億円の金が払われている)。難民の選択肢は自国へ戻るか、難民受け入れ提携をしたカンボジアに移住するかの二択(カンボジアも大金を受け取っている)。拒否すれば難民センターにただ居るだけ。仕事もなく、食事や医療も満足とはいえない環境で、難民の子供に教育すら受けさせない。難民は、いつ難民センターを出られるか分からない(二択を拒否したから)。自分の前途に絶望した難民が自殺しても、オーストラリア政府は対策を取らない。

難民センターで働く職員やボランティアは、難民センターで見聞きしたことを一切口外してはならない。口外すると禁固2年の実刑判決を受ける。このドキュメンタリーは、口外すると実刑判決、という法改正がなされる前に隠し撮りされたものである。

このことについて本書ではp224で軽く触れられているが、オーストラリア政府は億円単位の金を使ってまで難民をどうにかしようと思っている(但し自国には入国させない)という見方もある。難民問題のオフショア化(≒アウトソーシング)とのこと。それは確かにそうだな。

難民問題は難しい。なので10点満点の評価は変更なし。

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2017/01/16

志賀櫻「タックス・イーター 消えていく税金」感想。
いわゆる新書。2016年11月01日読了。

タックスヘイブンを利用して税金逃れ(脱税)している話がメインと思い込んで読み始めたら違った。

税金を無駄に使っている官公庁と、それらにぶら下がって利権をむさぼる組織・企業、その利権の大本となる予算を決める国会議員(族議員)に関する話、つまり税金を食う連中の話がメインであった。

国の予算、年金、法人税、族議員、財政投融資、円高、行政改革、多国籍企業…日本の税金を食いものにしている存在、いろんな問題があることはよくわかったが、話を盛り込み過ぎてちょっとピンボケな印象。


6点/10点満点

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2017/01/15

高野秀行/角幡唯介「地図のない場所で眠りたい」感想。
対談。2016年10月19日読了。

私が好きなノンフィクション作家2人による対談。

両者、あるいは片方のファンであれば面白いでしょう。

両者のことを知らなくても、特に高野秀行氏は最近TV(TBSのクレイジージャーニー)によく出ているので、高野氏のことをもっと知りたいと思った視聴者が最初に手に取る一冊としたら最適な一冊かも知れない。

私は両者のファンなので、「ああ面白かった」という感想である。高野氏の本は95%くらい読んでいるし、講演会にも行ったことがあるので、うん、まあ、なんてゆーか、予想の範囲内の面白さっていうか。

学術資料検索にグーグル・スカラーというのを活用しているという話は興味を引いた。


6点/10点満点

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2017/01/14

岩瀬昇「原油暴落の謎を解く」感想。
いわゆる新書。2016年10月11日読了。

原油価格(リンク先は楽天証券)は2008年頃に140ドル台を付け、リーマンショックで40ドル前後まで急落、その後また100ドル台に戻し、2014年後半からまた急落、今は40ドル台。

本書の内容はタイトルそのままで、なぜ今原油価格が暴落しているのかを、三井物産で石油を扱ってきた著者(1948年生・延べ21年の海外勤務)がひも解く。

すごく簡単に言ってしまうと、世界最大の石油消費国中国の景気減退による石油需要の減少と、アメリカのシェールオイル、カナダのオイルサンド開発などによって供給が増したから、というもの。

とはいえ世の中そこまで単純ではないので、本書にはいろんな要因が書かれている。

石油に関する歴史にも触れているので、石油入門書としてはかなり良い。

私は「探求」というもっと素晴らしい本をすでに読んでしまっていたので、本書は復習のような感じだった。


7点/10点満点

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2017/01/13

勝川俊雄「魚が食べられなくなる日」感想。
警告。2016年10月06日読了。

著者は東京海洋大学産学・地域連携推進機構准教授。水産資源管理と資源解析が専門。著者公式ブログで日本の水産業の行く末を心配し、警鐘を鳴らしている。

本書の冒頭、p7に
「ピーク時は200万人とも言われていた漁業者は、今や17万人を切っています。跡継ぎのいない60歳以上が大半で、平均年齢は60.1歳(自営漁業者、平成20年)です。」

