カテゴリー「◇ルポ・ドキュメンタリー」の記事

2020/01/05

西岡研介「トラジャ JR革マル三十年の呪縛、労組の終焉」感想。ルポ。2019年11月14日読了。9点/10点満点

 

JRの労組は革マル派に支配されている。全共闘時代の話ではなく、2019年の現在も。

 

本書は600ページを超える分厚い単行本でありながら、昨今では考えられない2400円+税という値付けである。ちなみに通勤電車の車内で立って読むにはとても重い。

 

◆内容紹介(amazonより)
「人殺しの組合にはいられない」(本文より)

 

『週刊東洋経済』の短期集中連載「JR 歪んだ労使関係」(3回)を、追加取材の上、大幅加筆し単行本化。
講談社ノンフィクション賞を受賞した前著『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(07年)以後を描く。
テーマはJR東日本、JR北海道、さらにはJR貨物の三社の国鉄分割民営化から今日までの労使関係を中心にした経営問題。
それに加えて、『マングローブ』執筆時に判明していなかった、知られざる革マル派非公然部隊の動きや、党革マルVSJR革マルとの暗闘劇を描く。
またJR東労組の大量脱退問題は、会社に対する敗北だけでなく、組合という存在自体に嫌悪感やアレルギーを持っている「当世社員(組合員)気質」への敗北でもあると位置づける。その上で今回の大量脱退は、戦闘的国鉄・JR労働運動の終焉を意味していると結論づける。
◆引用終わり

 

本書は
 第1部 JR東日本「革マル」30年の呪縛 (著者の前著「マングローブ」の再録)
 第2部 「JR革マル」対「党革マル」の「内ゲバ」
 第3部 JR北海道「歪な労政」の犠牲者
の3部構成で、
関係者への取材、労働組合が発行する機関誌、労組が起こした歪な社内虐めに関する裁判記録、飛び交う怪文書の入手そして吟味。たぶん著者が半生をかけて徹底取材した超大作である。

 

「信じられない」ほど前近代的なJR各社労組の実態を炙り出している。
今の時代に、組合の月例会で、組合員の活動に関する総括やら反省やら糾弾やらが行われ、JR労働運動の前進のために総決起せよ!と叫んでいる(糾弾等の文言は違うかも)

 

JR各社の労組には、広く革マル派が食い込んでいる。
組合の資金源は、組合員から徴収する会費。月給(額面)の2%+1000円が給料から天引きされる。月給30万円なら7000円。JR東日本労組は約4万7000人の組合員を抱えていたので、月に3億円~5億円の活動費があった。この活動費により、JR社員じゃなく、組合から金を受け取って組合活動に精を出す組合専従者が何人もいた(今もいる)。

 

その中には、労組を裏切った幹部の誘拐、2年間にわたる監禁が含まれ、家族が警察に捜索願を届け出たら「公権力へ靡いた」と糾弾し、捜索願を撤回させようとし、監禁している間に再洗脳し、労組に戻ってきたと宣伝する(細かい部分は違うが、こういう事件があった)

 

JRは巨大組織なので、組合も一枚岩ではなく、いくつかに四分五裂している。小さな組合に所属する従業員を、多数派の革マル支配下の組合員が公衆の面前で(つまり乗客がいる前で)罵倒する事案もあり、これは裁判で有罪になった。有罪になった組合員は解雇されたが、上述のように組合専従者として、組合に雇用された。今もいる。

 

JR東日本労組に関しては、2018年に給料のベースアップ(ベア)要求を押し通すためストライキを打つ、打たないで労組執行部と組合員に乖離が発生し、3万3000人以上が脱退した。脱退した組合員は、天引きされていた組合費が天引きされなくなったので、実質手取りがアップしたと喜んでいる。脱退した元組合員の中には、仕事できないやつが組合で威張っている、という現実に嫌気がさした人もいるという(そりゃそうだ)。

 

JR北海道労組はもっとひどく、組合員の結婚式は組合員以外出席不可、組合は結婚式に介入します、と公式に宣言している。

 

給与面や労働条件の交渉を会社(経営者)とするのに、組合という形で団体を作る必要性は分かる。
会社の管理職も、一人ひとり個別に給与査定するのは無理、不満がある奴は組合で抑えてくれ、と組合を頼っていたのもある。
しかし、組合活動は1円の売上すらもたらさない(会社と従業員のやり取りなので)。

 

日本最大の労働組合であるJR各社から、組合を脱退する人が続出した今、21世紀の組合活動が求められているという筆者の結論に共感する。

 

9点/10点満点

 

ところでこの本、帯にノンフィクションとあるのだが、私的にはルポだと思う。
ノンフィクションとルポの違いって何だろう?

