著者の本は岩崎育夫「アジアの国家史」2015年03月05日読了。10点満点 を読んだことがある。素晴らしい本だった。
本書はタイトルの通り、東南アジア史に関する入門書。ASEANに加盟している
インドネシア
シンガポール
タイ
フィリピン
マレーシア
ブルネイ
ベトナム
ミャンマー
ラオス
カンボジア
の近現代史を簡潔にまとめた本である。本書も素晴らしい。
16世紀頃にヨーロッパ諸国が進出する手前の時代から始まり、
最初は貿易だったのがヨーロッパ諸国(ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス、フランス)による侵略、植民地化へと進み、
ヨーロッパにとってかわって植民地化した大日本帝国時代、
第二次世界大戦を終え脱植民地となる1945-1960年代の各国の独立、
そして現在に至る発展の経緯が書かれている。コンパクトにまとまっていて、かつ概ね時系列に書かれているので、調べ物をする際に非常に役に立ちそうである。
私はインドネシア史やシンガポール史、東南アジア全体の歴史については何冊か本を読んだが、本書には知らないことも多く書かれていたので、とても有益であった。
以下、私がへえー、と思ったところ。
p39
マレーシアは現在も立憲君主制の下、13州のうち9州でスルタン(イスラムの王様)体制を維持している。
p52
1500年代半ば、スペインは中国との貿易を望んだ。その理由は当時、世界の経済大国1位と2位はインドと中国だったから。
p55
1700年代半ば、インドの村でイギリス東インド会社VSフランス・ベンガル豪族連合軍の戦いがあり、イギリスが勝利した。プラッシーの戦いという。
→フランスもインドに進出していたのか。
p81
1800年代終盤~1900年代初頭、フランスの植民地化にあったベトナムで、反フランス運動を起こしていた活動家を日本に留学させた。200人を超えるベトナム人が日本にやって来た。しかし、日仏条約をタテにフランスがこの留学生受け入れに反発、結局日本は留学生をベトナムに追い返した。そのため、反フランス運動の主導者ファン・ボイ・チャウは、日本もヨーロッパと同じ植民地支配者であるとみなすようになった。
p93
日本がアジア各国を植民地化した1942年に、大日本帝国は3つの事件を起こしている。
・シンガポールの華僑虐殺
・フィリピンでの戦争捕虜強制連行事件
・タイとミャンマーを結ぶ泰緬鉄道を建設するための労働者強制連行
p114
第二次世界大戦終了後、東南アジア各国が独立するのに2つのパターンがあった。
・もう植民地の時代じゃないと独立を容認するアメリカとイギリス(フィリピン、ミャンマー、マレーシア、シンガポール)
・植民地復活を望んだフランス、オランダ、ポルトガル(ベトナム、インドネシア、東ティモール)
p129
マレーシアの首相は、有名なマハティール以外は全員王族出身。
p132
インドネシアはアチェ独立紛争などがあり、ユドヨノ政権時代に各州の自治権を拡大、28州だったのが現在では41州まで増えている。
p139
スカルノ時代のインドネシアは、マレーシアと断交したことがある。
p143
1978年、ベトナムはカンボジアに進行してポル・ポト(親中国)を排除。
それを受け1979年、中国はベトナムに侵攻(中越戦争)(ベトナムの勝ち)
ベトナムは国内にいる華人を弾圧、財産没収の上、山奥に引っ越すか海外に去れと命令。多くが難民となり、そのボートピープルは日本にも大勢やって来た。
p159
シンガポールの首相リー・クアンユーは独裁者で、現在も新聞などのメディアは検閲を受けている。(ちなみに本書では触れられていないが、シンガポールでは政治集会も禁止されている)
などなど。とても面白かった。
9点/10点満点