カテゴリー「◇科学」の記事

2017/09/07

エドワード・フレンケル/青木薫訳「数学の大統一に挑む」感想。
数学ノンフィクション。2017年08月01日読了。

本書は数学の本ではなく、現代最先端の数学者が挑んでいる「数学の大統一」とは一体何なのか、それに挑もうとしている著者の生い立ちから始まり、著者を数学に導いた数学者たちの話、そして最先端の数学者はどのよう大統一に取り組んでいるのか、について書かれた本。

とはいえ、数学についての記述も多々ある(数式はあまり出てこない)

◆本書の概要(Amazonより)
xのn乗 + yのn乗 = zのn乗

上の方程式でnが3以上の自然数の場合、これを満たす解はない。
私はこれについての真に驚くべき証明を知っているが、ここには余白が少なすぎて記せない。

17世紀の学者フェルマーが書き残したこの一見簡単そうな「フェルマーの予想」を証明するために360年にわたって様々な数学者が苦悩した。

360年後にイギリスのワイルズがこれを証明するが、その証明の方法は、谷村・志村予想というまったく別の数学の予想を証明すれば、フェルマーの最終定理を証明することになるというものだった。

私たちのなじみの深いいわゆる方程式や幾何学とはまったく別の数学が数学の世界にはあり、それは、「ブレード群」 「調和解析」 「ガロア群」 「リーマン面」 「量子物理学」などそれぞれ別の体系を樹立している。しかし、「モジュラー」という奇妙な数学の一予想を証明することが、「フェルマーの予想」を証明することになるように、異なる数学の間の架け橋を見つけようとする一群の数学者がいた。

それがフランスの数学者によって始められたラングランス・プログラムである。

この本は、80年代から今日まで、このラングランス・プログラムをひっぱってきたロシア生まれの数学者が、その美しい数学の架け橋を、とびきり魅力的な語り口で自分の人生の物語と重ね合わせながら、書いたノンフィクションである。

◆引用終わり

著者(1968年ソ連生まれ→ゴルバチョフのグラスノスチでアメリカに留学→ソ連崩壊ヒャッハーッ)が数学に魅せられるようになったきっかけ、ユダヤ人差別が残っていたソ連時代の勉強法、モスクワ大学に行けず腐っていた、などの著者自身の話は大変面白い。

しかし、本書後半から大統一の話になり、超高等数学の話になるとほぼほぼ理解できなかった。著者は易しく書いたと「はじめに」で書いているが、そこは超高等数学、易しく書かれていても理解するの無理。

まあ、根性で最後まで読みましたが。


数学ノンフィクションの最高傑作(というより、我が読書人生ベスト10に入る超大傑作)
サイモン・シン/青木薫訳「フェルマーの最終定理」2015年06月11日読了。10点満点

と訳者が同じ。日本語でこれ以上の翻訳は望めないという状態なので、超高等数学は私には理解不能の領域なのだろう(理解できないのが普通だと思うけど)。

著者の人生は面白いので、そこだけでも読む価値あり。


7点/10点満点

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2017/08/24

沖大幹「水危機 ほんとうの話」感想。
資源論。2017年07月09日読了。

著者は水文学(すいもんがく)を専門としている東大教授。

その著者が、タイトル通り「水危機」について、専門家としての知見を十分に披露した一冊。水文学への理解の低さをネタに、やや自虐的に「水危機」について解説するスタイルは、文章の上手さと相まって私のツボにはまった。

「水危機」に関するデータは信頼するに足るものであり、そこはさすが専門学者というしかない。

地球上にある「水の量」は、水分子が宇宙へ持ち運ばれない限り、不変である。という話を7年前に法政大学(通信教育のスクーリング授業)で聞いた時、かなり驚いた。近未来、人類が月や火星に定住するようになったら、水を運ぶかもしれないとのこと。


以下、本書の抜粋。

(p20)
平地で草原が維持される目安の降水量は年間200mm(エジプトのカイロは35mm、イラクのバグダッドは69mm。どちらも草原が維持できない)

(p27-33)
地球上の水のうち、塩水は97.5%。

淡水が2.5%と書く場合もあるが、それは確かにそうなのだがあっているようで間違っている。
2.5%のうち1.69%は深い地下水で、一度利用すると元の場所には戻らない水(化石水というらしい)。

などということを累積すると、人類が利用できる「循環した淡水」は地球上の水の0.01%

「循環した」というのが重要で、循環(淡水を利用する→排水を川に流す→海に流れる→蒸発して雲になる→雨となって地表に降る→利用できる淡水になる)している限り、この水は利用できる。

(p49)
人間の体は一日にどのくらいの水を必要としているのか?→2~3リットル。

→そこではなく、私が知らなくて驚いたのは、人間はでんぷんや脂肪、たんぱく質を分解する際、代謝水という水を生産している。成人が1日2000kcalのエネルギーを摂取すると、約300gの水(代謝水)を生産する。

水分を全然とっていないのに小便が出るのはこういうことだったのか!

