白戸圭一「ルポ資源大国アフリカ」感想。
ルポ。2009年09月21日読了。

ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄
白戸圭一 / 東洋経済新報社 2009/08 ¥1,995 (税込)

◆一つ前の感想に「2011年新聞・テレビ消滅」を取り上げた。本書「ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄」の著者、白戸圭一氏は、その消滅しそうなマスメディアの筆頭、毎日新聞の元ヨハネスブルク特派員で、現在は政治部記者。

本書「ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄」は、著者がヨハネスブルク特派員だった時に、南アフリカ、ナイジェリア、コンゴ(旧ザイール)、スーダン、ソマリアで起こっている暴力の現場を取材し、毎日新聞本紙には(読者ニーズが少ないために)掲載しきれなかった部分をまとめたものである。アフリカの現状を伝える本である。

◆まずはじめに書いておく。この本の内容は素晴らしい。

◆アフリカには貧困がつきまとい、圧政君主と腐敗した政治が渦巻き、暴力が国中を支配している、というイメージが世界中の人々に植え付けられている一方で、最近読んだアフリカ絡みの本、ロバート・ゲスト「アフリカ-苦悩する大陸」10点満点や、ヴィジャイ・マハジャン「アフリカ 動きだす9億人市場」9点/10点満点には、アフリカに住む人々だって平和を望んでいるし、経済的に豊かになりたいと思っているし、実際、経済的に成功を収めつつある国だっていっぱいある、悪いことばかりじゃないんだよ、という論調になっている。

◆1970年生まれの著者は、学生時代の1991年にニジェールを訪れたのを始め、大学院時代にアフリカ政治学を専攻、毎日新聞ではヨハネスブルク特派員と、アフリカに魅せられた人なのだろう。

◆その著者をして、アフリカは貧困や暴力だけではないことを承知の上で、アフリカで起こっている暴力の連鎖、圧政、貧困、それら負のスパイラルをテーマに本書を書いている。

◆発展しつつあるアフリカと、暴力の連鎖が渦巻くアフリカというのは、今の日本を「豊かな国」と見るのか「貧しい国」と見るのか、そのような違いなのかもしれない。だから、松本仁一「カラシニコフ」10点満点や本書のようなテーマもあれば、前掲の「苦悩する大陸」「動き出す9億人市場」のテーマもある。

これから世界一周を行い、来年2月は南部アフリカに1ヶ月くらい滞在するので、本書のような負のテーマを読むとヘヴィな気分になってしまうが、まあそれはそれ、本書は非常に良くできたルポである。


◆惜しむらくは、本書は毎日新聞社の金で取材した成果を記した本なのに、なぜ毎日新聞社から出版されないのか。更にこれだけのルポを書ける記者が、なぜ政治部記者にならなければならないのか。また、時折著者が見せる「上から目線」にはむかついた。こういう部分に、日本の新聞社の問題があるような気がする。


9点/10点満点


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ヴィジャイ・マハジャン「アフリカ 動きだす9億人市場」感想。
ルポ。2009年08月10日読了。

アフリカ 動きだす9億人市場
ヴィジャイ・マハジャン/松本裕 / 英治出版 2009/07 ¥2,310 (税込)

◆アフリカに関するルポやドキュメンタリーには良書が多い。以前読んだロバート・ゲスト「アフリカ 苦悩する大陸」は10点満点つけた。アフリカを長くウォッチし続けているジャーナリスト松本仁一の各書も、おしなべて完成度が高い。

アメリカを凌駕する中国、知られざるIT大国インド、独裁者プーチンに支配されるロシア、のような新興国に関する本は、内容がまともであれいいい加減であれ、海外情勢などにちっとも関心がない普通のサラリーマンでも読むだろう。だがアフリカ関連書籍は、アフリカに関心がある人しか読まない。書籍としての市場がきわめて狭い、つまり売れないジャンルなのだ。amazonを筆頭に、誰でも簡単にブックレビューを読み書きできる今の時代、いい加減な本を出すと、速効で売れなくなる。だから、元々狭い市場しか持たないアフリカ関連書籍は、いい加減な本を出す余裕が全くないので、良書が数多く出版される。と私は思うのだ。

