カテゴリー「◇世界についての本」の記事

2017/02/08

ヨリス・ライエンダイク/田口俊樹・高山真由美訳「こうして世界は誤解する」感想。
ジャーナリズム論。2017年01月28日読了。

中東に駐在していたオランダ人ジャーナリストの著者(エジプトのカイロ大学に留学しアラビア語ができる)が、ジャーナリズムは果たして本当のことを伝えているのだろうか?

という疑問を正直に読者に投げかけた本。

原著は2006年に出版され、日本語版は2011年に出版された。

ジャーナリズムを知らないド素人だった著者は、アラビア語ができるという一点でオランダの新聞社に雇われ、中東特派員として赴任した。ついでにラジオの仕事も受ける。ラジオに音声出演するときは、オランダの放送局があらかじめ原稿をまとめているので、著者は原稿に沿って喋るだけ。特派員の存在価値は、その場所にいて、その場所から喋ること。

中東のニュースの最新情報は、現地のジャーナリストを雇って調べている通信社(日本だと共同通信が有名)が逐一情報をくれるので、特派員が直接調べなくてもいい。でも、どこかの国が戦争になり、軍司令官や防衛大臣が記者会見する際は、記者会見の場にいて、そこからリポートすること。

西側メディアはアラブ諸国が悪いというバイアスで報道する。
アラブ諸国はイスラエルが悪いというバイアスで報道する。

では、アラブ人同士の戦争は誰がどう報道する? モロッコ対アルジェリア、エジプト対シリア、スーダン対サウジアラビア、イラク対クウェート(これはクウェートが西側陣営)、シリア対ヨルダン、ヨルダン対パレスチナ、そして国内がバラバラで敵ばかりいるレバノン。

経験を積んだ著者は違う新聞社に移り、テレビの仕事もするようになった。パレスチナに行き、子供をイスラエル軍に殺された母親の取材をする。この母親はパレスチナのフィクサーを通して紹介された。フィクサーは世界中のテレビ局に「悲惨な境遇にある人物」のリストを持って売り込みに来る。西側のテレビ局は手っ取り早くインタビューを済ませたいから(パレスチナに入国するにはイスラエルの厳重な警備を通るので面倒)、フィクサーのリストを活用する。リストに掲載されている人物が喋ることは嘘ではない。ただ、フィクサーは同じリストを世界中のテレビ局に売っているので、世界中のテレビ局が同じ人物に何度も異なるインタビューをすることになる。

フセイン時代のイラクでは、独裁国家の恐ろしさを身に染みて理解した。

著者はエルサレムのパレスチナ人居住区である東エルサレムに引越しした。

イスラエルは広報が上手い。
パレスチナは広報が下手だ。

パレスチナはもうちょっと世界に通用する広報をすれば、世界中から支援がもっともっと集まるのでは?

しかし現実のパレスチナは、PLO(後のファタハ)=アラファトが独裁者として君臨しているだけだった。広報はアラファトの腹心。能力なんて関係ない。アラファトは、自分がリッチな状態を維持できればそれでいい。イスラエルと和平を結んで自分の名声が上がり、援助金がじゃぶじゃぶ入ってくるのは最高に望ましい。

(注:ファタハに愛想をつかしたガザ地区(海側)のパレスチナ住民は、ハマスというイスラエルを敵視する政党に乗り換えた。ハマスはガザ地区からファタハを追い出した。しかしファタハは依然ヨルダン川西岸(内陸部)を押さえている。パレスチナは事実上、2か国に分裂している。と言ってもアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア、日本や韓国、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、スイス、スペイン、ポルトガルなどが国として承認していないので、国ではないのだが)


