カテゴリー「◇臓器移植・臓器売買・人身売買」の記事

2014/03/24

謝冠園・監修/デービッド・マタス、トルステン・トレイ編集「中国の移植犯罪 国家による臓器狩り」感想。
ルポ。2014年03月11日読了。

デービッド・マタス/デービッド・キルガー「中国臓器狩り」2013年12月29日読了。4点。

上記の本と同じ著者グループによる告発本。

中国が国家ぐるみで法輪功(気功の一種、中国では禁止令がでている)を学んでいる人を犯罪者扱いし、

法輪功をやっていると言うだけで逮捕し、

逮捕された人たちは名前を名乗ると親類縁者に多大な迷惑がかかるから名前すら名乗らず、

名前も分からないから逮捕した方(中国国家)はやりたい放題で、

拷問などは当たり前で、裁判の判決も出ていないうちに、法輪功を学んでいただけの人を殺し、臓器移植に用いる。

という告発本。

昨年末に読んだ「中国臓器狩り」は、人権原理主義者の著者の気の狂った人権大事メッセージに辟易したが、この本は執筆者が10人くらいいる共著で、まあ、かなりまともになった印象。ところどころ誤訳や事実誤認があるので変だけど(ウガンダの神の抵抗軍のジョセフ・コニーが2012年に逮捕された、と書かれているけど、まだ逃げ回っているだろ)


死刑ではない囚人を看守と軍医(中国の臓器移植に多くは軍の病院が一枚噛んでいる)が殺して、殺された囚人であることを知らない(という建前)医師が臓器を摘出し、臓器がどこから来たのか知らない別の移植医によって臓器移植が行われる。

ということを告発しているが、この問題がなぜ国際的に放置されているのかの推察も書かれている。

臓器移植を望むような患者は、治療費が嵩む。アメリカのように治療費はほぼ全額自己負担の国はともかく、カナダやオーストラリア、フランス、ドイツは日本並みの皆保険だし、イギリスも皆保険に近い制度。なので、こういう国の保険省から見ると、移植を待つような末期患者が、移植によって比較的健康になってくれれば、医療費が削減できて嬉しいです、という見方もあり、

また、移植をすると免疫抑制剤を一生飲まなければならないため、医薬品メーカーは移植件数が増えれば増えるほどハッピー。


別な話。
中国で、法輪功弾圧で名前を売っていたのが、失脚した重慶市長(?)の薄熙来。薄熙来は成都の米国領事館に戦車を出動させ威圧したこともあるのだとかどうたらこうたらが書かれている。


10人くらいの著者による共著なので、内容的に重複も多いし、とっちらかっている印象も受けるし、誤訳、変な訳、いいかげんな訳も多いし、中国で無差別殺人臓器移植が起きているという基礎知識がないと作り話かと思ってしまうし、まあそういう本だけど、わりと良い。

とっ散らかった感想ですみません。


7点/10点満点


私が読んだ臓器売買・臓器移植に関する本

・木村良一「臓器漂流」2010年09月09日読了。4点
・青山淳平「腎臓移植最前線」2010年10月17日読了。8点
・城山英巳「中国臓器市場」2011年01月24日読了。6点
・山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」言い訳本。2011年01月25日読了。3点
・デイビッド・バットストーン「告発・現代の人身売買」2011年07月15日読了。10点満点
・デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」安楽死指南書。2011年08月06日読了。6点
・ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」2011年08月23日読了。8点
・岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」2011年08月29日読了。7点
・粟屋剛「人体部品ビジネス」2011年09月06日読了。8点
・小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」2012年03月29日読了。8点
・スコット・カーニー「レッドマーケット 人体部品産業の真実」臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。9点
・相川厚「日本の臓器移植―現役腎移植医のジハード」2012年05月28日読了。9点
・メアリー・ローチ「死体はみんな生きている」2012年08月01日読了。7点
・アンドリュー・キンブレル「すばらしい人間部品産業」2012年08月24日読了。8点
・デービッド・マタス/デービッド・キルガー「中国臓器狩り」2013年12月29日読了。4点

