カテゴリー「◇科学」の記事

2020/01/04

山田克哉「原子爆弾 その理論と歴史」感想。ブルーバックス。2019年03月26日読了。9.5点/10点満点

 

原子爆弾の理論と、実際の製造方法、それらがどのように発見され、改良され、実際に使用されるに至ったかを書いた、450ページを超える大著。

 

原子爆弾の理論は簡単である。純度の高い(90%以上)ウラン235の塊(11kgくらい)を2つ用意し、塊同士をぶつけたら、勝手に核分裂連鎖反応が起き、核分裂に伴うエネルギーは熱に変換され、数百万度となり、大気が大膨張して大爆発となる。

 

これは私が高専5年生の時(20歳)、理論物理学の卒論指導教官から教わった内容と同じ。

 

ちなみに原子力発電に使うウラン235は純度が20%くらいなので、核爆弾には転用できない(が、発電に使用した燃料棒にプルトニウム239が生成され、これが核爆弾に転用できる)。

 

爆弾化するには、天然にはウラン235がとても少ない(通常のウラン塊にはウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%)ことと、塊同士をぶつけるタイミングにずれが生じると連鎖反応が起きないことがネックとなる(イランが今やっているのはウラン235の濃縮)。

 

本書は、理論的に核分裂にはとてつもないエネルギーを秘めていることの発見、中性子(連鎖反応を起こす鍵となる物質)の発見、ウラン235の濃縮方法の発見、人工的に連鎖反応を起こす方法の発見、そして戦争により物理学を飛び越え、原子爆弾として製造するための政治家と物理学者の駆け引き、人間ドラマ、などが書かれている。

 

本書は、中性子の役割などについて懇切丁寧に書かれている。
本書を読み終えると、物理学に詳しくなった気になる(もちろんそれは勘違いなのだが)

 

非常に良い。が、物理学にも原子爆弾にも興味がなければ、毛ほども面白くないことも自明である。ゆえに9点以上10点未満の評点をつける。

 

9.5点/10点満点

 

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須藤靖「不自然な宇宙」感想。多元宇宙論。2019年03月05日読了。9点/10点満点

 

宇宙に興味を持っている人が誰しも思うこと。
「宇宙に果てはあるのか」
「ビッグバン以前」
「そもそも宇宙はいったいどこに存在しているのか」

 

現在の科学技術では観測できないこれらの事柄について、物理学的アプローチ及び概念的アプローチで研究が進められている。

 

今我々がいる宇宙はレベル1ユニバース。
レベル1ユニバースとそっくりな別のレベル1ユニバースが、観測できないどこかにある。(p97他)
そのレベル1ユニバースの集まりが、レベル1マルチバース。(p64)

 

レベル1マルチバースが多数集まったものが、レベル2マルチバース。(p71)(p100)

 

こういうことを研究している人たちがいる。
こういう研究に資金を提供する人たちがいる。
素晴らしいな。

 

9点/10点満点

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大河内直彦「地球の履歴書」感想。地理学。2019年02月04日読了。9点/10点満点

 

◆Amazonより
熱球から始まったこの星はどのように冷え、いかにして生物は生まれたのか? 科学の発達とともに、私たちは少しずつ地球の生い立ちを解明してきた。戦争や探検、数学の進歩や技術革新などのおかげで、未知の自然現象の謎は氷解したのだ。海面や海底、地層、地下、南極、塩や石油などを通して地球46億年の歴史を8つのストーリーで描く。講談社科学出版賞受賞のサイエンティストによる意欲作。
◆引用終わり

地球という惑星はどのようにしてできたのか、科学者たちはどうやって調べてきたのか、を記した科学エッセイ。

どこかがピンポイントで面白いのではなく、全体的に良い。

地学が好きな人は読んでおくべき一冊。

 

9点/10点満点

 

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2020/01/03

マーク・ミーオドヴニク/松井信彦訳「人類を変えた素晴らしき10の材料」感想。科学エッセイ。2019年01月10日読了。8点/10点満点

 

復活します。

 

材料に関する科学エッセイ。
鋼鉄・紙・コンクリート・チョコレート・泡・プラスチック・ガラス・グラファイト・磁器・インプラント・材料科学の未来の11章からなる本。なんというか、一貫したテーマがあるように見えない並びである。

 

以下、興味を引いた部分の抜粋。

 

鋼鉄。石器時代に使えた金属は銅と金だけ。それ以外(鉄も)の金属は、鉱石から抽出しなければならなかった。酸化アルミニウム(Al2O3)の結晶は無色だが、不純物として鉄を含むと青くなり、サファイヤと呼ばれる。不純物としてクロムを含むと赤くなり、ルビーと呼ばれる。

 

紙。紙幣はコットン紙である。木を原料としていない。ヨウ素ペンで紙に何かを書くと、木(セルロース)のデンプンと反応し赤くなる。コットン紙はデンプンが存在しないので変色しない。

 

コンクリート。コンクリートは乾かない。水はコンクリートの主成分である。コンクリートは固まるときに水と反応して化学反応を起こし、内部に大量に水をため込んでいるのに乾かない。どころか耐水性を持つ。

 

著者はイギリス人であり、(個人的偏見であるが)イギリス人文筆家らしく文章がくどいのだが、10個の材料にまつわるエピソードがそれぞれ面白く、科学エッセイとして楽しく読めた。

 

 

8点/10点満点

 

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2019/07/21

スコット・ギャロウェイ/渡会圭子訳「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」感想。20190年01月05日読了。9点/10点満点。

 

噂に違わず良い。アップルは、アップルストアを展開することでルイヴィトンになろうとしている、という分析が良い。

 

