カテゴリー「◇国際政治・地政学」の記事

2017/06/03

モイセス・ナイム/加藤万里子訳「権力の終焉」感想。
政治・近未来。2017年04月08日読了

世界中のいたるところで、権力は衰えてきている。

政治の世界では、国連はもうあまり機能していない。
国の最高権力者(大統領や首相)も、かつて(第二次世界大戦の頃)ほどの権力はない。
上場企業の経営者は、四半期決算、年度決算、配当に縛られ、かつて(オイルショックの頃か?)ほど自由に商売ができなくなっている。

民主主義が行き過ぎると、小さな主張だけを取り上げる小さな政党が多数生まれ、絶対多数が生まれにくくなる(例として、2009年のインドでは実に35もの政党が議席を得ていたとのこと)

資本主義が行き過ぎると、株主の言うがまま利益を求める無分別な企業が増える。(例外はいる。Amazonのジェフ・ベゾスやテスラのイーロン・マスクなど)

そういうような趣旨のことを膨大な傍証とともに描かれたのが本書であるが、いまいちピンとこなかった。


6点/10点満点

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2017/04/07

山内昌之・他「中東とISの地政学」感想。
中東分析。2017年03月15日読了。

本屋で立ち読みしたら面白そうに思えたので買った。

18人の中東専門家がバラバラに書いた小論文集。

各執筆者が同時期に原稿を書いたのか、同じようなことが重複して書かれているし、政治分析に関係のないエッセイも混ざっているし、まとまりはないし、うーん。

巻末に載っている35ページの対談
 山内昌之(明治大学特任教授・東京大学名誉教授)
 宮家邦彦(キャノングローバル研究所研究主幹)
 中川恵(明治大学客員教授・羽衣国際大学教授)
が最も有意義な読み物であった。

うーん、中途半端すぎて困る本だ。


6点/10点満点

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2017/02/16

ピーター・ナヴァロ/赤根洋子訳「米中もし戦わば」感想。
戦力分析。2017年02月02日読了。

著者のピーター・ナヴァロ氏はカリフォルニア大学アーバイン校の教授で、ドナルド・トランプの大統領選選挙アドバイザーになり、現在はトランプ大統領が新設した国家通商会議の初代委員長。

本書は帯に「大統領補佐官自らが執筆! 防衛省現役組が今読んでいる本」と大々的に煽っている。

実際、巻末の解説は防衛省の主任研究官が書いている。

この手の世界各国の戦力分析に関する書籍は、小川和久・坂本衛「日本の戦争力」2006年02月03日読了。10点満点

を筆頭に、昔から何冊か読んでいる。現代の戦争は空を制して(制空権を握る)、そのあと海を制する(制海権を握る)。それが出来ればほぼ勝つ。

というのだったが、本書は違う。

数は力。それが本書。

本書に書かれている内容は、アメリカ人がこんなに日本と韓国と北朝鮮と台湾のことを知っているのか! と驚きを隠せないほど詳しい。生半可に新聞記事(というかネットに載っているニュース)ばかり読んで知った気になっている私なぞは、著者の知見の深さに驚いてしまった。(とはいえ、年に数万ドル~数十万ドルの賃金をもらっているなら、このくらいの分析をするのは当たり前なのだろうが)

本書を読んでとにかく驚いたのは、アメリカも日本も採用しているイージスシステム(平たく言えば、自国の空母や自国の国土を狙って発射されるミサイルを、イージス艦が次から次へと撃ち落とすシステム)は、イージス艦が搭載しているミサイル数を上回るミサイルを直接イージス艦に向けて撃てば、イージス艦は自分の防衛で手いっぱいになり、自艦に積載しているミサイルが尽きたら一巻の終わり。

つまり、数の多さが勝負のカギ。

これは…「防衛省現役組が今読んでいる本」という帯文句も分かる。

中国が、サルでも作れる格安兵器を大量に戦場にぶち込んだら、アメリカ軍は負ける。

ということが書かれている本である。

恐ろしい。


9点/10点満点

2017/02/17追記
佐藤優氏による本書のレビューが、現代Webに載っていましたのでリンクします。

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2017/01/20

池内恵「中東 危機の震源を読む」感想
中東分析。2016年11月27日読了。

2009年に出版された本。イスラム研究家としての池内センセの知名度が上がり、ISISが台頭してきた2015年に増刷になった。この手の本が出版から6年もたって増刷ってのは珍しいんじゃなかろうか。

