安田峰俊「「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本」感想。ルポ。2021年4月22日読了。
また安田峰俊氏の本を買ってしまった。
なんというか、安田氏の取材対象が私のツボにはまるのである。
農業や漁業に3年間限定で従事する「技能実習生」。日本人の若者がやりたがらない、きつい、きたない、きけん(いわゆる3K)仕事を外国人に丁報酬でやらせましょう。
日本で「技能」を「習得する」目的なので、特別なビザを与えましょう。
以前は中国の田舎者を連れてきたが、中国が豊かになるにつれ、中国人は日本に来なくなった。そのあとに来たのはベトナムの田舎者であった。ベトナム人は日本に来る前に斡旋料を払っている(本当は禁止されている)。斡旋料が安い仲介業者は「信用できない」ので、無理して100万円以上の斡旋料を払って日本にやってくる。
期待をもって日本に来たら、給料安い、こき使われる、住環境が悪すぎる、仕事は単純労働。
今はスマホで簡単に情報が得られるので、自分がいかにひどい環境で働いているか知る。
で、逃げる。
逃げる前の外国人、逃げた後の外国人、外国人を送り出す斡旋機関、受け入れる日本の監理団体、それら多岐にわたって取材しているので読み応えあり。
とはいえ、スマホで簡単に情報が入る今、受け入れる側の日本企業も変わらざるを得ない。
私の同級生が経営している農業法人では、受け入れる実習生は農家の後継者に限定し、かつできる限り「日本と似たような気温湿度」の場所から人材を探し、農閑期に実習生を受け入れ、実作業に移る前に「日本語」の勉強をさせている(もちろん有給)。
実作業では、なぜ隙間をあけて種をまくのか、なぜこの肥料を使うのか(そしてその肥料の代替品は自国に戻った時に手に入るか)、風雨対策の方法、種の作り方、収入を安定させるためには単作ではなくいろんな作物を育てよう、そのためには畑を休ませ土地を肥えらせることが肝心、などを教えながら働かせているとのこと。
かつ、寮を完備(基本自炊だけど、米や野菜は無料)、農繁期(収穫時期)を除いて週休2日になるようにシフトを組み(シフトを組めるように20人くらい雇っている)、月1回レクリエーションを実施(徹夜でカラオケ、ボーリング大会、地元のイベントに参加)、ショッピングしたいときはミニバンで隣の都市まで送迎(月2回・日曜限定)。
ここまでやれば逃げ出さないそうだ。
他、最近一緒に仕事をした大手電機工事会社にはビルマ人実習生がいて、彼の待遇はよくわからなかったけど、近い将来ミャンマー支店を作った際、幹部候補生として帰国することが約束されているとか。
最近、野口悠紀雄を筆頭に「日本はもう斜陽国家に転落している」論が次々に発表されている。少子高齢化が主たる原因。
それ自体に異論はないし、日本が超高齢化社会であることも事実。
だけど、ヨーロッパには日本より深刻な少子化国家(寿命が日本より短いので超高齢化ではない)が多数あることを書かなければ、偏向報道に近いものがあると私は感ずる。
7点/10点満点(切り口は良いが、値段に比して文字数が少ない)
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