船尾修「循環と共存の森から 狩猟採集民ムブティ・ピグミーの知恵」感想。
文化人類学的ルポ。2014年06月13日読了。
私は船尾修氏の著作が好きです。世間的には無名に近いのですが、私は右サイドバーにカテゴリーを作ってしまうくらい、船尾氏の著作が好きです。
本書は2006年に出版された本で、出版されてから1年以内に買っているはずです。買った当時は船尾氏贔屓だったので、ただ単に買っただけ(船尾氏を応援するためには、本を定価で買うのがいちばん)。本書は、そのタイトルが物語るようにアフリカの狩猟民族ピグミーをテーマにした研究書(のようなもも)です。私はアフリカ好きだったけど、なぜかずっと読まないまま、積ん読本と化していきました。積ん読本解消のため手に取った本書は、それはそれは素晴らしい内容で、船尾氏贔屓なことを差し置いても、10点満点な内容でした。
内容(amazonより)
イトゥリの森でわたしはムブティに教えられた。生と死はつながっており、自分は他者であり他者は自分であり、「食べること」とは死の累積を享受することなのだと。有限な森の恵みを、蕩尽しないように狩り、採集する生活。平等な分配システム。自己の生命が他の生きものの死によって育まれることへの畏敬の念。グローバリゼーションをしなやかに生き抜く独特の世界観。狩猟採集民の暮らしは、現代日本に生きるわたしたちに多くの示唆を与えてくれる。コンゴ熱帯雨林地域の少数民と暮した日本人社会派フォトジャーナリストが人間の基本的な生活システムの中に地球環境への根源的眼差しを発見する。「森の民」から「文明人」へのメッセージ。
内容引用終わり
著者が取材した狩猟民族ピグミーは、コンゴ(旧ザイール)の↓あたりに住んでいる。
このあたりの地域は、1994年に起きたルワンダ大虐殺をきっかけに、ものすごく治安が悪くなっている。
※ルワンダ虐殺は、ルワンダの多数派フツ族が、少数派のツチ族を虐殺した。しかし、ウガンダで力を蓄えていたツチ族の反政府勢力=ルワンダ愛国戦線RPFが、フツ族がツチ族を虐殺している間に首都キガリを攻め落とし、ルワンダ政権を奪取した。虐殺していた方のフツ族暴徒(インテラハムウェ)は隣国コンゴに難民として逃げた。コンゴに逃げたフツ族暴徒は、コンゴに逃げたフツ族難民に民兵に加わるように強要し、フツ族反ルワンダ政府部隊を作った。その際、もともとコンゴに住んでいたルワンダ系ツチ族(パニャムレンゲ)との折り合いは当然悪く、軋轢を生んだ。
パニャムレンゲは、ローラン・カビラ率いるコンゴの反政府団体(当時のコンゴは独裁者モブツの独裁国家)であるコンゴ・ザイール解放民主連合=AFDLと組み、コンゴのモブツ政権打倒に向けて共闘を開始した。
フツ族勢力は、反ツチ族・親モブツの国々の協力を得て、ツチ族への攻勢を行う。
これが第一次コンゴ戦争(第一次アフリカ大戦)である。
私も全容を把握し切れていないので上記内容にはどこかミスがあると思うけど、ご勘弁を。要するに、ルワンダのツチ族対フツ族の争いは、ルワンダを飛び越えコンゴに飛び火し、それがアフリカ大戦と言われるまでに拡大したと言うことです。
で、本書。
そんな苛酷な時期に、行けるかどうかも分からない(ビザを発給するのがコンゴ政府なのか、地域を制圧している反コンゴ政府なのか分からない)コンゴのピグミー居住区に行き、狩猟採集民族であるピグミーと一緒に生活し、そこで得た内容を、文化人類学的フィールドワークの一環として報告した本が本書である。
といっても、著者は学者じゃないので、学術的な内容に傾いているわけではなく、知的好奇心に満ちあふれている人が見たピグミーの生活に関する報告である。
本書のどこが良いと聞かれたら、全てが良いと答えるしかない。
具体的にどういう所が良いと聞かれたら、全てが良いと答えるしかない。
私的10点満点。
こんなに素晴らしい本とは思わなかった。
私が船尾氏贔屓で、アフリカ好きで、人文地理学を学んでいるということが、本書の評価に多大な影響を与えていることは間違いない。しかし、本書は名作だ。
10点/10点満点
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