沖大幹「水危機 ほんとうの話」感想。
資源論。2017年07月09日読了。
著者は水文学(すいもんがく)を専門としている東大教授。
その著者が、タイトル通り「水危機」について、専門家としての知見を十分に披露した一冊。水文学への理解の低さをネタに、やや自虐的に「水危機」について解説するスタイルは、文章の上手さと相まって私のツボにはまった。
「水危機」に関するデータは信頼するに足るものであり、そこはさすが専門学者というしかない。
地球上にある「水の量」は、水分子が宇宙へ持ち運ばれない限り、不変である。という話を7年前に法政大学(通信教育のスクーリング授業)で聞いた時、かなり驚いた。近未来、人類が月や火星に定住するようになったら、水を運ぶかもしれないとのこと。
以下、本書の抜粋。
(p20)
平地で草原が維持される目安の降水量は年間200mm(エジプトのカイロは35mm、イラクのバグダッドは69mm。どちらも草原が維持できない)
(p27-33)
地球上の水のうち、塩水は97.5%。
淡水が2.5%と書く場合もあるが、それは確かにそうなのだがあっているようで間違っている。
2.5%のうち1.69%は深い地下水で、一度利用すると元の場所には戻らない水(化石水というらしい)。
などということを累積すると、人類が利用できる「循環した淡水」は地球上の水の0.01%
「循環した」というのが重要で、循環(淡水を利用する→排水を川に流す→海に流れる→蒸発して雲になる→雨となって地表に降る→利用できる淡水になる)している限り、この水は利用できる。
(p49)
人間の体は一日にどのくらいの水を必要としているのか?→2~3リットル。
→そこではなく、私が知らなくて驚いたのは、人間はでんぷんや脂肪、たんぱく質を分解する際、代謝水という水を生産している。成人が1日2000kcalのエネルギーを摂取すると、約300gの水(代謝水)を生産する。
水分を全然とっていないのに小便が出るのはこういうことだったのか!
(p84)
イスラエルとシリアがゴラン高原という水源をめぐってドンパチ(戦争)したが、1週間戦争する資金があれば、海水淡水化施設を建設できる。
→海水淡水化施設って意外と安い? まあその後の維持管理費(人件費含む)を考えるとそこまで単純じゃないと思うけど。
ここまでで本書の1/4。
本書は良い。
とても良い。
読むべし。
9点/10点満点
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