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2020/01/05

2019年の読書総括。34冊。

2019年の読書総括を表にまとめました。

 

昨年の読書総数は34冊。月3冊ペースで、過去26年で最小記録。前年に引き続いて最少記録更新。
すさまじい勢いで本を読めなくなってきている。
これが老化か(2019年5月から転職して新しい職場→片道110分になったんだよね。朝は6:35に家を出て、6:58の電車に乗るんだ。肉体的につらいよー)

 

天野才蔵 2019年の読書総括
  ジャンル 国内 海外 合計数
         
小説 SF・ファンタジー・ホラー 0
小説 冒険・ミステリ 0 0
小説 歴史・時代・武侠 0 0 0
小説 純文学・青春 0 0 0
  小説小計 1 0 1
         
その他 ノンフィクション・ルポ 6 3 9
その他 新書・ブルーバックス 8 0 8
その他 紀行文・旅・エッセイ 4 0 4
その他 ビジネス・経済他 3 9 12
  その他小計 21 12 33
         
  総合計 32 12 34

 

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フィル・ナイト/太田黒泰之訳「SHOE DOG」感想。ナイキ創業者自伝。2019年12月22日読了。8点/10点満点

 

ナイキ創業者が、1962年に創業してから、1980年に株式上場して1億7800万ドルの株(上場時)を手にするまでの自伝。ちなみに2019年10月現在の株価では376億ドル

 

フィル・ナイトは1938年生まれ。2019年現在81歳。ナイキを創業したのは24歳の1962年。私(53歳)が生まれたのは1966年。

 

自伝なので、自分に都合のいいことしか書いていない。でも読ませる。

 

この読ませるテクニック、たぶんオリジナルは自分で書いたかもしれないが、仕上げの執筆は文章に長けたゴーストライターが書いている(と思われる)というのは、日本にも必要な出版手法である。

 

日本にだって傑出したビジネスマンは多々いるのに、あまりにも表に出てこない。もっと表に出てきてもいいんですよ、と私は言いたい。

 

ちなみに本書は、普通に面白い。

 

8点/10点満点

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溝口敦・鈴木智彦「教養としてのヤクザ」感想。2019年11月15日読了。6点/10点満点

 

ヤクザ関連の本を書き続けること50年の溝口敦と、「サカナとヤクザ」の著者鈴木智彦氏の対談である。

 

著者名を見ただけで即買いだよ、これは。出版社の戦略にまんまとしてやられたんだよ。わかってるんだよ、それほど目新しいことは載ってないって。

 

でも溝口敦が、「サカナとヤクザ」で取材されていた現役ヤクザが密漁という現場仕事に出る、ってことに驚いていた。ことに私は驚いた。溝口敦でも今のヤクザ稼業がここまで厳しくなっていること(下っ端はともかく)は想定外だった模様。

 

6点/10点満点

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西岡研介「トラジャ JR革マル三十年の呪縛、労組の終焉」感想。ルポ。2019年11月14日読了。9点/10点満点

 

JRの労組は革マル派に支配されている。全共闘時代の話ではなく、2019年の現在も。

 

本書は600ページを超える分厚い単行本でありながら、昨今では考えられない2400円+税という値付けである。ちなみに通勤電車の車内で立って読むにはとても重い。

 

◆内容紹介(amazonより)
「人殺しの組合にはいられない」(本文より)

 

『週刊東洋経済』の短期集中連載「JR 歪んだ労使関係」(3回)を、追加取材の上、大幅加筆し単行本化。
講談社ノンフィクション賞を受賞した前著『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(07年)以後を描く。
テーマはJR東日本、JR北海道、さらにはJR貨物の三社の国鉄分割民営化から今日までの労使関係を中心にした経営問題。
それに加えて、『マングローブ』執筆時に判明していなかった、知られざる革マル派非公然部隊の動きや、党革マルVSJR革マルとの暗闘劇を描く。
またJR東労組の大量脱退問題は、会社に対する敗北だけでなく、組合という存在自体に嫌悪感やアレルギーを持っている「当世社員(組合員)気質」への敗北でもあると位置づける。その上で今回の大量脱退は、戦闘的国鉄・JR労働運動の終焉を意味していると結論づける。
◆引用終わり

 

本書は
 第1部 JR東日本「革マル」30年の呪縛 (著者の前著「マングローブ」の再録)
 第2部 「JR革マル」対「党革マル」の「内ゲバ」
 第3部 JR北海道「歪な労政」の犠牲者
の3部構成で、
関係者への取材、労働組合が発行する機関誌、労組が起こした歪な社内虐めに関する裁判記録、飛び交う怪文書の入手そして吟味。たぶん著者が半生をかけて徹底取材した超大作である。

 

「信じられない」ほど前近代的なJR各社労組の実態を炙り出している。
今の時代に、組合の月例会で、組合員の活動に関する総括やら反省やら糾弾やらが行われ、JR労働運動の前進のために総決起せよ!と叫んでいる(糾弾等の文言は違うかも)

 

JR各社の労組には、広く革マル派が食い込んでいる。
組合の資金源は、組合員から徴収する会費。月給(額面)の2%+1000円が給料から天引きされる。月給30万円なら7000円。JR東日本労組は約4万7000人の組合員を抱えていたので、月に3億円~5億円の活動費があった。この活動費により、JR社員じゃなく、組合から金を受け取って組合活動に精を出す組合専従者が何人もいた(今もいる)。

 