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2014/01/09

デービッド・マタス/デービッド・キルガー/桜田直美訳「中国臓器狩り」感想。
人権原理主義者の主張。2013年12月29日読了。※追記あり

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中国臓器狩り

中国では臓器移植が盛んである。

主な顧客は外国人である。金払いが良いから。

臓器の供給源は死刑囚である。

この話題に関して、中国政府は当初死刑囚の臓器を使っていることを否定していたが、そのうち肯定した。死刑囚かドナー同意書を取っているから問題ない、と主張している。

ちなみに、中国人は臓器提供に文化的な抵抗があるらしく、それが故、臓器提供に関する全国的ネットワークはないそうである。

中国では年間5,000~10,000人くらい死刑囚が処刑されている。つまり、それだけの数の臓器移植が可能だ。


で、最初に戻る。
中国では臓器移植が盛んである。
アメリカに次いで、世界第2位の臓器移植大国である。
チャイナデイリー紙によると、年間2万件(2005年)の臓器移植手術が行われているそうである。

死刑囚の数より多い。


ではその臓器はどこから来るのか。


答え。

法輪功を学んでいる連中を捕まえ、法輪功を辞めない且つ自分の名前を言わない場合、公安や軍関係者が拷問し、裁判所を通さず勝手に処刑する。

処刑に際しては、公安や軍の病院関係者と連絡を取り、臓器移植希望者を(病院経由で)募り、処刑日を決める。

これが臓器狩り。


気功の一種である法輪功は中国で禁止されている。禁止の理由は、法輪功を学ぶ人が増えすぎたため。

法輪功は現在、かなり酷い弾圧を受けている。弾圧の理由は、中国政府が法輪功を禁止したら、中国政府が全く気付かないまま北京に法輪功学習者が1万人以上集まって禁止反対のデモを行ったから。政府に気付かれることなく1万人もデモ人員を動員できるのはカルト集団である、と。


で、法輪功学習者は、公の場で法輪功を披露したり、法輪功の名称を言うだけで逮捕される。

逮捕された後、改宗ならぬ脱法輪功を押しつけられる。断ると、親族、勤務先、自分の住んでいる町の役人にまで罰が及ぶ。

なので捕まった法輪功関係者は自分の名前も住所も言わない。

逮捕した側は、名前や住所を言わせるため、ほぼ拷問する。

拷問を繰り返すうち、法輪功学習者はぐったりする。放っておくと死ぬ。こりゃまずい。
なので隠蔽する。
隠蔽=(法輪功を学んでいただけで西洋的価値観では無実の人間を)殺してしまえ。
隠蔽するためには、金が必要。
金を作るのに、臓器移植は打って付け。
臓器移植の手はずを整えて、死に至る薬を注射する。そして、完全に死ぬ前の、半分生きたまま臓器を取り出す。

この過程はシステマチックになっていて、
「ぐったりした人物を置いておくだけの病院」
「薬を注射するだけの係員」
「(薬で)ほぼ死んだ状態の人間から臓器を摘出する医師(臓器毎に違う医師が担当する)」
「臓器を運ぶ係員」
「どこからか届いた臓器を、病人に移植する医師(と病院)」

など、細分化されている。


というような告発が載っている本である。


噂には聞いていたが、なかなか凄まじい。

しかし、本書はこの実態を中国人医師、看護師、病院関係者などから主に電話で聞き取り調査し、中国政府の杜撰さを告発するに十分な証拠が集まって、著者が臓器狩りを確信したから書かれた本なのだが、著者がどこで臓器狩りを確信するに至ったかよく分からない程度の量の証拠しか示されていない。


この本に書かれている程度の少ない内容では、私が調査する側なら、全然確信するに至らない。


で、この本の終盤14章から16章は、著者がガチガチの人権原理主義者であることを示す内容である。

曰く、

・中国では法輪功学習者の人権が損なわれている(臓器狩りが事実ならその通りだ)

