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2018/09/24

デイビッド・アイマー/近藤隆文訳「辺境中国 新疆、チベット、雲南、東北部を行く」感想。
ルポ。2018年07月07日読了。

著者は、イギリスの新聞「サンデー・テレグラフ」の北京特派員(2007-2012年)。
1988年に初めて中国を訪れてから、ほぼすべての省を踏破。
その後タイのバンコクに居を移し、「サンデー・テレグラフ」東南アジア特派員。

本書で著者が訪れた場所(漏れあるやもしれず)


・はじめに
ウルムチ、カシュガル、

・第1部 新疆
ウルムチ、イーニン、コルガス、アルマトイ(カザフスタン)、ビシュケク(キルギス)、ナリン(キルギス)、タシュラバット(キルギス)、カシュガル、タシュクルガン、クンジェラブ峠、ヤルカンド、ホータン、ニヤ、チャルチャン、ミーラン、花土溝

・第2部 チベット
リタン、ツァワロン、成都、ラサ、シガツェ、パヤン、タルチェン、カイラス山、ジャンム、カトマンズ(ネパール)

・第3部 雲南
景洪、関累、チエンセーン(タイ)、タチレク(ミャンマー)、チャイントン(ミャンマー)、チエンコーン(タイ)、ファイサーイ(ラオス)、ムアンシン(ラオス)、瀾滄(ランツァン)、孟連、モンアー、パンサンミャンマー、瑞麗

・第4部 東北部
丹東、延吉、ハルビン、漠河、塔河、黒河、ブラゴヴェシチェンスク(ロシア)


詳細は明日(9/25)追記します。9/26に追記します

そのうち書きます。


8点/10点満点

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2018/09/23

トム・クラインズ/熊谷玲美訳「太陽を創った少年」感想。
人物伝。2018年06月23日読了。

◆内容(Amazonから引用)
「うん、核融合炉を創ったよ! 」。若干14歳の核物理学者はどうして生まれたのか?

9歳でロケットを実作した、アメリカ・アーカンソー州の早熟の天才、
テイラー・ウィルソンは11歳の若さでさらなる野心に燃えていた。
祖母がくれた本に刺激を受け、核融合炉を自宅で創ろうと決意したのだ。
危険と隣り合わせのそんな作業を、子どもがやってのけられるはずがないという大人の常識をしり目に、
彼には自分がやれるという自信と勝算、そして適切な知識があった。

「ギフテッド」といわれる天才児にもさすがにムリかと思えることが、なぜできたのか。
息子を見守る両親の苦労、大学教員をはじめとする教育関係者の奔走。
彼のそばで直接取材したジャーナリストが語るサイエンス・ノンフィクション。


◆感想
テイラー・ウィルソン氏は、2018年現在23歳である。

彼が14歳で核融合炉を作るに至った経緯が、本書には詳しく書かれている。

類まれなる才能を持った子供=ギフテッドと呼ばれる=が、その才能を開花させるためには、子供自身の努力に任せるのではなく、周囲の大人たちの適切な助力が必要である。

あまりにも頭が良すぎたテイラー少年には、コカ・コーラのボトラー会社を経営している父親(そこそこ裕福)はテイラー少年の投棄された放射性物質探しに付き合い、核融合を目指す物理学オタクが集まったオンラインフォーラムの発見と参加、実験器具を買うために協力してくれた薬剤師(例えばテキサス州では三角フラスコを買うのは許可制)、ギフテッドの子供集めて学年別カリキュラムではなく学力に見合った授業を展開するデイヴィッドソンアカデミー(ネバダ州)への入学、そこからネバダ大学リノ校の物理学教授陣との出会い、そういうラッキーな出会いがたくさんあって、優しい大人たちがテイラー少年を道を外さないよう指導していた。

テイラー少年は、理論物理学は嫌いで、実験(応用物理学)が好きだと言っている。

既に実用化が見込めそうなアイデアをいくつか披露している。

ガンの放射線治療に使う放射線源は、製造できる場所が限られており、また寿命も短いため、放射線源を作ったらすぐに飛行機で病院まで届けなければならないが、小型の核融合炉が完成すれば、病院で放射線源を作ることができるようになる。ほかにも空港の荷物検査のX線の代わりになるスキャナに関しても、本書に書かれている。

