カテゴリー「◇ノンフィクション」の記事

2012/02/06

木村元彦「オシムの言葉」感想。
ノンフィクション。2012年02月04日読了。

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オシムの言葉

◆内容(amazonより)
05年ジェフ市原を優勝に導き、06年より07年11月に病に倒れるまでサッカー日本代表監督を務めたイビツァ・オシム氏。数々の名言の背景にあるものとは?

◆感想
旧ユーゴ、サラエボ(現在のボスニア)で生まれたオシムは数学者になれるほど勉強ができたのに、サッカーの道へと進んだ。そして旧ユーゴの代表監督になった。その最中にユーゴの分裂が始まり、遠征に出ている間にサラエボは戦渦に巻き込まれ、妻とは2年半も会えなかった。

元サッカー日本代表監督オシムがそんな経歴の持ち主だなんて、ちっとも知りませんでした。

本書の著者木村元彦のユーゴスラビアサッカー三部作の完結編である本書。オシムっつーのは優れた監督だったんですね。

三部作の前2冊、「誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡」「悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記」に負けず劣らずの秀作です。

個人的な好みで言えば「悪者見参」がナンバーワンですが、世間一般的には本書「オシムの言葉」の評判が高いみたいです(amazonレビュー)


7点/10点満点


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2012/01/20

野村進「島国チャイニーズ」感想。
ノンフィクション。2012年01月14日読了。

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島国チャイニーズ

各種書評で評判の良い本書。(例えばこれはヨミウリオンラインの書評

ざっくりと言ってしまうと、在日中国人(帰化した人を含む)のインタビュー集であり、そのインタビューから垣間見える在日韓国人との考え方の違いについて書かれたノンフィクションである。


◆内容(講談社オンラインより)

『コリアン世界の旅』から15年。
「反中」「嫌中」が蔓延する日本に生きる在日チャイニーズたちのひたむきな人生模様

「私が二百人を超える在日チャイニーズを取材した結果では、彼らの大半が日本での生活におおむね満足しており、留学生のほぼ全員が、少なくとも来日時には親日か、もしくは好日であった。(中略)こうした彼らの実態が、日本人にはあまりにも知られていないのではないか。(中略)両者の深い断絶の谷間を、活字の飛礫(つぶて)でいくらかなりとも埋(うず)めていこうというのが、本書の最大のねらいであり、私のささやかな希望でもある。」


◆感想

世界一周中、漠然と感じていたことがある。世界中どこに行っても中国人がいるなあ、と。

中国人は多くの国(とりわけアフリカ諸国)で嫌われていたけど、2011年9-10月に1ヶ月フィリピン短期英語留学をして、ちょっと印象が変わった。フィリピン・ミンダナオ島のダバオの中華街に行ったとき、腹が減って地元のフィリピン人相手に商売している中国人のパン屋でパン2個とコーラを流し込んだ。パンが1個3ペソ(6円)、コーラが1本7ペソ(14円)である。

フィリピンで地道に地元民相手に5円、10円でパンを売って暮らしている中国人。中国人のフロンティア精神って、やっぱりすごいな、と感じた。

南アフリカのヨハネスブルクで泊まったエアポートグランドホテル(治安にビビって安宿には泊まらなかった)のバーにも、大連から来た中国人の娘がアフリカーンス語(南アフリカの公用語でオランダ語の南アフリカ方言)で黒人バーテンダーをからかったりして、現地に溶け込んでいた。