当然ながら漁業者が減っているので、漁獲量も減っている。本書帯には、
「日本の漁獲量は最盛期の4割以下、クロマグロ、ウナギは絶滅危惧種、サバは7割、ホッケは9割減、ニシン漁はほぼ壊滅状態……」

漁獲高が減っているのは、中国や韓国の漁船が漁場を荒らしているからだ! という意見に対してはp48
「外国船の違法操業がほぼ不可能な瀬戸内海や内湾部の資源も同じように減っているので、」

中国に関してはp52
「中国は大規模な養殖事業を展開しています。経営体の規模が大きく、利益も出ているので優秀な人材が集まり、研究開発が活発に行われています。世界細田の洋食国である中国の技術水準は、日本をはるかに凌駕しています。たとえば、日本はヒジキを養殖する技術が無いので、私たちの食卓に乗るヒジキは中国の洋食ヒジキに依存しています。」


本書のタイトルはやや煽りすぎと思うが、良書。


ではなぜ7点なのか。

それは、本書が小学館新書(2008年に作ったばかりのライトな新書)で、先日感想を書いた「ルポ ニッポン絶望工場」の講談社+α新書と同じく週刊誌の人気記事の延長のような売れ筋ライトな内容を狙った編集になっているため、私にとって物足りなかったから。

良い本だと思います。

7点/10点満点

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2017/01/12

アレックス・ゴールドファーブ/マリーナ・リトビネンコ/加賀山卓朗訳「リトビネンコ暗殺」感想。
ロシアの闇。2016年10月04日読了。

ロシアのFSB(KGBの後継機関)元中佐アレクサンドル・リトビネンコが、ポロニウムという放射性物質を使って暗殺された。(ポロニウムは強力なアルファ線を放出するが、アルファ線は紙切れ一枚で遮断できる。しかしポロニウムを体内に入れてしまうと、臓器が強力なアルファ線に曝され死に至る)

リトビネンコは、プーチンと対立するロシアの政商ベレゾフスキーに近く、アメリカの投資家ジョージ・ソロスの下で働いていた著者のゴールドファーブ(ソ連の反体制科学者で1970年代にアメリカに行く。亡命ではない)は、ソ連崩壊後のロシアに商機を見出すためにベレゾフスキーと交流し、ベレゾフスキーを介してリトビネンコと知り合う。(なお共著者はリトビネンコの妻である)

著者は政治経済の両面からロシアに深くかかわり、リトビネンコがトルコを経由しイギリスに亡命するのを手伝い(アメリカに亡命させるのには失敗した)、リトビネンコが病床で死ぬまで付き添った。

本書は、リトビネンコから聞いた彼の半生を追いかけながら、ロシアの政治を分析した本である(但し反プーチン側にいたのでそれなりにバイアスがかかっている)。

本書にはあまりにもディープなロシア人が多数登場するので(エリツィン政権時の安全保障会議書記とか、プーチン政権時の大統領府長官とか)、細かな内容紹介は割愛。

ロシア政治の闇、を知りたい方は読みましょう。


本書p445-によると、毒殺に使われたポロニウムは静電気を除去する装置に用いられる工業用放射性物質で、世界の生産量の97%がロシアのチェリャビンスク(2013年に隕石が落下して大騒ぎになった場所)近郊で作られている。その量年間85g(単位の間違えではないですよ)。そしてその多くはアメリカに輸出されている。

ポロニウム210は放射性崩壊(この物質の場合はアルファ崩壊)すると鉛206(安定同位体)に代わる。半減期は138日。サンプルに含まれる鉛の量と不純物の量を測定し、アメリカに輸出されたポロニウムのサンプルとを比較すれば、いつ作られたポロニウムなのか特定できるのだそうだ。なるほどなあ。


