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2017/03/18

岩崎育夫「入門 東南アジア近現代史」感想。
歴史。2017年03月04日読了。

著者の本は岩崎育夫「アジアの国家史」2015年03月05日読了。10点満点 を読んだことがある。素晴らしい本だった。

本書はタイトルの通り、東南アジア史に関する入門書。ASEANに加盟している

インドネシア
シンガポール
タイ
フィリピン
マレーシア
ブルネイ
ベトナム
ミャンマー
ラオス
カンボジア

の近現代史を簡潔にまとめた本である。本書も素晴らしい。

16世紀頃にヨーロッパ諸国が進出する手前の時代から始まり、

最初は貿易だったのがヨーロッパ諸国(ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス、フランス)による侵略、植民地化へと進み、

ヨーロッパにとってかわって植民地化した大日本帝国時代、

第二次世界大戦を終え脱植民地となる1945-1960年代の各国の独立、

そして現在に至る発展の経緯が書かれている。コンパクトにまとまっていて、かつ概ね時系列に書かれているので、調べ物をする際に非常に役に立ちそうである。

私はインドネシア史やシンガポール史、東南アジア全体の歴史については何冊か本を読んだが、本書には知らないことも多く書かれていたので、とても有益であった。

以下、私がへえー、と思ったところ。

p39
マレーシアは現在も立憲君主制の下、13州のうち9州でスルタン(イスラムの王様)体制を維持している。

p52
1500年代半ば、スペインは中国との貿易を望んだ。その理由は当時、世界の経済大国1位と2位はインドと中国だったから。

p55
1700年代半ば、インドの村でイギリス東インド会社VSフランス・ベンガル豪族連合軍の戦いがあり、イギリスが勝利した。プラッシーの戦いという。

→フランスもインドに進出していたのか。

p81
1800年代終盤~1900年代初頭、フランスの植民地化にあったベトナムで、反フランス運動を起こしていた活動家を日本に留学させた。200人を超えるベトナム人が日本にやって来た。しかし、日仏条約をタテにフランスがこの留学生受け入れに反発、結局日本は留学生をベトナムに追い返した。そのため、反フランス運動の主導者ファン・ボイ・チャウは、日本もヨーロッパと同じ植民地支配者であるとみなすようになった。

p93
日本がアジア各国を植民地化した1942年に、大日本帝国は3つの事件を起こしている。
シンガポールの華僑虐殺
フィリピンでの戦争捕虜強制連行事件
・タイとミャンマーを結ぶ泰緬鉄道を建設するための労働者強制連行

p114
第二次世界大戦終了後、東南アジア各国が独立するのに2つのパターンがあった。
・もう植民地の時代じゃないと独立を容認するアメリカとイギリス(フィリピン、ミャンマー、マレーシア、シンガポール)
・植民地復活を望んだフランス、オランダ、ポルトガル(ベトナム、インドネシア、東ティモール)

p129
マレーシアの首相は、有名なマハティール以外は全員王族出身。

p132
インドネシアはアチェ独立紛争などがあり、ユドヨノ政権時代に各州の自治権を拡大、28州だったのが現在では41州まで増えている。

p139
スカルノ時代のインドネシアは、マレーシアと断交したことがある。

p143
1978年、ベトナムはカンボジアに進行してポル・ポト(親中国)を排除。
それを受け1979年、中国はベトナムに侵攻(中越戦争)(ベトナムの勝ち)
ベトナムは国内にいる華人を弾圧、財産没収の上、山奥に引っ越すか海外に去れと命令。多くが難民となり、そのボートピープルは日本にも大勢やって来た。

p159
シンガポールの首相リー・クアンユーは独裁者で、現在も新聞などのメディアは検閲を受けている。(ちなみに本書では触れられていないが、シンガポールでは政治集会も禁止されている)


