西水美恵子「国をつくるという仕事」感想。
正しい国際政治論。2009年04月22日読了。

国をつくるという仕事
西水美恵子 / 英治出版 2009/04 ¥1,890 (税込)

◆非常に素晴らしい。

◆世界銀行、南アジア地域副総裁の地位にあった著者が、貸し付け相手である国家=つまり各国のリーダーと渡り合った結果、優れた国家を導くのは、優れた指導者(政治家だけにあらず)であるということを痛感し、真のリーダーとは如何なるものかを説く、そういう本である。

◆政治家が私欲に走っている国は、必然的に民衆にしわ寄せが行き、国家としてダメになっていく。世界銀行の貸し付けは、金額が巨大なだけに、その審査には慎重を要する。政治家が私欲のために金を使うのか、国家構築のために使うのか。貧しい国々とはいえ、一国の首相や大統領と対等に渡り合い、大勢の国家指導者を見つめ、その結果よくなる国とよくならない国があり、よくならない国の多くは、政治と政治家に根源があると説く。

◆一例としてここに書くと、イスラム世界初の女性首相、パキスタンのブットー。本書の著者は、ブットー首相のことをマリー・アントワネットと言い放ち、民衆を見ず私利私欲に走る金まみれの政治家と扱き下ろす。暗殺されたあと後継者に息子を選ぶあたり、ブットー一族の私欲は尽きることがないと嘆く。

◆とにかく、素晴らしい本だ。


10点/10点満点


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吉田一郎監修「国境線の謎がわかる本」感想。
地理本。2008年12月01日読了。

なるほど図解!国境線の謎がわかる本
造事務所/吉田一郎 / 大和書房 2008/10 ¥1,365 (税込)

「国マニア」の吉田一郎を検索していたら出てきた。タイトルから察するに、今さら読んでも知っていることばかりだろうなあと思いつつも、ついつい買ってしまった。

◆知っている話が多かったから私個人的には3点くらいしかつけられない内容だけど、普通に雑学本として読むのだったら、それなりに目新しい知識が身につくのではないかと思います。


5点/10点満点

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山田肖子編「アフリカのいまを知ろう」感想。
岩波ジュニア新書。2008年08月19日読了。

アフリカのいまを知ろう
山田肖子 /岩波書店 2008/03出版 245, 18cm ISBN:9784005005888 \819(税込)

◆岩波ジュニア新書で出版されたアフリカ関連書。内容は、
・編者によるアフリカの概要
・アフリカ研究者へのインタビュー(それぞれ10ページ程度)
 関西大学経済学部教授 北川氏の語る「日本とアフリカの交流史」
 日本貿易振興機構アフリカ研究グループ長 武内氏の語る「村から国家と経済を見る」
 福井県立大学教授 杉村氏の語る「農業と人々の暮らし」
 神戸大学大学院教授 高橋氏の語る「アフリカ経済と援助」
 東京外語大学准教授 舩田氏の語る「紛争・平和構築と外部者」
 東京外語大学研究員 亀井氏の語る「ろう者と手話」
 早稲田大学大学院客員教授 若杉氏の語る「アフリカの女性と健康」
 国士舘大学教授 鈴木氏の語る「アフリカ音楽と若者たち」
 名古屋大学大学院准教授 佐々木氏の語る「村の社会と仮面結社」
 熊本県立大学教授 砂野氏の語る「文学と社会」
 国立民族学博物館教授 池谷氏の語る「自然環境に依存する人々の暮らし」

◆この中では、アフリカにも当然のことながら聾唖者がいて、そこには手話が存在するという「ろう者と手話」が最も興味深かった。アフリカの手話は、普及させたアメリカの黒人ろう牧師とキリスト教団体のおかげで、喋り言葉とは全く別の言語体系を持っていて、ろう教育はかなりの成功を収めているとのこと。こういう研究テーマがあるのだなあ。
 
◆高橋氏の語る経済援助で、「日本がODAを通じて途上国のために学校を建設すると、なぜ優先的に天然ガスをもらえるようになるのか、その理屈が私にはよくわかりません。全く次元が違う話ではないでしょうか」と言っている。その言葉には頷けるものがある。