8点/10点満点

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2017/01/11

出井康博「ルポ ニッポン絶望工場」感想。
ルポ。2016年09月23日読了。

本書は、講談社+α新書 である。

この+α新書は講談社現代新書とは違い、週刊現代で人気が出たシリーズものを一冊にまとめたような感じのライトな内容である。一昔前までの新書という出版形態は、岩波新書に代表されるようにかなりまじめで堅くて、大学教授が出版社に金を払って出版させてもらっていた時代もある(著者が最低○○部を買い取る)。10年くらい前から出版社が出版不況に抗うため、新書でエッセイを出したり雑誌の延長みたいな新書がやたらと出版されていった。今は選書と呼ばれる出版形態が、一昔前の新書にとって代わってしまった。講談社現代新書は堅い本、売れ筋になりそうなライトなものは+αで出版する、という講談社の決意表明を表しているかのような出版形態である。ほんとかどうかは知らん。あくまで私の印象。

何を言いたいかというと、本書は週刊現代の人気シリーズを書籍化したようなライトな内容ということである(取材が軽いという意味ではない)。でも面白い。

政府が2020年に「留学生30万人計画」をぶち上げ、その結果日本にやってくるのは日本で出稼ぎをするために便宜上「留学ビザ」が欲しい自称学生たちで、彼らの受け入れ先は潰れかけの三流大学だったり日本語学校だったりする。そういう学校は学生が授業を満足に聞いていなくても関係ない。学費さえ払ってくれればいい。現地の学校でちゃんと勉強してまじめに公費留学生として推薦された学生ならともかく、そうでない自称学生は借金をして日本ににやってくる。

そういう自称学生はちょっと前までは中国人が多かったが、中国は豊かになってきたので、今の中国人は日本を目指さなくなってきているとのこと。本当に勉強をしたい中国人はアメリカを目指す。

今はベトナム人が多くやってきているとのこと。

民主党政権下の事業仕分けにより、留学ビザを発給するに値する学生かどうかをチェックする機関(日本語教育振興協会)がビザチェックの権限を失い、今は日本語学校が直接法務省に留学ビザの申請をしている。法務省は文科省ではないので学校(まともな学校か、営利目的だけの酷い学校か)に関する知見が乏しい。従っていろんな面でひずみが起きている。

本書では自称留学生にも取材し、自称留学生の側の意見もかなり盛り込まれている。

ライトではあるが、良書。


7点/10点満点

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2017/01/10

ジョージ・ミーガン/藤井元子訳「世界最長の徒歩旅行 南北アメリカ大陸縦断3万キロ」感想。
冒険旅行記。2016年09月21日読了。

アルゼンチンの南端ウシュアイアから北米アラスカまで、6年かけて南北アメリカ大陸を徒歩で旅行した著者の紀行文。

ウシュアイアをスタートしたときは日本人の恋人と一緒で、二人はアルゼンチンのメンドーサで結婚。パタゴニアと呼ばれる風の強い寒い台地、北部アルゼンチンを抜けボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア、ダリエン地峡(コロンビアとパナマの間にある湿地。パナマ運河を作ったアメリカですらここに道を作ることはできなかった)、パナマ、コスタリカ、ニカラグア、ホンジュラス、グアテマラ、

メキシコ(原著には書かれているが日本語版では割愛)、

テキサス、

アメリカ、カナダ(原著には書かれているが日本語版では割愛)、

を抜け、アラスカで家族と合流。

毎日数十キロ歩かなければ目的地までたどり着けないので、現地の人とのふれあいとか、観光名所的な場所とかほぼスル―。ときどき疲れて長い休みを取った場所以外は、基本的に歩いている描写がずっと続く。

後半部分のメキシコとアメリカとカナダがまるっと割愛されているので、読んでいる方としてはグアテマラからいきなりアラスカにワープしちゃったような感覚になり、摩訶不思議。