「事実と見解をはっきり区別する」


現代ジャーナリズム、特にテレビの世界ではこれが守られていない。


とても面白い本だった。


8点/10点満点

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2017/01/23

川島博之「「作りすぎ」が日本の農業をダメにする」感想。
農業論。2016年12月03日読了。

端的にいうと、世界中で食糧は余っている。

ということを世界各国のデータ(FAO=国連食糧期間など)から導き出し、かなりの説得力をもって

「日本(&アジア)の農業は生産性が低いから、世界市場で価格競争力が無い」

という話に結びつけています。つまり、日本の農家が儲からないのは、需要はそれほど変動しないのに、同じ作物を同じ時期に出荷するから値崩れする。ちょっと時期をずらせば高値で売れるのに、収穫に携わる人手の問題とかいろんな問題があって、結局みんな同じような時期に出荷する。だから農家は儲からない。

例として挙げられていたのは、兼業農家(普段はサラリーマン、土日は農家)の場合、収穫と出荷は土日に偏重する。だけど野菜を買う主婦は毎日買いに来る。だから月曜日と火曜日は野菜が安い。

的なことが書かれていて、なるほどなあと思ったのである。

この考えはそのままグローバル農家戦略に通じ、世界的に需要が活発なのに供給が追い付かない野菜(根菜は保存がきくのでどちらかというと保存がきかない野菜の話)野菜を作れば、野菜輸出にかかるいろんな面倒ごとに対処しなければならないけど、日本の農家だってもっと儲けられますよ。

というような話になる。

そうなんだよ。私の中学生の同級生で、大学出た後農家を受け継いだ彼は、近隣の中国や台湾や韓国に生鮮野菜を出荷する方法を必死で練っていて、それが実って今や年商数億(利益ではない)。

日本は儲けを度外視した兼業農家に頼りすぎなんじゃないですかねー。


8点/10点満点

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2016/12/27

池内恵「【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛」感想。
中東情勢の歴史解説。2016年07月15日読了。

今、日本でいちばん中東情勢について積極的に発言している池内センセ(東大の准教授)による、中東混乱の原因と巷間で言われているサイクス=ピコ協定(第一次世界大戦後の1916年に英仏露で結ばれたオスマントルコ解体後の国境線を決める密約)に関する解説書。

新潮選書にしては薄いなあ、だから1000円+税なのか、と思いつつ買ったけど、見た目以上に薄くて140ページしかなかった(厚手の紙を使っている)。

池内センセの本なので、内容そのものには感心させられるのだけれども、緊急出版だからなのか全体的に説明を端折っているところが目について、正直センセがForesightに載せているコラム20回分をまとめて読んだような印象。

でもセンセのfacebookによると、本書は今年一番売れた新潮選書なのだそうだ。

薄くて読み応えが無い、という点を除けば本書はいい本だったのは間違いない。


7点/10点満点

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2016/05/10

松本仁一「アフリカは今 (NHKラジオの教本・雑誌形式)」感想。
アフリカ概説。2016年04月15日読了。

松本仁一氏はアフリカを中心とした上質なルポを書く人。右サイドバーにカテゴリ松本仁一を設置しています。

本書は雑誌です。NHKカルチャーラジオの教本です。NHKラジオ英会話などの教材を売っているコーナーに、本書も置いてあると思います。

本書は「アフリカの今」について、NHKラジオのカルチャー番組を聴く層でも分かるよう、近現代史を交えながら易しく書かれた本です。


第1回(ラジオ講座がベースなので章立てではない)では、シエラレオネで誕生したこども兵について。

シエラレオネは、1787年にイギリスの解放奴隷が帰還し、フリータウンという町を作って、そこからイギリスの後押しもありシエラレオネという国に発展した経緯を持つ国。解放奴隷は、現地住民より格上であると特権意識を持ち、現地住民(黒人)を支配する政治を行った。

(同様の国として、リベリアはアメリカの解放奴隷が1816年に帰還しつくった国で、現地住民との軋轢がある)

シエラレオネの歴史は、ダイヤモンド利権の奪い合いである。

シエラレオネの反政府勢力RUFは、腐敗した政権の打倒を目的とした組織だったが、ダイヤ利権獲得の武闘組織へと変貌し、ダイヤ鉱山を襲ってダイヤを奪い、リベリアの反政府指導者(実態は武装強盗団)チャールズ・テーラーにダイヤを売り、テーラーはRUFに武器弾薬を渡す。