などなど。とても面白かった。


9点/10点満点

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2017/03/13

本川達雄「ウニはすごい バッタもすごい」感想。
生物学。2017年02月28日読了。

生物学研究で東工大教授(現在は名誉教授)の著者による、生物学入門。

刺胞動物門(サンゴ)
節足動物門(昆虫)
軟体動物門(貝)
棘皮動物門(ウニ、ヒトデ、ナマコ)
脊索動物門(ホヤ)
脊椎動物門(背骨があるすべての動物)
についてイラスト付きで解説。

私は工業高等専門学校出身なのだが、生物の授業が無かった。なので、生物学についての知識は本当に少ない。

◆刺胞動物門
・花虫綱(イソギンチャク、サンゴ、5300種)
・鉢虫綱(クラゲ、200種)
・ヒドロ虫綱(ヒドラ、カツオノエボシ、3400種)
・箱虫綱(ハブクラゲ、20種)

→カツオノエボシってクラゲじゃないのか。

◆節足動物門
・三葉虫亜門(絶滅)
・甲殻亜門(エビ、カニ、フジツボ、5万種)
・六脚亜門(昆虫、100万種)
・多足亜門(ムカデ、ヤスデ)
・鋏角亜門(カブトガニ、クモ、サソリ)

→カブトガニってクモの仲間なのか。

◆軟体動物門
・無板綱(殻をもたない)
・多板綱(殻が8枚)
・貝殻亜門
 ・単板綱(殻が1枚)
 ・腹足綱(殻が立体的な螺旋。サザエなどの巻貝。貝の3/4を占める)
 ・二枚貝綱(殻が2枚。アサリ、ハマグリ)
 ・掘足綱(殻が象牙のように先細り。ツノガイ)
 ・頭足綱(殻が平面で螺旋→オウムガイ、殻が退化→イカ、タコ)

→イカやタコって貝の仲間なのか。

◆棘皮動物門
・ウミユリ綱(ウミユリ、ウミシダ)
・ヒトデ綱
・クモヒトデ綱(クモヒトデ、テヅルモヅル)
・ウニ綱
・ナマコ綱

→クモヒトデってのはヒトデとは異なるのか。
→ヒトデとウニとナマコが同じ括りになるとは知らなかった。
→棘皮づ物には脳がない(p217)のか。それはすごいな。

◆脊索動物門
・頭索動物亜門(ナメクジウオ、30種)
・尾索動物亜門(ホヤ、3000種)
・脊椎動物亜門


p289
トカゲのような歩き方をする動物は、歩くときと呼吸をするときどちらも胸の筋肉を使うが、筋肉の使い方が異なるので、歩くことと呼吸を同時にできないとのこと。

なるほどなあ。


私の知らないことが多く書かれていたので、総じて面白く読めたのだが、300ページの本にたくさんの生物に関する情報をぎゅぎゅっと詰め込んだせいか、細かすぎる(と私が感じる)部分と、大ざっぱすぎる(と私が感じる)部分が同居していた。


6点/10点満点

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2017/03/04

ダニエル・カーネマン/村井章子訳「ファストアンドスロー(下) あなたの意思はどのように決まるか?」感想。
行動経済学。2017年02月25日読了。

下巻も非常に面白かった。読むのに時間がかかったが、とても有意義な時間を過ごせた。

この本(上下巻)は内容が詰まっている。詰まっているというのは、余計なことがあまり書かれていなく、斜め読みをすることができない状態のことである。一言一句、かみしめるように読み進めないと、次に書かれていることが理解できなくなるのである。

翻訳に関しては、無理に日本語化した部分が悪目立ちしたが、これだけの内容を伝えたという点では良い翻訳と言える。


下巻のポイント(ほぼ私的メモです。分かりづらくてすみません)

p53
アメリカでスタートアップ企業の存続率は35%である。しかし、スタートアップ(起業)する人のほとんどは、自分が成功すると信じ、失敗する側(65%である)になると思っていない。

p67
所属している会社で、ある新規事業を始めるとする。事業を進めたがる人たちは概ね自信過剰に陥っているので、そういう人たちに「いまが1年後だと想像してください。私たちは、先ほど決めた計画を実行し、大失敗しました。なぜ失敗したのか、簡潔に答えてください」と問うと、新規事業への楽観は消える。