本書は、新潮社の月刊誌フォーサイトに2004年から連載されていた「中東・危機の震源を読む」の53回分(約4年半)の原稿を連載順に並べたもの。フォーサイトは以前定期購読をしていたが、今は紙媒体はやめてしまってWebマガジン(基本有料、一部無料記事あり)になっている。国際情勢のエキスパートが数多く執筆していて、日本有数の優れた情報源。

本書を出版にあたって内容を再構成するなどは一切なく、単純に連載順に並んでいる。そのため前半部(書かれた時期が古い)(は「この先、○○国の政権は厳しい局面を迎えるだろう」的な文言が出てくるのだが、後の章(書かれた時期が新しい)で「やはりこのように事が進んだ」的な解説が出てくる。結果が分かっていることなので、読んでいてちょっとムズムズした。

全体的には、池内センセの目線を知る本、という印象。悪くはないんですけど、ムズムズするのです。


6点/10点満点

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2017/01/17

墓田桂「難民問題 イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題」感想。
国際情勢分析。2016年11月11日読了。

2016年2冊目の10点満点

◆内容(Amazonより)
2015年9月、トルコ海岸に漂着した幼児の遺体は世界に衝撃を与えた。
シリアなどイスラム圏出身の難民を受け入れる輪が、ドイツを中心に広がる。
だが11月のパリ同時多発テロをはじめ、欧州各国で難民と関係した事件が相次いで発生。
摩擦は激化し、EU離脱を決めた16年6月のイギリス国民投票にも影響した。
紛争や弾圧に苦しむ難民を見過ごして良いのか、しかし受け入れる余裕はない――欧州の苦悩から日本は何を学ぶか。

【目次】
第1章 難民とは何か
1 歴史のなかで
2 保護制度の確立へ
3 21世紀初頭の動向

第2章 揺れ動くイスラム圏
1 アフガニスタンからの連鎖
2 「アラブの春」以降の混乱
3 脅威に直面する人々
4 流入に直面する国々

第3章 苦悩するEU
1 欧州を目指す人々
2 限界に向かう難民の理想郷
3 噴出した問題
4 晴れそうにない欧州の憂鬱
5 問題の新たな展開

第4章 慎重な日本
1 難民政策の実情
2 シリア危機と日本
3 関連する課題と今後の展望

第5章 漂流する世界
1 21世紀、動揺する国家
2 国連の希薄化、国家の復権

終 章 解決の限界


◆感想
読み終わった後Amazonレビューを見たら、けっこう評価が分かれている。総合では★4つだけど、★1つや★2つの評価もある。

私は10点満点をつけた(Amazon基準だと★5つ)。

難民という概念はどこから始まったのか。本書では紀元70年のユダヤ戦争(ローマ帝国vsユダヤ)から説明を始めている。

第一次世界大戦後に、国際赤十字委員会(ICRC)からの要請で国際連盟が難民を保護する活動を開始。国際連盟が国際連合に代わり、現在の国連難民高等弁務官へと発展し、パレスチナ難民への対処が本格的な第一歩となる。

現在のシリアにつながるイスラム圏の動乱に関しては、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)が端緒であったとし、そこからシリアまで一気に話を持っていく。