この過程で、使い捨ての特攻隊員こども兵がうまれていった。


第2回は、9世紀頃からアフリカ大陸の内陸部には巨大な帝国が幾つもあった話。中でもマリ帝国は、エジプトの金相場を破壊するほどの金を持つ巨万の帝国だった


第3回は、タンザニアの対岸にあるザンジバル島(タンザニア連邦の一角)や、その他多くの地域から奴隷貿易が行われていた話。


第4回は、南アフリカ、中でもケープタウンをめぐるオランダ入植民とイギリス入植民の争い(ボーア戦争)について。

ボーア戦争で負けたオランダ入植民(オランダに帰国できずアフリカ定住を覚悟し自らをアフリカーナーと呼ぶ)は、とにかくこどもをたくさん作った。やがてイギリス系より人口が増え、1948年に(白人だけで)選挙を行い、アフリカーナーは政権を握った。

黒人に選挙権を与えると、アフリカーナーも負ける。白人連合を組んでも負ける。やっとの思いでイギリス系から政権を奪還したのに、黒人に政権など譲れるか、とばかりにアフリカーナーは黒人差別政策をどんどん進めていく。


第5回は、南アのアパルトヘイト廃止に至る経緯。


こんな感じで進み、

第6回、ジンバブエ
第7回、ナイジェリア
第8回、アフリカの飢餓/農業無策
第9回、ルワンダ
第10回、ソマリア
第11回、中国の進出
第12回、イスラム過激派
第13回、ボツワナの発展


について書かれている。

コンパクトながら分かり易く、かつ押さえるべき所は押さえている。良書。


半年~1年くらい経った後、加筆の上、新書として書籍化されるような気がする。


8点/10点満点

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2015/11/10

トム・リード/金子宣子訳「「ヨーロッパ合衆国」の正体」感想。
EU解説。2015年10月24日読了。

原著2004年、日本語訳2005年に出版された本。

現在のEUは1993年11月1日のマーストリヒト条約の発効によって発足し、ユーロの発行は2002年1月1日にユーロ加盟国で一斉に切替が行われた。

本書は、EUと、EUの共通通貨であるユーロが、アメリカ人に想像以上に強力な存在になっていることを、ワシントン・ポストのロンドン支局長でアメリカ人の著者が、普通のアメリカ人向けに書いた本。


序盤はEU構想は誰がどのように考え出したのか、その歴史を詳しく書いている。


第二次世界大戦の加害者西ドイツと被害者フランスというヨーロッパの2大国が、歴史的な感情を抜きにして商売を効率よく進めるために、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、至りを加えた6カ国で1951年に欧州石炭鉄鋼共同体設立条約(調印国間で共同市場をつくる条約)を締結したのがEUの始まり。

貿易業務の簡易化(関税の廃止)、品質基準の明確化、戦争の戦略物資になる鉄鋼と石炭の取引透明化による西ドイツの暴走の監視、などの条項が盛り込まれたことより、戦争で疲弊したベルギーとフランスは石炭を西ドイツに売り、西ドイツは鉄鋼を作って重工業が復活し、鉄鋼を運ぶためオランダの港湾が活況になる。

経済的にひとつになることで得られるメリットは、その後ヨーロッパ各国に認識されるようになり、EU創設へとつながっていった。


また、EUが組織として発展できた理由のひとつに、NATOの存在がある。

NATOは、冷戦が終結した今(注:2004年)でも、予算の60-85%をアメリカが拠出している。さらに、10万人を超えるアメリカ軍人がヨーロッパに駐留している。

EU加盟各国が戦争に巻き込まれるような事態が発生しても、とりあえずはNATOがあるので、EU各国、特に小国が戦費に悩むことはない。


EUは公用語が20言語あり(注:2004年。2015年では24言語)、EUに関係するすべての書類は20カ国語で作成され、EUの会議では20カ国の相互同時通訳が必ず同席して、同時通訳する。

