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2018/07/11

工藤律子「マフィア国家 メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々」感想。
ルポ。2018年04月22日読了。

メキシコ麻薬戦争

いったい、いつからメキシコはこんなに危険な国になってしまったのか。

1970年代、80年代はコロンビアが麻薬の供給減だった。1990年代に入り、アメリカの麻薬取締局(DEA)が、人員と予算を大幅に増やし、コロンビアの麻薬カルテルをぶっ潰した。

しかし(アメリカ国内の)麻薬の需要は減らない。

メキシコは、アメリカ・カナダ・メキシコの3か国間自由貿易協定(NAFTA)のおかげで、アメリカへの輸出が簡単である。
そこでメキシコ人が、コロンビア人の麻薬利権を全部分捕ることにした。
気が付いた時には、アメリカに流入する麻薬の流入元は全部メキシコになっていた。
麻薬カルテル同士の抗争などでメキシコの治安が悪くなっていった。
そこでメキシコの大統領が、警察だけではなく、軍を投入して麻薬カルテルの撲滅を宣言した。

麻薬カルテルVSメキシコ軍。これがメキシコ麻薬戦争である。

しかしメキシコ麻薬戦争が一向に終息しないのは、麻薬カルテルのうち最凶最悪なロス・セタスはメキシコ陸軍特殊部隊の退役軍人が組織した武闘軍団で、並みのメキシコ軍では歯が立たない。軍人だって殺されたくないから、敵前逃亡するし、敵に捕まったら麻薬カルテル側に簡単に寝返る。


というようなメキシコで、麻薬カルテルが蔓延っている地域を中心に、麻薬カルテルと戦っている市井の人々を追ったルポが本書。


この行動力には感嘆するしかない。以下、わらわらと気になった部分を抜き出す。


アメリカのエル・パソと、隣町のメキシコのシウダーフアレスの間には、両国間にまたがって家族が住んでいる場合があり、そういう人たち向けに10年間で160ドルの往来自由ビザがある。但し、もともとこのビザは両国で所得がきちんとあり、悪さをしない人向けだったが、そこに目を付けた麻薬カルテルは、このビザを持つ良家のお坊ちゃんを麻薬の運び屋として利用した。

→ドン・ウィンズロウのメキシコ麻薬戦争を扱った小説「犬の力」で、なぜ金持ちのお坊ちゃんが出てくるのか、その理由が分かった。


カルデロン・メキシコ大統領が麻薬戦争を始め、実際の話としてこの作戦はそこそこ効果はあり、麻薬カルテルは資金繰りに行き詰まるようになった。その結果、麻薬カルテルは麻薬商売だけでは売り上げを確保できなくなり、それが故に外国人を誘拐したり、メキシコの一般人に対してみかじめ料を求めるようになり、メキシコの普通の街の治安がどんどんどんどん悪くなっていった。


1968年10月2日はメキシコにとって重要な日である。学生の大量虐殺が起きた日である。


メキシコ麻薬戦争における現在の最大の問題点は、麻薬カルテルの一員と断定され、警察や軍に殺された人物の子供が、何のケアもなく放置されていることである、と著者はいう。

こういうケースで殺されるのは末端の構成員であり、
もしくは麻薬とは無関係の人物が殺されるケースも多々あり、
基本的には貧困家庭である。

貧困家庭の家長(父親)が、軍に目を付けられ、麻薬とのかかわりを疑われ、結果殺される。

母親が残っていればまだましだが、両親とも軍(または麻薬カルテル)に殺され残された子供は、生き延びるために麻薬カルテルの使いっぱにならざるを得ない。

メキシコ軍は誰のために麻薬戦争をしているのか。

メキシコ市民のためではなく、アメリカからの支援金目当てなのではないか。そしてその支援金は政治家の懐に入るのかもしれない。


素晴らしい本です。


9点/10点満点

ロス・セタスの悪行は、ググれば簡単に画像が見つけられる。

メキシコの新聞は平気でグロ画像を載せるので、スペイン語で検索したらめっちゃグロイよ。

検索は個人の責任で。

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