イスラム系の難民がなぜEUに行きたがるのか。EUはなぜ大勢の難民を受け入れたのか。EU加盟国間で意思にずれがあるのはなぜか。

そしてそれらを鑑み、日本の過去がどうであったのか(ベトナム戦争のボートピープル)、現在の対応はどうなのか、未来はどうすべきなのか。

これらを新書の枠の中で、削るべきところはばっさり削り、難しすぎず易しすぎない、著者の主張したいところはきちんと主張する。

この手の本を何冊か読んでいる私にとって、復習を兼ねながら新しい知識を得られる、実にちょうど良い本であった。

素晴らしい。


10点/10点満点


のだが、この本を読んだ後の2016年末に、NHK-BS世界のドキュメンタリー「オーストラリア 難民“絶望”収容所」を見たら、ちょっと印象が変わってしまった。

オーストラリア(豪州)は、現在世界で最も過激な難民排除政策をとっている。Newsweekの関連記事

例えばミャンマーのロヒンギャ族(仏教国ミャンマーのイスラム教徒・少数派・アウンサンスーチー政権下でも軍や警察に弾圧されている)が船にすし詰めになってオーストラリアに来る。オーストラリアは難民受け入れを拒絶し、パプアニューギニアのマヌス島または太平洋の島国ナウルに設置した難民センターに強制収容している(両国にはオーストラリア政府から数十億円の金が払われている)。難民の選択肢は自国へ戻るか、難民受け入れ提携をしたカンボジアに移住するかの二択(カンボジアも大金を受け取っている)。拒否すれば難民センターにただ居るだけ。仕事もなく、食事や医療も満足とはいえない環境で、難民の子供に教育すら受けさせない。難民は、いつ難民センターを出られるか分からない(二択を拒否したから)。自分の前途に絶望した難民が自殺しても、オーストラリア政府は対策を取らない。

難民センターで働く職員やボランティアは、難民センターで見聞きしたことを一切口外してはならない。口外すると禁固2年の実刑判決を受ける。このドキュメンタリーは、口外すると実刑判決、という法改正がなされる前に隠し撮りされたものである。

このことについて本書ではp224で軽く触れられているが、オーストラリア政府は億円単位の金を使ってまで難民をどうにかしようと思っている(但し自国には入国させない)という見方もある。難民問題のオフショア化(≒アウトソーシング)とのこと。それは確かにそうだな。

難民問題は難しい。なので10点満点の評価は変更なし。

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2017/01/08

国枝昌樹「「イスラム国」最終戦争」感想。
いわゆる新書。2016年09月09日読了。

著者は2006‐2010年在シリア特命全権大使。著者の情報ソースはシリアのアサド政権関係者が比較的多く、著者自身アサド政権寄りの見解を示すことが多い。そのため、一部のジャーナリスト(アサド政権がIS壊滅作戦と称して反政府ゲリラおよび一般市民を攻撃しているのは政府による虐殺である、と主張している人たち)からとても嫌われている。

国際情勢を知る上で、片方だけの見解で物事を知った気になるのはよろしくない。シリアは「アラブの春」の流れでアサド政権下ろしが始まったが、アサド政権が倒れた後の具体的な出口戦略が無いまま内戦をたきつけた欧米政府や西側マスコミの責任はどうなのよ? と私は思うのである。

アサド政権(先代の父親から息子現大統領まで1971年からずっと続いている)下では言論の自由はなく、住民同士による監視社会だったが、旅行者にとって世界で一番安全な国と言われ、世界中のバックパッカーが安心安全な旅をできた国だったのに。

結果論でいうと、「アラブの春」での政権転覆が曲がりなりにも成功したのは、最初に起きたチュニジアだけ。

・エジプト→ムバラク政権崩壊、選挙でムスリム同胞団が第一党になるもイスラム寄りの憲法改正を強引に進めて軍部がクーデターを起こし、現在は軍政

・リビア→カダフィ政権崩壊、その後国を東西に分けて士族による石油利権分捕り合戦が始まり内戦勃発。そのすきにISが勢力拡大中

・イエメン→サーレハ政権崩壊、その後ハディ副大統領が暫定大統領に就くも、フーシがクーデターを起こし内戦勃発。

・バーレーン→反政府勢力が政権打倒を目指して集会を企画した段階で政府による武力弾圧、アメリカ黙認(アメリカ軍が駐留しているから)、反政府派撃沈。


アサド政権が良いとは言わないが、アサド政権だけを批判しているジャーナリストはあまり信用できない。というのが私のスタンス。


で本書。

地域的に著者の専門外であるナイジェリアのボコハラムまで盛り込んだ(なーんか上っ面の解説に終始している)のは失敗だったんじゃないかなあ。と思う次第。

(とはいえ著者は在カメルーン特命全権大使も務めていたので、ナイジェリアが全くの専門外というわけではないのだが)


5点/10点満点

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2016/12/24

近藤大介「パックス・チャイナ 中華帝国の野望」感想。
国際情勢。2016年06月21日読了。

著者は週刊現代の編集次長で、現代ビジネス(Webメディア)に中国関連のコラムを連載している人。たぶん中国語がペラペラ。今、いちばん勢いのある中国ウォッチャー。(ちょっと前まで富坂聰氏を推していましたが)