その中には、労組を裏切った幹部の誘拐、2年間にわたる監禁が含まれ、家族が警察に捜索願を届け出たら「公権力へ靡いた」と糾弾し、捜索願を撤回させようとし、監禁している間に再洗脳し、労組に戻ってきたと宣伝する(細かい部分は違うが、こういう事件があった)

 

JRは巨大組織なので、組合も一枚岩ではなく、いくつかに四分五裂している。小さな組合に所属する従業員を、多数派の革マル支配下の組合員が公衆の面前で(つまり乗客がいる前で)罵倒する事案もあり、これは裁判で有罪になった。有罪になった組合員は解雇されたが、上述のように組合専従者として、組合に雇用された。今もいる。

 

JR東日本労組に関しては、2018年に給料のベースアップ(ベア)要求を押し通すためストライキを打つ、打たないで労組執行部と組合員に乖離が発生し、3万3000人以上が脱退した。脱退した組合員は、天引きされていた組合費が天引きされなくなったので、実質手取りがアップしたと喜んでいる。脱退した元組合員の中には、仕事できないやつが組合で威張っている、という現実に嫌気がさした人もいるという(そりゃそうだ)。

 

JR北海道労組はもっとひどく、組合員の結婚式は組合員以外出席不可、組合は結婚式に介入します、と公式に宣言している。

 

給与面や労働条件の交渉を会社(経営者)とするのに、組合という形で団体を作る必要性は分かる。
会社の管理職も、一人ひとり個別に給与査定するのは無理、不満がある奴は組合で抑えてくれ、と組合を頼っていたのもある。
しかし、組合活動は1円の売上すらもたらさない(会社と従業員のやり取りなので)。

 

日本最大の労働組合であるJR各社から、組合を脱退する人が続出した今、21世紀の組合活動が求められているという筆者の結論に共感する。

 

9点/10点満点

 

ところでこの本、帯にノンフィクションとあるのだが、私的にはルポだと思う。
ノンフィクションとルポの違いって何だろう?

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宇都宮徹壱「フットボールの犬」感想。サッカー紀行文。2019年10月18日読了。9点/10点満点

 

本書は2009年に出版され、2011年に文庫化された。(私は古本で買った。今amazonで見たら新刊が売っているので、重版出来したのだろう)

 

宇都宮氏の本業はサッカーライターで、私はWeb媒体を中心に読んでいる。
サッカー日本代表に関するコラムでは、(個人的に)元川悦子氏と双璧をなす、読ませるライターである。

 

本書は1999年から2009年までに訪れた、ヨーロッパの弱小リーグ観戦記である。

 

・セルビアのベオグラードに行けなくなり、スコットランド代表vsボスニアヘルツェゴビナ、vsチェコを見に行き、
・アイルランドのトップリーグ(イングランドのプレミアリーグではなく)
・ポーランドリーグ
・(セルビア・モンテネグロに改称する前の)ユーゴスラヴィア代表
・フェロー諸島、エストニア、マルタ……

 

サッカーを切り口にしてはいるが、そもそも訪れている場所が日本人になじみの薄いところばかりなので、必然的に各国紹介が挟み込まれ、紀行文要素の方が強い。文章がうまいのでどれもこれも読ませる話になっている。

 

上手い。

 

9点/10点満点

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北澤豊雄「ダリエン地峡決死行」感想。紀行文。2019年09月18日読了。8点/10点満点

 

ダリエン地峡とは、中米パナマと南米コロンビアを結ぶ密林地帯で、周辺各国のいろんな思惑から未だに道が通っていない地域。

 

 

コロンビアの首都ボゴタで、日本食レストランで働きながらスペイン語を学んでいた著者は、学校が休みになる期間を利用して国内旅行に出かけようと計画する。その目的地は、現地在住日本人から教えられたダリエン地峡だった。

 

ということでダリエン地峡にアタックすること3回。

 

コロンビアゲリラ(FARC)の残党が巣食い、誰でもノービザで入国できるエクアドル経由でアメリカを目指す不法移民、それらを取り締まるパナマとコロンビアの軍・警官、が居る過酷なダリエン地峡を3回目で踏破。

 

すげえ。
すげえよ。高野秀行の「西南シルクロード」並みにすげえ。
本書が処女作とは思えないほど文章もこなれている。
本書は、Twitterで蔵前仁一さんが取り上げていた(絶賛)ので買った。期待に違わず、非常に良い冒険譚である。

 

8点/10点満点

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橘玲「事実vs本能」感想。2019年09月02日読了。6点/10点満点

 

「言ってはいけない」シリーズと大差ないかも。

 

6点/10点満点

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キャロル・グラック/(クレジットにはないが小暮聡子訳)「戦争の記憶」感想。学生との対話。2019年08月27日読了。6点/10点満点

 

コロンビア大学歴史学教授の著者が、各国の学生と戦争について対話し、「歴史」と「記憶」の意味を探っていく。元はニューズウィークに4回の特集記事として掲載されたもの。

 

学生は総じて若い。若い学生が「記憶」している「歴史」は、どこからやってきたのか。
第1章で取り上げるのはパールハーバー(真珠湾攻撃)。授業で教わったアメリカ人もいれば、映画で見たという学生もいる。
第2章では歴史の記憶はどうやって形成されるのか、第3章では慰安婦、第4章では原爆についてが主テーマとなっている。

 

教授と学生の対話集であるため、学生側が圧倒的に知識が足りない。本書では、学生が何かを気付く過程、を読者が知ることが重要なので、こういう本もありなのだと思う。

 