(p84)
イスラエルとシリアがゴラン高原という水源をめぐってドンパチ(戦争)したが、1週間戦争する資金があれば、海水淡水化施設を建設できる。

→海水淡水化施設って意外と安い? まあその後の維持管理費(人件費含む)を考えるとそこまで単純じゃないと思うけど。


ここまでで本書の1/4。

本書は良い。

とても良い。

読むべし。

9点/10点満点

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2017/08/23

竹村真一「新炭素革命」感想。
科学。2017年07月10日読了。

内容を台無しにする酷い書籍レイアウトにゲンナリ。

2点/10点満点

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2017/06/12

永田和宏「人はどのように鉄を作ってきたか 4000年の歴史と製鉄の原理」感想。
ブルーバックス。2017年06月05日読了。

立ち読みしてから買ったのだが、ちょっと思っていたのと違う内容だった。

昔日本で使われていた、たたら炉は木炭を用い、ふいごを使って酸素を送り込むことで高温を発生させる。鉄は鉄鉱石ではなく砂鉄を用いるので、砂鉄が良くとれる川岸に近い場所に炉があった。

炉の高さは○○cm、幅は〇〇cm、地上から○○cmの所に羽口という空気綱がありそこから空気(酸素)を送り込む。炉が温まってから砂鉄〇gと石灰〇gを入れ、2時間経ったら木炭〇gと砂鉄と石灰を追加投入。これを2時間ごとに繰り返し…

というようなことが書かれている本。

著者が書きたかった内容と、私の知りたいことが異なっていたので評点はつけません。

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2017/06/04

坪田一男「あなたのこども、そのままだと近視になります。」感想。
医学。2017年04月12日読了。

近視は眼鏡で矯正できるし、LASIKなどの外科手術でも矯正できるので、眼科医は近視の原因を調べることに手を出してはいけないのだそうだ(暗黙の了解事項)。

慶応大学医学部眼科教授の著者は、いろいろあって近視の原因の調査に乗り出した。

医学的に明確な根拠があるのは、「毎日屋外で2時間以上遊んでいる子供は近視になりづらい」

これを動物実験で調べていったところ、「紫外線に近い波長の可視光線」を浴びると近視になりづらい、というところまでわかってきた。

この「紫外線に近い波長の可視光線」は、メガネにコーティングされているUVカット機能で、カットされてしまう波長。なので、ちょっとだけ近視の子供がメガネをかけて毎日屋外で2時間遊んでも、近視は進んでしまう。

へえー、なるほどなあ。

と思うのだけれども、本書はやっつけ仕事で書かれた感じがありありとしていて、まとまりが無さ過ぎ。残念な本。


3点/10点満点

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2017/01/07

渡部潤一/渡部好恵「最新 惑星入門」感想。
サイエンス。2016年09月06日読了。

本書出版時である2016年7月現在までに判明している、惑星・衛星・小惑星・太陽系外縁天体に関する最新の情報を盛り込んだサイエンス本。著者渡部潤一は国立天文台教授で副台長。

太陽系外縁天体(冥王星より外側にある惑星や準惑星等)に関してはラスト15ページくらいでさらっと書かれているだけだが、天体観測技術の向上に伴って、惑星級の大きさを持つ天体が新たに発見される可能性が高まってきているとのこと。

ワクワクしますね。

星好きにはお勧めできる本です。ただあとがきによると、著者が過去に書いた本を再構成している部分がかなりあるとのことなので、著者の本をすでに読んだことのある人にとっては肩透かし的な結果になるやもしれません。


8点/10点満点

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2016/12/31

竹内淳「高校数学でわかる光とレンズ」感想。
ブルーバックス。2016年08月06日読了

第4章までは光とレンズの仕組みを優しく解説。実用的でもある。

第5章以降は、光学の数式を導き出すことが目的と化し、ブルーバックスというよりは大学の光学教科書のようになってしまっている。大学の教科書のような内容を書くにはページ数が足りないので、かなり駆け足になってしまっているし、実用的でもない。

私に光学の知識が無いためそう感じるのかもしれないが、大学の教科書のような内容を知りたいのなら教科書を読めばいいのであって、ブルーバックスで書く内容ではない。

ブルーバックスの執筆者は基本的にその道の専門家なので、専門的になりすぎないように編集が舵取りをしなければイマイチな本が出来上がってしまう。

本書はそのイマイチな部分が多かった。と個人的には思う。

「高校数学でわかる」シリーズは数学を楽しむ本なのだ! と言われると返す言葉もないのだが。


5点/10点満点

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2016/05/10

吉村忠与志「知るほどハマル!化学の不思議」感想。
サイエンス。2016年04月11日読了。


鉄筋コンクリートの鉄筋はなぜ錆びないのか? それはセメントの主成分であるケイ素がアルカリ性で、錆は鉄が酸化することで起きる(酸化鉄)。ナノで、アルカリ性のセメントに覆われている限り、鉄筋は錆びません。