◆で、本書。インドに生まれ、アメリカに渡り大学教授となった著者が書いた、アフリカに関するマーケティング論。
アフリカは53のばらばらな国が集まった小さな国家の集合体で、経済はまだ発展していなく、グローバルビジネスにおいて戦略的価値はまだ見いだせない、という世間一般のイメージは、もはや間違っている! ということをデータと実地調査を元に説いている。

◆著者紹介(紀伊国屋Bookwebより)
マハジャン,ヴィジャイ[マハジャン,ヴィジャイ][Mahajan,Vijay]
テキサス大学オースティン校マコームズ経営大学院経営学教授。全米の数多くの一流企業でマーケティングのコンサルティングを行っており、その業績はアメリカ・マーケティング協会(AMA)によるチャールズ・クーリッジ・パーリン賞やインド工科大学カンプール校最優秀同窓生賞など、数々の賞を受賞。AMA2007年ブック・オブ・イヤー賞受賞の経歴もある。インド商科大学院経営学部長を経て現職。


◆ロバート・ゲスト「アフリカ 苦悩する大陸」を読んだとき、経済的な側面から見るアフリカ各国は、私が思っていた以上に豊かになりつつあるのだな、と世間のイメージとの違いに驚いた。

本書も、かなり驚くべきデータが多数掲載されている。

国民一人あたりの総所得(GNI)に関するデータが55ページに載っている。2006年のデータでは、
 中国 2,010ドル
 インド 820ドル
に対し、
 セーシェル 8,650ドル
 赤道ギニア 8,250ドル
 リビア 7,380ドル
 ボツワナ 5,900ドル
など、中国を超えるアフリカの国が12カ国、インドを超える国が20カ国もある。赤道ギニアが石油で儲けていることは知っていたけど、それにしたって平均で国民ひとりの年間所得が8,000ドルもあるのか。そりゃすごい。

◆176ページにはもっと驚くことが書かれていた。シエラレオネの首都フリータウンには、市全域に無線インターネット環境が整備されており、無制限のWi-Fi、WiMAXネットワークを有する世界で3番目の都市なのだそうだ。(ほかはフィラデルフィアと台北)

221ページ、ナイジェリアは映画産業が発展しており、収益ベースで年間2~3億ドルの規模にまで成長、映画産業の就業人口は100万人で、農業に次ぐ雇用人数となっている。

◆アフリカの国々は、戦争・内戦や、独裁者による恐怖政治、資源争奪にまつわる黒い話ばかりが喧伝されているが、そういう一面も確かにあるが、そうじゃない面の方が多いのだという。

世界中で携帯電話が普及しているんだから、アフリカ諸国にも携帯電話は普及している。
世界中がインターネットの恩恵を被っているように、アフリカ諸国の人たちもインターネットを使いたいし、需要があれば供給が生まれるのは当たり前。
仮にアフリカを一つの国と仮定すると、人口は約9億人で、総所得は9783億ドル。インドは10億人で9065億ドル。数字の上から見ると、インドよりも豊かなのだ。さらに、出稼ぎで世界各国に散らばっているアフリカの人たちは、稼いだ金を家族に送金している。海外から送金された金は、経済統計に出てくるとは限らない。というか出てこない。統計数字よりももっと豊かと考えるべきだろう。(これはインドも同じだが)

◆というようなことが載っている本書。やっぱりアフリカ関連書籍は良書が多いのである。


9点/10点満点


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フランソワ・ラファルグ「ブラッド・オイル」感想。
ルポ。2009年07月03日読了。

ブラッド・オイル―世界資源戦争<br />
フランソワ・ラファルグ/藤野邦夫 / 講談社 2009/01 ¥1,995 (税込)

◆貧弱な性能のノートパソコン(ネットブック)、ようやく使い慣れてきたので、ブログを再開します。

◆石油を中心とした資源は世界中で争奪戦が始まっており、中国は貿易で得た豊富な資金力をバックに、政府主導で貪欲なまでに他国の資源を開発しまくっている。というような、よくある話をまとめた本かと思って買ったらちょっと違った。

◆ルポもしくはドキュメンタリーとして本書を読むと、物語性が少なく、おもしろみはない。どちらかといえば資料的な内容に偏っており、たとえば、スーダンの内戦は(すさまじくおおざっぱに言うと)石油が取れ非アラブで反政府な南部と、石油が取れなくてアラブ系で政府な北部の争いだが、そんなダルフール戦争なんかお構いなしで、中国は官民挙げてスーダンの石油開発に乗り出している。CNPC=中国石油天然気集団公司が中心となっているのだが、カナダのタリスマン社、マレーシアのペトロナス社なども半分以上の金を出している。カナダのタリスマン社は、アメリカの人道団体の批判を浴びスーダンから撤退したが、代わって入ったのはインド石油天然ガス公社である。