本書も、私のそういう少ない体験を裏付けるような内容である。

在日中国人は、少なくとも日本に興味があるから日本に来ているのであり、日本が嫌いならそもそも来ない。

しかし、日本の農家に嫁いだ中国人嫁は必ずしもそうではない。経済大国日本に来たはずなのに、中国と変わらないド田舎だったことに失望する嫁も多い。

200人を超える在日中国人にインタビューし構成された本書は、中国人に対する考えを改めなくてはならないと思わせるに十分な説得力をもった良書である。


7点/10点満点


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2011/11/27

石井光太「遺体―震災、津波の果てに」感想。
ノンフィクション。2011年11月09日読了。

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遺体―震災、津波の果てに

◆内容(紀伊國屋Bookwebより)
2011年3月11日。
40000人が住む三陸の港町釜石を襲った津波は、死者・行方不明者1100人もの犠牲を出した。
各施設を瞬く間に埋め尽くす、戦時にもなかった未曾有の遺体数。
次々と直面する顔見知りの「体」に立ちすくみつつも、人々はどう弔いを成していったのか?
生き延びた者は、膨大な数の死者を前に、立ち止まることすら許されなかった―遺体安置所をめぐる極限状態に迫る、壮絶なるルポルタージュ。

プロローグ 津波の果てに
第1章 廃校を安置所に
第2章 遺体捜索を命じられて
第3章 歯型という生きた証
第4章 土葬か、火葬か
エピローグ 二カ月後に
戦争以来の膨大な数の遺体が目の前に――岩手県釜石市での極限状態を描く、壮絶なるルポルタージュ。日々増え続ける遺体を誰がどのように弔ったのか?


◆感想

誰もが知っていることだが、大震災で未曾有の被害が出た。
津波が襲った海沿いの街では、膨大な数の遺体が出た。
毎日数十体の遺体が発見された。それが何十日も続いた。

本書の著者石井光太氏は、3月14日(月)に新潟経由で宮城県に入り、この日から3ヶ月のうち2ヶ月半を被災地で過ごした。

被災地で見た圧倒的な現実。それは遺体だった。本書の巻末にある「取材を終えて」より抜粋すると

「最初は、福島、宮城、岩手の沿岸の街を回り、そこでくり広げられる惨劇を目撃することになった。幼い我が子の遺体を抱きしめて棒立ちになっている二十代の女性、海辺でちぎれた腕を見つけて「ここに手があります!」と叫んでいるお年寄り、流された車のなかに親の遺体を見つけて必死になってドアをこじ開けようとしている若い男性、傾いた松の木の枝にぶら下がった母親の亡骸を見つけた小学生ぐらいの少年……目に飛び込んでくるものは、、怖気をふるいたくなるような死に関する後継ばかりだった。」


そして石井光太氏は、遺体をテーマに本書を書き上げる。


元葬儀屋社員で、現在は引退して市の民生委員の視点で。
遺体の検案作業をするため、ひたすら遺体と向き合った釜石市医師会会長の視点で。
身元不明の遺体を確認するため、遺体の歯形を確認する作業を行った歯科医の視点で。
遺体の発見場所から遺体安置所までの運搬を命じられた釜石市役所職員の視点で。
いち早く被災現場に駆けつけ、そして次々と遺体を発見する消防団員の視点で。
瓦礫の山を解体しながら生存者を捜索し、しかし次第に遺体ばかり発見することになるする自衛隊員の視点で。
遺体安置所にある遺体を腐らせないようにするために奔走する葬儀屋の視点で。
遺体が安らかに眠ってくれるよう、遺体安置所で度胸を続ける僧侶の視点で。
……


石井氏は時が経ち4月になってから遺体に関わった人たちに取材を行い、50人以上の方々から話を聞き、色んな人の視点から見た釜石市の現実を再現したのが本書である。


ルポの方向性としては、御巣鷹山の日航機墜落事故を題材にした飯塚訓「墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便」に近い(執筆者の立場は異なる)(と紹介しつつ私はこの本は完読していない……)


11月に本書が出版され、石井光太氏は精力的に講演を行っている。そのうちのひとつに私は参加し、氏から現地の話や取材の苦労話を聞いた。想像をはるかに超える事態が起きた場所でこういう取材ができるというのも、石井氏の人格なんだろうな。

石井氏の執筆スタンスは「現実をありのままに表現する」ことにあるように思う。以前に読んだ石井氏の本では、世界中の貧困現場に入り込み(時には住み込み)、圧倒的な現実を伝えている。それが良いとか悪いとかではなく、現実を伝えている。