とはいっても、内容はやっぱり薄い。

 

6点/10点満点

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北岡伸一「世界地図を読み直す 協力と均衡の地政学」感想。地政学。2019年07月19日読了。7点/10点満点

 

◆内容(Amazonより)
大国の周辺国から国際秩序を見直せば、まったく新しい「世界地図」が立ち上がる。フィンランド、ウクライナ、アルメニアを歩けば、「ロシア」の勢力圏構想が浮き彫りになる。ミャンマー、東ティモール、ザンビアを歩けば、「中国」の世界戦略が見えてくる。歴史と地理に精通した政治外交史家が、国際協力と勢力均衡の最前線で考えた「21世紀の地政学」。
◆引用終わり

 

著者は東大教授を経て、国連大使(次席)、国際大学学長、現在はJICA理事長。

 

第1章はロシアと周辺国。ジョージア、アルメニア、ウクライナ、フィンランド
第2章は中国と向き合うアフリカ。ウガンダ、アルジェリア、南スーダン、エジプト、ザンビア、マラウィ
第3章は中南米。と言ってもブラジルとコロンビアだけ
第4章は海洋島嶼国。パプアニューギニア、フィジー、サモア
第5章はアジア。ミャンマー、ベトナム、東ティモール、タジキスタン

 

個々の話はそれなりに興味深く読めるが、いかんせん、取り上げた国数が多すぎるため、すべてが浅い。そこが残念である。

 

7点/10点満点

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小野秀樹「中国人のこころ」感想。言語学。2019年07月08日読了。6点/10点満点

 

中国語で、会話に出てくる言葉(発音)の違いから、中国人がどのように考えて会話をしているのか、を紐解く本。

 

日本語を喋れる中国人が、ぶっきらぼうな相槌をうった場合(※)、それは日本語の相槌ではなく、中国語で相槌をうっている可能性がある。

 

※日本語で目上の人に「ああ」と返事をすると失礼に当たるが、中国語の啊(ā)と言っているのかもしれない。

 

p75
(1)ニイハオ、は普通、顔見知りには言わない
(2)ニイハオ、は中国人の間では初対面の時に、それも都市の知識人の間で使われているくらいであろう。もっぱら外国人向けと言ってもよく、他人行儀なものである。

 

というような感じで話は続く。

 

中国人が会話の中で「昼は何を食べた」「今晩は何を食べる」と聞くのは、中国人にとって食は非常に大切な行為であり、聞くことは失礼に当たらない。(的な内容だったと記憶)

 

全般的に興味深く読めたのだが、途中でおなか一杯になってしまった。

 

6点/10点満点

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2020/01/04

あと9冊

2019年は我が人生的に記録的なほど本を読みませんでした。
あと9冊です。
正月休みが終わる明日1/5には、全部アップします。

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安田峰俊「八九六四 天安門事件は再び起きるか」感想。ルポ。2019年07月03日読了。9点/10点満点

 

安田峰俊氏は、いま最も信頼できる中国ウォッチャー。(私は加藤嘉一氏より、安田氏の記事を信頼している)

 

その氏をして、満を持して取材した天安門事件。
悪いはずはない。

 

という先入観を超えた良書だった。

 

9点/10点満点

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三浦英之「牙 アフリカゾウの密猟組織を追って」感想。ルポ。2019年06月14日読了。6点/10点満点

 

取材地にいるインサイダー(情報提供者)を守りたい気持ちはわかるが、守るが故、仮名やイニシャル表記が多くなり、ルポとしてかなり甘い。
Rって誰なんだよ。

 

辛口評価するが、続編が出たら買う。

 

6点/10点満点

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井堀利宏「大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる」感想。経済学。2019年06月06日読了。4点/10点満点

全てにおいて消化不良。
間違ってもこれで経済学を学んだと勘違いするなかれ。

 

4点/10点満点

 

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トム・バージェス/山田美明訳「喰い尽くされるアフリカ」感想。ルポ。2019年06月04日読了。9点/10点満点

 

◆著者紹介(Amazonより)
『フィナンシャル・タイムズ』紙の特派員として、2006年からアフリカに滞在し取材を行ってきた著者が直面したのは、石油、鉱物などの資源に恵まれるアフリカの国々が貧困と内戦に苦しむ過酷な現実だった。
現地の住民、有力者、政治家へのインタビューを続けた著者は、かつて植民地時代に欧米諸国が築いた略奪のしくみが、グローバル企業によって現代版にアップデートされ、さらに中国が参戦したことによって熾烈な争奪戦が繰り広げられている実態をつきとめる。
謎にみちた中国人実業家、通称“徐京華"と彼が率いる“クイーンズウェイ・グループ"にも迫る。

 

◆内容紹介(Amazonより)
第1章 フトゥンゴ
石油の輸出量ではナイジェリアとアフリカ1位を争うアンゴラ。石油の利権システムを牛耳るのは、“フトゥンゴ"と呼ばれる大統領の取り巻きと家族だが、最近はある中国企業とタッグを組んでいる。

 

第2章 貧困の温床
ナイジェリアでは石油が乱暴に略奪されたため、発電所の整備に資金が回らず、電気代が高騰。主要産業であった繊維産業が衰退し、市場は中国産の模造繊維製品が席捲した。

 

第3章 “関係(グワンシー)"
個人的なつながり、という意味の“関係"がビジネスでも大切にされる中国。その独自のスタイルを持って、アフリカの経済界に入り込んでいった中国人実業家の存在を明らかにする。