9点/10点満点

※ココログが滅茶苦茶使いづらくなってしまって、ブログ移転を検討中なのです

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2019/01/05

松原隆彦「図解 宇宙のかたち」感想。
宇宙。2018年12月12日読了。

宇宙全体はいったいどんな形をしているのか、巨視的に見た場合の最新研究を一冊にまとめた本。

なのだが、数学的な理論話が多く(「図解」と銘打っているので図も豊富なのだが)、後半になればなるほど興味が持てなくなってしまった。


5点/10点満点

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藤岡換太郎「フォッサマグナ」感想。
地学。2018年11月27日読了。

フォッサマグナというのは、新潟から静岡にかけて存在する独特の地形のことで、その成り立ちはまだ解明されていない。

本書は、その謎に迫る著者の仮説である。

フォッサマグナの仮説を展開する前に、その前段階として地形に関する説明がいくつもなされているが、これが丁寧かつ図版も豊富で、分かりやすい(少なくとも一時的に分かった気になれる)。

だが残念なことに、私はフォッサマグナが一体どういう地形なのか、最後の最後までぴんと来なかった。

6点/10点満点

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山崎詩郎「独楽の科学」感想。
ブルーバックス。2018年11月22日読了。

4章までは、大人が読んでも十分楽しめる「独楽の科学」に関する話なのだが、5章以降、小中学生向けの内容にシフトしてしまって、個人的には肩透かしを食らった気分。


6点/10点満点

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小泉宏之「宇宙はどこまで行けるか」感想。
サイエンス。2018年11月12日読了。

人工衛星のエンジン・エンジニア(東京大学大学院准教授)である著者が、ロケットの仕組みと人工衛星のエンジンの仕組みを詳しく解説し、今の技術で人工衛星はどこまで行けるのか、これからの技術でどこまで行けるのか、を解説した本。ブルーバックスじゃなく、中公新書である(珍しい)

私的10点満点。

但しこれは、私の興味の対象にドンピシャに当てはまったからであり、宇宙に関心がないが読んでもそれほど面白くないかもしれない。

文章はうまいので、宇宙に関心がある人なら結構楽しめると思う。


10点/10点満点

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2018/09/19

中川毅「人類と気候の10万年史」感想。
ブルーバックス。2018年05月31日読了。

◆内容紹介(Amazonより引用)
人類は、たいへんな時代を生きてきた! 驚きの地球気候史
福井県にある風光明媚な三方五湖のひとつ、水月湖に堆積する「年縞」。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録した地層で、現在、年代測定の世界標準となっている。その水月湖の年縞が明らかにしたのが、現代の温暖化を遥かにしのぐ「激変する気候」だった。
人類は誕生してから20万年、そのほとんどを現代とはまるで似ていない、気候激変の時代を生き延びてきたのだった。過去の精密な記録から気候変動のメカニズムに迫り、人類史のスケールで現代を見つめなおします。

「年縞」とは?
年縞とは、堆積物が地層のように積み重なり縞模様を成しているもので、樹木の年輪に相当します。2012年、福井県にある風光明媚は三方五湖のひとつ「水月湖」の年縞が、世界の年代測定の基準=「標準時計」になりました。世界中の研究が、その年代特定で福井県水月湖の「年縞」を参照するようになったのです。この快挙を実現したプロジェクトを率いたのが著者です。

◆感想
超大当たりのブルーバックス。

水月湖は特殊な地形にあり、
・流れ込む大きな河川のない地形(湖水が動かない)
・山々に囲まれた地形(風の影響が少なく、湖水が混ざらない)
・生物のいない湖底(湖水が混ざらないので、湖底に酸素がなく、生物がいない)
・埋まらない湖(断層の影響で、湖自体がゆっくり沈下している)
福井県里山里海湖研究所のWebサイトから引用)
このような地形は世界的にも稀有とのこと。

水月湖(すいげつこ)に堆積した年縞は45mの厚さがあり、7万年もの時間をカバーしている。年縞の解析内容を踏まえつつ、10万年にわたる気候について解説したのが本書。

(p30)
地球の寒冷化は暴走する。地表が雪や氷で覆われ白くなると、太陽光を反射してしまい、温暖化に転ずるエネルギーが得られない。寒冷化から温暖化に転ずるのは、火山活動によるものと考えられている。

(p45)
グリーンランドは氷に覆われていて、島の中央では3kmに達する。その氷をボーリングして得られるのが、過去6万年分の気象データ。水月湖はそれを上回っている。

(p87)
水は、4℃のとき、一番重くなる。氷期の時、水月湖は4℃くらいであったため、当時水月湖の底にたまった水は重く、湖面の水温が変化しても水が混ざらず、湖底に酸素が供給されなくなった。

(p105)
C14(放射性炭素14)を使った年代測定法は、5万年前までしか測れない。
C14の半減期は5730年。
5万年経つと、C14がほぼ無くなってしまうから。

(C14は、普通の炭素原子12兆個につき12個混ざっている(0.00000000012%)。もともと少ないC14は半減期ごとに窒素14(普通の窒素)に各種が変わる。5730年後に1/2、11460年後に1/4、17190年後に1/8、22920年後に1/16、28650年後に1/32、34380年後に1/64、40110年後に1/128、45840年後に1/256に減る)

(p124)
花粉の外膜は極めて頑丈で、強アルカリやフッ酸でも溶けない。なので、年縞の中に花粉が残っている。

(p179)
ベネズエラのカリアコ海盆も、そこが酸欠になっていて、水月湖と同じように重要な年縞がみられる。


などが印象に残った。良書。


9点/10点満点

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