EUが存在するおかげで、翻訳や通訳の仕事が増えたのだそうだ。(まあ、こんな細かいことはどうでもいいか)


10年前の本だが、興味深く読めた。良書。

8点/10点満点

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2015/09/29

ウィリアム・R・クラーク/高澤洋志訳「ペトロダラー戦争 イラク戦争の秘密、そしてドルとエネルギーの未来」感想。
米国政治分析。2015年08月19日読了。


原著の出版年度が2005年、邦訳が2013年の本。原著が10年前なので、内容が少し古い。それと翻訳がちょっと悪い(堅い・回りくどい)。

本書の内容を端的に言うと、「アメリカ軍は、石油の確保を第一目的として世界中で活動している」ことを丹念に調べた本である。日本語版で400ページを超える、ボリュームのある本である。

(p39-40)
アメリカ軍は、世界120カ国に725の軍事施設を有している。

(p48)
1944年、アメリカ政府はマウント・ワシントン・ホテルを44カ国の代表が集まる場所として選んだ。これが後に著名になるブレトンウッズ通貨会議である。同会議では、世界銀行が設立され、金1オンスを35ドルに固定する金(Gold)本位制が制定され、米ドルを国際取引の基軸通貨とすることが決められた。同会議が世界にもたらしたのは、切実に必要とされていた戦後の通貨の安定であった。


アメリカは産油国であり、第二次世界大戦前は自給率100%だった。第二次世界大戦中も、同盟国(イギリス等)の石油供給はアメリカが一手に引き受けていた。だがしかし、1970年を堺に、アメリカで採れる石油がピークを越え、生産量が減りだした。

1960年代-1970年代アメリカはベトナム戦争の泥沼に陥り、戦費赤字が底なしに増えていくアメリカ(ドル)の行く末に危機感を抱いたイギリスが、1967年にドルと金(Gold)を交換し始めた(イギリスの裏切り)。

1971年にはフランスもドルと金(Gold)を交換しだし、アメリカ財務省の金(Gold)が底をつき始めた。そして時のアメリカ大統領ニクソンは、金本位制を停止し、ドルの変動相場への移行を決めた。


そんな中、石油ショックが1973年(第1次)(と第2次1979年)に始まった。


この時期、石油輸出国のカルテルであるOPECは、石油の取引をドルだけではなく複数の通貨で行うことが可能かどうか検討していた。アメリカドル、ドイツマルク、フランスフラン、イギリスポンド、日本円、カナダドル、オーストリアシリング、スイスフラン、などの通貨バスケットである。


(p53抜粋)
1973年5月、誰の目にもドルの急落が明らかな時、世界の金融界・正解の頂点をなす実力者84人が、スウェーデンで会合を持った。オランダ女王の夫、ベルンハルトが開催するビルダーバーグ会議である。石油輸出国のカルテルであるOPECが手にしている有り余る量のドルを、どのように管理するか、に関する会議だった。


1974年、ニューヨークとロンドンの銀行間である合意が形成された。同年、サウジアラビア政府は石油輸出の余剰金(ドル)で25億ドルのアメリカ短期国債を買った。

数年後、アメリカとサウジ政府が密約を交わした。

OPECによる石油取引は今後もドル「のみ」で行われる、ということを保証する。


原著が2005年の本なので、どうしても内容にちょっとした古さを感じてしまうが、それはそれ、本書はとてもためになった。


6点/10点満点

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2015/08/13

田中高編「エルサルバドル、ホンジュラスニカラグアを知るための45章」感想。
エリアスタディーズ。2015年07月23日読了。

諸外国の歴史、政治、経済、文化を紹介する「エリア・スタディーズ」シリーズ。

このシリーズは、執筆者がその地を研究している学者やその地に住んでいる人なので、マニアックな地域のことを知りたい場合に最初に手に取る一冊。何冊か持っているけど、完読したのは以下の2冊。