◆歴史上まれにみる失敗国家ジンバブエ。アフリカで有数の農産地であり、白人農場主が効率のよい農業を展開し、農産物を近隣諸国に輸出できるくらいの国であったが、現大統領で独裁者のムガベが、白人から農地を強制収容し、農業の知識のない黒人に土地をばらまいた。その結果、ジンバブエの農業は崩壊し、輸出できるほど豊富に取れていた農作物は、自国の国民を食べさせることができないくらい取れなくなった。しかし、そんなジンバブエにも経済的に優位に立てるものがある。ジンバブエはプラチナの埋蔵量が世界第2位なのだ。しかし鉱物資源を採掘するためには、電気や道路などのインフラ開発が必須となる。インフラ開発を無償(もしくは借款)提供することと引き替えに、中国とインドが採掘権を得ている。

◆というような話が、ただ単にデータを書き連ねるという非常に退屈な形で展開される。それが本書。

◆資料的な価値が高く感じたので、個人的に8点をつける。しかし、普通の人は十中八九つまらない本と感じると思う。


8点/10点満点


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菅原出「戦争詐欺師」感想。
ドキュメンタリー。2009年07月02日読了。

戦争詐欺師
菅原出 / 講談社 2009/04 ¥1,890 (税込)

◆タイトルから想像していた内容は、戦争をネタに様々な詐欺を働く輩の実態を暴いた本なのかと思っていたが、まったく違った。

◆本書は買ったときに考えてた内容とは異なり、アメリカによるイラク戦争を分析した本である。

◆イラクから政治亡命したアフマド・チャラビ イラク国民会議議長(実は自己の権力拡大にしか興味のないエセ政治家)が、如何にして、好戦的なネオコン(=ネオコンサバティブ=新保守主義)であるチェイニー副大統領、国防総省のラムズフェルド長官・ウォルフォウィッツ副長官に取り入り、アメリカ政府を好戦的な国に仕立て上げていったのか、その政治的プロセスと、

リアリスト(=現実主義)と呼ばれるパウエル国務長官やCIAとの暗闘、

そしてネオコンが負け、リアリストが、つまりはオバマが政権を取るようになったのかを、克明に描き出している。

◆本書の著者、菅原出は「外注される戦争」7点/10点満点を書いた、戦争を冷静に分析できる優れたライターである。

◆本書は、アーミテージ国務省副長官(パウエルの部下)とのインタビューを筆頭に、ブッシュ政権に於けるキーマン数人とインタビューし、その他アフガン戦争やイラク戦争などに関する膨大な書籍にしながら本書を記した。巻末に記載されている参考文書の一覧は14ページにも及び、そのリストは資料的価値も高い。

◆日本のマスメディアが如何に役立たずなのかを、如実に示す良書であると思う。


8点/10点満点


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藤原章生「翻弄者」感想。
ルポ。2009年06月22日読了。

翻弄者<br />
藤原章生 / 集英社 2009/04 ¥1,600 (税込)

◆概要(紀伊国屋Bookwebより)
14歳のときから、十数年間もフセインの宮殿に軟禁されていたという予言者。
薬物依存症の娼婦に思いを寄せ、併走するかのように、その世界に堕ちていく男。
キューバ革命の陰で、表現の自由を奪われ、追憶だけで命をつなぐ詩人。
時代に翻弄され、不条理に疲れ、それでも拠りどころを手探りする人間たち。


◆第1章は、イラクのフセイン大統領の下で、予言者として雇われていた(実質的には幽閉されていた)男の独白。第2章は、恋い焦がれる娼婦が麻薬におぼれていくのを、恋い焦がれるあまり一緒になって麻薬を吸い、麻薬を買う金まで出してしまうケープタウンのタクシードラ-バーの話。第3章は、キューバの同性愛作家、レイナルド・アレナスの友人である同性愛詩人デルフィン・プラッツが語る故郷の風景に関しての話。