◆ジュニア新書なので対象読者である中高生に、もっとアフリカに興味を持ってもらおうという出版意図があると思うのだが、本書はやや詰め込みすぎの印象を受ける。でもこれ以上内容を濃くしてしまうと、まじめな研究書と大差がなくなってしまうので、このぐらいがちょうど良いのかな。

◆ま、良書です。


6点/10点満点

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大富亮「チェチェン紛争」感想。
ブックレット。2008年03月18日読了。

ユーラシア・ブックレット〈No.94〉 チェチェン紛争
大富亮 /東洋書店 2006/06出版 63p 22cm ISBN:9784885956348 \630(税込)

チェチェン紛争の大まかな流れを著した本。
チェチェン紛争の概略を知るには良い本であろうかと。
それ以上でも以下でもなく。


6点/10点満点

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ラシン編集部編「マレーシアでロングステイ」感想。
ロングステイ指南書。2008年01月22日読了。

大人の海外暮らし国別シリーズ マレーシアでロングステイ
rasin編集部 /イカロス出版 2004/11出版 227p 21cm ISBN:9784871496186 \1,569(税込)

40歳過ぎて独身生活をしていると(注:私のこと)、そろそろ老後のことを考えなきゃなあ、と思うのである。今から結婚して子どもでも出来てしまったら、子どもが大学を卒業する60歳過ぎまでシャカリキになって働かなきゃならない。今までさんざっぱら適当な生き方をしてきたのに、これからそんな生活をするというのはかなり難しいだろうなあ、と思うのである。それに私はヘビースモーカーで大酒飲みだから、そんなに長生きするとは思えないし。

年金も大して当てに出来ない昨今、老後をどこで暮らすかってのは自分とってなかなか興味のある話なのだ。

で、本書「マレーシアでロングステイ」を読んでみたのだが。

本書に出てくる「マレーシアでロングステイ」を実践している人たちってのは、真面目に60歳過ぎまで働いて、蓄えもあってちゃんと年金もらって結構優雅な老後を送っている人たちばかりで、私にはちぃとも参考にならないのであった。

マレーシアだと月15万で暮らせます、ってな事例が紹介されているけど、日本だって住宅ローンさえ払い終われば、月15万で余裕で暮らせるよ。

というわけで、今の私には役に立たなかった本。

本屋でさらっと読んで「ぴあ」の株主優待でもらった図書カードの残りがいっぱいあったので気にせず衝動買いしてしまったのだけど、もっと立ち読みしてから買うべきだった。


3点/10点満点

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吉田一郎「国マニア」感想。
世界地理雑学本。2008年01月07日読了。

国マニア―世界の珍国、奇妙な地域へ!
吉田一郎 /交通新聞社 2005/12出版 231p 19cm ISBN:9784330839059 \1,500(税込)

1985年、まだ中国に返還される前の香港に留学し、九龍城砦に住み、日本語学校で講師をしながら、「香港ポスト」記者を経て、月刊「香港通信」編集長、日刊「香港ビジネスポスト」編集長、現在は帰国して大学院生活。

そんな著者の代表作は「世界飛び地大全」(買っていて興味のあるところだけ読んだけどまだ全部は読んでいない)。

世界中の国の変なところに興味を持ち、マニアックな世界地理の話題を提供してくれる。それが本作の著者、吉田一郎。

本書でも、UAEの成り立ちや、プエルトリコの成り立ち、ロシア領内にありながら台湾が領有権を主張しているトゥバ共和国、ハローキティ通貨が作られてしまうクック諸島。

地理好きにはたまらない興味ある話題がこれでもかこれでもか、と繰り広げられる。

2004年に出版された本だけど、既に3版。マニアックな本でも、内容が良ければ増刷かかるのだ、という見本のような良書。


北方領土に関する見解はとても鋭く、政治家もぜひ参考にするべき。


8点/10点満点

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中津孝司「アフリカ世界を読む」感想。
アフリカ分析書。2007年07月04日読了。

アフリカ世界を読む
中津孝司 /創成社 2006/10出版 196p 18cm ISBN:9784794450135 ¥840(税込)

