カテゴリー「◇いわゆる新書」の記事

2012/02/05

井田徹治「データで検証 地球の資源」感想。
ブルーバックス。2012年01月30日読了。

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データで検証 地球の資源―未来はほんとうに大丈夫なのか?


本屋で立ち読みして面白かったので買ったしまいましたが……1092円もする。最近のブルーバックスは高いなあ。


本書の内容はタイトル通りで、

1章 原子力
2章 化石エネルギー(石油や石炭)
3章 再生可能エネルギー
4章 レアメタル
5章 食料
6章 水産物(魚など)
7章 森(森林資源)
8章 水

に関して、これらの資源はいま現在どのような状況にあるのかを、データを下に検証している。

こんなことが載っている。

BP(イギリスの石油会社)のデータに基づく天然ガスの現状は、「確認埋蔵量」を「2010年の消費量」で割った数値が約59年となり、つまり59年後には天然ガスはなくなる。(p66)

プラスチックは石油から作られるが、石油の90~95%は輸送用燃料として使われており、発電に使われるのは数%、プラスチックの原料となるのは1%程度。(p86) ※天野才蔵注:石油を使った発電は世界的に規制されていて、発電は石炭や天然ガスを使うことが多い。

熱を電気に変換する素子に使われるテルルという物質は、銅鉱を精製する際の副産物としてしか産出されない。(p158)

農作物を作るのに欠かせない窒素肥料。地下に浸透した窒素が微生物の働きで硝酸となり地下水中に蓄積され、その汚染(硝酸汚染)が飲料として適さないレベルに達しているところもある。(p181)

一般的に気温が1度上昇すると、穀物の収量は10%低下すると言われている。(p195)


などなど、興味深い話が多数載っている。

「データで検証」のデータに?となる部分もあるが(下記)、一つのデータが変だからと言って全てが間違っているわけではないので、概ね信用しても良いんじゃないだろうか。


なかなか興味深く読める一冊でした。

データに基づいているので、自称ジャーナリストみたいな連中がギャーギャー騒いでいるだけの感情論的な本やネット記事読むよりは為になります。(例えば、中国人が日本の森林を買ったら「水を強奪する気だ!」とか言うようなの→どうやって日本から水を運ぶんだよ、ちょっとは考えろバカ。)


7点/10点満点


データの変なところの例:レアメタルの章で、p159の図タンタルの生産国トップ3がオーストラリア58%、ブラジル20%、モザンビーク6%となっている。しかしp160の図タンタルの存在量トップ2ではオーストラリア93%、ブラジル7%(2カ国のみ)となっている。オーストラリアとブラジルにしか存在しない鉱物を、なんでモザンビークで生産してるの? &タンタルはザイールコンゴでも採れるはずなので、モザンビークの生産はコンゴのタンタルじゃないの? とか。

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2012/01/24

石渡嶺司・山内太地「アホ大学のバカ学生」感想。
いわゆる新書。2012年01月21日読了。

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アホ大学のバカ学生―グローバル人材と就活迷子のあいだ

本書の著者は、世の中の三流大学にいるバカ学生の&三流大学の営業マン(受験者を掻き集める方々)の実態をまとめた「最高学府はバカだらけ」を2007年に上梓した方。


積ん読本が多数あるので(未だ300冊以上)、新刊本はなるべく買わないようにしているんだけど、本書はタイトルに釣られ立ち読みし、面白かったので買ってしまった。

本書のタイトルは釣りで、「アホ大学」のアホな取り組み、「バカ学生」のバカっぷりも紹介しているが、実は頑張っている大学関係者や学生を応援している内容である。


出たばかりの新刊なので、細かな内容紹介は省くとして、特に興味を惹いたところ。


本書の第4章で紹介されている事例。2010年秋に東京、札幌、大阪、松山で「就活デモ」が繰り広げられたそうである。「就活はんたーい」という学生が集結したのだそうだ。なんじゃそりゃ。