これを「死亡前死因分析」という。


これから後は、ギャンブルをベースにした問いが増える。これこそがノーベル経済学賞を獲ったプロスペクト理論。

問1:あなたはどちらを選びますか
・確実に900ドル貰える。
・90%の確率で1000ドル貰える。

問2:あなたはどちらを選びますか
・確実に900ドル失う。
・90%の確率で1000ドル失う。

たいていの人は、問1では確実にもらえる方を、問2では損をしない可能性が少しでもある方を選ぶ。(期待値の考え方なら、どちらの選択肢も同じである。問1なら+900ドル、問2なら-900ドル)

これは問題の内容をいろいろ変えても同じ結果になり、得をするときは確実な方を、損をするときは少しでも損する額が小さくなる方を選ぶ。


これは株式の売買にも通じ、

あなたは資産をすべて株で運用しています。突然1万ドルが必要になりました。現在儲かっている株を売りますか(利益確定)、それとも損している株を売りますか(損切り)?

多くの人が利益確定に走る。

人間の心理的に、損を確定させることは「自分の失敗を認めることになるので苦痛」に対し、利益確定は「自分の勘が正しかった確かめる作業なので精神的に楽」ということである。


p147
100万ドル貰えるかもしれない確率について、5%ずつ上昇するときの気分の変化
A) 0%から5%に上がる
B) 5%から10%に上がる
C) 60%から65%に上がる
D) 95%から100%に上がる

このうち最も嬉しいのはAであり、次に嬉しいのはDである。

Aは簡単に言うと宝くじ。当たる確率は低いけど、買わなければ絶対に当たらない。買えば買うほど当籤確率は上がる

Dの例は遺産相続。普通に考えたら遺産を全額相続できる立場にいるが、万が一、自分の知らない親族がいて、遺産の相続権を要求してきたら困る。そんな時、あなたの遺産相続権を満額の90%で買い取りますよ!と言ってくる弁護士が居たら、弁護士に権利を売る可能性が高い。


というようなことが満載で書かれている本書は、とにかく面白かった。


9点/10点満点

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2017/03/03

ダニエル・カーネマン/村井章子訳「ファストアンドスロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?」感想。
行動経済学。2017年02月15日読了。

本書の著者ダニエル・カーネマン氏は、心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞した(2002年)。氏の受賞により行動経済学という学問は一躍脚光を浴びるようになった。

本書はノーベル経済学賞を受賞した氏の研究「プロスペクト理論」を、なぜそのような研究をすることになったのか前後の研究を含め、一般読者にわかりやすく説明している本である。とはいえ、かなり難しい(例えば確率の計算で、計算式が省かれ答えだけが載っているのだが、その答えに至る式が全く見えてこない→巻末の注記に計算式が載っているのだが、それを見ても理解できない。など)。なお、「プロスペクト理論」の説明は下巻である。


以下、個人的メモ。(要約しようにも盛り込まれている内容が多すぎて…)

人間は、理路整然とした行動をとっているようでも、実はそうではない。


というのを様々な実験を経て立証したのが本書。


著者は本書で一貫して人間の脳の働きを二つのシステムとして表現している。(p41)

◆システム1:自動的に高速で働く。努力は全く不要か、必要であってもわずかである。また、自分の方からコントロールしている感覚は一切ない。

◆システム2:複雑な計算など頭を使わなければできない(=システム1ではできない)困難な知的活動を行う。基本的に怠け者で、システム1が導き出した判断に影響される。

音が聞こえた方角を感知する、2+2を計算する、簡単な文章を読む、空いた道を運転する、などはシステム1の仕事。

意外な音を聞いたときそれが何の音なのか記憶をたどる、17*24を計算する、複雑な論旨の妥当性を確認する、狭いスペースに注射する、などはシステム2の仕事。システム2を稼働させるには努力が必要である。努力すると脳が疲れる。