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2020/01/04

安田峰俊「八九六四 天安門事件は再び起きるか」感想。ルポ。2019年07月03日読了。9点/10点満点

 

安田峰俊氏は、いま最も信頼できる中国ウォッチャー。(私は加藤嘉一氏より、安田氏の記事を信頼している)

 

その氏をして、満を持して取材した天安門事件。
悪いはずはない。

 

という先入観を超えた良書だった。

 

9点/10点満点

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三浦英之「牙 アフリカゾウの密猟組織を追って」感想。ルポ。2019年06月14日読了。6点/10点満点

 

取材地にいるインサイダー(情報提供者)を守りたい気持ちはわかるが、守るが故、仮名やイニシャル表記が多くなり、ルポとしてかなり甘い。
Rって誰なんだよ。

 

辛口評価するが、続編が出たら買う。

 

6点/10点満点

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トム・バージェス/山田美明訳「喰い尽くされるアフリカ」感想。ルポ。2019年06月04日読了。9点/10点満点

 

◆著者紹介(Amazonより)
『フィナンシャル・タイムズ』紙の特派員として、2006年からアフリカに滞在し取材を行ってきた著者が直面したのは、石油、鉱物などの資源に恵まれるアフリカの国々が貧困と内戦に苦しむ過酷な現実だった。
現地の住民、有力者、政治家へのインタビューを続けた著者は、かつて植民地時代に欧米諸国が築いた略奪のしくみが、グローバル企業によって現代版にアップデートされ、さらに中国が参戦したことによって熾烈な争奪戦が繰り広げられている実態をつきとめる。
謎にみちた中国人実業家、通称“徐京華"と彼が率いる“クイーンズウェイ・グループ"にも迫る。

 

◆内容紹介(Amazonより)
第1章 フトゥンゴ
石油の輸出量ではナイジェリアとアフリカ1位を争うアンゴラ。石油の利権システムを牛耳るのは、“フトゥンゴ"と呼ばれる大統領の取り巻きと家族だが、最近はある中国企業とタッグを組んでいる。

 

第2章 貧困の温床
ナイジェリアでは石油が乱暴に略奪されたため、発電所の整備に資金が回らず、電気代が高騰。主要産業であった繊維産業が衰退し、市場は中国産の模造繊維製品が席捲した。

 

第3章 “関係(グワンシー)"
個人的なつながり、という意味の“関係"がビジネスでも大切にされる中国。その独自のスタイルを持って、アフリカの経済界に入り込んでいった中国人実業家の存在を明らかにする。

 

第4章 ゾウが喧嘩をすると草地が荒れる
ギニアで大量の鉱物資源を有すると見られた山脈の採掘権をめぐり、イギリスとオーストラリアを拠点とする資源・鉱業グループ「リオ・ティント」とイスラエルの富豪ベニー・スタインメッツ率いるBSGの鉱業部門が熾烈な争い繰り広げる。

 

第5章 北京への懸け橋
独裁を続けるニジェールのタンジャ大統領(当時)は、旧植民地時代から続くフランスのアフリカ支配システムに不満を持っていたが、フランスと縁を切るには、代わりとなるパートナーが必要だった。そこに現れたのが中国だった。ほ
◆引用終わり

 

中国のアンゴラへの食い込みっぷりが半端ない。ちなみにアンゴラはどこかというと、

 

ギニア湾と呼ばれるこのあたりの国では石油がザクザク出る。
・ナイジェリア(旧宗主国イギリス・産油量世界12位・人口2億500万人・一人当たりGDP6,100ドル)
・アンゴラ(旧宗主国ポルトガル・産油量世界17位・人口3000万人・一人当たりGDP6,700ドル)
・ガボン(旧宗主国フランス・産油量世界35位・人口200万人・一人当たりGDP19,000ドル)
・赤道ギニア(旧宗主国スペイン・産油量世界36位・人口80万人・一人当たりGDP21,000ドル)
・コンゴ共和国(旧宗主国フランス・産油量世界31位・人口500万人・一人当たりGDP7,100ドル)(マシな方のコンゴ)
などが産油国である。

 

本書がある程度示したのは、アンゴラに中国ががっつり食いついているということである。著者は公開資料(株式会社の登記簿など)から、中国とアンゴラの関係性をある程度導き出すが、その詳細は関係者全員からの取材拒否により頓挫する。

 

とはいえ、これは超級のルポである。取材中、命の危険すら感じたであろう。

 

良い。

 

9点/10点満点

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真野森作「ルポ プーチンの戦争 「皇帝」はなぜウクライナを狙ったのか」感想。2019年04月11日読了。9点/10点満点

 

著者は毎日新聞記者。ロシアに語学留学し、1年でロシア語でインタビューできるほどマスターし、2013-2017年ロシア特派員。

 