・これは許されることではない

・薄々分かっていながら、生きた人間から臓器を摘出している中国人医師は断罪されるべき

・この事態が改善されるまで、中国以外の国は、中国人医師に渡航ビザを発行するべきではない

・中国で臓器移植を受けた他国の患者も断罪されるべき。こういう患者は、中国以外で治療を受けられない(臓器移植した患者は、一生免疫抑制剤を飲み続けないとならない)ようにするべきだ


等々、法輪功学習者の人権を守るため、(間接的にであっても)法輪功学習者の人権侵害した人間の人権は侵害しても構わない

という論調が続く。


こういうことを書いていながら、「なぜ世間はこの重大な人権侵害に興味を示さないのか」と著者は零している。


簡単なことだよ、「臓器狩り」に関してだけ書いていればいいのに、人権原理主義者の奇妙な主張が混ざっているから、すべてが信用されなくなっているんだよ。


とても残念な本だった。


※2014/01/11追記
著者は、国家による人権侵害・弾圧があった事例として、ナチスのユダヤ人弾圧(ホロコースト)を引き合いに出している。北朝鮮に関する記述もあった(ような覚えがある)。

しかし、イスラエルのパレスチナ弾圧については一言も触れていない。明らかなダブルスタンダード。

また、p310
「しかし、人権侵害と戦ううえでもっとも大きな障害になるのは、事実を知らない人、または興味がない人たちだろう。
興味がない人たちは、冷淡な人と、葛藤している人の二種類に分けられる。冷淡な人はサディストだ。加害者と同じ残酷な人種である」

自分の味方以外は全部敵。

過激な自然保護・環境保護主義者、
過激な反原発主義者、
過激な動物愛護主義者、
過激なイスラム原理主義者、

この著者は上記の輩と同じレベルで、
過激な人権保護主義者である。

なんだかなあ。


4点/10点満点

私が読んだ臓器売買・臓器移植に関する本

・木村良一「臓器漂流」2010年09月09日読了。4点
・青山淳平「腎臓移植最前線」2010年10月17日読了。8点
・城山英巳「中国臓器市場」2011年01月24日読了。6点
・山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」言い訳本。2011年01月25日読了。3点
・デイビッド・バットストーン「告発・現代の人身売買」2011年07月15日読了。10点満点
・デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」安楽死指南書。2011年08月06日読了。6点
・ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」2011年08月23日読了。8点
・岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」2011年08月29日読了。7点
・粟屋剛「人体部品ビジネス」2011年09月06日読了。8点
・小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」2012年03月29日読了。8点
・スコット・カーニー「レッドマーケット 人体部品産業の真実」臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。9点
・相川厚「日本の臓器移植―現役腎移植医のジハード」2012年05月28日読了。9点
・メアリー・ローチ「死体はみんな生きている」2012年08月01日読了。7点
・アンドリュー・キンブレル「すばらしい人間部品産業」2012年08月24日読了。8点

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2013/07/02

和田寿朗「あれから25年 脳死と心臓移植」感想。
回顧録。2013年06月14日読了。

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「脳死」と「心臓移植」―あれから25年

1968年に日本で最初の心臓移植を行った和田寿郎医師の回顧録。

和田医師曰く、本件は不起訴になったのだから、事件呼ばわりされるのは心外であるとのこと。しかし、wikipediaでも「和田心臓移植事件」と言うタイトルになっている。

何をもって人の死とするか。心臓死なのか。脳死なのか。

では脳死とは何なのか。

何冊かこの手の本を読んでいるが、これはとても難しい問題だ。

少なくともこの本を読む限り、和田医師は敗戦から間もない1950年にアメリカに医学留学をし、逆境に耐えながら必死にアメリカの最先端医学を学び、その成果を日本に持ち帰ろうとしたことは分かる。