またこの章では就活している女子学生のエピソードとして、

「私が『高い向上心がある』と自己PRしたところ、つまらない、と言われた。どの企業も相手にしてくれなかった」
彼女は、だから今は就活難だ、というのである。最初は何の冗談かと思ったが、学生は本気のご様子。

ですって。すごいなあ。就活指導をする大学関係者は何をしているんでしょうねえ。


総じて面白い本でした。


というわけで、本書の購入を迷っている方は、第4章を立ち読みされてから判断されては。


7点/10点満点

1/25:最初の文章、意味がわかりづらかったのでちょっと修正。内容紹介に当たる部分もちょっと修正。

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2012/01/09

福田充「メディアとテロリズム」感想。
いわゆる新書。2012年01月08日読了。

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メディアとテロリズム

2009年8月に出た本。出てすぐ買ったんですが、積ん読……


◆本書の内容(紀伊國屋bookWebより)
「メディアの存在はテロリストに酸素を供給しているようなもの」(サッチャー英元首相)。
いまやテロリストはTVやネットなどのメディアで自らの存在をアピールし、犯行を喧伝する。
対するメディアはそれを報じ、部数や視聴率を稼ぐ。
これでは“共生”どころか“共犯”ではないのか?
気鋭のメディア社会学者による“負のスパイラル”の歴史、現状、そして解決策―。


◆感想

テロリストはメディアを利用している。

何らかの思想を持ったテロリスト(無差別殺人者ではない)は自分たちの主張を世に知らしめたい。テロを起こせば、新聞やテレビなどのメディアが勝手に犯行声明を読み上げてくれる。テロのやり方次第では、自分たちの主張が世界中のメディアに取り上げられる。自分たちの主張を広めるには実に効率の良い方法である。

この現象を手っ取り早く言い表した言葉が、本書の帯に載っている。

テロリストは言った。「ゴールデンタイムまで撃つな!」


テロが長引くと、メディアは過熱報道になる。本書で例として出ていたのはペルーで発生した在ペルー日本大使公邸占拠事件。この事件は解決まで4ヶ月以上かかったが、事件が継続している中、共同通信の記者やテレビ朝日がペルー政府に知らせず突入取材を行った(共同通信は成功、テレ朝は失敗)。

この行為は、人質解放のために尽力しているペルー政府を無にし、人質の生命を危険にさらしたと言うことで世界中からバッシングされた。

しかし、ジャーナリストには取材する権利(表現の自由)があり、テロリストへ取材することも自由であるはず。これを法律で規制するのもおかしい。

筆者はここでイギリスのDAノーティス制度を紹介している。DAノーティス制度とは、イギリスの政府代表と、テレビ、新聞、出版、ネット等の書くメディア代表とが合同でDPBACという機関を常時設置し、安全保障に関する報道が生じた場合に、国家と国民の安全性のためにその報道(内容)を検討する制度だそうだ。

対して日本のメディアはどうだろうか?


また、日本に限らず、メディアの報道には(善し悪しは別として)報道に偏向性がある。

テロが発生した場合、通常最初はテロが発生した地域の治安事件として報じられる(9.11のような巨大テロの場合でも、一番最初のニュースでは「単なる飛行機の操縦ミス」の可能性で報じられていた)。テロリストが犯行声明をメディアに送ると、治安事件からテロ事件へ変化する。

例えば先に挙げたペルーの事件は、テロ事件ではあるが、日本国内ではペルーに住んでいる日本人が被害にあった治安事件としての報道に終始した。

去年から続いている「アラブの春」に関しても、チュニジア、エジプト、リビア、シリア、イエメンで起こっている出来事に対し、基本的な報道姿勢は「民主化は是」「独裁者は悪」である。

シンガポールも独裁政権なんだけど、経済が上手く回っている国だから(かつ国民があまり不満を持っていないのか?)、メディアはそのことをあまり報じない。


まあ、そんなこんなで興味深く読めましたが、無意味な繰り返しが何度かあったのでちょっと減点。


7点/10点満点


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2011/09/05

岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」感想。
講談社ブルーバックス。2011年08月29日読了。

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現代免疫物語―花粉症や移植が教える生命の不思議

◆ドナ・ディケンソンは「ボディショッピング 血と肉の経済」(2011年08月23日読了)で、医学者や科学者が臓器や卵子や遺伝子を扱うことに関する生命倫理を問うた。印象に残ったのは以下のような主張。

肝臓や腎臓の移植は臓器移植である。場合によっては、それが売買されるケースもある。臓器の売買は生命倫理的に許されるべきではない。

では、卵子はどうなのだろうか?卵子は臓器ではないのか?肝臓腎臓と卵子の違いとはいったい何だ?