紀行モノが好きな人なら面白く感じるかもしれないが、割愛された部分が多すぎてがっかり感もある。


5点/10点満点

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2017/01/09

河田惠昭「日本水没」感想。
危機管理。2016年09月14日読了。

著者は防災・減殺・危機管理の専門家で、京都大学名誉教授。現在は「人と防災未来センター」長。

本書は水害の危険性を、過去事例(日本だけではなく、ハリケーン被害のアメリカ、チェコのプラハ、イタリアのベニス、タイのバンコク)をもとに、水害がどのように引き起こされ、なぜ被害が拡大していったのかを分析し、今後その教訓をどのように活かせば、有効な水害対策ができるかを説いた本。

著者が何度も繰り返し書いているのが都市の地下空間(東京だけではない)。ゲリラ豪雨がこれからもっとひどくなり、排水が追い付かないほどの急激な雨量になった場合、都市の地下空間があっという間に洪水になる恐れがある。防水柵があったとしても、目の前の浸水は防げるかもしれないが、よそから流れ込んでくる水は防げない。ビルとビルが地下でつながっていて、そのすべてに防水柵があるわけではないので防ぎようがない。日本の都市部における地下構造は統合的に管理している行政部門が無く、地下空間の統合的な防水対策は遅れている(というか対策されていない)。

過去事例に厚みを持たせるためか、やたらと数字(雨量やらダムの容量やら貯水率やら)が書かれている。読んでいてそんな細かい数字はどうでもいいよと思ってしまうことも多々あった。

また危機管理の観点から、他国で起きたテロの話も持ち出しているのだが、

P75
「2013年1月16日にイスラーム系武装集団がアルジェリアのイナメナス付近の天然ガス精製プラントにおいて引き起こした人質拘束事件において、日本人社員だけが犠牲になったことがあった。」

と書いているのだけれども、wikipediaには人質41名(うち日本人10名)のうち23人(うち日本人10人)が殺されたと書かれている。

この部分を読んだ時点で、調べもせずによくこんな適当なことを書けるなあ、と思い、以降は話半分で読んだ。

自分の属する組織に政府予算を回してほしいから一般受けしそうな話をどかどか盛り込んだ身内に向けた本なのだろう。という読後感であった。私が他人にこの本を勧めることは無い。


4点/10点満点

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2017/01/08

国枝昌樹「「イスラム国」最終戦争」感想。
いわゆる新書。2016年09月09日読了。

著者は2006‐2010年在シリア特命全権大使。著者の情報ソースはシリアのアサド政権関係者が比較的多く、著者自身アサド政権寄りの見解を示すことが多い。そのため、一部のジャーナリスト(アサド政権がIS壊滅作戦と称して反政府ゲリラおよび一般市民を攻撃しているのは政府による虐殺である、と主張している人たち)からとても嫌われている。

国際情勢を知る上で、片方だけの見解で物事を知った気になるのはよろしくない。シリアは「アラブの春」の流れでアサド政権下ろしが始まったが、アサド政権が倒れた後の具体的な出口戦略が無いまま内戦をたきつけた欧米政府や西側マスコミの責任はどうなのよ? と私は思うのである。

アサド政権(先代の父親から息子現大統領まで1971年からずっと続いている)下では言論の自由はなく、住民同士による監視社会だったが、旅行者にとって世界で一番安全な国と言われ、世界中のバックパッカーが安心安全な旅をできた国だったのに。