ノンフィクションとして間違いなく面白いのだが、ギフテッドの子供をどうやって教育すべきかという教育論にかなり多くのページが割かれていて、個人的にはそれが不満。


8点/10点満点

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2018/09/22

服部正法「ジハード大陸 テロ最前線のアフリカを行く」感想。
ルポ。2018年06月12日読了。

◆内容(Amazonから引用)
「今そこにあるテロ」の現場を歩き、事件の歴史的・社会的背景を探るとともにジハーディストたちの真の姿に迫った戦慄のルポ!

イスラーム過激派がもっとも激しくテロ活動を展開しているのは、中東でもヨーロッパでもない。アフリカ大陸だ。たとえば、イスラム国(IS)が国家樹立を宣言した2014年にもっとも多くの人を殺戮したテロ組織はISではなく、ナイジェリアを中心に活動するボコ・ハラムである。西アフリカのマリでは2012年の一時期、アルカイダ系組織がフランスに匹敵する面積を支配下に置き、仏軍の介入を招く事態となった。アフリカはイスラーム過激派による「聖戦」の最前線なのだ。
本書は、毎日新聞ヨハネスブルク支局長としてジハーディストたちとそのネットワークを追い続けた著者による、四年に及ぶ取材の集大成である。アルカイダ系組織アルシャバブと軍が奇妙な共犯関係にあるケニア、無政府状態のソマリア、マリの砂漠、ボコ・ハラムが潜むナイジェリア北部のほか、あるテロリストを追う調査は北欧ノルウェーの田舎町にも及んだ。 被害の実態や事件の背景、歴史的経緯について詳しく言及しつつ、アフリカを舞台に暗躍するジハーディストたちの真の姿に肉迫した戦慄のルポ。高野秀行氏(ノンフィクション作家)推薦!

引用終わり


◆感想
著者は、1970年生まれ、NHK、テレビ番組制作会社を経て99年毎日新聞社に入社。
2012/4-2016/3、南アフリカのヨハネスブルク支局長。現在は毎日新聞外信部副部長。

毎日新聞のヨハネスブルク支局といえば、藤原章生氏、白戸圭一氏が在籍していた部署である。


まず最初に、本書は良い。

毎日新聞社に在籍しながらの活動なので、フリーランスの特派員や外国の特派員に比べると制限が多い。その中で、できるだけの取材をし、それをまとめたのが本書。

以下、着印象に残った部分。

(p33)
ケニアに比べて非常に安価なソマリア産の砂糖は、ケニアに密輸出されることで莫大な利益を生む。

(p67)
ソマリアの首都モガディシオでは、ホテルに入るのが容易ではない。ホテルの敷地から100mも離れたところに1か所目の警備ゲートがあり、そこでホテルと無線交信し、不審者ではないことを確認出来てから通貨を許される。

(p97)
米陸軍のニダル・ハッサン少佐が基地内で銃を乱射し、13人が死んだ。発散少佐は、アメリカ出身のアルカイダ幹部アウラキと何通もメールのやり取りをしていた。

(p124)
著者がマリの首都バマコに入った2012年8月、マリ北部はジハーディストに占領され、マリ政府軍にはそれを奪回する能力はなかった。(その後旧宗主国フランスが軍事介入している)

(p136)
マリに住むトゥアレグ人は、昔から反政府組織を作り活動していた。マリが大干ばつに襲われた1983-84年に、トゥアレグ人の傭兵部隊が大量に隣国リビアに移住し、その後、移住を認めてくれた恩義のあるカダフィ大佐の傭兵として雇われた。

(p174)
南米からコカインをヨーロッパに輸出する際、荷揚げ港として有名だったのがギニアビサウ。

(p254)
2014年7月、ボコハラムは、カメルーン北部で、中国人労働者やカメルーン副首相の妻らを拉致する事件を起こした。

などなど。


繰り返す。本書は良い。


8点/10点満点(良いのだが、企業に所属している以上行動に制限があり、そこが、この手の本を何冊も読んでいる私としては物足りない)

