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2017/02/21

吉田友和「ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン ベトナム1800キロ縦断旅」感想。
紀行文。2017年02月05日読了。

私の中では元祖デジタル旅行作家の吉田友和氏のベトナム旅。

私が読んできた旅行作家は、
宮脇俊三(1926生・鉄道マニア)、
藤原新也(1944生)、
椎名誠(1944生・小説家)、
沢木耕太郎(1947生)、
関野吉春(1949生・冒険家)、
鈴木正行(1949生・全世界放浪)、
下川裕治(1954生・貧乏旅行追求)、
蔵前仁一(1956生)、
堀田あきお(1956生・マンガ家)&かよ夫妻
おがわかずよし(1959生)、
田中真知(1960生)、
船尾修(1960生)、
素樹文生(生年不明)、
宮田珠己(1964生)、
高野秀行(1966生・ルポ)、
鈴木傾城(生年不明)、
小林紀晴(1968生)、
石田ゆうすけ(1969生・自転車で世界一周)、
たかのてるこ(1971生)、
◆吉田友和(1976生)、
角幡唯介(1976生・冒険ルポ)、
石井光太(1977生・ルポ、ドキュメンタリー)、

など、多くの作家さんの紀行文を読んできた。

私が読んだ作家さんの多くは既に45歳以上である。ここに挙げた作家さんの処女作は、おおむね15年より前に発行されている。分類すると以下のような感じ。

・自分の趣味をとことん追求する(宮脇俊三・石田ゆうすけ)
・バックパック旅の体験談、失敗談を面白おかしく書く(蔵前仁一・おがわかずよし・宮田珠己・たかのてるこ)
・出版ニーズに合わせ、テーマを突き詰める(下川裕治)
・旅に人生を見出す(藤原新也・沢木耕太郎・素樹文生・小林紀晴)
・探検記(関野吉春・高野秀行・角幡唯介)
・アンダーグラウンド(鈴木傾城・石井光太)
・地誌学的(田中真知・船尾修)


私が読んできた作家さんの中で、いち早くデジタルデバイス(パソコンやスマホ)を有効活用した旅をして、それを著作に反映させたのが本書の著者、吉田友和氏。他にもそういう作家さんはいると思うけど、私は知らず。

吉田さんのデジタル旅は私にかなりの影響を与えた。

本書はそんな吉田さんのベトナム旅。でもデジタルデバイスはそれほど活用するわけではなく、ベトナムの現地旅行代理店で非観光スポットを手配ツアーで組んで、自分好みの旅に行ってきた紀行エッセイ。

本書ではホーチミンの高級ホテル、マジェスティックに一泊するところが書かれている。私がベトナムに弾丸旅行(週末2泊4日)に行ったときを思い出した。私が行ったときは、マジェスティックホテルの前の道路は渡れた。トラックがバンバン通ったけど、渡れないほどじゃなかった。今は違うのかな。それとマジェスティックに行ったのなら、最上階のバーにも訪れてほしかった。

吉田さん、ちょっと方向性に迷いが出てきているのかなあ。と思う部分もあるけれど、肩の凝らない読み物としては良。吉田さんの良い意味での緩さは、思いもかけない方向から評価されているみたいで(すみません)、本書はテレビ東京でドラマ化される。
ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン~ベトナム1800キロ縦断旅
2017年2月26日(日) 16時00分~17時15分

私が紀行文をよく読んでいたのは2005‐2009年頃なので、私のアンテナが感知しなくなっただけなのかもしれないが、最近若い旅行作家さんがあまり世に出てこないように思う。

TBSのクレイジージャーニーに出ているヨシダナギ(1986生)、佐藤健寿(生年不明)、丸山ゴンザレス(1977生)などがいるが、20代で若さ爆発な人はもう出てこないのかも。出版不況だし、紀行文は旬が大切なところもあるし(2017年2月の今なら台湾が売れる!とか)、無料公開されているブログに面白い紀行文は山ほどあるし、世界中が均質化してきて文章で楽しさや面白さが伝わるところは減ってきているし(アフリカはまだ面白いと思うがニーズが少ない)。

いかん、愚痴になってしまった。


6点/10点満点

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2017/02/16

ピーター・ナヴァロ/赤根洋子訳「米中もし戦わば」感想。
戦力分析。2017年02月02日読了。

著者のピーター・ナヴァロ氏はカリフォルニア大学アーバイン校の教授で、ドナルド・トランプの大統領選選挙アドバイザーになり、現在はトランプ大統領が新設した国家通商会議の初代委員長。