結果論でいうと、「アラブの春」での政権転覆が曲がりなりにも成功したのは、最初に起きたチュニジアだけ。

・エジプト→ムバラク政権崩壊、選挙でムスリム同胞団が第一党になるもイスラム寄りの憲法改正を強引に進めて軍部がクーデターを起こし、現在は軍政

・リビア→カダフィ政権崩壊、その後国を東西に分けて士族による石油利権分捕り合戦が始まり内戦勃発。そのすきにISが勢力拡大中

・イエメン→サーレハ政権崩壊、その後ハディ副大統領が暫定大統領に就くも、フーシがクーデターを起こし内戦勃発。

・バーレーン→反政府勢力が政権打倒を目指して集会を企画した段階で政府による武力弾圧、アメリカ黙認(アメリカ軍が駐留しているから)、反政府派撃沈。


アサド政権が良いとは言わないが、アサド政権だけを批判しているジャーナリストはあまり信用できない。というのが私のスタンス。


で本書。

地域的に著者の専門外であるナイジェリアのボコハラムまで盛り込んだ(なーんか上っ面の解説に終始している)のは失敗だったんじゃないかなあ。と思う次第。

(とはいえ著者は在カメルーン特命全権大使も務めていたので、ナイジェリアが全くの専門外というわけではないのだが)


5点/10点満点

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2017/01/07

渡部潤一/渡部好恵「最新 惑星入門」感想。
サイエンス。2016年09月06日読了。

本書出版時である2016年7月現在までに判明している、惑星・衛星・小惑星・太陽系外縁天体に関する最新の情報を盛り込んだサイエンス本。著者渡部潤一は国立天文台教授で副台長。

太陽系外縁天体(冥王星より外側にある惑星や準惑星等)に関してはラスト15ページくらいでさらっと書かれているだけだが、天体観測技術の向上に伴って、惑星級の大きさを持つ天体が新たに発見される可能性が高まってきているとのこと。

ワクワクしますね。

星好きにはお勧めできる本です。ただあとがきによると、著者が過去に書いた本を再構成している部分がかなりあるとのことなので、著者の本をすでに読んだことのある人にとっては肩透かし的な結果になるやもしれません。


8点/10点満点

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2017/01/06

ケイト・エイディ/加藤洋子訳「ふだん着で戦場へ」感想。
自伝。2016年09月01日読了。

1945年イギリス北部に生まれた著者は、1968年にBBCに入社。世界中の紛争地からニュースを送り届けるジャーナリスト兼リポーターとして活躍。本書はジャーナリストとして活躍した自分を振り返る自伝。原著は2002年に出版され、日本語版は2006年に出版された。

私は日本語版出版直後に買い、読み進めたのだが、イギリス人特有のやたらと比喩を使って何が言いたいのか分からないまわりくどい言い回し、ねちねちした嫌味ったらしい言い回しに辟易し、100ページくらいで読むのを中断した。(注:イギリス人作家(例:R.D.ウィングフィールド)の小説とアメリカ人作家(例:ドン・ウィンズロウ)の小説を読み比べると、この辺りの違いはくっきりと出る)

そして2016年、おおよそ10年ぶりに読むのを再開した。

10年前と比べると私の世界情勢に関する知識が増えたため、以前より読むのが苦痛ではなかった。少なくとも、著者がどういう戦場に行き、どの現場を取材しているのかが理解できた。

男尊女卑がまだ残っている時代に、戦場の最前線に行き取材をする著者の行動力はすごい。すごいのだが、欧米の価値観ですべてを押し切ろうとするところは共感できず(1970年代のイスラム圏で、女性も社会進出!するのが欧米では当たり前なのだからジャーナリストにもなるのだ。ジャーナリストは尊重せよ。的なことが書かれている)。

自伝というのは自分にとって都合のいいことしか書かないんだよなあ、相手にどう思われているかは書かない(気づいていないから書けない)んだよなあ、と思うのであった。

戦場ジャーナリストの自伝としては可もなく不可もなく、ごく普通の本。

ただし、著者の取材先に関する説明があまり無いので、1970年代~90年代にどこの国が戦争状態にあったのかなど、世界情勢に関する知識が無いとちっとも面白くないかもしれない。10年前の私はちっとも面白くなかった。