遺伝子を利用することによって病気の治療につながるのは素晴らしいかも知れないが、それを特許として限られた科学者や製薬会社の独占的所有物として良いのだろうか?

遺伝子を研究することや、幹細胞を研究するために、卵子が利用される。科学者たちは、若くてまだ妊娠を望んでいない若い女性から卵子の提供を受ける(対価を払う)が、これは臓器売買の一種なのではないか?


◆本書

本書は、阪大教授の岸本氏(阪大医学部長も歴任)とサイエンスライターの中嶋氏が、現代の免疫学に関する発見の歴史を、医学知識のないの読者でも分かるように易しく書いた本である。(元々は単行本で出版された本みたいなので、ブルーバックスの読者レベルに合わせたわけではないと思う)

1930年代から1960年代に亘る30年間に、抗体と呼ばれる免疫物質(分子)が続々と発見されていた。

アレルギーを引き起こす原因も、抗体に関係があることが突き止められ、花粉症の現任となる抗体(IgE)は日本人の科学者石坂夫妻が突き止めた。

というような話から始まって、1960年代以降現在に至るまでの、抗体、T細胞、インターフェロン、胸腺の役割、受容体など、怒濤の発見ラッシュの歴史と、それにまつわる科学者達の奮闘、数ヶ月の差で一番乗りを逃してしまった科学者の悲哀、そういうことがドラマチックに書かれている本である。


新しい抗体や受容体を発見するために、特定の抗体に弱いマウス(実験動物としてのネズミのこと)やウサギを生産し、

鶏の卵を使った実験から生み出されたインターフェロン、

遺伝子を利用することによって新たな治療法が確立できると考えた科学者や製薬会社による、遺伝子医療開発レース、

などなど……


本書は科学者達の飽くなき探求心をテーマ毎の物語形式で書かれ、医療科学の発展を知る上で面白い話がたくさん載っており(あとがきで、かなり端折ったと書いているが、私には詰め込み過ぎに感じた)、とても良質なサイエンスブックと思う。


◆だが

冒頭に挙げた「ボディショッピング」を読んだ後に本書を読むと、とても複雑な気持ちになった。「ボディショッピング」の著者が懸念しているような、「医学者達の無垢な暴走」が如実に現れているのだ。

倫理というのはとても難しい。


7点/10点満点

◆余談:臓器売買に関する最近の読書

最近、私は好んで医療関係、なかでも臓器売買及び臓器移植についての本を読んでいる。
◆ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」2011年08月23日読了(生命倫理を問う本)
◆デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」2011年08月06日読了(安楽死本)
◆岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」2011年07月17日読了(医者の思想エッセイ)
◆一橋文哉「ドナービジネス」2011年02月16日読了(作り話っぽく信頼性に欠ける)
◆山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」2011年01月25日読了(臓器売買犯の言い訳)
◆城山英巳「中国臓器市場」2011年01月24日読了(ルポ本としての構成はイマイチだが取材内容は良)
◆青山淳平「腎臓移植最前線」2010年10月17日読了(これは良書)
◆木村良一「臓器漂流」2010年09月09日読了(本としては残念だが事実関係は興味深い)

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2011/08/28

春原剛「核がなくならない7つの理由」感想。
核武装分析。2011年08月11日読了。

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核がなくならない7つの理由

本書は、原発とは何の関係も御座いません。

2010年10月に出版された、「核兵器」がなくならない政治的・軍事的理由を考察している本です。

◆本書の概要(紀伊國屋Bookwebより)