本書も同じで、今回のような未曾有の災害が起きた場合でも、遺体に向き合う人がいなければ遺体の処理は進まない。それが現実であり、そして今回の大震災では遺体と向き合う人がいた。


本書を読み終え、私は素直に感銘を受けた。


そして皮肉屋で現実主義者の私が言うのも何だが、真夏にこの大震災が起きていたら、凄まじい規模での二次災害(感染症)が発生したかもしれない。せめてもの救いは今回の震災が3月だったことなのだろう。そう思えるほど、本書はリアルである。


9点/10点満点


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2011/11/23

石井光太「飢餓浄土」感想。
ノンフィクション。2011年10月28日読了。

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飢餓浄土


※フィリピン留学日記からいきなり読書感想文に変わってしまった、と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、当ブログは元々読書感想文が中心のブログです。


世界中を取材している石井光太が、世界各地で見聞きした不思議な話をまとめた本。

以下列挙。


第1章 残留日本兵の亡霊
・敗残兵の森
 フィリピン、ミンダナオ島に出る日本兵の話
・幽霊船
 インドネシア、ボルネオ島(カリマンタン島)に出る日本海軍幽霊船の話
・死ぬことのない兵士たち
 ミャンマー、シャン州にいた不死身の日本兵の話
・神隠し
 ミャンマーで神隠しにあった女性の話

第2章 性臭が放つ幻
・せんずり幻想
 ケニア、ナイロビのスラムの話
・ボルネオ島の嬰児
 マレーシア、コタキナバルにいた中国人売春婦親子の話
・あさき夢みし
 タイ、メーソットでHIVが広まっている原因に関する話
・胎児の寺
 インド、ベンガル地方の寺にいたときの話

第3章 棄てられし者の嘆き
・奇形児の谷
 ベトナム、カンボジア国境界隈の町のベトナム戦争影響の話
・横恋慕
 横恋慕に関する幾つかの国の話
・魔女の里
 タンザニアの魔女狩りの話
・けがれ
 穢れに関する幾つかの国の話
・物乞い万華鏡
 ネパールの乞食の話

第4章 戦地にたちこめる空言
・戦場のお守り
 お守りに関する幾つかの国の話
・餌
 ルワンダの犬の話
・歌う魚
 スリランカに伝わる話


個々のエピソードは一冊の本にするほどでもない。でもエピソード自体は面白い。そういう雑多なエピソードを集めたのが本書(と勝手に想像する)。

一冊の本としてまとまりに欠けるけど、でも個々のエピソードは強烈である。

当感想文は読後一ヶ月近く経ってから書いているが、各エピソードを改めて列挙し(上記)、どれもこれも強烈な印象を残している。表現は悪いが、石井光太らしい下世話な、もしくは野次馬的な話が満載なのである。これは貶し言葉ではなく寧ろ褒め言葉であり、下世話なネタをノンフィクションに昇華できる石井光太の文章力があってこその技なのだと思う。もひとつ言えば、そういうネタを拾う石井光太の好奇心が、もしくは石井光太の嗅覚が鋭いのだと思うのである。


とはいえ、やっぱり本としてはまとまりに欠けるので評点は若干辛め。


7点/10点満点


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2011/11/21

木村元彦「誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡」感想。
ノンフィクション。2011年10月20日読了。

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誇り―ドラガン・ストイコビッチの軌跡


※フィリピン留学日記からいきなり読書感想文に変わってしまった、と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、当ブログは元々読書感想文が中心のブログです。


「悪者見参」で私的10点満点を付けた木村元彦の「旧ユーゴ3部作」最初の作品。(残り一冊は「オシムの言葉」)

Jリーグでも活躍したユーゴスラビア代表選手でもあったサッカー選手ストイコビッチ(1965年生まれ)はセルビア人。

オシムがユーゴスラビア代表監督をしていた1990年に、イタリアで開催されたワールドカップにストイコビッチ初出場、ベスト8で敗れる。

サッカー選手としてピークを迎えているこの時期に、スロベニア、クロアチアが独立宣言(1991年6月)。直後にユーゴVSスロベニアの戦争(10日で終決→スロベニア独立)、ユーゴVSクロアチアの戦争(1995年まで続く)。