5点/10点満点


イギリス人作家とアメリカ人作家の違いの私なりの例

「A氏が殺された」を表現する際

◆アメリカ人作家
「A氏が殺された」

◆イギリス人作家
「A氏が謎の人物の毒牙にかかり、虹の橋を渡った」

的な比喩を用いる傾向にある。

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2017/01/05

石川直樹「最後の冒険家」感想。
伝記。2016年08月23日読了。

熱気球で太平洋を単独横断する冒険にチャレンジし、そのまま行方不明となってしまった公務員冒険家神田道夫氏の足跡を追ったノンフィクション。

執筆者の石川直樹氏は、第1回目の熱気球太平洋横断にパートナーとして同乗し、太平洋上で墜落、運よく日本郵船のコンテナ船に救助された経歴を持つ。

本書は、熱気球に取りつかれた冒険家神田道夫氏の情熱を過不足なく伝えている。

一気に読み終えた。かなり完成度の高いノンフィクションである。


8点/10点満点

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2017/01/04

塩見鮮一郎「貧民の帝都」感想。
いわゆる新書。2016年08月19日読了。

江戸時代末期から明治、大正にかけて、東京には巨大なスラム街がいくつもあった。

江戸幕府が大政奉還を行って(1868年3月12日)、徳川家に忠誠を尽くす侍彰義隊が上野寛永寺に立てこもり壊滅する5月15日頃まで、江戸は無政府状態だった。

その頃江戸を離れたのは支配層と富裕層で、残っていた者は日々どうやって暮らしていけばいいのかすら分からぬ者が多かった。新政府は古格にとらわれない統治を開始するが、置いてきぼりをくった貧困層から惨状の訴えが殺到した。

そこから新政府は貧困対策を開始するが、対策に不満を持つ者が独自の生活をはじめ、スラムと化していった。

というようなことを豊富な史料(数字)を基に綴られている。貧困かつ傷病者を救うために専門の療養施設を作ったり、その運営に奮闘する人の話が出てきたり、この時代の東京(江戸)の一面を知るには非常に優れた本である。

資料的な価値は高いと思うのだが、読む前に私が勝手に抱いていたイメージと異なっており、私的にはちょっと退屈な本だった。なんかすみません。


5点/10点満点

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2017/01/03

青木盛久「ペルーからの便り」感想。
回顧録。2016年08月13日読了。

本書は、1996年に発生した在ペルー日本大使公邸占拠事件の時に、在ペルー特命全権大使として赴任していた青木氏の回顧録である。

内容としては、前半150ページが着任してから友人に宛てた「ペルー便り」という日常を書いたエッセイ、後半50ページが在ペルー日本大使公邸占拠事件の生々しい体験記(127日間の人質生活)である。

本書は、人質として捕らえられていた127日間の後半部分に焦点を置きやすいが、前半部の方が面白い。

p19
「1985~1990年のガルシア政権のポピュリスト的なバラマキ福祉政策は、この国に極左のテロの猖獗(しょうけつ=悪い事がはびこること)と、ハイパーインフレーションをもたらし、ペルーを崩壊の縁に追い込んだ。」

アフリカや中近東の近現代史はそこそこ本を読んだけど、南米の近現代史はまだまだ勉強不足で、こんなことがあったとは知らなんだ。こういう事実がありながら、ベネズエラは左翼ポピュリストのチャベス、無能のマドゥロが政権を握り、2017年の今、国を壊滅に追い込んでいる。歴史を学ぶのは大切だ。

p42
「農業における最大の問題点は、等高線栽培(段々畑)を行わないことによる土壌の流出である。」

段々畑にはそういう効果があったのか。それは全く知らなかった。


1997年に出版された本書はもう古本でしか手に入らないけど、経済的に行き詰っていたころのペルー(今はAPEC・TPPに加盟するくらい経済はそこそこ順調。貧困層対策はともかくとして)を知ることができる良書である。


7点/10点満点

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2017/01/02

セキュリティ集団スプラウト「闇(ダーク)ウェブ」感想。
いわゆる新書。2016年08月09日読了。

インターネットはオープンである。

と思われているが、本書によるとインターネットは3つの世界に分類される。
(1) 世界中のだれもがアクセスできる自由な空間(企業Webサイトなど)
(2) 限られた一部の人だけが触れることのできる空間(Amazonやfacebookなど、IDが無ければ利用できないサイトはここに含まれる)
(3) サイバー犯罪者が跋扈(ばっこ)する闇の空間