本書で最初に出てくるのは、アメリカがなぜスーダン(ダルフール)の大量虐殺を無視し続けたかについての分析である。

著者曰く、アメリカは隣国のチャドから石油を輸入しており、スーダンからは輸入していない。だからスーダンが内戦に陥ろうと大量虐殺が起きようと、アメリカ経済には関係ない。だが人道的支援の声が高まったことと、スーダン難民が大量に(おおよそ200万人)チャドに流れ込み、その難民を更に攻撃する連中が国境を越え、チャドで戦闘が行われるようになり、チャドで働くアメリカ人石油ビジネスマンが危機にさらされてきた。さらにAU(アフリカ連合)の能力が低く、ダルフール紛争をAUが独自単独で解決できる見込みがなくなったので、ダルフール紛争の解決にアメリカ政府が介入したのだ。(かなり抄録)

ううむ、説得力のある説明だ。


また、本書16ページに著者のスタンスらしき記述があるのだが、これがまたすごい。

「イスラム原理主義者の坊主が牛耳るイランを抹殺しておくことが21世紀を生きる我々の責務であることだけは確かである。」

これはイランが北朝鮮やパレスチナのハマスに、武器や資金、核技術の提供を行っているので、西側資本主義経済を生きる我々にとっては敵だ、という主張に基づく意見なのだが、言い切り方が意見というレベルを超えていて、なというかまあすごい。

私は「世界平和を乱している諸悪の根源はイスラエル」と思っているので、著者のこの意見には賛同できない部分も多々あるのだが、人の意見は百人百様、こういう考え方もあるのだな、と深く考えさせられた。


この本は、私にとって斬新な見解が多く記載されていて結構面白く読めたのだが、全体的に見ると、表を1枚添付すれば事足りるような事柄、例えばアンゴラの何とか油田にはシェルが○%、BPが▲%出資していて、エチオピアのなんちゃら油田にはエクソンモービルが□%、シェブロンが★%出資してていうんたらこんたら、みたいな知識のひけらかしが随所に見られ、そんなことはどうでもいいよ、肝心の中身をさっさと書き進めろよ、と飽きてくる。

惜しい本だな。


6点/10点満点

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山本皓一「日本人が行けない「日本領土」 北方領土・竹島・尖閣諸島・南鳥島・沖ノ鳥島上陸記 」感想。
ノンフィクション。2007年06月15日読了。

日本人が行けない「日本領土」北方領土・竹島・尖閣諸島・南鳥島・沖ノ鳥島上陸記
山本皓一 /小学館 2007/06出版 286p 21cm ISBN:9784093897068 ¥1,890(税込)

概要(紀伊国屋BookWebより)
「ここは本当に日本なのか」。
国境の島々を16年間撮り続けた報道写真家による衝撃の上陸体験記とスクープ写真を掲載。
安倍晋三対談「国家とは、領土とは何か」を収録。

第1部 北方領土―択捉島・国後島(小泉首相の北方領土視察;ゴルバチョフ大統領への「直訴状」 ほか)
第2部 竹島(武装警察官に歓声をあげる女性観光客;日本製の観光船が“韓国人を独島に運ぶ”皮肉 ほか)
第3部 尖閣諸島(世界でも稀な日本の国境政策;年に一度の上陸チャンス ほか)
第4部 南鳥島・沖ノ鳥島(マリンブルーの海に浮かぶ“航空母艦”;島民の病死・離島で無人島に ほか)
20年近くの年月をかけて、立ち入りが厳しく制限されている北方領土、竹島、尖閣諸島、沖の鳥島、南鳥島に上陸した日本唯一の報道写真家による、上陸記&写真解説(カラー口絵64頁掲載)。安部晋三との対談も収録。




本書は、フリーランスのフォトジャーナリストである著者・山本皓一氏が、16年かけて、タイトルの通り「日本人が行けない日本領土」を取材した記録である。


北方領土へ行こうと思ったが、まともに取材許可が下りるのを待っていてもらちがあかない。そこで著者はゴルバチョフにロシア語で直訴状を送り、それが(間接的であるが)功を奏して、北方領土の取材を行うことになった。本書の冒頭はこんな感じで始まる。