ウクライナで起きているクリミア半島のロシア併合、およびドネツク地方での親露派対ウクライナ軍に関しての取材が中心で、取材地は主にウクライナである。

副題が本書のテーマであり、実際ウクライナ情勢がほとんどを占めるが、今の日本でウクライナ情勢について書いたところで売れないのだろう。タイトルが「プーチンの戦争」になった理由はそんなところかと邪推。

 

ということでウクライナの地図。南に見える島(半島)がクリミア。マークがついているところがドネツク。 

 

親露派、ウクライナ極右、双方の軍事関係者、政府関係者や役人、一般市民に分け隔てなくインタビューしている。
国際報道ではプーチンが悪者になっているが、本書を読み進むにつれ、ウクライナ(政府・官僚・軍・極右勢力)の腐敗の酷さが目につくようになる(ロシア情勢を齧ったことがある人にとって、これはまったく驚かない。ウクライナは旧ソ連から独立した国々の中でも、突出して腐敗していることは多くの人が知っている)

 

本書の肝として、旧ソ連崩壊時、ウクライナには1000発を超える核ミサイルがあった。ウクライナ(とカザフスタンとベラルーシ)は核ミサイルを全面放棄する国際覚書を米英露と結んだ(1994年のブダペスト覚書)。この覚書には相互の国境不可侵条約が入っていた。

 

しかし20年後の2014年、ロシアは国際条約を破りクリミア半島を自国化し、米英両国はロシアの約束やぶりを見過ごした。

 

p381
「この現実を北朝鮮やイランもみんな見つめているだろう」

 

9点/10点満点

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金成隆一「ルポ トランプ王国」感想。2019年03月12日読了。10点/10点満点

 

2017年に出た本。
私的10点満点。
こういう良本を読み逃していたことは痛恨である。

 

本書は、2012年の選挙で共和党が負け、2016年のトランプが勝った6州のうち、フロリダ州を除くラストベルト(Rust は「錆びた」の意)オハイオ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ミシガン州、アイオワ州の5州を中心に、大統領選の前年2015年から取材を進めてきた内容をまとめた本。

 

これらの州は労働組合が強く、民主党の地盤だった。なぜ多くの住民が共和党のトランプに鞍替えしたのか、各地を丁寧に回り、市井の人々の声を拾い、そして一定の結論を導き出す。

 

とても良い。

 

10点/10点満点

 

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梁石日(ヤン・ソギル)「タクシードライバー最後の反逆」感想。ルポ。2019年02月05日読了。3点/10点満点

1987年に出版された本。
タクシードライバーで食いつないでいた作家梁石日自身の体験談と、そこから調べたタクシーに関する黒い話。
30年前にはよくあった、的な話が多く、時代を超えるルポではなかった。

 

3点/10点満点

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2019/01/05

熊谷徹「イスラエルがすごい」感想。
ルポ。2018年11月20日読了。

今、スタートアップ界隈が熱視線を送っているイスラエル。起業を試みる数が半端ない。それも割とハイテク分野での起業が多い。

なぜかというと、イスラエルは国民皆兵制(18歳から兵役で、男3年、女2年)を敷いており、中でもサイバー軍(8200部隊)が超絶優秀。イランの核施設にコンピュータウィルスを侵入させ、施設をダメにしたほどである。

で、イスラエルで起業するイスラエル人は8200部隊出身者が多いという話。


7点/10点満点

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鈴木智彦「サカナとヤクザ」感想。<br />ルポ。2018年11月17日読了。

魚の密漁はヤクザにとって割のいい商売である。なぜかというと、稼げる金額に対し、罰則が甘いから。
それが故、アワビとナマコとカニとシラスウナギの取引には、ヤクザが関与している。
ヤクザを介して密漁者と直接コンタクトを取るなど、取材は丁寧。

銚子(4章)と根室(5章)は、歴史的経緯の説明が多く、直近のルポではない。それがちょっと辛めの点数を付けた理由。


8点/10点満点

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エリック・シュローサー/布施由紀子訳「核は暴走する(下)」感想。
ルポ。2018年11月06日読了。

核ミサイルを搭載した爆撃機が離陸時に障害物にぶつかり、爆発炎上。

核ミサイルを爆撃機に搭載するため台車でミサイルを運んでいたら、固定が甘く、ミサイルが台車から落ちた。

NATO諸国に配備された核ミサイルは、核ミサイルであることを告げずに内緒で置いていたため、警備が非常に薄く、場合によってはNATO兵1人で警備していたこともあった(テロリストがそれを知っていたら盗まれていたかもしれない)

誰が核ミサイルの発射ボタンを押すのか、主導権を握りたがる空軍と海軍と政府(大統領)の綱引き。


8点/10点満点

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