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2020/01/04

ウィリアム・マッカスキル/千葉敏生訳「<効果的な利他主義>宣言 慈善活動への科学的アプローチ」感想。2019年02月28日読了。9点/10点満点

 

・利他主義=自分の利益よりも、他人の利益を優先する考え方。対義語は利己主義(=自分中心)

 

あなたが1万円を慈善事業に寄付するとき、「どこに寄付すれば最も有効活用してくれるか」を考えて寄付したことがあるだろうか。
世界中で広告を出している団体、例えばオックスファム、PLAN、国境なき医師団、ワールドヴィジョン、セーブザチルドレンに寄付した場合、間違いなく数十%は団体の運営費に回され、善意の1万円のうち、本当に援助を必要としている人たちに渡るのは数千円になる。

あなたはそれでも、メジャーな慈善団体に寄付しますか?

 

本書は、慈善事業の効果を定量的に分析することから始まる。何を以て効果があったと言えるのか、を具体的な指針を(著者が)定め、指針に基づいて分析する。著者は大きな団体が悪いと糾弾したいのではなく、効果があったかなかったかを判断する術を紹介しているのである。

 

例えばアフリカ、ケニアの貧困層の子供の就学率を上げる(学問を身に着ければ貧困から抜け出せる可能性が高まる)為に最も効果的だったのは、「腸にいる寄生虫の駆除薬を配布すること」だった。寄生虫を駆除することで、子供たちの体調が良くなり、長期欠席が25%も減り、つまり出席率が上がったのだ。子供を一日長く学校に通わせることをコスト(薬代と配布にかかる費用)に換算すると、約5セントだった。

 

p12
「企業への投資と慈善団体への寄付の一つの違いは、慈善団体の多くには適切なフィードバックの仕組みがないという点だ。」

 

以前、国境なき医師団の会計報告を見たことがある。使途不明金が多い。想像するに、領収書の出ない賄賂(例えば戦場では、地元の有力者に賄賂を贈らないと活動の邪魔をされる)などが該当するのだろう。

 

p45
「2009年、ザンビア生まれの経済学者ダンビサ・モヨは、著書「援助じゃアフリカは発展しない」で、援助は有害なのでやめるべきだと主張した」
「2006年、ニューヨーク大学の経済学者ウィリアム・イースタリーは、「傲慢な援助」と題する著書を記した。援助はせいぜい効果がなく、下手をすれば害を及ぼすという考え方を広めたイースタリーの著書は、国際的な援助活動は時間と労力の無駄だと考える懐疑派たちにとってのバイブルとなった」

 

ダンビサ・モヨ/小浜裕久訳「援助じゃアフリカは発展しない」2011年11月16日読了。

 

だがここで著者は反論する。p46 最底辺の10億人と呼ばれる(多くはアフリカの貧困層)国々の人たちだって、劇的に生活の質が上がっている。サブサハラ(サハラ砂漠より南)のアフリカ諸国の平均寿命は、36.7歳から現在では56歳にまで上がっている。

 

発展途上国が援助によって受け取った便益の真の全体像をつかむためには、典型的な援助プログラムではなく、最高の援助プログラムに着目する必要がある(例として天然痘の撲滅)。

 

p134
東南アジア、ベトナム、カンボジア、バングラデシュなどでは、靴やアパレルの搾取工場がたくさんある。搾取工場で作られた製品を買う先進国の一般人は、搾取工場を平気で見過ごす大企業が許せないと言う。

 

しかし搾取工場で働いている人たちは、工場がなくなれば、路上販売や重労働の農業、ごみあさり、失業者になってしまう。搾取工場であっても、「日差しを避けられ、かつ賃金をもらえる」だけマシな職場となる。

 

 

かなり考えさせられる話がてんこ盛り(論拠となる原注だけで30ページ以上ある)で、全部は紹介できない(かつ上記はかなりまとまりがなく中途半端であることは分かっている)が、非常に良い本。

 

9点/10点満点

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