 

第4章 ゾウが喧嘩をすると草地が荒れる
ギニアで大量の鉱物資源を有すると見られた山脈の採掘権をめぐり、イギリスとオーストラリアを拠点とする資源・鉱業グループ「リオ・ティント」とイスラエルの富豪ベニー・スタインメッツ率いるBSGの鉱業部門が熾烈な争い繰り広げる。

 

第5章 北京への懸け橋
独裁を続けるニジェールのタンジャ大統領(当時)は、旧植民地時代から続くフランスのアフリカ支配システムに不満を持っていたが、フランスと縁を切るには、代わりとなるパートナーが必要だった。そこに現れたのが中国だった。ほ
◆引用終わり

 

中国のアンゴラへの食い込みっぷりが半端ない。ちなみにアンゴラはどこかというと、

 

ギニア湾と呼ばれるこのあたりの国では石油がザクザク出る。
・ナイジェリア(旧宗主国イギリス・産油量世界12位・人口2億500万人・一人当たりGDP6,100ドル)
・アンゴラ(旧宗主国ポルトガル・産油量世界17位・人口3000万人・一人当たりGDP6,700ドル)
・ガボン(旧宗主国フランス・産油量世界35位・人口200万人・一人当たりGDP19,000ドル)
・赤道ギニア(旧宗主国スペイン・産油量世界36位・人口80万人・一人当たりGDP21,000ドル)
・コンゴ共和国(旧宗主国フランス・産油量世界31位・人口500万人・一人当たりGDP7,100ドル)(マシな方のコンゴ)
などが産油国である。

 

本書がある程度示したのは、アンゴラに中国ががっつり食いついているということである。著者は公開資料(株式会社の登記簿など)から、中国とアンゴラの関係性をある程度導き出すが、その詳細は関係者全員からの取材拒否により頓挫する。

 

とはいえ、これは超級のルポである。取材中、命の危険すら感じたであろう。

 

良い。

 

9点/10点満点

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ジョン・ハンケ/取材構成飯田和敏「ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険」感想。伝記。2019年05月15日読了。4点/10点満点

グーグルマップの素になったKeyHole社を作ったジョン・ハンケ。 彼はグーグル退社後、ポケモンGOを作ったナイアンテック者を創業していた! ということで読んだけど、作ってしまえばそこそこ売れるだろうというやっつけ感がありありとした本だった。 4点/10点満点

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ビル・キルディ/大熊希美訳「NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生」感想。社史。2019年05月15日読了。8点/10点満点

 

グーグルマップの素となったKeyHole社に在籍していたビル・キルディ(マーケティング担当)による、グーグルマップ誕生物語。

 

グーグルの話ではなく、KeyHole社の立ち上げ、売上を上げるのに苦心、創業者(ジョン・ハンケ)は資金調達に大いに苦労、それからグーグルに買収され、グーグルの資金でやりたいことが全部できるようになった! 的な創業&操業物語。

 

内部にいた人の回顧録なので、実にリアル。そういう意味での面白さはある。

 

よくある成功物語であるけれど、全体的な構成がとても良い(これは日本の同様書籍との顕著な違いである)。

 

8点/10点満点

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大西康之「ロケット・ササキ」感想。伝記。2019年05月07日読了。8点/10点満点

電卓の開発に全精力を注ぎ、シャープの礎を作った佐々木正氏の伝記。 台湾で育ち、李登輝(台湾総裁)と同窓。 ◆Amazonより 敗戦から高度成長期にかけて、デジタル産業の黎明期に、常に世界の最先端を突っ走ったスーパー・サラリーマンがいた。シャープの技術トップとして、トランジスタからLSI、液晶パネルと当時のハイテクを導入して苛烈な「電卓戦争」を勝ち抜き、電子立国・日本の礎を築いた佐々木正。インテル創業者が頼り、ジョブズが憧れ、孫正義を見出し、サムスンを救った「伝説の技術者」の痛快評伝。 ◆引用終わり 巻末で孫正義が賛辞を書いているので、間違いなく傑物である。 読み物として、素直に面白かった。伝記なので、都合の悪いことを省いた可能性はあるが。 8点/10点満点

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宮城公博「外道クライマー」感想。沢ヤのエッセイ。2019年04月19日読了。6点/10点満点

 

登山家(山ヤ)には好きなもしくは得意なジャンルがある。ロッククライミングが好きな人は岩ヤ、沢登りが好きな人は沢ヤという。「ヤ」がなぜカタカナなのか私は知らない。

 

日本の沢ヤの頂点付近に立っているっぽい人が著者である。那智の滝を沢登りして逮捕されたらしい(冒頭のエピソードである)

 

内容は面白いのだが、自分を卑下し過ぎである。もうちょっと傲岸不遜になった方が面白くなるような気がする。

 

6点/10点満点

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真野森作「ルポ プーチンの戦争 「皇帝」はなぜウクライナを狙ったのか」感想。2019年04月11日読了。9点/10点満点

 

著者は毎日新聞記者。ロシアに語学留学し、1年でロシア語でインタビューできるほどマスターし、2013-2017年ロシア特派員。

 

ウクライナで起きているクリミア半島のロシア併合、およびドネツク地方での親露派対ウクライナ軍に関しての取材が中心で、取材地は主にウクライナである。

副題が本書のテーマであり、実際ウクライナ情勢がほとんどを占めるが、今の日本でウクライナ情勢について書いたところで売れないのだろう。タイトルが「プーチンの戦争」になった理由はそんなところかと邪推。