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2018/09/21

やくざと現代ビジネス

一昔前(20-30年前)、やくざがやっていたビジネスを、現代ではITビジネスと言う。

ダフ屋→チケットキャンプ
白タク→Uber
押し売り→アウトバウンドセールス
賃貸住宅の又貸し→エアビー
マネーロンダリング→仮想通貨

以降思いついたら加筆

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小倉充夫編・眞城百華・舩田クラーセンさやか・網中昭世「現代アフリカ社会と国際関係」感想。
アフリカ社会学。2018年06月05日読了。

これまた大学院生向けの教科書のような本。

・エチオピアとエリトリアの100年史(エリトリアはエチオピアとの独立戦争を経て独立した国)

・アフリカに広く蔓延する国家ナショナリズムについて、ルワンダを事例に

・植民地支配と、ジンバブエの英国からの独立

・南アフリカ鉱山労働者の分断化

・南アフリカにおける女性の市民権(アパルトヘイト期から現在)

・ザンビアに見る、都市住民層の変化

・ザンビアに見る、ローカル言語の変化

などについて書かれている。

読了したのは6月5日だが、実は3か月くらいかけてちまちま読んでいた。なんというか、テーマに一貫性がなく、かなり読みづらかった。教科書的な内容なので、元から読みづらいというのもあるが。


6点/10点満点

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2018/09/20

平野克己「アフリカ問題 開発と援助の世界史」感想。
アフリカ経済。2018年06月04日読了。

アフリカに詳しい平野克己先生の本。

経済指標などの数字がとにかく多い。
大学院生向けの教科書なのだろう。

読書という範疇で読む本ではない。
アフリカの実態経済を数値で学ぶための本である。


6点/10点満点

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2018/09/19

中川毅「人類と気候の10万年史」感想。
ブルーバックス。2018年05月31日読了。

◆内容紹介(Amazonより引用)
人類は、たいへんな時代を生きてきた! 驚きの地球気候史
福井県にある風光明媚な三方五湖のひとつ、水月湖に堆積する「年縞」。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録した地層で、現在、年代測定の世界標準となっている。その水月湖の年縞が明らかにしたのが、現代の温暖化を遥かにしのぐ「激変する気候」だった。
人類は誕生してから20万年、そのほとんどを現代とはまるで似ていない、気候激変の時代を生き延びてきたのだった。過去の精密な記録から気候変動のメカニズムに迫り、人類史のスケールで現代を見つめなおします。

「年縞」とは?
年縞とは、堆積物が地層のように積み重なり縞模様を成しているもので、樹木の年輪に相当します。2012年、福井県にある風光明媚は三方五湖のひとつ「水月湖」の年縞が、世界の年代測定の基準=「標準時計」になりました。世界中の研究が、その年代特定で福井県水月湖の「年縞」を参照するようになったのです。この快挙を実現したプロジェクトを率いたのが著者です。

◆感想
超大当たりのブルーバックス。

水月湖は特殊な地形にあり、
・流れ込む大きな河川のない地形(湖水が動かない)
・山々に囲まれた地形(風の影響が少なく、湖水が混ざらない)
・生物のいない湖底(湖水が混ざらないので、湖底に酸素がなく、生物がいない)
・埋まらない湖(断層の影響で、湖自体がゆっくり沈下している)
福井県里山里海湖研究所のWebサイトから引用)
このような地形は世界的にも稀有とのこと。

水月湖(すいげつこ)に堆積した年縞は45mの厚さがあり、7万年もの時間をカバーしている。年縞の解析内容を踏まえつつ、10万年にわたる気候について解説したのが本書。

(p30)
地球の寒冷化は暴走する。地表が雪や氷で覆われ白くなると、太陽光を反射してしまい、温暖化に転ずるエネルギーが得られない。寒冷化から温暖化に転ずるのは、火山活動によるものと考えられている。

(p45)
グリーンランドは氷に覆われていて、島の中央では3kmに達する。その氷をボーリングして得られるのが、過去6万年分の気象データ。水月湖はそれを上回っている。