栗田和明「マラウィを知るための45章」2004年08月18日読了。8点
中村覚(編)「サウジアラビアを知るための65章」2013年10月21日読了。5点


本書は、中米の3カ国について書かれた2004年版。

2015年現在、エルサルバドルとホンジュラスは、それぞれ独立した1冊の本になっている(下部リンク参照)。

本書を買ったのは世界一周旅行など考えてもいなかった頃なので、単純に中南米に興味があったから買ったのだと思う(買った理由すら忘れている)。


歴史、政治、経済に関しては、興味深いことがたくさん書かれていた。詳細割愛。


本書が出版された10年前と現在では、各国とも治安状況が大いに悪化している。

メキシコ麻薬戦争の影響をもろに受け(コロンビア軍とアメリカ軍とアメリカ麻薬取締局DEAが共闘してコロンビアの麻薬カルテルをぶっ潰した2000年以降、メキシコの麻薬カルテルがのし上がった)、

警察や国軍を屁とも思わない麻薬カルテルが、南米で生産されたコカ(やコカを精製してできるコカイン)の輸送中継地として中米各地に拠点を設けたため、中米各国は自国だけでは対応できなくなっている。


単独刊行された新版では、この辺りの記述も増えているのかも知れない。


6点/10点満点




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2015/07/25

廣瀬陽子「未承認国家と覇権なき世界」感想。
国際情勢。2015年05月27日読了。

廣瀬陽子せんせえは、1972年生まれの旧ソ連(特にコーカサス)研究家で、現在は慶応大学の准教授。

廣瀬陽子「ロシア 苦悩する大国、多極化する世界」2013年03月17日読了。5点

廣瀬陽子「強権と不安の超大国・ロシア」2013年11月26日読了。6点

廣瀬陽子「コーカサス 国際関係の十字路」2013年11月29日読了。9点

を読んでいる。


旧ソ連は崩壊によって、ロシアを含む15の国(※)に分裂した。

※ロシア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、ベラルーシ(白ロシア)、アゼルバイジャン、グルジア、タジキスタン、モルドバ、キルギス、リトアニア、トルクメニスタン、アルメニア、ラトビア、エストニア


旧ソ連は、ソビエト連邦であり、ソ連崩壊に伴い独立を宣言できたのは、連邦を構成する社会主義国家のみである。ソ連時代に自治共和国だった地域は、独立を認められていない。


つまり、

ソ連邦←社会主義国家(連邦構成国)←自治共和国←

という序列である。


これが原因で、旧ソ連構成国家は、ソ連時代に自治共和国だった地域が、独立要求して困った事態になっている。

ウクライナ
 クリミア自治州が独立(もしくはロシアへの帰属)を求めている

アゼルバイジャン領内に
 アルメニア人が多く住んでいるナゴルノ・カラバフ自治州がある

アルメニア領内(飛び地)に
 アゼルバイジャン人が多く住んでいるナヒチェヴァン自治共和国がある。

グルジア領内に
 アブハジア自治共和国
 アジャリア自治共和国
 南オセチア共和国 がある

モルドバとロシアの国境付近に
 沿ドニエストル共和国 がある

ウズベキスタン領内に
 カラカルパクスタン共和国 がある


というようなことも書かれている。


が、本書でもっとも重要なことは、旧ユーゴのコソヴォの扱い(独立を認めるか否か)に関して、国連加盟諸国がダブルスタンダードを是とする非常に曖昧な決定を下したことが、今日に至るまでの混乱の原因であると説いていることである。


コソヴォに住んでいる人はアルバニア系住民が多く、アルバニアはヨーロッパ最貧国でマフィアが多く、コソヴォもアルバニアマフィアが跋扈していた。

しかし、ヨーロッパ先進国は、旧ユーゴ解体に伴うユーゴ内戦の戦犯をすべてセルビアに押しつける為、アルバニアマフィアが跋扈するコソヴォの国家独立を承認してしまった。


このダブルスタンダード
(内戦をきっかけとした地域の国家独立宣言は、国連加盟国は絶対承認しない。なぜなら、こういうことを認めると、為政者と政治的に対立している部族が自分の勢力範囲を独立国家として認めるように要求してくるからである。唯一の例外がコソヴォである)
ががまかり通ってしまうと、世界は今以上の混乱に陥る。


世界の枢軸を担う国々は、この混乱をどうするのか!