 

ということでウクライナの地図。南に見える島(半島)がクリミア。マークがついているところがドネツク。 

 

親露派、ウクライナ極右、双方の軍事関係者、政府関係者や役人、一般市民に分け隔てなくインタビューしている。
国際報道ではプーチンが悪者になっているが、本書を読み進むにつれ、ウクライナ(政府・官僚・軍・極右勢力)の腐敗の酷さが目につくようになる(ロシア情勢を齧ったことがある人にとって、これはまったく驚かない。ウクライナは旧ソ連から独立した国々の中でも、突出して腐敗していることは多くの人が知っている)

 

本書の肝として、旧ソ連崩壊時、ウクライナには1000発を超える核ミサイルがあった。ウクライナ(とカザフスタンとベラルーシ)は核ミサイルを全面放棄する国際覚書を米英露と結んだ(1994年のブダペスト覚書)。この覚書には相互の国境不可侵条約が入っていた。

 

しかし20年後の2014年、ロシアは国際条約を破りクリミア半島を自国化し、米英両国はロシアの約束やぶりを見過ごした。

 

p381
「この現実を北朝鮮やイランもみんな見つめているだろう」

 

9点/10点満点

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ヤニス・バルファキス/関美和訳「父が娘に語る経済の話」感想。経済。2019年03月29日読了。10点/10点満点

 

著者はギリシャ経済危機(2015年)の時のギリシャ財務大臣。
原著はギリシャ語で書かれ(たぶん2013年)、英訳がたぶん2014年、英訳をもとに日本語版が2019年に出版された。

 

本書の面白さはあちこちに書かれているので、ここでは特記しない。
強制収容所ではタバコが貨幣と同じ働きをした、という部分は、貨幣経済を知るうえでとても分かりやすい例と思う。

 

陳腐な感想ではあるが、良い。またしても10点満点を付ける。

 

10点/10点満点

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山田克哉「原子爆弾 その理論と歴史」感想。ブルーバックス。2019年03月26日読了。9.5点/10点満点

 

原子爆弾の理論と、実際の製造方法、それらがどのように発見され、改良され、実際に使用されるに至ったかを書いた、450ページを超える大著。

 

原子爆弾の理論は簡単である。純度の高い(90%以上)ウラン235の塊(11kgくらい)を2つ用意し、塊同士をぶつけたら、勝手に核分裂連鎖反応が起き、核分裂に伴うエネルギーは熱に変換され、数百万度となり、大気が大膨張して大爆発となる。

 

これは私が高専5年生の時(20歳)、理論物理学の卒論指導教官から教わった内容と同じ。

 

ちなみに原子力発電に使うウラン235は純度が20%くらいなので、核爆弾には転用できない(が、発電に使用した燃料棒にプルトニウム239が生成され、これが核爆弾に転用できる)。

 

爆弾化するには、天然にはウラン235がとても少ない(通常のウラン塊にはウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%)ことと、塊同士をぶつけるタイミングにずれが生じると連鎖反応が起きないことがネックとなる(イランが今やっているのはウラン235の濃縮)。

 

本書は、理論的に核分裂にはとてつもないエネルギーを秘めていることの発見、中性子(連鎖反応を起こす鍵となる物質)の発見、ウラン235の濃縮方法の発見、人工的に連鎖反応を起こす方法の発見、そして戦争により物理学を飛び越え、原子爆弾として製造するための政治家と物理学者の駆け引き、人間ドラマ、などが書かれている。

 

本書は、中性子の役割などについて懇切丁寧に書かれている。
本書を読み終えると、物理学に詳しくなった気になる(もちろんそれは勘違いなのだが)

 

非常に良い。が、物理学にも原子爆弾にも興味がなければ、毛ほども面白くないことも自明である。ゆえに9点以上10点未満の評点をつける。

 

9.5点/10点満点

 

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金成隆一「ルポ トランプ王国」感想。2019年03月12日読了。10点/10点満点

 

2017年に出た本。
私的10点満点。
こういう良本を読み逃していたことは痛恨である。

 

本書は、2012年の選挙で共和党が負け、2016年のトランプが勝った6州のうち、フロリダ州を除くラストベルト(Rust は「錆びた」の意)オハイオ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ミシガン州、アイオワ州の5州を中心に、大統領選の前年2015年から取材を進めてきた内容をまとめた本。

 

これらの州は労働組合が強く、民主党の地盤だった。なぜ多くの住民が共和党のトランプに鞍替えしたのか、各地を丁寧に回り、市井の人々の声を拾い、そして一定の結論を導き出す。

 

とても良い。

 

10点/10点満点

 

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須藤靖「不自然な宇宙」感想。多元宇宙論。2019年03月05日読了。9点/10点満点

 

宇宙に興味を持っている人が誰しも思うこと。
「宇宙に果てはあるのか」
「ビッグバン以前」
「そもそも宇宙はいったいどこに存在しているのか」

 

現在の科学技術では観測できないこれらの事柄について、物理学的アプローチ及び概念的アプローチで研究が進められている。

 

今我々がいる宇宙はレベル1ユニバース。
レベル1ユニバースとそっくりな別のレベル1ユニバースが、観測できないどこかにある。(p97他)
そのレベル1ユニバースの集まりが、レベル1マルチバース。(p64)

 

レベル1マルチバースが多数集まったものが、レベル2マルチバース。(p71)(p100)