◆著者藤原章生は、デビュー作「絵はがきになった少年」7点/10点満点で、第3回開高健ノンフィクション賞を受賞した、新進気鋭のノンフィクションライター。本書「翻弄者」のレビューが雑誌に載っていて、新刊が出たのだと思い期待して買った。

◆掲載されている3つの話があまりにも趣が異なる話であり、これを一冊にまとめる必要があったのか疑問に感じる。個人的に面白かったのは第2章のケープタウンのタクシードライバーの話で、これをふくらませて1冊の本に仕上げた方が良かったんじゃないかと思う。


5点/10点満点


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石破茂×小川和久「日本の戦争と平和」感想。
国防論対談。2009年06月09日読了。

日本の戦争と平和
石破茂/小川和久 / ビジネス社 2009/06 ¥1,890 (税込)

◆日テレの「太田総理」をよく見ている。かの番組に出演している政治家は、なぜああも太田光と番組視聴者(受けする提言)に阿るのだろうか。政治家なんだから、自らの思想を言葉に出して説明するのが仕事だろうに、太田光と言い合いになったら勝てないと最初から諦めているような輩ばかりである。太田光は頭が回るし、20年もテレビの仕事をしているから、大衆(マス)の心をくすぐる術をよく知っている。かの番組で太田光が提案するマニフェストは、それこそ大衆受けするマニフェストばかりであり、中長期的視野に欠けるものが多い。だからこそ、かの番組に出演する政治家は、太田光や番組視聴者に阿ることなく、太田の意見が間違っていると思うならその理由を短くかつ易しい言葉で伝えなくてはならない。言い換えれば、太田光ごときを凹ませることが出来ない程度の言葉しか持たない政治家が多すぎる。
 かの番組を見て、太田光が一目置いているのは唯一、石破茂のように思える。平沢勝栄や鴨下一郎は、太田光より年齢もかなり上であるし、まともなことも言うのでそれなりの扱いであるが、でもしょっちゅう太田に反撃を食らっている。残りの政治家は、原口一博を筆頭に、太田にいいように操られているだけだ。(あと適当なことしか言わず日本を破滅に導きそうなミスリードばかり言いまくるエセ経済評論家の森永卓郎は、1年以内にぜひテレビの画面から消え去ってくれ)


◆というわけで、太田光に言い勝つ唯一の政治家石破茂と、私的10点満点をつけた「日本の戦争力」の著者小川和久の対談集を読んだのである。

◆本書帯「太田光の推薦文」
保守の立場にいながら、
国、防衛省、自衛隊、政治家、の現状を、
これほど、喜劇的に語られるお二人の
ココロザシを、
私はコメディアンとして、
とても信頼する。
……石破サン。
がんばってネ。

◆石破茂のまえがきの抜粋
小川氏は、私が敬愛する軍事アナリストである。現場を踏まえた豊富な知識や洞察力、一貫した姿勢など超一流である。私が議員になった頃は、自主防衛論よりで歴史認識も「自虐史観反対」の立場だった。だが、彼の著書に出合い変わった。彼の論説は決して難解ではないが、奥が深く簡単には読み飛ばせない。この対談は私の思考を再整理した過程の記録でもあり、賢明な読者の理解を早めるのに役立つだろう。


◆本書は、小川和久と石破茂の対談を元に、小川和久が補筆し書かれた本である。

◆憲法の問題、憲法改正とまともに向き合おうとしない政治家・マスコミ・国民の問題、田母神論文は間違っており間違った思想を持った人物が自衛隊の頂点に立っている問題、1機100億円もする戦闘機を買って運用していながら戦闘機はシェルターに格納されているわけではなく出撃前に攻撃されたら終わりという木を見て森を見ずな自衛隊の問題、国連至上主義というどう考えても誤っている政策をぶち上げて政権奪取を狙っている小沢一郎の問題など、300ページを超える本書には、この国が抱える問題がぎっしりと詰まっている。

◆本書で指摘されている数々の問題点は、国民として深く考えなければならない問題である。大多数の政治家が避けている問題を、それも左翼筋が大嫌いな内容を、正面からぶつけてくる石破茂という政治家の誠実さと真剣さに、政治家のあるべき姿が見える。


8点/10点満点

<アップ後、深夜にちょっと改訂>


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寺谷ひろみ「暗殺国家ロシア」感想。
事実列挙記。2009年06月03日読了。

暗殺国家ロシア ― リトヴィネンコ毒殺とプ-チンの野望
寺谷弘壬 / 学習研究社 2007/06 ¥787 (税込)

◆誰がリトヴィネンコを殺したのか! ネットに出ている事実(主に英語)を拾い集め、リトヴィネンコ暗殺と、暗殺国家ロシアの真実に迫る!

