中川毅「人類と気候の10万年史」感想。
ブルーバックス。2018年05月31日読了。
◆内容紹介(Amazonより引用)
人類は、たいへんな時代を生きてきた! 驚きの地球気候史
福井県にある風光明媚な三方五湖のひとつ、水月湖に堆積する「年縞」。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録した地層で、現在、年代測定の世界標準となっている。その水月湖の年縞が明らかにしたのが、現代の温暖化を遥かにしのぐ「激変する気候」だった。
人類は誕生してから20万年、そのほとんどを現代とはまるで似ていない、気候激変の時代を生き延びてきたのだった。過去の精密な記録から気候変動のメカニズムに迫り、人類史のスケールで現代を見つめなおします。
「年縞」とは?
年縞とは、堆積物が地層のように積み重なり縞模様を成しているもので、樹木の年輪に相当します。2012年、福井県にある風光明媚は三方五湖のひとつ「水月湖」の年縞が、世界の年代測定の基準=「標準時計」になりました。世界中の研究が、その年代特定で福井県水月湖の「年縞」を参照するようになったのです。この快挙を実現したプロジェクトを率いたのが著者です。
◆感想
超大当たりのブルーバックス。
水月湖は特殊な地形にあり、
・流れ込む大きな河川のない地形(湖水が動かない)
・山々に囲まれた地形(風の影響が少なく、湖水が混ざらない)
・生物のいない湖底(湖水が混ざらないので、湖底に酸素がなく、生物がいない)
・埋まらない湖(断層の影響で、湖自体がゆっくり沈下している)
(福井県里山里海湖研究所のWebサイトから引用)
このような地形は世界的にも稀有とのこと。
水月湖(すいげつこ)に堆積した年縞は45mの厚さがあり、7万年もの時間をカバーしている。年縞の解析内容を踏まえつつ、10万年にわたる気候について解説したのが本書。
(p30)
地球の寒冷化は暴走する。地表が雪や氷で覆われ白くなると、太陽光を反射してしまい、温暖化に転ずるエネルギーが得られない。寒冷化から温暖化に転ずるのは、火山活動によるものと考えられている。
(p45)
グリーンランドは氷に覆われていて、島の中央では3kmに達する。その氷をボーリングして得られるのが、過去6万年分の気象データ。水月湖はそれを上回っている。
(p87)
水は、4℃のとき、一番重くなる。氷期の時、水月湖は4℃くらいであったため、当時水月湖の底にたまった水は重く、湖面の水温が変化しても水が混ざらず、湖底に酸素が供給されなくなった。
(p105)
C14(放射性炭素14)を使った年代測定法は、5万年前までしか測れない。
C14の半減期は5730年。
5万年経つと、C14がほぼ無くなってしまうから。
(C14は、普通の炭素原子12兆個につき12個混ざっている(0.00000000012%)。もともと少ないC14は半減期ごとに窒素14(普通の窒素)に各種が変わる。5730年後に1/2、11460年後に1/4、17190年後に1/8、22920年後に1/16、28650年後に1/32、34380年後に1/64、40110年後に1/128、45840年後に1/256に減る)
(p124)
花粉の外膜は極めて頑丈で、強アルカリやフッ酸でも溶けない。なので、年縞の中に花粉が残っている。
(p179)
ベネズエラのカリアコ海盆も、そこが酸欠になっていて、水月湖と同じように重要な年縞がみられる。
などが印象に残った。良書。
9点/10点満点
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