(p87)
水は、4℃のとき、一番重くなる。氷期の時、水月湖は4℃くらいであったため、当時水月湖の底にたまった水は重く、湖面の水温が変化しても水が混ざらず、湖底に酸素が供給されなくなった。

(p105)
C14(放射性炭素14)を使った年代測定法は、5万年前までしか測れない。
C14の半減期は5730年。
5万年経つと、C14がほぼ無くなってしまうから。

(C14は、普通の炭素原子12兆個につき12個混ざっている(0.00000000012%)。もともと少ないC14は半減期ごとに窒素14(普通の窒素)に各種が変わる。5730年後に1/2、11460年後に1/4、17190年後に1/8、22920年後に1/16、28650年後に1/32、34380年後に1/64、40110年後に1/128、45840年後に1/256に減る)

(p124)
花粉の外膜は極めて頑丈で、強アルカリやフッ酸でも溶けない。なので、年縞の中に花粉が残っている。

(p179)
ベネズエラのカリアコ海盆も、そこが酸欠になっていて、水月湖と同じように重要な年縞がみられる。


などが印象に残った。良書。


9点/10点満点

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2018/09/18

中条省平「世界一簡単なフランス語の本」感想。
言語学習。2018年05月28日読了。


私は今年(2018年)1月からフランス語の学習を始めた。

2011年から英語を猛特訓して(約4,000時間)、かなりマニアックな英単語にまで手を出し(例えばprotomartyr)ちょっと英語に飽きてしまったのと、時間をかけて学習すれば言語は習得できるという自信が得られたので、念願のフランス語に着手した。

文法に着手する前に、とにかく単語を覚えよう!という考えのもと、ガシガシ単語(特に動詞)を習得してきた。この本を買うまでで、おおよそ100時間の学習をおこなった。

そろそろフランス語検定4級を受けようかな、と思って検定対策の本を買ったら、文法問題が結構あって、こりゃ文法も勉強しないと全然だめだわ。

で、文法を独習するにはどういう本がいいのかな?と悩んでいるちょうどその時、本屋に本書が並んでいて、立ち読みしたら良さげなので買った。

良かった。

今の私のレベルにぴったりの本であった。この本は、今私の学習机の前に常備し、何度も読んでいる。ありがたい。

とはいえ、フランス語を全く勉強したことがない人にとっては、やっぱり敷居の高い本なのではないかと感じる。


7点/10点満点


※フランス語の動詞は、人称代名詞(私je、君tu、彼/それil、彼女elle、私たちnous、あなたたちvous、彼らils、彼女らelles)に従う形で変化し、現在、半過去、過去、未来系もあり、条件法、接続法、命令形などでも変化するので、一つの動詞につき最低10種類くらいの活用形を覚えないとならない。だが80%以上の動詞は決まったパターンになる。

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2018/09/17

黒田龍之助「世界のことば アイウエオ」感想。
エッセイ。2018年05月24日読了。


黒田龍之助氏は、ロシア語をメインとする言語学者。

本書は、10年前に単行本で出たものを文庫化した本。

100の言語に関し、1言語2ページでサクッと書いているエッセイ。2ページなので細かな解説はない。世界にはいろんな言語があるのだなあ、ということを感じながら読んだ。

・タイ語にも声調がある。5つ。
・台湾語(中国語福建省南部方言がベースになっている言語)には声調が8つある。
・フランス語は基礎語彙が少なく、基本1069語で82-86%を占めるらしい。
・マオリ語(ニュージーランド先住民のことば)とハワイ語とタヒチ語とアフリカのマダガスカルのマラガシ語は、いずれもオーストロネシア語族。

などのエピソードが印象に残った。


6点/10点満点(やっぱり1言語2ページでは掘り下げが少ないという不満も出てしまう)