というような話が、割りと分かりやすく書かれています。


7点/10点満点


余談ではありますが、旧ユーゴが崩壊していた時のセルビアやモルドバを舞台にした海外(イギリス)ドラマ「セックス・トラフィック」2007年07月15日鑑賞8点。は、国連PKO部隊が(旧ソ連や旧ユーゴの貧困層をヨーロッパの金持ちに売り飛ばす)人身売買に関与していたという事実(告発?)ベースの社会派ドラマです。

アカデミー賞を取った「トラフィック」とは異なります。

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2015/07/02

吉岡明子・山尾大編「「イスラム国」の脅威とイラク」感想。
イラク政治研究。2015年04月23日読了。

本書は、ISIS(自称イスラム国)はなぜ生まれたのか?

を、イラク国内の政治問題から分析した本です。


普通の人が読んでもまったく面白くない本です。


専門的な内容が多すぎです。イスラムの知識がある人で、尚且つ中東政治に多少なりとも関心がある人向けです。


かいつまんでイラクの政治体制を記すと、

イラクに住んでいる人は、凄まじく大ざっぱに言うとイスラム教スンナ派1/3、シーア派1/3、クルド人1/3で、クルド人はイスラム教スンナ派だけれども、アラブ人ではないのでアラブ人のスンナ派からも虐げられていた。

で、サダム・フセインは宗派によらない世俗主義(宗教なんて関係ないね、力のある奴が支配するんじゃー)で、実態としてイラクはスンナ派が政権および政治の中枢(官僚組織)を担ってきた。


が、サダム・フセインをブチ殺したいが為だけに仕掛けたアメリカの対イラク戦争で、サダム・フセインは負けた。イコール、スンナ派の政治中枢も負けた。

その後アメリカはスンナ派(性格にはバアス党党員)を政権中枢から一掃し、これは比喩ではなく一掃し、市役所の職員から教師に至るまで、スンナ派(バアス党党員)は全員職を失った。


かわりにシーア派の連中が持て囃された。能力があろうが無かろうが関係なし。


で、バグダッドを中心としたイラクの政治中心部がシーア派(アメリカ庇護下)とスンナ派(サウジアラビア庇護下)で駆け引きをしている間に、

それまではスンナ派がイラクを支配していた
→アメリカがスンナ派政治体制をぶち壊した
→シーア派が台頭した
→スンナ派が多数派の地方は不愉快

というような過程を経て、シリアの混乱で負けたISIS(スンナ派過激主義者)はイラクに逃げ込み、イラクでスンナ派の聖地を作ろう!

ということで過激な行動を始めたら、予想外にスンナ派イラク国民から支持されちゃったので、シーア派ブチ殺せー、クルド人もブチ殺せー

ということになったのだよ。


ということを間接的に書いている本である。


本書はイラク政治に関する極めてまじめな大学院生以上向けの解説書である。

しかし、出版社の意向なのだろう、一般の人が読んで構わないようなタイトルがつけられている。

タイトルに惑わされてはならない。本書に書かれていることはかなり難しい。


個人的には興味深く読めた。ここまでイスラム本を数十冊読んできているので難しさは感じなかったが、でもこのタイトルは酷いと思う。お気楽なエッセイ新書と同じ感覚で読むと「なんだこの本、さっぱりわけ分かんないよ、ああ金を損した」という展開になるので、普通の人は注意されたし。