竹島は、歴史的経緯から見ても明確な日本領土であり、国際法廷で審判したら必ず日本が勝つと言われているが、実効支配を目論む韓国は、法廷決着を拒否している。竹島へは、韓国から観光船に乗れば行くことができるのだが、日本人が(例え民間人であっても)それをやってしまうと、韓国領であることを認めてしまうことになるので、韓国の観光船に乗って竹島に行くことは日本国外務省が許さない。(このことは北方領土も同じ)

彼の地へ行き写真を撮ろう、取材の許可が下りるまで何としてでも粘ろう、コネが必要ならコネを作ろう、とにかく何としてでも日本人が行けない日本領土を写真に収めよう、という著者の力強さが、普段意識することのない日本領土について、深く考えさせられる。

64ページもあるカラー写真も見事。


本書は、今年度何らかのノンフィクション賞を受賞するような予感がする。そのくらいの力作。


8点/10点満点

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池上彰「池上彰のニュースでわかる世界の裏事情」感想。
世界を易しく解説。2007年06月05日読了。

池上彰のニュースでわかる世界の裏事情
池上彰 /青春出版社 2007/03出版 301p 15cm ISBN:9784413093620 ¥680(税込)


NHK週刊こどもニュースの元メインキャスター池上彰せんせいは、いつも易しく国際情勢を語ってくれます。

本書では、トルコがなぜEUに加盟できないのかを、凄まじくストレートに語っています。

つまり、トルコはイスラムの国だから、と。

やっぱり池上彰せんせいには好感が持てます。


7点/10点満点

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小川和久・坂本衛「日本の戦争力 VS 北朝鮮、中国」感想。
国防の本。2007年04月10日読了。

日本の戦争力VS.北朝鮮、中国
小川和久/坂本衛 /アスコム 2007/04出版 319p 19cm ISBN:9784776204084 ¥1,680(税込)

※ですます調の文章は私には無理みたいなので、前のように傲岸不遜な文体に戻します。


前作「日本の戦争力」は、昨年読んだ本の中で唯一10点満点を付けた本だった。平和主義者が主張する盲目的な自衛隊撤廃論に対して、平和主義者の幻想をずばずばと一刀両断する内容は読んでいて痛快だった。前作で書かれていた内容は、今まで読んだこの手の本の中でもっとも説得力があった。私は軍事アナリストでもオタクでもないので、著者小川和久が書いていることが本当なのかどうか検証することは出来ない。しかし、小川和久が書いている本なら信頼しても構わないだろう、と思わせるに十分な内容だった。


で、本書はその続編。


冒頭の章で、北朝鮮の核実験の意図について分析しているが、これがまた説得力十分なのである。第2章では中国の戦力分析。これもまた説得力十分。第3章は日本が目指すべき戦争力。これも納得。

アメリカ・ロシア・中国など大国の論理、北朝鮮の本音と建て前、現実的な各国の戦力分析、そこから導き出される日本が取るべき道。どれもこれも説得力が十分なのである。

しかし第3章まで大きな視点から書かれていたのに対し、第4章以降は枝葉末節の細かな話が展開される。著者は第3章までの延長として書いているのだろう。だが私は第4章以降の展開が唐突に感じた。

第4章184ページに「「安全」にはどのくらいのコストがかかるのか?」という項があるのだが、「……食品メーカーや店が期限切れ食材を使うといった問題も、次から次へと表面化してきます。これらはコストとしての「安全」という意識が民間レベルでも欠如している典型的なケースでしょう」と書いている。

食材の賞味期限自体がまやかしに過ぎないのだから、生卵なぞ冷蔵庫に入れておけば4週間大丈夫だぞ。ヨーグルトだって賞味期限が切れてから少なくとも3日は大丈夫だぞ。生ラーメンだって賞味期限切れてから少なくとも2週間は大丈夫だぞ。だからこの論理はなんだかおかしいぞ(と枝葉末節揚げ足取り)。


まあいいや。本書の感想としては総論賛成、各論?


6点/10点満点

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