これを機に旧ユーゴ崩壊が発生。

1991年9月、マケドニアも独立宣言。
1991年12月、ドイツがスロベニアとクロアチアを承認、ECも承認。
1992年にはボスニアが独立宣言、ECとアメリカが承認、ボスニア戦争勃発。
1992年5月、ユーゴスラビア代表チームは国際試合禁止処分(制裁措置)を受ける。
1994年、パリ・マルセイユから名古屋グランパスに移籍。
1994年11月、代表チームの出場停止が一部解除。国際試合に復帰。

1998年、コソボ紛争が激化。ストイコビッチの母国セルビアは一方的に悪者され、NATOの空爆を受ける(1999年)。


かつて同じユーゴスラビア代表として国際舞台で戦ってたチームメイトは、クロアチアが独立するとクロアチア代表として敵となり、スロベニアが独立するとスロベニア代表として敵となる。

かつては仲間だったクロアチア代表VSセルビア代表のアウェー試合は、戦争の感情がもろに反映された異様な雰囲気の中で行われ、

制裁で国際試合禁止処分が下ったときは、ストイコビッチ立ち代表チームは空港で足止めをくらい、そのまま帰国を余儀なくされた。


政治とスポーツは別であるにもかかわらず、政治に翻弄されたセルビア代表サッカー選手ストイコビッチの半生を、見事なまでに書ききっている。


堅い国際政治の話と、華麗なプレーを披露するストイコビッチの活躍をミックスした本書は、本書の後に出版された「悪者見参」で更なる昇華を見せ、政治とスポーツの両方を見事に書ききった名作となった。


本書の単行本が上梓されたのは1998年で、私が読んだ文庫版は200年9月に出版されている(文庫版は年表やスペシャルインタビューなどが加筆されている)

その後ユーゴスラビアはセルビア・モンテネグロとなり、モンテネグロも2006年に文理独立、紛争が激化していたコソボも2008年に独立宣言を出している(国として承認しているのは80カ国くらい)。


本書も名著と言っていい作品である。


8点/10点満点


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2011/02/24

一橋文哉「ドナービジネス」感想。
ノンフィクション……?2011年02月16日読了。

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ドナービジネス

一橋 文哉【著】 新潮社 (2004/06/01 出版

◆内容(紀伊國屋Bookwebより)
人体をビジネスにする―それは生命への冒涜なのか、それとも究極の資本主義なのか。
臓器移植、代理出産、クローン技術。
医療の発達とともに、部品としての人体に価値が見出されて行く。
腎臓を売るOL、乳児まで売買する臓器マフィア、その裏にある臓器移植のヤミ手術、幼児の生体解剖。
先端医療の影に隠れ、巨大なブラックマーケットが誕生していた。
戦慄のノンフィクション。


◆最近、臓器移植に関する本をいろいろと読んでいる。本書は、関連本を検索していて引っかかってきた。ただ、現在絶版らしく普通には手に入れられないので、amazonマーケットプレイスで買った(要するに古本)。本書に書かれている内容を順に記すと、

・フィリピンで腎臓を買って移植したOLの話。
・台湾人の夫を持つ日本人妻の子供が腎臓病に罹り、夫の親である台湾人富豪に助けを請うたら、どこからか腎臓を手に入れ、子供は助かった話。
・アメリカで、不妊治療のために用いる卵子を提供するアルバイトをしている留学生の話。

ここまでは他の類書でも読んだことがある話なので、なかなかのノンフィクション(ルポ)ではないかと感じていた。が、

・ベトナムマフィアの手でマイアミに連れてこられた中国人女が、胎児を生産するため、何度も人工妊娠させられる話。
・高利貸しと手を組んでいる「臓器担保屋」の話。
・その「臓器担保屋」に臓器を売り渡す羽目になった場合、APEC(オーストラリア、フィリピン、ヨーロッパ、中国)のどこかで腎臓を切り取られるが、フィリピン以外は片道切符だろうという話。
・中絶された子供は、いろいろと役に立つという話。と、その中絶胎児を扱うアメリカマフィアの話。
・日本の商社も裏ではいろいろとうごめいている話。