というようなことが書かれています。(個人的に興味がそそられる話が少なかった)

中学生向きかな。


4点/10点満点

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齋藤勝裕「へんな金属 すごい金属」感想。
サイエンス。2016年04月08日読了。

ナトリウムは金属です。塩化ナトリウム=塩なので、塩のイメージが強いけど、ナトリウム単体は金属です。ナトリウムとカリウムの合金は、融点がマイナス10-20℃なので、常温では液体です。但し、空気に触れると爆発的に発火します。

タングステンと金の比重は全く同じです。なので、タングステンの塊の表面に金メッキしたものを金塊として売る詐欺が起きたことがあります。(タングステンはおおよそ30ドル/1kg、金はおおよそ40000ドル/1kg)

銅の錆である緑青は、昔は猛毒とされていましたが、現在では無毒であることが分かっています。


というような金属蘊蓄がいろいろ載っています。


中学生くらい向けかな。

5点/10点満点

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2016/04/24

サイモン・シン/青木薫訳「宇宙創生(下)」感想。
科学ノンフィクション。2016年02月25日読了。


下巻も非常に面白かった。

本書は、各章末に「この章のまとめ」が載っている。これを引用しながら、本書上下巻の魅力について書きたい。


上巻、第1章

紀元前6世紀のギリシャで、哲学者が宇宙を(神話的なことではなく自然現象として)観測し始めた。

宗教との絡みもあり、当初は天動説(地球が宇宙の中心)だったが、16世紀にコペルニクスが地動説(地球が太陽のまわりを回っている)を唱え始めた。

コペルニクスは無名だったから世界的には無視された。しかし、ティコ・ブラーエの観測結果を基にケプラーが改良モデルを発表した。

ガリレオが望遠鏡を使って観測し、その結果を基に地動説を擁護したが、カトリックの総本山ローマから異端扱いされた


第2章

1670年代、レーマーが木星の衛星を観測し、光の速度が有限であることを証明した。

宇宙はエーテルで満たされているという説が主流だった(エーテルは古典SF小説にもよく出てきましたね)

1915年、アインシュタインは思考実験(頭の中で仮説を立て、それを検証する作業)を行い、光の速度は観測者に対して一定という特殊相対性理論を作り上げた

特殊相対性理論はニュートン力学と矛盾していた。1919年、木星の軌道や太陽のまわりの光の間借り方などの検証によって、アインシュタインが正しいと証明された。

フリードマンとルメートルが、ビッグバンの概念を考え出した。


第3章

天文学者は大きな望遠鏡を作って宇宙を観測していた。

1700年代、ハーシェルが、太陽系は銀河系の一部ではないか? という考えを持ち出した

1784年までに、メシエは望遠鏡で観測できる星雲をカタログ化した。その際、星雲は「別の銀河なのか?」という大論争に発展した

1912年、ヘンリエッタ・リーヴィットはケフィウス型変光星を調べ、変更周期が明るさの指標となり、距離を見積もれることを示した。

1923年、ハッブルは星雲の中にケフィウス型変光星を見つけ、その星雲は銀河系より遥か遠くにあることを示した。そして星の光(色んな波長の光が混ざっている)を分析すれば、それがドップラー効果によって遠ざかっていることが分かった

全ての星が地球から遠ざかっていることが分かった。数十億年逆算すると、全ての星は、一点に集まっていることになる。つまりビッグバン仮説が正しい?!


下巻、第4章以降は、

宇宙の始まりはひとつの点だった=ビッグバン理論と、

VS

宇宙は今も昔(数百億年前)もその姿を変えることなく、ずっと同じ姿でいる=宇宙は永遠で静的論


の各論者がどのような論戦を行い、そしてどのような経緯でビッグバン理論が主流になったのか、が下巻では書かれている。


私が子供の頃(1970年代)に読んだSF小説は、エーテルが出てきたり(E.E.スミスのレンズマンシリーズ等)、ビッグバンの欠片も欠片も出てこなかったりしていたが、いつの間にか全世界の天文学者の主流がビッグバン理論になっていた。

ビッグバン理論がどのような経緯で主流になったのか、が本書に書かれているメインテーマなのだが、でもまあなんというか、隅々まで手を抜くことなく丁寧に書かれているので、読者としても気を抜くことなく隅々まで読み尽くしたいという気分にさせてくれる素晴らしい科学ノンフィクションである。


9点/10点満点

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