これが核を巡る現実だ。
「核があれば大物扱いされる」「核の傘は安くて便利な安全保障」「オバマ大統領に面従腹背する核保有国」―「核なき世界」構想を阻む全情勢を、七つに切り分けて徹底解説。
被爆国日本が原発ビジネスに参入した理由、米国を豹変させた「核テロ」の現実性、温暖化で進む新たな核拡散とは?この一冊で核問題が丸ごと分かる。

序章 核テロの恐怖が米国を変えた
1 「怖恐の均衡」は核でしか作れない
2 核があれば「大物扱い」される
3 「核の傘」は安くて便利な安全保障
4 オバマに面従腹背する核大国
5 絶対信用できない国が「隣」にあるから
6 「緩い核」×「汚い爆弾」の危機が迫る
7 クリーン・エネルギーを隠れ蓑にした核拡散


◆内容抜粋

・第2章は、軍事独裁政権が支配する国家として、北朝鮮とミャンマーの比較から始まる。
米国はミャンマーに厳しく、北朝鮮に甘い。
それは北朝鮮が「核武装」しているからである。

2002年9月、その北朝鮮に行った小泉純一郎元総理大臣は、「金正日総書記とと対話した際、決して笑顔を見せなかったことは記憶に新しい。この時は拉致問題の解決のため、敢えて日本側から北朝鮮の「土を踏んだ」ものの、それ以上のことはない、という意味合いを北朝鮮国内外に強く示す意図があったのだ。」

→私は「笑顔を見せなかった」事すら知りませんでした。

・第5章から引用する。
「地球規模での核戦力ではなく、あくまで自分が位置する地域内での安全確保を狙って核武装をする国家は少なくない。そのような国々には、ある種の共通項がある。1)周辺各国に敵が多く、地政学的に見て孤立状態にある。 2)近隣に強力な同盟国がいない。3)核兵器を開発できるだけの一定の工業力、科学技術力を保有している--などだ。
 これに当てはまりそうな国はイスラエルの他にイラン、二カ国がほぼ同時に核を保有したインドとパキスタン、白人政権時代の南アフリカ共和国が挙げられる。
 そんな彼らに、無邪気な笑顔で、「核をなくそう」「ここを非核地帯にしよう」と呼びかけても、簡単に応じるはずはない。」

・第6章では、2009年12月25日、アムステルダム発デトロイト行きのノースウェスト航空機が着陸態勢に入った頃、着陸20分前に乗客の一人(テロリスト)が爆発物に火を着けた。幸いにも不発で終わりテロリストは乗員乗客に取り押さえられたが、セキュリティを乗り越え爆弾を持ち込んだテロリストの手口に世界中がぞっとした。もしこれが核爆弾だったら……

→この頃私は世界一周の最中で、この事件の影響で、2009年12月29日にエクアドルのグアヤキル→マドリッドのLAN航空機にチェックインしラウンジで待っていたら、エクアドル軍から呼び出しをくらい、機内預け荷物のスーツケースの中身を開けるよう指示され、せっかくパッキングした荷物を全部ひっくり返された。