(1)はサーフェスウェブと呼ばれ、インターネット全トラフィックの1%未満しかない
(2)はディープウェブと呼ばれ、
(3)はダークウェブと呼ぶ。

ダークウェブには、理論上はほぼ発信者を特定することができないTorを使ったものが多く、それら手口の紹介と、捜査機関との攻防などが本書の主な中身である。

ただ、ダークウェブで使われる犯罪の手口を詳しく書くわけにはいかないので、上っ面の解説で終わってしまっている。これはしょうがないとはいえ、物足りなさを感じるのもやむを得ない。

p68
「LINEや出会い系のチャットアプリが広がってきたことで、今の若い子たちはほとんどメールを使いません。おかげでスパムメール業者はどんどん衰退しています」

思わず笑ってしまった。


5点/10点満点

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2017/01/01

わたくしの読書量 月別の推移


天野才蔵 読書量月別推移 2016年12月末まで
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2016445842376476
2015863258959544
20146851055674863
2013751084898610115
2012137987756128610
20118625239825811
201031423 010135855
200996969911411321
200812710109111013981010
20078151316141515125 101111
2006988677128814711
20059686101951351079
2004433138125116677
20036568267531436
20026866576661166
20014553367105566
2000545564645643
1999562768563367
19981165645846485
199784697811839411
199610961148739455
19952647549468711
19948811556846447



黄緑は月間10冊以上、水色は最高、赤は月間1冊、黒は月間0。
記録を取り始めて22年、月間読書0冊は世界一周を終えた(2010年5月26日帰国)直後の2010年6月の一回のみ。
例年、7月、8月、10月、12月の読書量が多い傾向にある。


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わたくしの読書累計一覧表 1994年~2016年末まで。

1994-1997の間は、非小説をあまり読んでいなかったのでジャンル分けしていない。

合計1885冊/23年 (年平均82.0冊)

天野才蔵 2016年末マデの読書総括
西暦SF系冒険系歴史系純文学小説計ルポ新書旅モノ実用書非小説計合計
20160000032116116060
2015011024214286668
20140610737121526673
20131120417441798791
2012072253432710156498
20114200634612116369
20101400520131385459
200948431916132486180
2008611225441918231575119
2007128663221304121113145
200611156840231292165105
200511149438112411569107
2004131432059501742685
20032026365541381671
200217222012710026879
20011519166561008965
200014181144710091057
1999201111345504101964
199818203243802192972
1997163421273 151588
199623367066 151581
19959500362 111173
199419450569 7776

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2016年の読書総括。60冊。

あけましておめでとうございます。

2016年の読書総括を表にまとめました。(2016年中に、2016年に読んだ本の感想を全部アップできませんでした。26冊アップ漏れ)

昨年の読書総数は60冊で、ルポ、ドキュメンタリーを中心に読み、今年はついに本当に一冊も小説を読みませんでした。

天野才蔵 2016年の読書総括
 ジャンル国内海外合計数
小説SF・ファンタジー・ホラー000
小説冒険・ミステリ000
小説歴史・時代・武侠000
小説純文学・青春000
 小説小計000
その他ノンフィクション・ルポ151732
その他新書や新書的な本11011
その他紀行文・旅関連・エッセイ426
その他ビジネス・株・雑学他11011
 その他小計411960
 総合計491960


2016年の10点満点は、サイモン・シン/青木薫訳「暗号解読(下)」2016年01月16日読了と、墓田桂「難民問題」2016年11月11日読了(感想はまだアップしていません) の2冊。

サイモン・シンは、昨年も「フェルマーの最終定理」を人生ベストの一冊に挙げたくらいで、この人のノンフィクションに外れはほぼなし。素晴らしい。

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