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2017/09/05

白戸圭一「ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織」感想。
ルポ。2017年07月24日読了。

著者の白戸圭一氏は、元毎日新聞外信部記者、ヨハネスブルク特派員(2004-2008年)。現在は三井物産戦略研究所欧露・中東・アフリカ室長、京都大学大学院客員准教授。

日本のアフリカエキスパートの一人。単独著書は本書で3冊目。氏の処女作は、滅多に本を再読しない私が、珍しく2回読んだ。

白戸圭一「ルポ資源大陸アフリカ」2009年09月21日読了。9点

白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ」再読。2010年07月28日再読了。やっぱり9点

白戸圭一「日本人のためのアフリカ入門」2011年04月20日読了。8点

本書は、アフリカエキスパートの白戸氏が、ナイジェリアを中心に暴虐の限りを尽くしているテロ組織「ボコ・ハラム」について、現在知りえる情報を中心に書いた本。

世界中のマスコミが追いかけているISIS(イスラム国)と違って、アフリカの僻地を中心に暴れまわっているボコ・ハラムは情報が少ない。

(p14)
2014年の1年間にボコ・ハラムが殺害した民間人は6644人。
同じ年、ISISが殺害した民間人は6073人。
ボコ・ハラムは世界で一番民間人を殺害しているテロ組織。


このようなテロ組織がなぜ生まれたのか。それを、ナイジェリアという国家がどのように作られていったのか(ナイジェリアは石油の採れる南部にキリスト教徒が多く、貧しい北部農村地帯にイスラム教徒が多い)、アフリカ全体のテロ組織の概略、国ができてから7回も軍事クーデターが起きている不安定な政治、石油に翻弄されるナイジェリアの経済、そして石油利権に絡めない人たちとの経済格差、弱い警察力(暴力がはびこる)、そのような要因を多面的に分析し、ボコ・ハラムの正体に迫っている。

(ちょっとうろ覚えだが)端的にいうと、経済発展せず犯罪も多い北部に住むイスラム教徒が、警察があてにならないので、刑法ではなくイスラムに基づく刑法典(シャリーア)の導入を考えだし、一部の州では(州知事が)それを実行した。シャリーア刑法典を厳格に実施する州と、ゆるく実施する州があり、ゆるく実施していた州では厳格なシャリーア適用を求めるイスラム教徒が組織化された。しかし北部には数は少ないもののキリスト教徒も住んでおり、暴力を含む宗教対立も発生した。シャリーアを厳格に適用しろと要求する組織の一つが、ボコ・ハラムの前身である。(この辺りは第3章)

ボコ・ハラムの前身組織は過激派と穏健派に分裂し、過激派はいろいろなことを試みるが知名度がないので資金が集まらない。なのでアフリカ各国のテロ組織と連携し、アルカイーダに忠誠を誓い、資金が回ってくるようになった。(後にISISに忠誠を誓う)

ナイジェリア政府は、ボコ・ハラムを抑え込むのにナイジェリア軍を投入した。ところがボコ・ハラム対策チームのトップが兵器調達に絡んで20億ドル(!)の不正蓄財をしていて逮捕されたりして、なかなか思うように対策が進まない。

ISISの劣勢などもあり、ボコ・ハラムは金回りが悪くなってきたので、単純に民間人を襲って金を奪う、誘拐して金をせしめる、など、テロ組織というよりただの武装暴力団になってしまった。ボコ・ハラムはどこに向かうのであろうか。

的なことが書かれている。

ボコ・ハラムそのものというより、アフリカのテロ組織について広範囲に書かれた本である。非常に良い。


ただ、私思うに、本書はサブタイトルが悪い。本書はボコ・ハラムのことを中心に書いている本ではあるが、ボコ・ハラムのことは半分くらいで、ナイジェリア全体のことやアフリカのテロ組織についての記述が半分を占める。「イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織」というサブタイトルではもったいない。有益な情報がたくさん書かれているのだから、もっと異なったサブタイトルにすべきだった。


8点(サブタイトル不満・内容は9点)/10点満点

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