 

こういうことを研究している人たちがいる。
こういう研究に資金を提供する人たちがいる。
素晴らしいな。

 

9点/10点満点

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ウィリアム・マッカスキル/千葉敏生訳「<効果的な利他主義>宣言 慈善活動への科学的アプローチ」感想。2019年02月28日読了。9点/10点満点

 

・利他主義=自分の利益よりも、他人の利益を優先する考え方。対義語は利己主義(=自分中心)

 

あなたが1万円を慈善事業に寄付するとき、「どこに寄付すれば最も有効活用してくれるか」を考えて寄付したことがあるだろうか。
世界中で広告を出している団体、例えばオックスファム、PLAN、国境なき医師団、ワールドヴィジョン、セーブザチルドレンに寄付した場合、間違いなく数十%は団体の運営費に回され、善意の1万円のうち、本当に援助を必要としている人たちに渡るのは数千円になる。

あなたはそれでも、メジャーな慈善団体に寄付しますか?

 

本書は、慈善事業の効果を定量的に分析することから始まる。何を以て効果があったと言えるのか、を具体的な指針を(著者が)定め、指針に基づいて分析する。著者は大きな団体が悪いと糾弾したいのではなく、効果があったかなかったかを判断する術を紹介しているのである。

 

例えばアフリカ、ケニアの貧困層の子供の就学率を上げる(学問を身に着ければ貧困から抜け出せる可能性が高まる)為に最も効果的だったのは、「腸にいる寄生虫の駆除薬を配布すること」だった。寄生虫を駆除することで、子供たちの体調が良くなり、長期欠席が25%も減り、つまり出席率が上がったのだ。子供を一日長く学校に通わせることをコスト(薬代と配布にかかる費用)に換算すると、約5セントだった。

 

p12
「企業への投資と慈善団体への寄付の一つの違いは、慈善団体の多くには適切なフィードバックの仕組みがないという点だ。」

 

以前、国境なき医師団の会計報告を見たことがある。使途不明金が多い。想像するに、領収書の出ない賄賂(例えば戦場では、地元の有力者に賄賂を贈らないと活動の邪魔をされる)などが該当するのだろう。

 

p45
「2009年、ザンビア生まれの経済学者ダンビサ・モヨは、著書「援助じゃアフリカは発展しない」で、援助は有害なのでやめるべきだと主張した」
「2006年、ニューヨーク大学の経済学者ウィリアム・イースタリーは、「傲慢な援助」と題する著書を記した。援助はせいぜい効果がなく、下手をすれば害を及ぼすという考え方を広めたイースタリーの著書は、国際的な援助活動は時間と労力の無駄だと考える懐疑派たちにとってのバイブルとなった」

 

ダンビサ・モヨ/小浜裕久訳「援助じゃアフリカは発展しない」2011年11月16日読了。

 

だがここで著者は反論する。p46 最底辺の10億人と呼ばれる(多くはアフリカの貧困層)国々の人たちだって、劇的に生活の質が上がっている。サブサハラ(サハラ砂漠より南)のアフリカ諸国の平均寿命は、36.7歳から現在では56歳にまで上がっている。

 

発展途上国が援助によって受け取った便益の真の全体像をつかむためには、典型的な援助プログラムではなく、最高の援助プログラムに着目する必要がある(例として天然痘の撲滅)。

 

p134
東南アジア、ベトナム、カンボジア、バングラデシュなどでは、靴やアパレルの搾取工場がたくさんある。搾取工場で作られた製品を買う先進国の一般人は、搾取工場を平気で見過ごす大企業が許せないと言う。

 

しかし搾取工場で働いている人たちは、工場がなくなれば、路上販売や重労働の農業、ごみあさり、失業者になってしまう。搾取工場であっても、「日差しを避けられ、かつ賃金をもらえる」だけマシな職場となる。

 

 

かなり考えさせられる話がてんこ盛り(論拠となる原注だけで30ページ以上ある)で、全部は紹介できない(かつ上記はかなりまとまりがなく中途半端であることは分かっている)が、非常に良い本。

 

9点/10点満点

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橘玲「もっと言ってはいけない」感想。2019年02月21日読了。7点/10点満点

 

前著「言ってはいけない」より興味を惹く部分が増えた。
が、前著より私の評価は落ちた。
飽きたからかも。

 

7点/10点満点

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橘玲「言ってはいけない 残酷すぎる真実」感想。2019年02月18日読了。8点/10点満点

 

「知能は主に遺伝で決まる」
「子育て方法や教育は子供の成長に関係ない」
など、タブーを直視した話が、論拠となる元論文と一緒に紹介した本。

 

本書に書かれているテーマ、いずれも興味深く読めたし、読後感も悪くない。けど鵜呑みにするのは危険かも。

 

8点/10点満点

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ロバート・H・ラティフ/平賀秀明訳「フューチャー・ウォー」感想。2019年02月14日読了。7点/10点満点

 

◆著者紹介(Amazonより)
2006年、アメリカ空軍を少将で退役。現在は企業や大学、政府機関のコンサルタントをつとめるほか、ノートルダム大学「ライリー・センター(科学技術・価値観系)」にも籍を置き、顧問委員会議長、特任教授。現役時代は陸軍および空軍において様々なレベルの部隊・組織の指揮をとり、空軍長官の幕僚をつとめた。現在も「空軍研究委員会」および「米国科学アカデミー」傘下の「情報コミュニティー研究委員会」のメンバーである。ノートルダム大学で工学博士号を取得。ヴァージニア州アレクサンドリア在住
◆引用終わり

