石井光太「浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち」感想。
ルポ。2014年04月30日読了。
今年(2015年)は、第二次世界大戦終戦(1945年)から70年の節目の年になる。
私は1966年生まれなので、戦争は知識として知っているだけである。
私の父親は昭和9年(1934年)生まれ、母親は昭和12年(1937年)生まれだが、両親ともに出生地が北海道の網走近郊なので、戦争に伴う悲惨な体験はしていない。
早坂隆が戦争に参加した自分の祖父にインタビューした「祖父の戦争」のように、私も自分の両親に戦争のことを尋ねたことがあるが、「網走(正確には女満別)はたいしたことなかったよ」と言うだけで、詳しくは教えてくれない。教えてくれない理由を父は、「俺も子供だったから、細かいことはぜんぜん分からないんだよ」と言う。
1934年生まれの私の父親は今年81歳である。その父親でも、戦争についてはよく分からないと言う(当時まだ小学生だったから)。
本書は、私より一回り近く年下の石井光太氏(1977年生)が、知識として知っている終戦直後の上野の混乱を、当事者が生きている間に直接取材をしたいと思い立ち、上野で「浮浪児」と呼ばれていた当時の子どもたちの足跡を追い、インタビューを受けてくれる人を探し出し、当時(終戦食後の上野)の状況を再現した本である。
終戦前の東京大空襲(1945年3月10日に大爆撃、4月、5月にも爆撃)により、多くの子どもたちが両親と生き別れ、もしくは死に別れになり、親とはぐれた子どもたちは自分で生きることを余儀なくされる。その中には5-7歳の幼い児童もいた。
親とはぐれてしまった児童(中学生以下)は、生きる為に食べ物を盗む、危ない目に遭わないよう徒党を組む、その他いろんなことをする。
そして終戦を迎えるが、玉音放送の意味はさっぱり分からない。だが戦争が終わり、アメリカ進駐軍がやってくることは分かった。
大人でも混乱するこの時代に、親とはぐれてしまった子どもたちがどう生きてきたのか。
学問的な本ではないので、戦後の混乱をすべてを網羅しているわけではない。
しかし、その一端を知るには十分な本である。
相変わらず石井光太はいい仕事をするな。
石井光太の取材姿勢には賛否両論あり、この本にもたぶん批判はあるのだと思うが、私は良書と思う。
8点/10点満点
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