◆この本に書かれていることが全て真実だったら、とてつもないスクープである。が、今までこんなスクープは聞いたことがない。本書に出てくるバイオビジネスの企業名などは類著にも出てくる実在する会社名であるし、「臓器担保屋」なども実在するように思えるし、APECなんて隠語もリアリティがある。

しかしだ。どうにも本当とは思えない嘘くささも漂ってくるのである。話作りの旨いライターが書いた作り話のように思えるのである。「臓器担保屋」やマフィアの中枢部などと接触し、彼らから話を聞いているにもかかわらず、接触に至るまでの経緯が薄いのだ。この本に書かれていることが本当ならば、もっともっと分厚い、1,000ページを超えるノンフィクションが書けるはずである。

とりあえずノンフィクションと銘打った本である以上、ウソお決めつけることはできないが、限りなく黒(作り話)に近いグレーである。とりあえず評点保留とする。


(評点保留)点/10点満点


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2011/01/25

神崎純也「闇の貿易商」感想。
自伝ノンフィクション。2011年01月19日読了。

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闇の貿易商


大手出版社も中堅出版社も取り上げないような、海外のヘンテコエピソードや悪党の自伝武勇伝などを得意とする出版社彩図社から出た本。

コロンビアのマフィアに属していた著者が、逮捕されたのをきっかけに更正するので、今までやってきた犯罪の中身をばらしましょう、という内容。

北朝鮮から覚醒剤を密輸し大阪のやくざに売った話、
コロンビアの女を日本へ連れてくる女衒の話(そういや、一昔前の大久保駅前にはコロンビア人の娼婦がたくさん立っていたなあ。今じゃすっかりコリアタウンになっちゃったけど)、
コロンビアで仕入れた銃器を日本へ輸出しようとする話、
コロンビアで作ったコカインをアメリカに輸出してFBIに見つかって逮捕されて求刑20年の話、
コロンビアでエメラルドを強盗して、それを日本に持っていって売った話、
日本に戻って車の横流しをしていたら逮捕された話。

などが載っている。

この手の本は息抜きのために読むので、普段の私なら「へえ、そうかいそうかい、そりゃすげえ」とたいして感心もしないところなのだが、本書は文章が意外と上手く、更にマネーロンダリングの手法解説は、内部に居た者でないと思いつかないような手口だった(私が無知なだけかも知れないが)ので、感心してしまった。

この手の本の中じゃ、意外と面白い部類に入るかな。


8点記載ミス 6点/10点満点


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2010/11/20

富坂聰「中国官僚覆面座談会」感想。
中国ルポ。2010年11月20日読了。

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中国官僚覆面座談会―お人好し日本人フォーエバー

最近超お気に入りのジャーナリスト富坂聡をまたしても読む。

1984年頃に北京大学に留学していてその後もずっと中国ウォッチを続けている著者が、人脈を活かして中国の現役官僚たちと覆面座談会をしましょう、という雑誌(週刊新潮)に掲載された企画をまとめた本。とのこと。

国務院外交部(日本の外務省に相当)の課長補佐、
武装警察部隊北京総隊の大佐、
国際協力機関の職員、
国際シンクタンク日本担当研究員→中国共産党機関紙記者、
司会著者

のメンバーで行われた3回の座談会が載っている。

座談会の開催時期は毒ギョーザ事件、四川大地震、チベット動乱が起こった頃で、北京オリンピックの前。


中国の報道機関は徐々にであるが言論開放の方向に向かっていて、それはなぜかというと中国共産党の言いなりになっていると売れないからで、それは上層部もわかっていて、これは「治安を守るはずの公安が、実は犯罪が完全になくなれば困り、チベット問題がなくなれば統一戦線工作部が困るのと同じ構造だ」(43P)