 

◆前書きより
本書はテクノロジーと、それが長年、兵器や戦争と分かちがたく結びついてきた歴史的経緯を記述している。新時代の技術、具体的にはインターネット、人工知能、自律型システム、未来の兵士の生物学的・神経学的機能拡張といった分野のテクノロジーがもっぱら取り上げられている。本書はまた、未来戦の技術が兵士に及ぼす様々な影響についても語っており、将来、戦争を決断する際、国民及び指導者が、軍事問題についてより良き理解を得るための一助にしたいと願っている。
◆引用終わり

 

SF小説的な近未来戦争は、実のところ既に始まっている。
戦場では「ヒト」だけではなく「ロボット」が参戦し、「ヒト」と「ロボット」の混合軍で戦っている。
戦争報道はもはや中立ではない。必ず、どちらかに偏った報道になる。また、相手を陥れるためのフェイク報道も当たり前である。
「ヒト」戦士は、生物学的に強化され(例えば筋肉増強)、神経学的にも強化され(例えば恐怖心を薄める)る。

 

エスカレートした戦争を止めるのは、戦争を始めた指導者の決断であり、決断に導くためには国民が立ち上がらなければならない。

 

的なことが書かれている。

 

7点/10点満点

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梁石日(ヤン・ソギル)「タクシードライバー最後の反逆」感想。ルポ。2019年02月05日読了。3点/10点満点

1987年に出版された本。
タクシードライバーで食いつないでいた作家梁石日自身の体験談と、そこから調べたタクシーに関する黒い話。
30年前にはよくあった、的な話が多く、時代を超えるルポではなかった。

 

3点/10点満点

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Blue Planet Works「決定版サイバーセキュリティ」感想。2019年02月04日読了。3点/10点満点

PC Watch、GIGAZINE、Gizmode、EnGadget、Impress Watchなどに載っているような話を集めただけの本。決定版ではない。ゆえに本のリンクなし。

 

3点/10点満点

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大河内直彦「地球の履歴書」感想。地理学。2019年02月04日読了。9点/10点満点

 

◆Amazonより
熱球から始まったこの星はどのように冷え、いかにして生物は生まれたのか? 科学の発達とともに、私たちは少しずつ地球の生い立ちを解明してきた。戦争や探検、数学の進歩や技術革新などのおかげで、未知の自然現象の謎は氷解したのだ。海面や海底、地層、地下、南極、塩や石油などを通して地球46億年の歴史を8つのストーリーで描く。講談社科学出版賞受賞のサイエンティストによる意欲作。
◆引用終わり

地球という惑星はどのようにしてできたのか、科学者たちはどうやって調べてきたのか、を記した科学エッセイ。

どこかがピンポイントで面白いのではなく、全体的に良い。

地学が好きな人は読んでおくべき一冊。

 

9点/10点満点

 

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2020/01/03

鈴置高史「米韓同盟消滅」感想。201月01月29日読了。7点/10点満点

 

ネットに積極的にコラムをアップしている人。

 

普段この人のコラムに接しているのなら、ネットコラムの50倍くらい(文字量的に)充実したコラムを読んだ気になれる。

 

主張自体はネットコラムの延長なので(逆か?本書を買わせるためにコラムを書いているのか?)、面白おかしく読んだ。

 

それにしても、本当に韓国大丈夫か、と思わずにいられない昨今ではある。

 

7点/10点満点

 

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ハンス・ロスリング(&オーラ、アンナ)/上杉周作・関美和訳「FACTFULNESS」感想。世界を現す客観データ。2019年01月26日読了。100点/10点満点

 

(2020/1/4修正)

 

10点満点で100点。我が読書人生史上、最高の一冊(のひとつ)。

 

思い込みや先入観を排除し、数値で世界を見ると、今の世界はいったいどういう状態なのか。を記した本である。各所で大絶賛されているので、詳しい内容は省く。

 

例)
スウェーデン。福祉大国である。政治的には社会民主主義(基本的には多数決=民主主義を採用しているが、高齢者や弱者救済のため高い税金を課し、富の分配を図る=社会主義的な要素を多々採用している政治制度)。
1800年代から1966年ころまで、スウェーデンは極度の貧困層が多く、人口の1/5が国外(主にアメリカ)に逃げ出した。戻ってきたのはそのうち2割。

 

1997年の段階で、インドと中国の極度貧困率はどちらも42%。2017年にはインド12%、中国0.7%と劇的に改善された。

 

まだ読んでいない人は、本屋や図書館で手に取って、冒頭のクイズ13問(p9-p13)をやってみることをお勧めする。いかに自分の頭が先入観で溢れかえっているのかが分かる。

 

100点/10点満点

 

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マイケル・オースリン/尼丁千津子訳「アジアの終わり」感想。国際経済。2019年01月22日読了。8点/10点満点

 

原著2016年出版、邦訳2017年5月出版。著者はワシントンDCのアメリカンエンタープライズ公共政策研究所(AEI)上級研究員、日本部長。

 

◆以下、Amazonより
「アジアの時代」は終わった。トランプのアジア封じ込めはこれから始まる!
保守系シンクタンクのアジア研究第一人者が最新アジアのリスクマップを作成。
5つのリスク―
1経済成長の失速、
2人口問題、
3未完成の政治革命、
4政治的共同体の欠如、
5戦争の脅威―について分析する。
アメリカの最新アジア戦略を読み解ければ、日本の生きる道が見えてくる! トランプ政権発足後、アメリカで特に読まれているアジア分析本。
◆引用終わり