◆感想

こんな感じで、世界から核兵器がなくならない理由を著者は次々と考察していき、そのどれもが納得できる。

平和ボケした日本のマスコミではなかなか報じられない(先日書いた北方領土の話みたいな事)核武装の現実について、アウトラインだけなのだろうが、かなり勉強になる。

ではなぜ評価が7点かというと、序章と1章が読みづらかったからです。章の構成を変えると、もっとよくなった感じがするのです。

ちょっともったいない本。

でも読んで損はしない本。


7点/10点満点


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2011/08/24

山本直人「電通とリクルート」感想。
広告業回顧録。2011年08月09日読了。

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電通とリクルート

博報堂出身の著者(と言っても1964年生まれ)が書いた広告回顧録。

回顧録として読むとそれなりに面白いのですが、タイトルには大して意味がない。

そんな私はタイトルに釣られて買ってしまって、ちょっと失敗したなあ、と。


5点/10点満点


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2011/08/20

白波瀬佐和子「生き方の不平等―お互いさまの社会に向けて」感想。
思想書。2011年08月03日読了。

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生き方の不平等―お互いさまの社会に向けて

本エントリーは長いぞ。覚悟すること。


この本(も)、私が在学している法政大学の夏期スクーリング「人文地理学実習」の教科書なので読んだ。

タイトル見ただけで内容が推測でき、この手の思想が大嫌いな私は一文字たりとも読みたくなかったが、「スクーリングの前に読んでおけ」との指令だったので仕方なく読んだ。

1958年生まれ(たぶん現在53歳)の著者は、同志社女子大を卒業した後、39歳でオックスフォード大学で博士号を取得した方である。39歳でオックスフォードってことは、そこに至るまで頑張って金貯めてから留学なされた苦労人であろうことが推測できる。

んで、現在は東大大学院の准教授である。


んで、本書はエリート様が語る貧困論である。大方の予想通り、社会主義、共産主義的な主張が満載で反吐が出る。

おどれは現実をどんだけ知っとんのじゃ?


で、要約するのである(注:講義の主題で「正しい要約」をせよ、との指令が出たのだ)


第一章 ゆりかごが決める人の一生 要約
 まず子供の不平等について考える。従来制度化されていた児童手当および家族手当は、妻子を養うための生活保障が第一義であり、子供自身の福利を保障する制度ではなかった。これを指標化したものとして、「日本における児童手当の対GDP比が低いこと」(p28)が挙げられ、更に掘り下げた「18歳未満の子供のいる世帯の貧困率を国際比較」(p30・図1-2)を著者は提示する。

 著者はこれらデータを更に詳しく分析し、「未就学児のいる世帯の貧困率が大きく上昇している」(p31)や、「若くして結婚し幼い子供を抱える家族の経済的に厳しい状況がうかがえます」(p32)と述べる。また、「就労状況のジェンダー差」(p32)、「若年既婚者の学歴分布」(p33)、「社会保障負担の高さ」(p34)、世帯構成別に見た貧困率(p35・図1-5)などについても言及し、「子育てに関する負担として最も多く寄せられるのが経済的なこと」(p36)としている。

 その上で、「子供は親を選ぶことができません」(p36)ということが、子供にとって「社会のスタートラインに差を生み出す」(p37)ことにつながり、「世の中の子供は、どのような親元に生まれようが「ひととなり」を保障されなければならない」(p39)と著者は主張する。

 「子供の幸せは親の幸せ」(p39小見出し)であるが、「親たちは貧しかった自分とは違った豊かな人生を歩ませたいと、子供たちへの期待を膨らませ…後略…」(p41-42)ている一方、「ネグレクトならぬ、親からほとんど注目されずに育っていく子もいます」(p43)と、様々な親が存在していることを示し、そして著者は自分の子供だけが子供なのではなく、「この世に生を享けたすべての子もまたわれわれの子です」(p45)と述べる。

 次に母子家庭の貧困率について、世界各国の「両親が揃っている世帯」と「母子家庭」の貧困率を比べ(p47・図1-6)、日本の母子家庭の貧困率は他国より際立っていることを示し、アメリカとイギリスの現状を「教育を十分うけることなく10代で妊娠し、その現実がわからないままに子供を生んで母親になる…中略…彼女たちは貧困層へと転げ落ちていきます」(p48)と分析し、日本においては「日本の母子家庭の母親はアメリカ以上にワーキングプアの状態にあるといえます」(p49)、「母子家庭の子もまた母子家庭となっていく」(p50)と述べている。

