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2017/03/03

ダニエル・カーネマン/村井章子訳「ファストアンドスロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?」感想。
行動経済学。2017年02月15日読了。

本書の著者ダニエル・カーネマン氏は、心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞した(2002年)。氏の受賞により行動経済学という学問は一躍脚光を浴びるようになった。

本書はノーベル経済学賞を受賞した氏の研究「プロスペクト理論」を、なぜそのような研究をすることになったのか前後の研究を含め、一般読者にわかりやすく説明している本である。とはいえ、かなり難しい(例えば確率の計算で、計算式が省かれ答えだけが載っているのだが、その答えに至る式が全く見えてこない→巻末の注記に計算式が載っているのだが、それを見ても理解できない。など)。なお、「プロスペクト理論」の説明は下巻である。


以下、個人的メモ。(要約しようにも盛り込まれている内容が多すぎて…)

人間は、理路整然とした行動をとっているようでも、実はそうではない。


というのを様々な実験を経て立証したのが本書。


著者は本書で一貫して人間の脳の働きを二つのシステムとして表現している。(p41)

◆システム1:自動的に高速で働く。努力は全く不要か、必要であってもわずかである。また、自分の方からコントロールしている感覚は一切ない。

◆システム2:複雑な計算など頭を使わなければできない(=システム1ではできない)困難な知的活動を行う。基本的に怠け者で、システム1が導き出した判断に影響される。

音が聞こえた方角を感知する、2+2を計算する、簡単な文章を読む、空いた道を運転する、などはシステム1の仕事。

意外な音を聞いたときそれが何の音なのか記憶をたどる、17*24を計算する、複雑な論旨の妥当性を確認する、狭いスペースに注射する、などはシステム2の仕事。システム2を稼働させるには努力が必要である。努力すると脳が疲れる。


「SO□P」という単語の□に入る言葉を当てなさい。食べ物が目の前にある時や「食べる」という言葉を聞いた後ならSOUP(スープ)という単語を思い付く。風呂に入っている時や「洗う」という言葉を聞いた後ならSOAP(石鹸)を言う言葉を思い付く。

「食べる」はSOUPの、「洗う」はSOAPのプライム(選考刺激)といい、これらの現象をプライミング効果という。

プライミング効果を使えば、人々の思考を誘導できる。一例として、2000年にアリゾナ州で学校補助金の増額に関する投票では、学校が投票所だった場合、他の投票所より賛成票が多かった。学校補助金の増額という題に対し、学校という投票所がプライムになった。


「ニューヨークはアメリカの大都市である」「月は地球の周りをまわっている」「ニワトリの足は4本である」
最初の2つはすぐに正しいと理解できる。これはシステム1の働き。最後の文章はちょっとだけ悩む。システム1はたぶん正しいと思われるが念のため確認が必要であるとしてシステム2を呼び出す。システム2はほんのちょっと悩んだ後、正しいと判断を下す。これが「ニワトリの足は3本である」ならば、システム1が即座に間違いと判断を下せるが、4本の場合はシステム1は即座に判断を下せない。

見覚え、聞き覚えといった感覚は、単純だが強力な「過去性」を帯びていて、人間の脳は慣れ親しんだものが好きとのこと。

おしゃれなレストランで、隣の席の人がスープを飲んで不味そうな顔をした。こういう事態に遭遇したら「えっ?」と驚くが、別の席の客も不味そうな顔をしたら、2度目はそれほど驚かない。既に見覚えのある光景だから。


システム1は騙されやすく、信じたがるバイアスを備えている。疑ってかかり、信じないと判断するのはシステム2の仕事だが、システム2はときに忙しく、大体は怠けている。システム2は自分の信念に一致しそうなデータばかりを探す。

大統領の政治手腕が好きな人は、大統領の養子も声も好きである可能性が高い。これをハロー効果(後光効果)という。

パーティで気さくで感じの良い女性と知り合った。後日、募金を集める際、なぜかこの女性のことを思い出した。気さくで感じの良い女性ということしか知らないのに、なぜかこの女性のことを思い出した。これもハロー効果。

アラン:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
ベン:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい

どちらの人物に好感が持てるか。十中八九、アランに好感を持つ。挙げられている性格は全く同じなのに、語順が違うだけでこうも印象が変わる。

ということを突き詰めていくと、「自分の見たものがすべてだ」(p155)ということになる。


更に突き詰めていくと、これらは数字にすることができる。アンカリング率という。簡単な実験として、10人でやっているプロジェクトがあるとして、ミーティングで10人に自分のプロジェクトへの貢献度を%で書かかせ、一斉に提示させる。まず間違いなく貢献度は100%を上回る。


本書ではヒューリスティックという言葉が(最初から)出てくる。「近道の解決法」という意味になる概念だそうだ。

寡黙で、整理整頓が大好きで、ルーチンワークを苦にしない。

この人の職業は図書館司書でしょうか、それとも農家でしょうか。先入観で図書館司書と答えてしまいそうだが、実際は農家の方が就業人口が多いので、農家である可能性の方が高い。しかし先入観が働く。こういうのをヒューリスティックという。


軍の飛行機の訓練教官は、「素晴らしい飛行をしたので褒めると、次は必ずダメになる」「なので褒めない。失敗したときにめちゃくちゃ怒鳴る」という。

褒めると下手になり、𠮟るとうまくなるというのは間違いである。共感が観察したのは「平均への回帰」という現象である。

褒められるほ上手くできたのは、たまたまその時が良かっただけで、普段はもっと下手。だから次は下手になる。(下手なのが平均)

叱られるほど下手だったのは、たまたまその時が失敗しただけで、普段はもっと上手。だから次は上手になる。(上手なのが平均)


ということで非常に面白かった。下巻の感想は明日。


9点/10点満点

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