
垣根涼介 /文藝春秋 2003/06出版 360p 16cm ISBN:9784167656683 \619(税込)
◆垣根涼介のデビュー作となる本書。第17回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞とのこと。サントリーミステリー大賞受賞作は、当たり前と言ったら当たり前なのだがミステリ寄りの作品が受賞すること多く、個人的にミステリが好きではない私には、興味がない賞であった。賞金が高額とかテレビ化されるなど派手な賞のわりに、受賞者は一発屋である傾向も高く、賞としての価値がそれほど高くなかったように思う。それが故、2時間ミステリドラマの衰退(火曜サスペンス劇場の打ち切りとか)とともに、賞自体がなくなってしまったのは時代の流れなのかも。
◆垣根涼介をネットで調べると、初期の三作品はかなり評価が高い。デビュー作の「午前三時のルースター」、受賞後第一作の「ヒート・アイランド」、そして「ワイルド・ソウル」の三作品。これ以降の作品は、性描写が過剰になり、イマイチの評価が続いている。何となく買ってしまった「ワイルド・ソウル」が予想以上に面白かったので、世間の評判が高い初期作品も読んでみよう、と思うに至ったのである。
◆あらすじ(紀伊国屋BookWebより)
旅行代理店に勤務する長瀬は、得意先の中西社長に孫の慎一郎のベトナム行きに付き添ってほしいという依頼を受ける。
慎一郎の本当の目的は、家族に内緒で、失踪した父親の消息を尋ねることだった。
現地の娼婦・メイや運転手・ビエンと共に父親を探す一行を何者かが妨害する…最後に辿りついた切ない真実とは。サントリーミステリー大賞受賞作。
◆本作、主人公は旅行会社勤務の長瀬で間違いないのだろうけど、主人公に匹敵すべき登場人物である慎一郎の扱いがちょっと変。作中、慎一郎のことを何度も「少年」と書いているのである。重要な登場人物なのだから、慎一郎という呼び方で統一すればいいのに、なんかばらばら。ワープロで原稿を作成し、書き始めの頃は慎一郎という名前を決めていなかったから「少年」で書き進め、あとから置換したところ、全部置換して誤記チェック&推敲している最中に賞の締め切りが来たから送っちゃった、というような印象。
◆大まかなストーリーは娯楽小説として楽しく面白く読めるのですが、ベトナム人のタクシー運転手がすさまじい改造車を持っていて運転テクニックも抜群とか、現地案内役の女性が簡単に見つかったりとか、都合のよろしい展開にはやや興ざめ。とはいえデビュー作でこれだけの作品を書き上げるというのは並大抵の力量じゃないのでしょう。実際本作のあとに出た作品は期待を裏切らなかったわけだし。
◆最近の(垣根涼介の)作品は中だるみが続いており、作家としての真価が問われている、というようなネット書評がいくつか見受けられたが、実際のところどうなるんでしょうかね。エロとバイオレンスと歪んだ勧善懲悪が突き進むと、黒豹の門田泰明のようになってしまう気が。そっちの方が売れるっちゃ売れるんだけど。
7点/10点満点
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