本としては、同じ話が何度も繰り返される爺さんの昔話的なところがあるので多少減点。


5点/10点満点


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2013/02/20

アレクサンドラ・ハーニー/漆嶋稔訳「中国貧困絶望工場」感想。
ルポ。2013年02月19日読了。

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中国貧困絶望工場―「世界の工場」のカラクリ

2008年に出た本。

いつ買ったのか覚えていないが、2007年から09年あたりは中国関連の本をよく読んでいたので(末尾に掲載)、その頃に買ったのかも。「中国農民調査」も未読だし。


◆著者(紀伊國屋bookWebより)
アレクサンドラ・ハーニー
日本語、中国語が堪能な香港在住の米国人ジャーナリスト。1997年、米プリンストン大学卒業後、東京大学留学など経て、98年にフィナンシャル・タイムズに入社。東京支局、サウスチャイナ支局特派員として主に製造業をカバーする。FT退社後、香港に拠点を移し、中国本土で工場経営の実態を調査、本書にまとめた。


◆内容(紀伊國屋bookWebより)

多発する労災、搾取工場、「ガン村」…元フィナンシャル・タイムズ特派員が明らかにした「世界の工場」の衝撃ルポ。

はじめに 妖しい魅力
第1章 路線変更
第2章 五ツ星工場
第3章 労災コスト
第4章 一攫千金を夢見て
第5章 立ち上がる労働者
第6章 従業員寮八一七号室の娘たち
第7章 損得勘定と社会的責任
第8章 新モデル工場
第9章 チャイナ・プライスの将来
元フィナンシャル・タイムズの中国特派員が、「世界の工場」の中心部である中国広東省の複数の工場地帯に潜入して、世界の製造業を席巻している破格に安い「メイド・イン・チャイナ」製品の秘密を抉り出した衝撃のノンフィクション。 社会主義とは思えないほど弱い立場の出稼ぎ労働者への抑圧、多発する労働災害、夫が労災死して未亡人だらけになった寡婦村、米大手スーパー、ウォルマートなど買い付け側の厳しいチェックをかい潜って操業を続ける搾取工場、塵肺による出稼ぎ労働者のガンが多発している内陸部のガン村など、リアルな現実が次々に浮き彫りになる。もちろん、救いもある。労働災害にあって手足が不自由になった労働者が、決して絶望せず、法律を勉強して仲間の訴訟の相談に乗り、勝訴を勝ち取るなど、新しい動向も描いている。


◆感想

本書は現代を「China Price : The True Cost of Chinese」といい、原著も2008年に出版された。原著のタイトルが欠片も感じられない邦題(中国貧困絶望工場)はちょっと酷いな。

本書は2008年以前の中国の実態をルポしたものである。リーマンショックが2008年9月なので、それより前である。リーマンショック以降、急激に産業構造が変化している世界経済のなか、中国もいろんな部分が変化しているだろう。本書に書かれていることのいくつかは早くも古い話になっていると思う。しかし、変わることのない中国人気質などは、いまでも通用する話だと思われる。


本書には幾つもの事例が掲載されている。

先進諸国の労働監視NGOが、「中国の工場は従業員に残業を無理強いしている」「残業代を払っていない」「子供を雇っている」「要するに労働者から搾取している」等々の告発を行い、中国の搾取工場で作られた商品を買わないような運動が起こった。

ウォルマートやホームデポなどの巨大小売店、ギャップやナイキなどのメーカー、いろんなところがやり玉に挙げられた。ウォルマートなどアメリカの各社は仕入れ先の中国の工場に対し、「労働時間は週60時間まで」「残業代はきちんと払うこと」等々を要求した。

すると中国の工場は、タイムカードを偽装したり、残業代の支払い明細を偽装したりして、アメリカの会社(発注元)をごまかすようになった。

するとアメリカの会社は、工場に立ち入り監査するようになった。いたちごっこが何回も続くと、さすがにアメリカの会社も偽装を見抜けるようになった。

すると中国の工場は、従来の工場をアメリカの要求(労働者から搾取しないクリーンな労働条件)を守る工場として、別な場所に監査に入られることのない「裏工場」を作ってしまった。

では実際に労働者は搾取されているのだろうか?