というような感じの本だけど、トンデモ本と紙一重。著者が青山学院大学名誉教授でなかったら、トンデモ本と決めつけていた。本書では「寺谷ひろみ」と名前をひらがな表記しているが、これで検索しても本書が出てこない。書籍データベースには「寺谷弘壬」で登録されており、漢字の著者名で検索すると著作が多数あり。何のためにこの本だけひらがな表記にしたんだろう? ひらがな表記だったので女性だと思っていたが、字面は男性っぽい。どうでもいいことだけど。

◆リトヴィネンコはKGBに在籍していたロシア秘密工作員で、プーチン弾圧政権に嫌気がさして、KGB時代の秘密を暴露してイギリスに亡命し、(たぶん)プーチン政権に毒殺されたライター・ジャーナリスト。

本書の第1章はまあまあ良い。リトヴィネンコの死の床の描写から始まり、暗殺の毒として使われた放射性物質ポロニウムの解説、遡ってリトヴィネンコのバックボーンの説明。

しかし、第2章、第3章で「おや?」となり、第4章以降は読むのが苦痛になってくる。

◆第4章以降は、リトヴィネンコを軸として、リトヴィネンコ以外にどれだけ大勢がプーチンに弾圧され、殺されてきたのか列挙されているのだが、もうこれがただ単に列挙しているだけのダダ書きで、


もういいや、こんな本。


2点/10点満点


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山崎朋子「サンダカン八番娼館 (新装版)」感想。
からゆきさんルポ。2009年05月01日読了。

サンダカン八番娼館 (新装版)
山崎朋子 / 文藝春秋 2008/01 ¥749 (税込)

◆幕末から明治を経て第一次世界大戦が終了する大正中期までのあいだ、北はシベリア、南は東南アジア、インド、アフリカにまで出かけていって、外国人相手に売春をしていた<からゆきさん>という海外売春婦が大勢いた。彼女たちは自ら好きこのんで売春をしたわけではなく、多くは女衒に「もっと稼げる場所に連れて行ってあげるよ」と騙され、付いていったら船倉に押し込められ、海外に連れて行かれ知らぬ間に借金まみれになっていて売春をする羽目になったという。もちろん、自分の意志で<からゆきさん>になった人もいるのだろうが。

◆著者は、今でいうストーカーに顔を切りつけられ、新劇女優になることを諦めざる得なくなったと書かれている。その後選んだ道が、底辺女性史の研究であった。本書は、その研究テーマに基づき、<からゆきさん>を多数輩出している天草地方に取材に行くところから始まる。

◆天草で偶然出会ったサキさんというおばあさん。話をするうち、サキさんが<からゆきさん>だった可能性が高い。偶然の出会いを元に、百足が住み着くほど腐った畳を取り替えることができない極貧生活をするサキさんの家に泊まりこみ、サキさんとの会話から<からゆきさん>の一端をひもといていく。

◆本書が「サンダカン」となっているのは、サキさんが働いていた地が、マレーシア、ボルネオ島のサンダカンだったからだ。


◆本書は出版年次が昨年であったので、比較的新しい本なのかと思って読んだが、読み進むにつれ、日本人の性道徳感や村社会ぶりがやや古くさく感じ、奥付を見ると原書は1975年に出版された「サンダカン八番娼館」と1977年に出版された「サンダカンの墓」の新装合本であることがわかった。

◆日本は豊かな国だと思う。しかし、100年前までは貧しい国だったのだ。その如実な例が本書に出てくる<からゆきさん>だろう。

◆本書には衝撃を受けた。後世まで絶版になることなく、大勢の人々に読んでもらいたい本だ。


10点/10点満点


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石井光太「絶対貧困」感想。
世界の貧困ルポ。2009年04月13日読了。

絶対貧困―世界最貧民の目線<br />
石井光太 / 光文社 2009/03 ¥1,575 (税込)

◆世界各国の大都市のスラムに行き、(どういう方法で実現しているのかはよくわからないが)スラムに暮らし、暮らすことで住民と仲良くなり、そしてスラムに住む人たち同じ食べ物を食べることで、1ドル以下で暮らす人々=絶対的貧困層をルポしている石井光太の最新作。