さて感想を書こうと半年ぶりに本書を手に取ってみると、内容をあまり覚えていない。

これは本書の内容が良い悪いという話ではなく、中国は頻繁に政治情勢が変わり、私はWebメディアで毎日いろいろ追いかけているため、本書で読んだ内容なのか、現代ビジネスで読んだ近藤氏の直近コラムなのか、他のWebメディアに載っていた話なのか、こんがらがってしまうのです。

とりあえず、本書が出版された2016年5月までの中国総括としては、とてもよくまとまっていると思います。

また近藤氏は週刊現代という大衆誌で鍛えられているため、全体構成の上手さ、文章の平易さ、(中国の人名など)誤読を避けるテクニックが上手いです。

読んで損はない本です。

7点/10点満点

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2016/12/22

最上敏樹「人道的介入 -正義の武力行使はあるか-」感想。
国際政治学。2016年05月13日読了。

◆内容(本書カバー折り返しより)
極度の迫害を受け、生命が危険にさらされている人々に対して、国際社会には何ができるか。彼らを救うのに武力以外の手段がないとすれば、どうしたらよいのか。人道的介入の名目でNATOが行ったユーゴ空爆をはじめ、ソマリア、ルワンダなど、数々の地域紛争を検証し、21世紀における平和のあり方、人道的であることの意味を考える。

◆感想
国際政治、中でも内政不干渉(独立国家の内部で起きている事態に関して、国連や他国が容易に口出ししてはならない事)の禁を破って干渉する事態は、国連が絡んでいようといまいと、国家の主権に関する概念をきちんと理解していないと難しい。

国際政治に関する本を読んでいるだけの私(大学等で専門教育を受けたわけではない)には、少々敷居の高い=難しい本だった。なぜ難しいかというと、国連憲章の第〇条第〇項にこう書かれているが、その解釈は正しいのだろうか? 的な記述が多く、国連憲章なんて見たことすら無いよ、という私には難しいのであった。

これは、日本国憲法の改正に関し、憲法学者が、憲法〇条はうんたらかんたらと述べているのが難しく感じることと近い。

本文より、私が注目したところ。

P16&P25
1971年3月から12月までの間に、東パキスタン(現バングラデシュ)で、ベンガル人100万人がパキスタン政府の手で虐殺された。

→ベンガル人はバングラデシュの多数派。パキスタンの多数派はパンジャブ人とパシュトゥーン人。バングラデシュ独立前、政権を握っていた現パキスタンのパンジャブ人は、東パキスタンを差別していて(人種が違う、宗教が違うなどの理由)、怒った東パキスタンが1971年3月に独立を宣言すると、逆切れしたパキスタン政府が反逆者の弾圧に乗り出したというもの。

パキスタンに関してはほとんど勉強していないので、この話は全く知らなかった。

P42
スハルト時代のインドネシアの左翼弾圧(犠牲者30-40万人)
1970年頃、北部スーダンが南部スーダンを虐殺(犠牲者50万人)
ナイジェリア内戦=ビアフラ紛争(犠牲者60‐200万人)

スハルト時代のことは、最近(2016年11月・当ブログへのアップはしばし先の話)読んだ本に書かれていた。

ビアフラ紛争は伊藤正孝「ビアフラ 飢餓で滅んだ国」2012年09月11日読了。10点満点が素晴らしい本だった。

スーダンに関しては、1970年頃から揉めていたのは知らなかった。


というような事例を紹介しながら、本書は旧ユーゴが崩壊に至った一連の事態を検証していく。
世間的には、セルビア=悪、ボスニアヘルツェゴビナ=可哀そう、クロアチア=可哀そう
なのだが、これはボスニアヘルツェゴビナがアメリカの広告代理店を使って、世界中でセルビア=悪のキャンペーンをした結果に出来上がったイメージなのであって、もちろんセルビアも相当いろんなことをやらかしたが、ボスニアヘルツェゴビナやクロアチアも、セルビア人を虐殺しまくっていた。ここいらは高木徹「戦争広告代理店」2005年08月30日読了。10点満点。に詳しい。

そのうえで、

P126
「人道的=正義であるなら何をしてもよい」という結論を安易に導かないことである。

というような見解を示している。この引用が著者の見解のすべてではないが、かなり凝縮された言葉なのかな、と私は思っている。


7点/10点満点

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2015/12/07

柴宜弘「ユーゴスラビア現代史」感想。
近代史。2015年11月11日読了。

予約投稿に失敗してました。トホホ。


本書は1996年に書かれた本。

旧ユーゴは1991年に崩壊が始まり、1995年までクロアチア紛争、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が続いた。コソヴォ紛争は1996年~1999年まで続いた。したがって本書には、コソヴォ紛争の結末は書かれていない。