8点/10点満点

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2015/06/08

岩崎育夫「アジアの国家史」感想。
アジア史。2015年03月05日読了。


何度かこのブログに書いていますが、私は工業高専出身なので、高校レベルの歴史を知りません。(私が在学していた頃<約30年前>の工業高専・電子工学科では、中卒直後の1年生からプログラム授業や電子回路工作実習が30%くらいを占めており、一般教養はとても少なかったのです)

小学生の頃からジュブナイル小説を読んでいた(小学生なのに普通のSF小説を読んでいた)ので、文章とふれあうのは好きだったけど、工業高専は徹底して数式の学校でした。高専3年~4年の頃には、手計算でフーリエ変換を行い、オーディオのグラフィックイコライザーの原理を知ったのです。まあこんな話はどうでもいいか。

私が高専を卒業する頃、世の中はバブル経済の真っ最中で、高専の求人倍率は5倍を超え、私は教授の薦めでNECの子会社に入社しました。ところがそのNECの子会社は、課長以上がすべてNEC本社で使えない奴と判断された無能の姥捨て会社で、もう、なんというか。NECの子会社なのに、NECの福利厚生はほとんど利用できないという姥捨て会社でした。(この辺りを書き出すときりがないので以下割愛)


で、SF小説ばかり読んでいた私は、私は25歳頃から冒険小説を読み出し、例えば船戸与一の「砂のクロニクル」1991年初版を読んで、なるほどこれはすごく面白い小説だ!と単純に感心してましたが、こういう小説を何十冊も読むうち、こういう小説はどこまで史実、現実に基づいているのだろう?と疑問に思うようになりました。

ここから嵩じて、私は今現在地球上で起きている紛争に興味を持つようになり、ひいては歴史(特に現代史)に興味を持つようになったのです。


で、本書。の前に。

「東南アジア」というのは、第二次世界大戦後に生まれた概念である。ということを、2009年に入学した法政大学通信教育課程 文学部 地理学科 の授業で知り、その副読本

白石隆「海の帝国―アジアをどう考えるか」2013年01月10日読了。7点(難しかった)

を読み、なるほどそういう経緯があったのか、と得心したのです。他に

鶴見良行「海道の社会史」2014年05月14日読了。7点

からも多大な知識を得られました。


で、本書。

私が色んな本から中途半端に歴史を学んでいる、その隙間を埋めるような、私に足りなかった知識を記した本。それが本書でした。

p140-141(植民地国家の時代「日本」の項より抜粋)

「(前略)蝦夷(北海道)では、一五世紀ごろに独自の民族文化を持ったアイヌ社会が形成されたが、江戸時代になると北海道南部の松前藩の実質的支配下に置かれた。そして、沖縄より一〇年早い一八六九年に、日本は統治下に組み入れ北海道と改称したのである。

 この後、日本の東アジアへの進出が本格化していった。一八七四年に日本の領土と主張する琉球(沖縄)の漁民が、清王朝領土の台湾で殺害されたことを理由に台湾に出兵し、翌一八七五年には、日本の軍艦が李氏朝鮮王朝の江華島を占拠し(江華島事件)、鎖国政策を採っていた李氏朝鮮王朝に圧力をかけて開国させ、自由貿易の特権を得た。一八九四年に李氏朝鮮王朝で農民氾濫が発生すると、清王朝と日本がともに軍隊を派遣したことから日清戦争が勃発したが、これは、これまで朝鮮半島に対して宗主権を行使してきた中国と、新支配者になろうとする日本による朝鮮半島の争奪戦を意味した。太平天国の乱などで弱体化し、かつ近代化改革に後れをとった清王朝は新興国の日本の敗れると、一八九五年の日清講和条約で李氏朝鮮王朝に対する宗主権の消滅を認め、台湾を日本に割譲したのである(台湾の植民地化)」


えっ?
そうなんですか?

この短い引用だけでも、今まで知らなかったことがたくさん詰まっている。


もしかしたら普通高校に進学していたら当たり前の知識なのかも知れないが、私には斬新だった。

このような話が満載である本書は、故に私的には10点満点なのであります。


10点/10点満点

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