「SO□P」という単語の□に入る言葉を当てなさい。食べ物が目の前にある時や「食べる」という言葉を聞いた後ならSOUP(スープ)という単語を思い付く。風呂に入っている時や「洗う」という言葉を聞いた後ならSOAP(石鹸)を言う言葉を思い付く。

「食べる」はSOUPの、「洗う」はSOAPのプライム(選考刺激)といい、これらの現象をプライミング効果という。

プライミング効果を使えば、人々の思考を誘導できる。一例として、2000年にアリゾナ州で学校補助金の増額に関する投票では、学校が投票所だった場合、他の投票所より賛成票が多かった。学校補助金の増額という題に対し、学校という投票所がプライムになった。


「ニューヨークはアメリカの大都市である」「月は地球の周りをまわっている」「ニワトリの足は4本である」
最初の2つはすぐに正しいと理解できる。これはシステム1の働き。最後の文章はちょっとだけ悩む。システム1はたぶん正しいと思われるが念のため確認が必要であるとしてシステム2を呼び出す。システム2はほんのちょっと悩んだ後、正しいと判断を下す。これが「ニワトリの足は3本である」ならば、システム1が即座に間違いと判断を下せるが、4本の場合はシステム1は即座に判断を下せない。

見覚え、聞き覚えといった感覚は、単純だが強力な「過去性」を帯びていて、人間の脳は慣れ親しんだものが好きとのこと。

おしゃれなレストランで、隣の席の人がスープを飲んで不味そうな顔をした。こういう事態に遭遇したら「えっ?」と驚くが、別の席の客も不味そうな顔をしたら、2度目はそれほど驚かない。既に見覚えのある光景だから。


システム1は騙されやすく、信じたがるバイアスを備えている。疑ってかかり、信じないと判断するのはシステム2の仕事だが、システム2はときに忙しく、大体は怠けている。システム2は自分の信念に一致しそうなデータばかりを探す。

大統領の政治手腕が好きな人は、大統領の養子も声も好きである可能性が高い。これをハロー効果(後光効果)という。

パーティで気さくで感じの良い女性と知り合った。後日、募金を集める際、なぜかこの女性のことを思い出した。気さくで感じの良い女性ということしか知らないのに、なぜかこの女性のことを思い出した。これもハロー効果。

アラン:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
ベン:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい

どちらの人物に好感が持てるか。十中八九、アランに好感を持つ。挙げられている性格は全く同じなのに、語順が違うだけでこうも印象が変わる。

ということを突き詰めていくと、「自分の見たものがすべてだ」(p155)ということになる。


更に突き詰めていくと、これらは数字にすることができる。アンカリング率という。簡単な実験として、10人でやっているプロジェクトがあるとして、ミーティングで10人に自分のプロジェクトへの貢献度を%で書かかせ、一斉に提示させる。まず間違いなく貢献度は100%を上回る。


本書ではヒューリスティックという言葉が(最初から)出てくる。「近道の解決法」という意味になる概念だそうだ。

寡黙で、整理整頓が大好きで、ルーチンワークを苦にしない。

この人の職業は図書館司書でしょうか、それとも農家でしょうか。先入観で図書館司書と答えてしまいそうだが、実際は農家の方が就業人口が多いので、農家である可能性の方が高い。しかし先入観が働く。こういうのをヒューリスティックという。


軍の飛行機の訓練教官は、「素晴らしい飛行をしたので褒めると、次は必ずダメになる」「なので褒めない。失敗したときにめちゃくちゃ怒鳴る」という。

褒めると下手になり、𠮟るとうまくなるというのは間違いである。共感が観察したのは「平均への回帰」という現象である。

褒められるほ上手くできたのは、たまたまその時が良かっただけで、普段はもっと下手。だから次は下手になる。(下手なのが平均)

叱られるほど下手だったのは、たまたまその時が失敗しただけで、普段はもっと上手。だから次は上手になる。(上手なのが平均)


ということで非常に面白かった。下巻の感想は明日。


9点/10点満点

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