とか、

オリンピック阻止を叫んで、爆弾もってバスジャック未遂を起こした犯人が実は漢族の退役軍人で、「退役した軍人たちはいま、中国社会で完全な負け組になっているからな。格差を生んだ社会や成功者に対する憎しみは尋常じゃないし、それが転じて政権への反発も強い」(127P)

とか、

台湾が独立しようとしたらオリンピックをぶちこわしてでも全力で台湾と戦争することになるだろう、そのくらい中国にとって台湾は重要で、無理矢理どうこうしようとアメリカが介入して来やがったらアメリカと中国が戦争することになっちまうぜよという中国のメンツがあり、で実際に戦争になったと仮定すると、「中国にもアメリカにない強みがあるんだよ。それは、アメリカの国民と比べて、中国の人民はまだ戦争で人が死ぬということに耐えられるという強みだ。例えば中米戦争が起きてアメリカの軍人や一般市民が十万人も死ぬことにアメリカは耐えられないだろう? でも、中国は軍人はもちろん一般人が十万人死んだとしてもまだまだ戦争を継続できるだろう。だから中国がアメリカと戦うことがあっても、決して勝負にならないというわけじゃない。極端なたとえをするならば、アメリカは核兵器一つで戦争の継続は難しくなるが、中国は三つ四つ落とされてもまだ戦争を続けることができるんだ」(140P)


うーん、面白い。一気に読んでしまった。というか週刊誌の延長線なので読むのに大した時間はかからなかったが。(11/23内容ちょっと修正)


6点/10点満点


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2010/10/23

青山淳平「腎臓移植最前線」感想。
ノンフィクション。2010年10月17日読了。

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腎臓移植最前線―いのちと向き合う男たち

2007年5月に出版された本。最近このテー-マ(移植医療)に興味があるので、新しい本ではないが読んでみた。

本書が出版される前年に、愛媛県宇和島徳州会病院を舞台にした腎臓売買事件が発生し、それがきっかけで万波誠医師による病気腎移植問題が発覚した。病気腎移植のニュースを初めて見たとき、「この医者はなんちゅう無茶苦茶なことをするんだ」と思ったが、よく考えてみれば、週に3回も血液透析をしなければならない深刻な腎臓病患者にしてみれば、それが病気腎であったとしても、機能する腎臓が手に入るのは救いなのだろう、と考えるに至ったが、世間的には賛否両論のようである。

さて本書。

1957年に東大医学部を卒業し、そのまま東大病院で勤務、1970年に東京女子医大に移り、腎臓移植を含めた日本の移植医療の開拓と普及に邁進した外科医、太田和夫。

本書は、移植医療に取り組む太田の歩みを軸に、太田に協力する医師、移植を望む患者達の話と、太田が作り出す本流とは別に、地方でも移植医療が出来ると取り組む万波誠らの四国中国のグループの話、そして世界的な移植医療の変遷、で構成されている。

1963年に雑誌に掲載されたボストンでの腎移植成功(移植後1年以上生存)の臨床報告を読み、太田は日本での腎移植を模索し始め、1970年までに30例の腎移植を試みる。

1970年、腎臓病の総合診療を行える環境、すなわち腎臓専門の内科泌尿器科外科さらには精神科も併設した総合腎臓病センターの設立を目指し、太田は東京女子医大へ移る。

同時期、京浜倉庫を経営していた大林の娘が腎移植をするためアメリカに渡る。大林は会社を経営している金持ちであり、娘を直すためなら費用は惜しまなかった。しかし適合するドナーが現れず、母親の腎臓を生体移植する。


太田は、受け入れてくれた女子医大の教授榊原のサポートもあり、血液透析を行うのに医者が人工腎臓を全部順部するのはたいへんだから、機械に強くかつ医療に携わりたい人たちを臨床工学技士として採用し(後に国家資格になる)、最終的には「人工腎臓センター」として大学に認められ、正式な組織となっていった。

大林は、娘のために死体腎(献体)をもっと増やしたい移植医療へ貢献したい、という思いから、自腹で「腎臓移植普及会」を作り、ドナーとなる死体腎への理解と賛同をつのる。