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2018/09/16

ドン・ウィンズロウ/田口俊樹訳「ダ・フォース(下)」感想。
警察小説。2018年05月21日読了。


ミステリ系統なので、細かなことは書きません。

共感しづらい悪い刑事が主人公なのに、

ラスト200ページは一晩で一気読みしました。

読み終わってみると、面白い小説と言っていいのかも。


8点/10点満点

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ドン・ウィンズロウ/田口俊樹訳「ダ・フォース(上)」感想。
警察小説。2018年05月18日読了。


ニューヨーク市警マンハッタン・ノース特捜部、通称「ダ・フォース」に所属する部長刑事デニス・ジョン・マローンを主人公とする小説。

ダ・フォースに所属する刑事は、すべて薄汚れている。賄賂を受け取る、賄賂を強要する、証拠をでっちあげる、無抵抗の犯人を射殺する。

エリート部隊のダ・フォースが、なぜそんなことをするようになったのか、なぜ今でも続けているのか。

そして、ある事件をきっかけにジョンは転落していく。


悪い刑事が主人公の小説。周りもほとんど悪い刑事。

主人公に共感できず、読み進めるのがつらい小説なのだが、それでも読ませるのはドン・ウィンズロウの手腕であろう。

ミステリ系統なので、筋はこれ以上記しません。


7点/10点満点

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2018/09/15

ヨアン・グリロ/山本昭代訳「メキシコ麻薬戦争」感想。
ルポ。2018年05月10日読了。

◆内容(Amazonから引用)
メキシコとアメリカの歴史的な関係を背景に、近年のグローバル化と新自由主義の進展のひずみの中で急拡大した「メキシコ麻薬戦争」の内実を、綿密な調査に基づき明らかにするルポルタージュ。米墨国境地帯で麻薬取引と暴力に依存して生きる「ナルコ(麻薬密輸人)」たちに密着し、犯罪者たちの生活や文化、彼らを取り巻く凄惨な暴力の実態を明らかにすると同時に、世界各地で注目されている「麻薬合法化」の議論など、問題解決に向けた方向性も指ししめす。

◆著者(Amazonから引用)
2001年より、『タイム』誌、CNN、AP通信、PBS News Hour、『ヒューストン・クロニクル』紙、CBC、『サンディ・
テレグラフ』紙など国際メディアに、ラテンアメリカに関する報道を行ってきた。
軍事作戦、マフィアによる殺人、コカイン押収などについて報道し、麻薬戦争について2人のメキシコ大統領、3人の司法長官、アメリカ合衆国大使らと議論した。
イギリス出身、メキシコシティ在住。本書は彼の最初の著書である。
本書は、オーウェル賞にノミネートされ、ロサンゼルスタイムズ・ブックフェスティバルで最終選考に残り、BBCラジオ4の「今週の本」に選ばれた。

◆感想
・第1章より。

著者はバックパッカーとしてラテンアメリカを訪れ、メキシコにはビセンテ・フォックス・ケサーダ(国民行動党=PAN) が大統領に就任する前日に来た(2000年11月30日と思われる)。そして著者は、異国で現地通信員になった。

メキシコはGDPが1兆ドルを超え(世界ランク15位前後)、若者の4人に1人は大学に行き、高学歴な中産階級を抱えている。

メキシコは制度的革命党=PRIが1929年から2000年まで政権を独占していた。長期政権は不敗を生み、政治家は私腹を肥やしていた。フォックス大統領(国民行動党=PAN)の登場に、メキシコ国民は多大な期待を抱いた。

前政権のPRIは麻薬密売人(メキシコではナルコと呼ばれる)を抑え込んでいた。何人かのギャングを逮捕するが、逮捕しなかったギャングから税金(というか賄賂)を徴収する。

PAN政権は、組織犯罪をコントロールするすべを知らなかった。フォックスの後に大統領になったカルデロン(PAN)は正面から喧嘩を仕掛けた。その結果、内戦状態といっても過言ではないほど、マフィアによる犯罪が増大した。カルデロン政権になってからの4年間で、34,000人が死んだ。そのうち2,500人が公務員である(2,200人の警官、200人の兵士、裁判官、市長、知事候補、国家公務員など)。国民はPANに失望した。

2012年、国民は新しい大統領にPRIのエンリケ・ペーニャ・ニエトを選んだ。(メキシコの大統領は6年任期で再選なし)