ウォルマートの取引先の工場長チャンは、
p92
「出稼ぎ労働者も法律の上限を飛び越えて働きたいというのが実情である。「この文化はとてつもなく根深い。中国人なら誰でも今以上にカネを求めようとする。それが文化だからだ。従業員は働いてカネを手にしたいのだ。ここ(天野才蔵注:工場のこと)にはあまり長居をしたくないからだ。数年後には帰郷し、小さくても自分で商売を始めたい。この欲求こそ、中国が圧倒的な競争力を持ち得た理由のひとつだ」

と語る。中国人はカネを稼ぎたいから、残業代が欲しいから、長時間働くのだ。

(p215では、広東省中山市の台湾人工場長が、「10年前なら労働者が「残業できるか」と聞いてきたが、今の労働者は「残業があるのか?」と聞き、そうだと答えると「それなら嫌だ」と去っていく」と嘆いている)

中国の工場における人材使い捨てはかなりすごい。

プラスチック工場で働き始めた少年は、働いて2週間目に、機械に挟まれ片腕を切断することになった。そして、会社から解雇された。途方に暮れた少年は、労働問題で有名な弁護士の元に通い、弁護をしてくれることになった。たぶん今は本書に書かれているより多少マシになっていると思うが、要するに労災コストは商品の価格競争力が落ちるから負担したくないのが中国の工場。

他、幾つか興味深かったこと。

p43
「日本は、戦後において米国の海外経済政策から恩恵を受けた初期の受益者であった。第二次世界大戦前、日本は繊維産業を大いに発展させたが、戦争中に米国の爆撃によって被害を受けてしまった。戦後、米国の綿花栽培業者が政府に対し、製品の販路として日本の繊維産業を復興させようとロビー活動を行った。その結果、米国政府は日本の繊維産業が立ち直るように支援し、1950年代半ばにはアイゼンハワー政権が様々な日本製品に対する輸入関税を引き下げた」

まったく知らなかった。1月に大学の授業で富岡製糸場に行き、日本の繊維産業は盛況であったという話を聞いたが、戦後、アメリカ政府が後押ししてくれたのか。


p53
「鄧小平は……四川省の広安県という農村の地主の息子として生まれ、10代の数年間をフランスで過ごした」

そうだったんですか。これも知りませんでした。


p141
「2006年夏、馬建国は家族のために夢を実現しようと思えば、国有炭鉱で毎月2000元の収入だけでは足りなくなると考えた。そこで、仕事をしばらく休み、雇用主の了解を得て丘陵地帯を歩き回った。石炭の交渉を求めて、静かな山々を徹底的に調べ上げたのである。その結果、8月までに6人を雇い、地表近くにある3ヶ所の鉱床を採掘するようになった。馬建国は、小さな村に登場した国家的疫病神-無許可民間炭鉱-になったのである」

無許可で石炭を掘ってもいいのですか。それはすごい。素晴らしき中国。


とりとめのない感想になりましたが、まあ面白かったですよ。


8点/10点満点

さくっと検索して出てきた、私が読んだ中国関連の本一覧。リンクは貼ってません。

富坂聰「中国マネーの正体」2011年11月04日読了
富坂聡「苛立つ中国」2011年04月17日読了
富坂聡「ルポ 中国「欲望大国」」2011年02月07日読了
城山英巳「中国臓器市場」2011年01月24日読了
綾野(リン・イエ)著/富坂聰編「中国が予測する“北朝鮮崩壊の日”」2011年01月05日読了
富坂聰「中国官僚覆面座談会」2010年11月20日読了
富坂聰「中国報道の「裏」を読め!」2010年11月09日読了
富坂聰「中国の地下経済」2010年10月23日読了
セルジュ・ミッシェル/ミッシェル・ブーレ「アフリカを食い荒らす中国」2010年03月07日読了
高橋五郎「農民も土も水も悲惨な中国農業」2009年07月22日読了
石平×三橋貴明「中国経済がダメになる理由」2009年06月03日読了
園田茂人「不平等国家 中国」2009年03月26日読了
杉野光男「中国ビジネス笑劇場」2008年07月02日読了
田中淳「中国ニセモノ観光案内」2008年05月29日読了
山本一郎「俺様国家 中国の大経済」2008年02月21日読了
何清漣「中国の闇 マフィア化する政治」2008年01月17日読了
東一眞「中国の不思議な資本主義」2007年06月18日読了
小川和久・坂本衛「日本の戦争力 VS 北朝鮮、中国」2007年04月10日読了
陳惠運「わが祖国、中国の悲惨な真実」2006年11月08日読了
井沢元彦・波多野秀行「そして中国の崩壊が始まる」2006年08月07日読了