 

タイトルのインパクトが大きいが、内容はアジア経済の冷静な分析である。特に人口分布と人口減少によるデメリットについて、かなり正確な分析をしている(と感じられる)。

 

p127
1953年、中国の都市部人口は全体の13%だったが、2010年には49%にまで上昇している。
中国には100万人都市が170もあり、上位5つは1000万人以上である(重慶市、広州市(深セン含む)、上海市、北京市、天津市)(註:2019年ではアモイ市、成都市、広州市、武漢市なども1000万人都市になっていると思われる)。

 

急速な都市化というのは、歴史上、それこそ古代ローマの頃からどの国にも起こってきた。町が市になり、市が都市になる。すると働き口が増える。仕事があるところに人は集まる。

 

東南アジアは貧乏子だくさん。というイメージがある。だがそれはもはや誤りで、人口を維持するために必要な出生率2.07を切りそうな国々が東南アジアには多い。
・フィリピン(人口1億500万人)の出生率はまだ大丈夫2.99
・ラオス(人口700万人)は2.65
・マレーシア(人口3100万人)は2.48(既に2.04に落ち込んでいるとも)
・カンボジア(人口1600万人)は2.47

・インド(人口13億人)は2.40

・バングラデシュ(人口1億6000万人)は2.15
・ミャンマー(人口5500万人)は2.13
・インドネシア(人口2億6200万人)は2.08
・ベトナム(人口9700万人)は1.79

・中国(人口13億9000万人)は1.60
・タイ(人口6800万人)は1.52

・日本(人口1億2600万人)は1.42
・韓国(人口5100万人)は1.27(直近では1.0を切ったという報道もある)
・台湾(人口2300万人)は1.13
・シンガポール(人口600万人)に至っては0.84

 

ちなみに、ヨーロッパの主流じゃない国々(ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン以外の人口1000万人以下の小さな国)の出生率はどこもかしこも1.5以下である。

 

人口の減少=高齢者が増えるというのは、全世界共通の現象であり、若者の代表であるグレタさんが国連で憤るのも無理ない話である。出生率が減る原因としては、発展している最中の国では、(どこの国でもいいが)国全体の平均的な世帯収入が上昇すると、国民は子供の教育に金をかけるようになる。子供一人一人に充実した教育を施すために、子供の数を減らそうとする。結果的に各国の世帯で育てる子供の数は2人、または3人、もしくは1人の選択になる。日本は子供を育てるコストが高いので2人もしくは1人の方向に寄り、フィリピンは2人もしくは3人の方向に寄っている。

 

インドやバングラデシュでも2人か1人の方向に進み、ベトナムやタイでは1人もしくは2人の方向に進んでいる。

 

30年後を想像してみよう。たぶんすべての東南アジア諸国は出生率2.07を下回り、高齢者過多となる。

 

これが著者の言わんとするアジアの終わりである。

 

そういう意味では、ヨーロッパはとっくに終わっているし、実際フランス(出生率2.06)以外は終わっている。アフリカ諸国は出生率4以上の国が多いけど、そういう国は乳幼児死亡率も高いから、大人になる頃には人口が調整されている。アフリカ諸国で乳幼児死亡率を改善させる試みをすると、大学に行っても就職できない高学歴プアが大量発生する(チュニジアがいい例で、高学歴プアがアラブの春のきっかけとなる抗議の自殺(イスラム法では禁止されている)デモを起こした)。高学歴プアの問題は、いまそこにある東南アジアの危機である。主に中国と韓国で。

 

上記は本書の内容そのものではないが、人口減少するであろうことが(ほぼ100%の確率で)予測される東南アジアに、未来はあるのか?! という視点で非常に面白かった。

 

8点/10点満点

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マーク・ミーオドヴニク/松井信彦訳「人類を変えた素晴らしき10の材料」感想。科学エッセイ。2019年01月10日読了。8点/10点満点

 

復活します。

 

材料に関する科学エッセイ。
鋼鉄・紙・コンクリート・チョコレート・泡・プラスチック・ガラス・グラファイト・磁器・インプラント・材料科学の未来の11章からなる本。なんというか、一貫したテーマがあるように見えない並びである。

 

以下、興味を引いた部分の抜粋。

 

鋼鉄。石器時代に使えた金属は銅と金だけ。それ以外(鉄も)の金属は、鉱石から抽出しなければならなかった。酸化アルミニウム(Al2O3)の結晶は無色だが、不純物として鉄を含むと青くなり、サファイヤと呼ばれる。不純物としてクロムを含むと赤くなり、ルビーと呼ばれる。

 

紙。紙幣はコットン紙である。木を原料としていない。ヨウ素ペンで紙に何かを書くと、木(セルロース)のデンプンと反応し赤くなる。コットン紙はデンプンが存在しないので変色しない。

 

コンクリート。コンクリートは乾かない。水はコンクリートの主成分である。コンクリートは固まるときに水と反応して化学反応を起こし、内部に大量に水をため込んでいるのに乾かない。どころか耐水性を持つ。

 

著者はイギリス人であり、(個人的偏見であるが)イギリス人文筆家らしく文章がくどいのだが、10個の材料にまつわるエピソードがそれぞれ面白く、科学エッセイとして楽しく読めた。

 

 

8点/10点満点

 

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