本書は旧ユーゴスラビア地域の、中世からの歴史的経緯説明に始まり、オスマン帝国やハプスブルク帝国の支配下にあった1800年代~第1次世界大戦前、チトーがユーゴスラビアというひとつの国にまとめた第2次世界大戦前後、そして崩壊に至るまでについて書かれている。

旧ユーゴの中心セルビア(セルビア公国)と、クロアチア(ハプスブルク帝国支配下≒オーストリア・ハンガリー二重王国)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(オスマン帝国支配下)との紛争の火種は、1800年代に既に存在していたとのこと。

第1次バルカン戦争で、セルビア・モンテネグロ・ブルガリア・ギリシャ連合軍がオスマン帝国を破り、オスマン帝国に支配されいた領土(ボスニア・ヘルツェゴビナ)を取り戻した。その後、領土の分割にブルガリアが対立、ブルガリア対セルビア・モンテネグロ・ギリシャ連合の戦争に発展(第2次バルカン戦争)、四面楚歌のブルガリアが負ける。

第1次世界大戦により、オーストリア・ハンガリー二重王国は消滅、スロベニア、クロアチア、ヴォイヴォディナなどがオーストリア・ハンガリー二重王国の支配下を離れ、新たな国家スロベニア人・クロアチア人・セルビア人国を作る。

セルビア主導でバルカン地域をひとつにまとめる「大セルビア主義」の動きがあり、しかしクロアチア人やボスニア人は「私たちはセルビア人ではない」と政治的な対立が生まれるも、第2次世界大戦が勃発し、ドイツが侵攻(ドイツ側にイタリア・ブルガリア・ハンガリーも参戦)、セルビア軍はボスニアの山中を隠れ蓑にして、徹底抗戦(パルチザン)した。

パルチザンの中心にいたチトーが、第2次世界大戦後、ユーゴをひとつの国にまとめたのだが、元もと紛争の為は1800年代からあったので、チトーの死後、ユーゴは連邦国としてのまとまりがなくなり、崩壊に至った。


的な事が、かなり分かり易く書かれている。

ユーゴ崩壊に関する本は何冊も読んでいるけど、もっと早くこの本を読んでいれば良かったと後悔。

良書。


9点/10点満点

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2015/11/01

ジュリアン・クリブ/柴田明夫訳「90億人の食糧問題」感想。
啓蒙書的なルポ。2015年10月10日読了。


本書の感想に入る前に。

今の日本で人手不足が深刻な業界は、介護、建築・土木、小売店(特に深夜)、それと大型車両のドライバーなのだそうだ(ソースは現代Webとか東洋経済とかいろんなところ)。農家の跡継ぎ不足も深刻なのだろうが、実はトラックドライバー不足が深刻になっているという話。

トラックドライバーが不足すると、日本中の物流が滞ってしまい、製造主も卸も小売りも皆ダメージを受ける。

メガ小売りの過剰なコストダウン要求で、トラックドライバーの平均年収は400-600万程度で頭打ちなのだそうだ。食うには困らないくらいの給料はもらえるが、日本の若者人口が減っている+若者の高学歴化が進んでいる+将来の展望があまり見えないことから、なり手が激減しているのだとか。

で、自動運転技術の開発が絶賛進行中なのである。

高速道路だけでも自動運転できるトラックが開発されれば、物流人件費が劇的に下がるから、自動車メーカーだけじゃなく、資金力のある小売りもじゃんじゃん資金を注ぎ込む(米国のAmazon本社など)。