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2012/09/04

スコット・カーニー/二宮千寿子訳「レッドマーケット 人体部品産業の真実」 の著者インタビュー。

ダイヤモンドオンラインに、


需要ある限り、闇のビジネスは止まらない
世界の人体部品市場「レッドマーケット」の実態
――ジャーナリスト スコット・カーニー氏に聞く

という記事が載っていたのでご紹介。


私的には9点/10点満点を付けた本です。

スコット・カーニー「レッドマーケット 人体部品産業の真実」臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。9点

ダイヤモンドオンラインに登録しないと読めないかも知れませんが、登録制だったとしても無料です(私は金を払っていないので)。



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2012/08/30

アンドリュー・キンブレル/福岡伸一訳「すばらしい人間部品産業」感想。
啓蒙書。2012年08月24日読了。

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すばらしい人間部品産業


臓器売買に興味があり、関連する書籍をいろいろと読んでいるのです。

ただ、臓器売買そのものをテーマにしたルポ本というのは意外に少なく、紀伊國屋bookWebとamazonの検索で引っかかるものは片っ端から読んでいるけど、その結果が文末に載せている臓器関連の読了リスト程度なのです。

本書「すばらしい人間部品産業」は、紀伊國屋bookWebとamazonで「臓器」で検索すると出てくる書籍で、臓器売買がテーマではないのだが、内容が興味深かったので買ってみた。


◆本書の内容(紀伊國屋bookWebより)
血液、臓器から胎児、遺伝子、はては新種生物やクローン人間までもが効率的に生産され、市場で売買される時代。
その萌芽はすでに半世紀前から始まっていた…人間部品産業のリアルな実態を警告した歴史的名著に、新エピソードを加筆した改訂&決定版。

1 人体と部品のあいだ(血は商品か;臓器移植ビジネス ほか)
2 赤ちゃん製造工場(赤子産業;生命の種 ほか)
3 遺伝子ビジネス(遺伝子をデザインする;他人に差をつける薬 ほか)
4 人間部品産業との闘い(移動機械と神の見えざる手;機械論的な「からだ」 ほか)
「私の問題意識はこの本から始まった」 福岡伸一

★臓器や組織の効率的な売買のために、胎児の生体解剖が行われている?
★凍結されたままの胚(受精卵)に、人権や遺産相続権はあるのか?
★ある調査で、「生まれる子供が肥満体とわかれば中絶したい」と答えた人が11%
★ヒトの遺伝子をもつように改良された「動物」に次々と特許が与えられる
★「背が高くなるように」と、毎日ヒト成長ホルモンを注射する少年
★クローン技術によって生まれた生物には、なぜ「異常体」が多いのか?
福岡ハカセの“原点”が名訳とともに甦る。

人間は「人間部品の商品化」に答えを出せるのだろうか?


◆感想

本書の趣旨としては、人体の一部を売買することは果たしてどこまで許されるのか、ということを哲学的に問うもので、ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」(2011年08月23日読了。8点)に近い内容である。

大見出しでPart1~4まであるのだが、Part4は哲学であり、少々読みづらく感じる(というか飽きる)部分もあったが、私が知らなかった話も多数掲載されており、参考になる部分が多々あった。

ムーアの脾臓に関する裁判沙汰(ムーアは脾臓切除手術を受けた。医者達はムーアの脾臓に特殊なT細胞が含まれていることを突き止め、製薬化した。ムーアは「俺の脾臓から作った薬なんだから俺にも分け前よこせ」と裁判した)などは「ボディショッピング」でも取り上げており、そのほかにも幾つかネタが被っているな、と感じた。