本書は帯に「大統領補佐官自らが執筆! 防衛省現役組が今読んでいる本」と大々的に煽っている。

実際、巻末の解説は防衛省の主任研究官が書いている。

この手の世界各国の戦力分析に関する書籍は、小川和久・坂本衛「日本の戦争力」2006年02月03日読了。10点満点

を筆頭に、昔から何冊か読んでいる。現代の戦争は空を制して(制空権を握る)、そのあと海を制する(制海権を握る)。それが出来ればほぼ勝つ。

というのだったが、本書は違う。

数は力。それが本書。

本書に書かれている内容は、アメリカ人がこんなに日本と韓国と北朝鮮と台湾のことを知っているのか! と驚きを隠せないほど詳しい。生半可に新聞記事(というかネットに載っているニュース)ばかり読んで知った気になっている私なぞは、著者の知見の深さに驚いてしまった。(とはいえ、年に数万ドル~数十万ドルの賃金をもらっているなら、このくらいの分析をするのは当たり前なのだろうが)

本書を読んでとにかく驚いたのは、アメリカも日本も採用しているイージスシステム(平たく言えば、自国の空母や自国の国土を狙って発射されるミサイルを、イージス艦が次から次へと撃ち落とすシステム)は、イージス艦が搭載しているミサイル数を上回るミサイルを直接イージス艦に向けて撃てば、イージス艦は自分の防衛で手いっぱいになり、自艦に積載しているミサイルが尽きたら一巻の終わり。

つまり、数の多さが勝負のカギ。

これは…「防衛省現役組が今読んでいる本」という帯文句も分かる。

中国が、サルでも作れる格安兵器を大量に戦場にぶち込んだら、アメリカ軍は負ける。

ということが書かれている本である。

恐ろしい。


9点/10点満点

2017/02/17追記
佐藤優氏による本書のレビューが、現代Webに載っていましたのでリンクします。

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2017/02/08

ヨリス・ライエンダイク/田口俊樹・高山真由美訳「こうして世界は誤解する」感想。
ジャーナリズム論。2017年01月28日読了。

中東に駐在していたオランダ人ジャーナリストの著者(エジプトのカイロ大学に留学しアラビア語ができる)が、ジャーナリズムは果たして本当のことを伝えているのだろうか?

という疑問を正直に読者に投げかけた本。

原著は2006年に出版され、日本語版は2011年に出版された。

ジャーナリズムを知らないド素人だった著者は、アラビア語ができるという一点でオランダの新聞社に雇われ、中東特派員として赴任した。ついでにラジオの仕事も受ける。ラジオに音声出演するときは、オランダの放送局があらかじめ原稿をまとめているので、著者は原稿に沿って喋るだけ。特派員の存在価値は、その場所にいて、その場所から喋ること。

中東のニュースの最新情報は、現地のジャーナリストを雇って調べている通信社(日本だと共同通信が有名)が逐一情報をくれるので、特派員が直接調べなくてもいい。でも、どこかの国が戦争になり、軍司令官や防衛大臣が記者会見する際は、記者会見の場にいて、そこからリポートすること。

西側メディアはアラブ諸国が悪いというバイアスで報道する。
アラブ諸国はイスラエルが悪いというバイアスで報道する。

では、アラブ人同士の戦争は誰がどう報道する? モロッコ対アルジェリア、エジプト対シリア、スーダン対サウジアラビア、イラク対クウェート(これはクウェートが西側陣営)、シリア対ヨルダン、ヨルダン対パレスチナ、そして国内がバラバラで敵ばかりいるレバノン。

経験を積んだ著者は違う新聞社に移り、テレビの仕事もするようになった。パレスチナに行き、子供をイスラエル軍に殺された母親の取材をする。この母親はパレスチナのフィクサーを通して紹介された。フィクサーは世界中のテレビ局に「悲惨な境遇にある人物」のリストを持って売り込みに来る。西側のテレビ局は手っ取り早くインタビューを済ませたいから(パレスチナに入国するにはイスラエルの厳重な警備を通るので面倒)、フィクサーのリストを活用する。リストに掲載されている人物が喋ることは嘘ではない。ただ、フィクサーは同じリストを世界中のテレビ局に売っているので、世界中のテレビ局が同じ人物に何度も異なるインタビューをすることになる。

フセイン時代のイラクでは、独裁国家の恐ろしさを身に染みて理解した。

著者はエルサレムのパレスチナ人居住区である東エルサレムに引越しした。

イスラエルは広報が上手い。
パレスチナは広報が下手だ。

パレスチナはもうちょっと世界に通用する広報をすれば、世界中から支援がもっともっと集まるのでは?