ということで、日本は人手不足がそこかしこで深刻化している。


しかしながら世界に目を転じると、そこかしこで人が余っている。

「アラブの春」でチュニジア、エジプト、リビアの政権が転覆し、シリアは泥沼の内戦に陥っているのも、元を辿れば、人あまりによる就職難が原因。

大学に行って専門分野の学位を取得したのに、正社員どころかアルバイトの口すらない、日雇い仕事で辛うじて糊口を凌ぐ。そういう若者が世界中に溢れている。

チュニジアの若年失業率は30%。エジプトは23%(ソース:JICAの記事

ギリシャやスペインでは、若年失業率が50%超(ソース:朝日新聞のWebRONZA


そういういう意味では、日本は仕事を選ばなければ何とか職にありつくことができるともいえる。だが、誰しも将来的に高い給料をもらえる職種に就きたいと思っているのに対し、企業は安くこき使えて体力のある若者を欲しがっている。ミスマッチ。それが結局、介護ロボットの開発、自動運転の開発、ロボット受付嬢、セルフレジの導入、鮨ロボット、土木職人の技術を数値化して工具化、等々につながっている。

若者の人口減少に悩む先進諸国は、技術開発力を駆使して、若者がいなくても成り立つ世界を作り上げようとしている。

その余波が、今の中進国に一気に襲いかかってくる。中進国は子だくさんな傾向にある。子だくさんな国が、先進国から若者を必要としない技術を導入したら、若者は今以上に職にあぶれる。


あまり考えないで一気に書いたので若干ヘンテコな内容になってしまいましたが、少子化に悩む先進国が、人手を必要としない技術を開発しているため、少子化じゃない国の若者が困っている、ということです。


で、本書。


世界の人口は2011年頃に70億人を突破しました。

2040-50年に90億人を突破することが予測されています。

世界人口が90億人に達した時、食糧は足りるのでしょうか?


ということを、世界中の様々な学術研究、シンクタンクの報告書などを元に、警鐘を鳴らすためやや悲観的に問題提起しているのが本書。著者はオーストラリア(豪州)の科学ジャーナリスト。

本文約300ページで、ところどころ主張が重複して鬱陶しいのを除けば、かなり為になる本


◆世界中で淡水を使いすぎている。特に地下水と湖。

地下水脈に水が貯まる過程は、雪解け水や雨水が地表に届き、大地にゆっくりとしみ込み、数十~数百mの地層が不純物を濾過し、地下水脈に貯まる。地下水脈に貯まる以上の水量を汲み出すと、いずれその地下水脈は枯れる。

アメリカの農村地域では、この地下水枯渇が大変な問題になっている(例:オガララ)。

また、無計画な灌漑農業をすすめた結果、旧ソ連のアラル海(現カザフとウズベク)、アフリカのチャド湖は、どちらも面積が1/10以下になってしまった。

淡水が減るということは、農業に使える水が減るということである。

(ちなみに、地球上の「水」の量は基本的に不変。減らないし増えない)


◆そもそも農地は90億人の食糧を生産できるほど残っているのか?

どこの国でも構わないが、人口が増えると、都市化が進む。

都市化は、農地を潰して人が住む場所を作る行為である。

いろんな客観データを見ると、世界には、もう農地(農作に適した土地)が残り少ない。世界人口が90億人になった時、食糧を生産できるだけの農地が残っているのだろうか?


◆リンが枯渇する

農業(に用いる肥料)は、窒素、リン酸、カリウムが必須である。

そのうち、リンが枯渇しつつある。(ソース:環境バイオテクノロジー学会の論文PDF

リンが枯渇したら、農業は成り立たない。

太平洋の小さな島国ナウルは、鳥の糞でできたリン鉱石が豊富な国だったが、取り尽くしたため、今は没落国家となっている。


◆魚が枯渇する

船を漕いで海に出れば、いくらでも魚が捕れる。

世界中の沿岸部に住む人々は、昔も今も魚を獲って暮らしてきた。だが今、魚が捕れなくなってきている。乱獲が原因と考えているのならまだマシだが、世界中の多くの漁業関係者は、魚は無尽蔵だと勝手に思い込んでいる。

ニシンはすっかり減ってしまった。

マグロも減ってきている。ウナギも減っている。

この傾向が、特定の魚の話ではなく、すべての魚が減っていると考えないのはなぜだろう?


◆経済が向上すると、肉食が増える

牛肉1kgを生産するのに必要な淡水で、
トマト91kg
キャベツ175kg
が生産できる。

しかし、人は本質的に肉が好きである。


◆石油の代わりにバイオ燃料

石油が枯渇しつつある。

その代わりに、バイオ燃料が用いられるようになった。

バイオ燃料はサトウキビやトウモロコシから作られる。

食糧よりも燃料。これは正しいのか?

…というようなことが書かれている。良書。


7点(悲観的すぎ)/10点満点

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