奥付を見ると「ボディショッピング」の原著が2008年、本書の原著は1995年+1997年増補+2010年頃に更に増補改訂されているみたいで、要するにこの手の本の源流は本書「すばらしい人間部品産業」なのだな、ということが分かった。


とはいえ。
増補改訂があったとはいえ1995年に出た本を、今さら高い金出して読むのは何か悔しい。


愚痴はさておき。


本書のPart1が、私が一番知りたい臓器売買の話である。


売血の話で、ニカラグアの独裁大統領アナスタシオ・ソモサ・デバイレ(これの父アナスタシオ・ソモサ・ガルシアもニカラグアの大統領で、つまりニカラグアはソモサ家に独裁されていたっぽい)は、1973年にキューバからの亡命医者とともに、血液買取センターを開設。買った血液の2/3はアメリカやヨーロッパに輸出していて、血の品質は問わず、ウィルスに汚染されていたってお構いなしで売りまくり、とにかく血を仕入れては売りまくっていた。売血しすぎた献血者が病気になろうと死のうとほったらかし。医者の倫理は欠片もなく、ただ単に売血ビジネスを行っていた。

この実態を新聞記者チャモロ(新聞社社主かも)が告発して、国際赤十字や国際的医学組織がチャモロ支持に回ると、1978年ソモサはチャモロを暗殺。これに怒った市民がソモサを追い詰め、ソモサはチャモロ暗殺の8ヶ月後、最終的にパラグアイに逃げる。

キューバ人医師はアメリカに逃げ、マイアミでまた同じ売血センターを開設しようと画策する。

暗殺された新聞記者チャモロの妻ビオレタは、10年後にニカラグア大統領に選ばれ、1990年~1997年まで大統領を務めた。

ニカラグアと言えばオルテガ将軍しか知らなかったけど、さすがキューバ危機とかで東西冷戦の嵐に巻き込まれた中南米、激動の歴史を送っているのだな。


本書でもっとも衝撃を受けたのは、P55に掲載されている「モンテデオーカ精神衛生研究所」事件である。


アルゼンチン、ブエノスアイレス近くの州立病院「モンテデオーカ精神衛生研究所」では、患者を殺した後、患者の血や角膜、その多臓器を取り出して売っていた。患者の家族には、患者は脱走したとか死んだなどと伝えていたという。同研究所では、1976年~1991年までに何と1400人以上が脱走し、ほぼ同数が死亡したことにしていた。家族からの訴えでこの研究所は捜査され、脱走したとされる何人かの遺体を収容した。中には眼球が摘出された16歳の少年が含まれていた。病院長および11人の関係者が逮捕された。


そんなに昔の話ではなく、20年前まで行われていた事件である。病院が組織だって患者を殺し、臓器を密売するのである。

逆に言えば、それだけ臓器を買う連中が居て、殺人を犯してまで臓器をぶんどろうとすることに罪悪感が無くなってしまうほど魅力的な高収入が得られた、ということだろう。


Part2は赤ちゃん製造工場と見出しがつき、産み分けに関する倫理、そこから発展して人工授精や、代理母に踏み込んでいる。

この章では幾つか踏み込んだ例が出ている。特に親権については考えさせられる。

・正常な妻と、精子に異常がある夫のカップルが、第三者の男性の精子と妻の卵子を人工授精させ、妻に着床させ、妻が出産した場合、精子提供者は父親となり得るか?(遺伝的には精子提供者が父である)

・卵子を作れない病気の妻(ただし子宮は正常)と、正常な夫のカップルが、第三者の女性の卵子と夫の精子を人工授精させ、妻に着床させ、妻が出産した場合、卵子提供者は母親となり得るか?(遺伝的には卵子提供者が母である)

・正常に卵子を作れる妻(但し子宮に病気があり出産できない)と、正常な夫のカップルが、妻の卵子と夫の精子を人工授精させ、代理母を雇って代理母に着床させ、代理母が出産した場合、代理母は母親となり得るか?(代理母が産んだ子に、代理母の遺伝子は入っていない)