東京で腎移植を進める太田とは別に、四国でも腎移植を進めるグループが存在した。

死体腎が出ても、適合性が悪ければ移植できない。死体腎が出た際に適合性を見ながら腎臓を融通しあう「死体腎移植ネットワーク」が作られることになる。このネットワークは、大林の「腎移植普及会」の事務所に軒先を借り運営されていた。


時を経て、脳死を人の死とし臓器移植を法制化するにあたり、厚生省は死体から臓器を効率よく融通するための組織を作らなければならなかったが、予算がないため大林が作った「腎臓移植普及会」を利用することにした。これが後の「臓器移植ネットワーク」である。大林達は、「臓器移植ネットワーク」の理事に移植医を入れることを拒否した。


腎移植を中心に日本の移植医療は進んでいく。本書はその過程を書いたノンフィクションであるが、基本的には太田を中心に移植医療に関わる医者の生き様を書いたヒューマンドラマである。ドラマの中に、移植医療に関する問題点の解説が入ってくる。

ヒューマンドラマとしての部分が良くできているので、先へ先へと読みたくなる。読み進むにつれ、腎臓移植にはこのような問題点があったのか、脳死移植がさっぱり進まない一因はここにあるのか、など知的好奇心を満たすこともでき、とても良い本だと思う。


ちょっとだけ点が辛いのは、大林がなぜ日本の移植医にあまり良い印象を抱いていないのか、そこが書き切れていないから。


8点/10点満点


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2010/08/23

藤野眞功「バタス 刑務所の掟」感想。
フィリピン刑務所ノンフィクション。2010年08月22日読了。

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バタス―刑務所の掟

日本の旅行会社に就職し、めきめきと頭角を現した大沢。大沢をトップセールスマンにのし上げたのはフィリピン買春ツアーの斡旋だった。そして23歳で独立、マニラに店を構える。マルコスの側近を後ろ盾につけ、イケイケだった。

が、マルコス政権が倒され状況は一変。

マニラの警官と組んで、少女買春とマリファナを楽しんでいる日本人を引っかけ、金を引っ張り出そうと目論むが、失敗。日本大使館も巻き込む大騒動になり逮捕。取調室で拷問を受けた末、起訴。死刑判決。極悪犯ばかり収監されているモンテンルパ刑務所に入る。大沢34歳。

モンテンルパ刑務所には12のプリズンギャングが存在し、ギャングと刑務局の折衝によって均衡が保たれている。刑務所内でリンチや殺しがあるのは日常茶飯事だった。入所者は、いずれかのギャングに入らなければ生きていけない。そして、自分の食い扶持は自分で稼がなければならない。刑務所内で商売が成り立っているのだ。


本書は、最悪の刑務所に収監された大沢が、旨い密造酒の造り方を考案し一儲けし、最大派閥のプリズンギャング「スプートニク」の仲間になり、そしてトップに君臨し、刑務所内にあるサムスンの工場(サムスンすごいな)で受刑者をまとめる仕事をし、飽きてレンタルビデオ屋(刑務所内で、です)をやったりしているうちに、フィリピンで死刑が廃止になったため無期懲役になり、満期出所。19年の刑務所生活を終え、現在は日本で母親と暮らしている。というノンフィクション。


極悪人ばかり収監されている刑務所で、プリズンギャングのトップに立てるくらいなので、大沢という男は悪人なんだろう。けど、本書は、やくざがのし上がっていく物語を読んでいるような感覚になり、一気に読み終えることが出来た。

本書のカバー折り返しに、文芸評論家で慶応大学教授の福田和也氏がコメントを書いており、「なによりも、文章が、言葉が素晴らしい。輝いている。生動している。自分しか書けない、語れない、魅せられない形式を持っている。ここで、読者が突きつけられるのは、誰も示すことが出来なかった世界だ。文芸の未来は、ここからはじまる。」(全文引用)


それは褒めすぎだと思うぞ。


7点/10点満点


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