著者はナルコに興味を持ち、逮捕や押収の記事を書いていた。しかしそれらはうわべだけであると感じ、実際のナルコと話をすることにした。

コカの葉が取れる山岳地を這い、麻薬王の弁護士と食事をし、麻薬カルテルに潜入したアメリカ麻薬取締局(DEA)の捜査官と酒を飲み、街中で嫌というほど死体を見、子供を亡くした(殺された)母親の悲しみに満ちた声を聴いた。

そうしてやっと、ナルコと会うことができた。

コカや大麻を栽培する農家、スラムの若き殺し屋、麻薬をアメリカに運ぶ「ラバ」と呼ばれる運び屋、紙に救いを求める元ギャング。

本書は、10年にわたってナルコを取材した著者の集大成である。

原著は2011年に出版され、日本語版は2014年に出た。私は、工藤律子「マフィア国家 メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々」2018年04月22日読了、で本書の存在を知り、買った。


・第2章以降
(p70)
1969年6月、ニクソン政権の担当者がメキシコに赴き、ケシ畑に枯葉剤を撒くように要請したが、断られた。仕返しとしてアメリカは、メキシコからアメリカへの入国検査を徹底した。通常の農作物などの輸出にも支障が出て、メキシコが折れた。アメリカのエージェントを、メキシコ国内で活動することを許した。

このあたりのことがベースになっている小説が、ドン・ウィンズロウの
「犬の力(上)」 「犬の力(下)」 「ザ・カルテル(上)」 「ザ・カルテル(下)」である。

(p142-)
アルトゥーロ・グスマンはメキシコの貧困層出身で、貧困から逃れるために軍に入った。ずば抜けて優秀で聡明だったグスマンは、空軍特殊部隊GAFEに入った。GAFEは、イスラエル軍やアメリカ軍からもトレーニングを受けた。

1994年、メキシコの反政府ゲリラ組織サパティスタが反乱を起こした。政府はGAFEに鎮圧をさせた。GAFEはサパティスタ33人を殺し、翌日さらに3人を殺した。3人は耳や鼻がそぎ落とされていた。サパティスタは反乱蜂起から12日後、休戦協定を結んだ。

司令官グスマンは、ヌエボ・ラレド(街)に赴任した。そこはナルコの街で、麻薬で稼いだ連中の豪邸が立ち並び、夜通しパーティが開かれ、何千人もの娼婦がいた。

グスマンは当初、ゴルフォカルテルから賄賂を受け取り、犯罪行為を目こぼししていた。しかし政権が交代し、軍の高官が収賄で50年の実刑判決を受けるなど、軍の先行きに不安が生じた。

グスマン派軍を辞職して、ゴルフォの傭兵に転身した。

ゴルフォの最高幹部カルデナスは、グスマン経由で軍のエリート十数人をリクルートし、最高の傭兵部隊を作った。これがメキシコで最もいかれた狂気の集団「ロス・セタス」の始まりである。

その後グスマンは、グアテマラの陸軍特殊部隊「カイビル」の元メンバーたちもリクルートした。カイビルは、グアテマラの反政府組織とその家族を、何万人も殺してきた屈強の部隊だった。

「ロス・セタス」は、ケシをや大麻を栽培していた山岳地の村に行き、「今日から麻薬を売るときは俺たちに金を払え」と宣言し、払わなかったものを次々殺した。


ここに書いたのは本書のほんの一部で、とても丁寧に、そしてとても深く掘り下げて書かれている。

また、訳者あとがきで、メキシコの農家は1994年に発効されたNAFTA(アメリカ、カナダ、メキシコの自由貿易協定)によって、自分たちで作って売るより安いトウモロコシがアメリカから輸入されるようになり、食い扶持を稼ぐために農村から都市部に移動する必要が出てきたことについて触れられている。


良書


9点/10点満点(原著が2011年のため、最新情報が少ないという部分でちょっとだけマイナス評価)

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2018/09/14

ブログ再開します

今週末(9/15-16)から当ブログ再開します。

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