 更に著者は日本における、二人親、母子家庭、父子家庭、における子供の就労・就学状況を調査し、「(世帯の)所得が高いほど平均子供数が少なく、低所得層ほど平均子供数が多い傾向にある」(p55)と分析する。しかし子供によりよい教育をうけさせようと希望するのは、高所得者層も低所得者層も関係なく、「我が子であろうが、他人の子であろうが、子供の生活をわれわれ大人が保障していかなければならないのです」(p58)と提言し、具体案として「学ぶ権利の保障」「チャレンジする機会の保障」を示し、更には高校教育までの総合的な教育改革を訴える。この観点から、民主党政権が採った子供手当は、「国が子供を対象として正面切って保障政策を立ち上げた意義そのものは極めて高い」と評価している。

第一章の評価と疑問点
・「国際的に見て日本における児童手当の対GDP比が低い」(p28)
→この文章の直後に出てくる図1-1は、この文章の図ではない。誘導している印象を受ける。
→ここでいうGDPは、名目GDP(単純な金額)なのか、実質GDP(為替変動を考慮)なのか、購買力平価(俗に言うビッグマック指数のような考え方)を考慮しているのかが不明である。

・貧困率の定義を、「貧困問題で頻繁に引用される相対的貧困率(以下、貧困率)は、世帯収入に世帯サイズ(世帯人員数)を考慮して算出…後略…」(p29)、「図1-2は18歳未満の子供の…中略…OECDのやり方を踏襲して世帯の可処分所得を世帯人数で等価して一人当たりの福利厚生度とし、それをもって社会全体人口の貧困率を算出する方法をとっています。」(p30)
→OECDについての説明がない。(社会科学を勉強する者なら知っていて当たり前?)
→OECD基準が適切である根拠は?
→可処分所得、に関する定義が示されていない(OECD基準?)
→世帯の可処分所得を世帯人数で等価して、に関する数式が一切示されていない。
→絶対的貧困率への言及がない。
 ※絶対的貧困率とは、世界銀行の定義で1日の所得が1米ドル以下に満たない国民の割合の事
→それらを踏まえ、図は国別貧困率に置き換えられているため、(日本の場合)世帯年収が幾らからが貧困と位置づけられるのかがわからない=日本の貧困についてイメージが湧かない。

・「図1-4の分析対象者となっている若年既婚者の学歴分布を見ると…後略…」(p33)
→若年ではない既婚者の学歴分布が比較掲載されていないため、図1-4にて示された学歴の偏向性が、“若年既婚者”のみに見られる傾向なのか、読者は判断できない。

・「貧困層にある母子家庭の多くが未婚の若いアフリカ系アメリカ人(黒人)女性です」(p48)
→単純な疑問として、ヒスパニック(中南米系の移民)は含まれないのか?

・「日本の母子家庭の母親はアメリカ以上にワーキング・プアの状態にあるといえます」(p49)
→感情的にはわかるが、それならば働かずに(生きていくための最低限の生活費を支給される)
生活保護を受ければ良いだけの話。最低限以上の生活をしたい人が多いというだけでは?

◆ちょっと飛ぶが、第四章 評価と疑問点
・「格差の測り方」(p164-167)
→4ページに亘り記載されている格差の測り方に関し、この計算方法は「所得」が計算根拠となっており、「資産」への考慮がなされていない。従って、次のような疑問が生ずる。
(疑問例)総額3億円の土地を所有しているが、現金収入は月額12万円(年収144万円)だけの独居老人は、所得で見ると貧困層に分類されるが、果たしてこの老人は貧困層か?
 (この疑問例は、土地を現預金に置き換えても構わない)

・「家族だから介護すべしと言う規範からの解放をめざすのであれば、介護自体をサービスであり労働ととらえて、報酬体系を検討することが急務です。」(p181)
→家族が介護を行うとキャッシュが必要ないというメリットがあり(経営学的にいうキャッシュフローの観点)、著者の主張にはこの視点が抜けている。


◆スウェーデン
・(p113)「アメリカやイギリス、スウェーデンといった欧米諸国において…略…」
・(p128)「福祉国家としてお手本となるスウェーデンにしても」
・(p129)「経済の回復とともに再び出生率が上昇しているのが今のスウェーデンです」
・(p196)「スウェーデンの恵まれた社会福祉政策は、…略…」

知らない人のために書いておくが、スウェーデンは(半分)社会主義国家だよ。


というわけで、(私の価値観に照らせば)ダメダメ本である。


3点/10点満点


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2011/07/06

久繁哲之介「地域再生の罠」感想。
地方再建論。2011年06月24日読了。

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地域再生の罠―なぜ市民と地方は豊かになれないのか?