◆本書は中高生を対象としていると思われ、全編を通し著者が中高生に語りかけるような口調(文体)になっている。それが良いか悪いかは読者の受け止め方次第なのだと思うが、私は嫌いだ。著者の狙いもあるだろうから否定はしないけど。

◆デビュー作「物乞う仏陀」、2作目の前著「神の棄てた裸体」を読んでいると、同じような話が繰り返される部分もあるが、著者が今までに取材をしたスラムという存在の集大成であり、とても良くまとまっている。本書で初めて石井光太を読んだ人には、かなりショッキングな内容が含まれているだろう。
例えば、

インドでは乞食が商売として成り立っており、より見窄らしい乞食が金を得ることができる。それは子供であり、障害を持った子供ならうんと稼げる。だから、乞食を商売にしている連中は、インドの田舎から子供を誘拐してきて腕を切り落とし、または目玉をつぶし、乞食をさせる。

スラムに暮らす人々だって性欲はある。そういう連中を相手にする売春婦だっている。好きで売春婦をやっているのではなく、スラムで生まれ育ち、学校に行くこともなく従ってなんの知識もなく、他に稼げる手段がないから売春婦をやっている。スラムの連中以外を相手にすれば、(売春とはいえ)スラムにいるより金を稼げるはずなのに、スラムの連中以外と接したことがないから、スラムの連中相手の安い売春婦になる。

◆本書を読むと、日本のマスコミが騒いでいるワーキングプアなどたいした話ではない。というか、日本という国はなんと恵まれた国なのかと思う。


7点/10点満点


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小島剛一「トルコのもう一つの顔」感想。
トルコ圧政の実体験。2009年03月31日読了。

トルコのもう一つの顔
小島剛一 / 中央公論新社 1991/02 ¥777 (税込)

◆内容(紀伊国屋Bookwebより)
言語学者である著者はトルコ共和国を1970年に訪れて以来、その地の人々と諸言語の魅力にとりつかれ、十数年にわたり一年の半分をトルコでの野外調査に費す日日が続いた。
調査中に見舞われた災難に、進んで救いの手をさしのべ、言葉や歌を教えてくれた村人たち。
辺境にあって歳月を越えてひそやかに生き続ける「言葉」とその守り手への愛をこめて綴る、とかく情報不足になりがちなトルコという国での得がたい体験の記録である。
1 トルコ人ほど親切な人たちも珍しい
2 トルコのもう一つの顔
3 言語と民族の「るつぼ」
5 デルスィム地方
5 Y氏との旅
6 「トルコに移住しませんか」
7 トルコ政府の「許可」を得て

◆本書は、辺境ライター高野秀行のブログ「ムベンベ」で、高野秀行が褒めていたので読んでみることにした。

◆1970年代、トルコはトルコ語以外、自国に他言語があることを認めず、トルコ人優遇の強硬な政治姿勢を採っていた(今もなのだろうか?)。フランスに留学し民俗学で修士号を取っている著者は、博士号をトルコ語学にしようと決め、トルコにバックパック旅行をした。本書はその旅行記でもあるが、クルド人に対し圧政を敷くトルコの現実を分析した政治学的な本でもあり、トルコ語だけでならず、クルド語やらザザ語やらクルマンチュ語やら、トルコ国内で実際に使われている、トルコ語以外の言葉の話が無数に出てくる言語学の本とも言える。

◆クルド語とザザ語は起源が異なるまったく違う言語であるのに、トルコ政府は同じクルド語とひとまとめに扱い、
クルド語で喋っていると反政府クルド人ゲリラにされてしまう。しかし、クルド語とザザ語はお互いが通じない言語なので、クルド語の人とザザ語の人の共通言語はトルコ語である。というような話は、バックパッカーならではの身軽な旅のついでに、トルコ政府が立ち入りを許可していない地域にまで行って調べた結果わかったことである。

◆軽妙なバックパッカーの話と、強硬なトルコ政府の話と、世にもマイナーな言語学の話がうまくミックスされていて、とてもためになる本である。

◆本書の著者小島剛一氏はこの本しか上梓していない。この著者の著作をもっと読んでみたいのだが、出版されていないのはとても残念だ。


9点/10点満点


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