山田克哉「原子爆弾 その理論と歴史」感想。ブルーバックス。2019年03月26日読了。9.5点/10点満点
原子爆弾の理論と、実際の製造方法、それらがどのように発見され、改良され、実際に使用されるに至ったかを書いた、450ページを超える大著。
原子爆弾の理論は簡単である。純度の高い(90%以上)ウラン235の塊(11kgくらい)を2つ用意し、塊同士をぶつけたら、勝手に核分裂連鎖反応が起き、核分裂に伴うエネルギーは熱に変換され、数百万度となり、大気が大膨張して大爆発となる。
これは私が高専5年生の時(20歳)、理論物理学の卒論指導教官から教わった内容と同じ。
ちなみに原子力発電に使うウラン235は純度が20%くらいなので、核爆弾には転用できない(が、発電に使用した燃料棒にプルトニウム239が生成され、これが核爆弾に転用できる)。
爆弾化するには、天然にはウラン235がとても少ない(通常のウラン塊にはウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%)ことと、塊同士をぶつけるタイミングにずれが生じると連鎖反応が起きないことがネックとなる(イランが今やっているのはウラン235の濃縮)。
本書は、理論的に核分裂にはとてつもないエネルギーを秘めていることの発見、中性子(連鎖反応を起こす鍵となる物質)の発見、ウラン235の濃縮方法の発見、人工的に連鎖反応を起こす方法の発見、そして戦争により物理学を飛び越え、原子爆弾として製造するための政治家と物理学者の駆け引き、人間ドラマ、などが書かれている。
本書は、中性子の役割などについて懇切丁寧に書かれている。
本書を読み終えると、物理学に詳しくなった気になる(もちろんそれは勘違いなのだが)
非常に良い。が、物理学にも原子爆弾にも興味がなければ、毛ほども面白くないことも自明である。ゆえに9点以上10点未満の評点をつける。
9.5点/10点満点
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