あー、シャレにならねえ。

ココログのバカ仕様で、1時間かけて書いた本エントリーを保存しようとしたらエラーが出てぶっ飛んだ。
はぁぁー。ココログ死ね。


※※書き直した本書の感想※※


「地域再生」という名目の地方活性化を地方自治体が実施するが、実態は失敗だらけ。でも地方自治体は責任問題に発展するのを避けるため、実態を隠し成功事例として発表する。

その偽りの「成功事例」を参考にして、別の地方都市が「地域再生」を行うが、元々の「成功事例」が的外れな政策なので、真似した別の地方都市も実質失敗に陥る。

これが日本中の至る所(地方都市)で繰り返されている光景。
著者は幾つもの事例を紹介し、その本質に迫る。

・109を誘致したのはいいけど、店員がダサくて、ビルの目の前に八百屋があって、雰囲気ぶちこわしで、それで4年で109が撤退してしまった宇都宮市

・商店街再生で成功事例だった松江市を著者が見に行くと、人っ子一人歩いていない寂れた商店街だった。松江市職員は「月一回のイベントの時は大勢人が来ます」と言い、島根県職員は「アレが成功事例?冗談でしょ。普段は閑古鳥だよ、松江市の商店街は車の抜け道で危ないよ」と言う

・小樽のような観光都市を目指したけど実質的に大失敗している長野市の「ぱてぃお大門」

・コンパクトシティを目指し市の中心部に箱物をいっぱい作ったのに、市の中心部へ行く交通機関である路面電車を廃止して、人が寄りつかなくなってしまった岐阜市


などなど、などなど。いっぱい事例が載っているので、著者が指摘したい問題点がすごくよくわかる良い本である。

ただなんだろう、著者には田舎の都市に住む人の気持ちがわかっていないんだろうな、という感じがする。

私の故郷は北海道苫小牧市の近隣なのだけれども、苫小牧市というのは北海道でも珍しく1970年くらいからずっと人口増加を続けている自治体で(市町村大合併はしていない)、でも駅ビルはほぼ全てのテナントが撤退して廃墟となっていて、駅前はすごく寂れているんだけれども、マイカーでの買い物に便利な立地にはいろんな商業施設が建っていて、ここには苫小牧市民だけじゃなく近隣市町村からの買い物客もどんどんやってくる。客が来るから街は勝手に発展する。帰京する度に街並みが変わっている。帰郷する度に便利になっている。

でもこれは著者がいうところの「大型ショッピングモールを誘致するだけでグランドデザインがない都市」に近い発展の仕方なんだけれども、グランドデザインがあろうがなかろうが住民は関係ない。住民は便利であればそれでいいのだ。

この辺の感覚が著者にあるのかないのかがわからない。
著者は都会に住んで都会から田舎を見ているだけの人なのか、もともと田舎者で田舎の発展という事を実感として捉えて書いているのか、そこがわからないから、ちょっと内容に悩む本である。

面白かったと言えるんですけどね。


※ちなみに本書は大学の夏期スクーリングの指定教本なので読みました。そうじゃなければ私的にはまったく興味のないジャンルの本です。まあ私的に新しいジャンルを開拓できたといえばその通りなんですが。


6点/10点満点


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2011/06/02

伊勢崎賢治「紛争屋の外交論」感想。
いわゆる新書。2011年04月27日読了。

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紛争屋の外交論―ニッポンの出口戦略

1ヶ月も更新が滞ってしまいました(※)。

でありながら、日々のユニークユーザー数は増えもせず減りもせず。安定して1日100人前後の方々にお読みいただいております。このブログは滅多にコメントがつかないので、どのような方が当ブログを読んでいるのかわからないのですが、とにもかくにもお読みいただき誠にありがとうございます。