しかし現実のパレスチナは、PLO(後のファタハ)=アラファトが独裁者として君臨しているだけだった。広報はアラファトの腹心。能力なんて関係ない。アラファトは、自分がリッチな状態を維持できればそれでいい。イスラエルと和平を結んで自分の名声が上がり、援助金がじゃぶじゃぶ入ってくるのは最高に望ましい。

(注:ファタハに愛想をつかしたガザ地区(海側)のパレスチナ住民は、ハマスというイスラエルを敵視する政党に乗り換えた。ハマスはガザ地区からファタハを追い出した。しかしファタハは依然ヨルダン川西岸(内陸部)を押さえている。パレスチナは事実上、2か国に分裂している。と言ってもアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア、日本や韓国、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、スイス、スペイン、ポルトガルなどが国として承認していないので、国ではないのだが)


「事実と見解をはっきり区別する」


現代ジャーナリズム、特にテレビの世界ではこれが守られていない。


とても面白い本だった。


8点/10点満点

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2017/02/04

デクラン・ヒル/山田敏弘訳「黒いワールドカップ」感想。
サッカー八百長ルポ。2017年01月22日読了。

プロサッカーでは八百長がまかり通っている。

中でも一番厄介なのは、試合前から勝敗がほぼ見えている実力差のある試合で、負けが濃厚なチームを買収して本命チームを確実に勝たせること。これはどこからどう見ても八百長に見えない。

八百長を仕掛けた連中は、単純な試合の勝敗ではなく「何点差で勝つか」に賭ける。従って負けが濃厚なチームに「2点差で負けろ」というような買収を行う。

ということを、シンガポール、マレーシアのプロサッカーリーグで実際に八百長を仕掛けていた組織とコンタクトを取り、さらにヨーロッパで八百長を仕掛けている組織にもコンタクトを取り取材したのが本書。

フランスの1部リーグに所属するオリンピック・マルセイユ(現在酒井宏樹が在籍している)は、1993年に八百長が発覚した。

2006年にはイタリアのセリエAで大規模な八百長が発覚し、ユベントスが2部に降格した。

本書の原著は2008年に、日本語版は2010年に出版された。

著者はイギリスのオックスフォード大学院に通いながら本書の取材を開始し、卒業後ジャーナリストになった人。

八百長はワールドカップにもおよび、グループリーグ2試合目で勝ち抜けもしくは負けが決まっているチームは、八百長の手が伸びやすいとのこと。

既に明らかになっている事件の詳細な解説と、著者が独自に八百長フィクサーと面会し取材した内容が混在している。

興味深い内容なのだが、ちょっと読みづらい。

イギリス人の著者は、八百長の結末について比喩や暗喩を多く用いている。ルポなんだからそこはズバッと明確に書いて欲しいのに暗喩を使っているので、もやもやする。


6点/10点満点


2017/04/13追記
本書の訳者は山田敏弘氏。
インド・ムンバイで起きたテロを取材した「モンスター 暗躍する次のアルカイダ」2012年04月24日読了。10点満点の著者と同一人物であるとつい先ほど知った。なるほど、翻訳もされているんですね。

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2017/02/01

ドン・ウィンズロウ/峯村利哉訳「ザ・カルテル(下)」感想。
メキシコ麻薬戦争小説。2017年01月14日読了。

小説を読んだのは、麻野涼「死の臓器」2015年08月04日読了。2点。以来である。

下巻(約580ページ)は3日で読んでしまった。

先が知りたくて止まらない。そういう小説だった。

メキシコ麻薬戦争の(たぶんかなりリアルな)今を反映しているので、殺し方は残忍だし、まさかこいつが?!と思う連中が買収されているし、こいつらが手を組むのか!という展開もある。

セータ隊という国軍のエリートが作った麻薬組織が出てくるが、これはロス・セタスという実在の麻薬カルテルをモデルにしている。(ロス・セタスでググると超絶グロ画像がいっぱい出てくる→麻薬カルテルは敵対組織に恐怖を植え付けるため、惨殺した被害者を写真にとってネットにアップしている)

リアリティがありすぎて恐ろしいのだが、先を読まずにはいられない。たぶん全世界中の読者がそう思いながら読んだだろう。

ラストは好き嫌い分かれると思うが、私は嫌い。つまらない。

でもこの小説は、ラストは重要じゃない。本書では前作「犬の力」の後、2004年から2012年までの麻薬戦争を書いている。なぜメキシコはここまでひどくなってしまったのか、その過程を書き切っていることが本書の肝だと思う。

ちなみに、前著「犬の力」と本書「ザ・カルテル」を合わせて、リドリー・スコット+ディカプリオで映画化されるそうである。

9点/10点満点

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