さて本書。

「国際貢献のウソ」「武装解除」を書いた伊勢崎賢治氏の最新著作です。

国連で様々な戦後処理を担当してきた著者が、平和ボケした日本の外交に渇を入れる私的外交論、それが本書です。あとがきが2011年2月15日付になっているので、今年に入ってから脱稿したものと思われます。

内容は多岐にわたり、

貧困国で起こる内戦は貧困だけが原因ではなく、多国籍企業が政府上層部と結託し特権階級を作り、国家が腐敗(賄賂の蔓延)し、それが元で国庫が破綻し、広範囲に貧困が蔓延し、そこに善意の皮を被った国際援助団体が入り込み……(シエラレオネの例)

政権とPR会社が結託してウソの世論を盛り上げれば、戦争すら誘導できる……(アメリカのイラク戦争の例)

沖縄の米軍基地問題はイラクやアフガニスタンの学生から見たら、米軍とうまくやっているようにしか見えない……(米軍に抗議するため自爆テロをする人は日本にはいない)

日本政府はアフガニスタンへの援助でアフガン警察組織の給料を払うと言っているが、それは他国から見たら恥ずかしい行為……(アフガニスタンの警察組織は、もはや腐ってしまってタリバンと区別がつかない)

等々、そういう話が載っています。


全体的には、話題がありすぎてとっちらかったような印象を受けるのですが、国際貢献に興味がある人は読んでおくべき一冊でしょう。


7点/10点満点


※持病の椎間板ヘルニアが悪化して、自宅のトイレに行くのも難儀しておりました。腰が痛すぎて昼間っから飲んだくれ、酒の力で痛みを抑える毎日。痛みが過ぎると、読書は捗らず、映画を見る日々で御座いました。

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2011/05/01

門倉貴史「本当は嘘つきな統計数字」感想。
うんちく新書。2011年04月25日読了。

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本当は嘘つきな統計数字

日本のアンダーグラウンドを経済的に観察した「日本の地下経済―脱税・賄賂・売春・麻薬」(採点はやや辛め)、「貧困ビジネス」(採点は辛口)や、BRICS経済を分析した先駆け的な「手にとるようにわかるインド」などを著している著者門倉貴史。

しかーし。フジテレビで放送している「ホンマでっかTV」に出演して、書籍で取り上げるネタから想像されるイメージとは大いに異なる似非おかまキャラになって(させられて?)しまって、以前から同氏の著書を読んでいる読者の失望を買ってしまった門倉貴史。(とはいえ知名度向上には大いに役立っただろう)

本業に支障が出るという理由で「ホンマでっかTV」を降板し、本業に勤しむのかと思っていたら、土俵を変えて「たけしのTVタックル」に出ていたが、弱々しいキャラは相変わらず。

で本書は、そんな同氏が昨年11月に出した本。

統計数字というのは、結果だけ見ても実態が分からないことがある、分母と分子をよく見極めなければならないという話とか、言葉のレトリックに騙されてはいけないという話が書かれている。

例として挙げると、所得が増え暮らしが豊かになっていくと、エンゲル係数(家計の消費支出に占める飲食費のパーセントのこと)が下がる。これは義務教育の社会科で習うから、誰しもが知っている当たり前の話。しかし、昨今の超高齢社会ニッポンでは、単純にこの図式は当てはまらない。高齢者は食が細い。職が細けりゃ、エンゲル係数は下がる。今のニッポンは人口に対する老齢人口がむちゃくちゃ高い。統計に影響を与えるくらい、老齢人口が多いのだ。

もひとつ例を挙げると、あなたがガンに罹ったとする。5年後の死亡率は1%ですと宣告されるのと、5年後の生存率は99%ですと宣告されるのは、確率的にはまったく同じだが、受ける印象がまったく異なる。

といような話が盛りだくさん。

堅苦しい新書というよりは、最近はやりの雑学蘊蓄を得るソフトな新書です。
暇つぶしに読むには良い本です。


6点/10点満点


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