・正常な妻と正常な夫のカップルが、自分の遺伝子を引き継いだときに起きる子供の健康、能力を憂慮し、優秀な遺伝子(例えば頭が良い)を持つ第三者の卵子と、優秀な遺伝子を持つ(例えば身長が高くハンサム)第三者の精子を人工授精させ、妻に着床させ、妻が出産した場合、その子供はカップルの子供と言えるのか?(この子供にカップルの遺伝子は一欠片も入っていない)

・胎児の段階で深刻な病気(ダウン症など)だと判明した場合、中絶することは許されるべきなのか否か。つまりこれは、人間は、どの段階から人間たり得るのか、という倫理・哲学になる。

受精したばかりの卵子は人間か?

脳が出来る前の、妊娠3ヶ月くらいの胎児は人間か?

例えば、妊娠20~24週を堺に人間と定義するならば、妊娠24週目に中絶した場合殺人罪に問われることにならないか?

胎児と人間は、どこから人間と線引きすべきなのか?


そのようなことや、その他いろんなことが書かれている。


難しいと言うより、似たような異なる話が多数出てくるので、読んでいて若干飽きる。飽きるのは私の個人的な感想であるが。


訳文もかなり読みやすく、この手の問題に関心がある人は、読んで損のない一冊と言えよう。

ただ、元もと1997年に出た本の増補なので、最新事例は期待しない方が良い。


8点/10点満点


※本エントリー公開後に、誤字脱字ヘンテコ文章の直しなど、ちょこちょこ修正しておりまする。


※ここ数年に読んだ製薬・臓器移植・臓器売買・医療関係の本
・メアリー・ローチ「死体はみんな生きている」死体の使い道ルポ。2012年08月01日読了。7点

・相川厚「日本の臓器移植―現役腎移植医のジハード」臓器移植の現実。2012年05月28日読了。9点

・スコット・カーニー「レッドマーケット 人体部品産業の真実」臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。9点

・小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」生命倫理の書。2012年03月29日読了。8点

・広野伊佐美「幼児売買-マフィアに侵略された日本」ルポ。2011年09月10日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・粟屋剛「人体部品ビジネス」ルポ兼思想書。2011年09月06日読了。8点

・岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」講談社ブルーバックス。2011年08月29日読了。7点

・ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」ルポ?哲学?2011年08月23日読了。8点

・岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」エッセイ。2011年07月17日読了。6点

・デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」安楽死指南書。2011年08月06日読了。6点

・一橋文哉「ドナービジネス」ノンフィクション……?2011年02月16日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」言い訳本。2011年01月25日読了。3点

・城山英巳「中国臓器市場」ルポ。2011年01月24日読了。6点

・青山淳平「腎臓移植最前線」ノンフィクション。2010年10月17日読了。8点

・木村良一「臓器漂流」ルポ。2010年09月09日読了。4点

・佐藤健太郎「医薬品クライシス」いわゆる新書。2010年04月29日読了。7点

・里見清一「偽善の医療」エッセイ。2009年06月10日読了。8点

・小松秀樹「医療崩壊」医療ドキュメント。2007年06月22日読了。8点

・マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」製薬業界告発ドキュメンタリー。2006年09月04日読了。8点

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2012/08/19

メアリー・ローチ/殿村直子訳「死体はみんな生きている」感想。
死体の使い道ルポ。2012年08月01日読了。

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死体はみんな生きている

理由はさておき、私は臓器売買に並並ならぬ関心を抱いていて、無職でヒマな毎日の合間に、関連書籍を読んでいるのです。

ヒマだから毎日もっとたくさんの本を読めるハズなんだけど、毎日のように自分の職務経歴書を書いているため、というかこれがバカにならないくらい毎日続いて、いい加減嫌になるのよ、無職は辛いね。


それはさておき。


臓器売買のルポから臓器移植そのものの現実を書いた本を何冊も読んでいくうちに、

「生きている人間の頸動脈をぶった切って、人工心肺装置みたいなので脳に血液を送り続け、そのままそいつの首をぶった切って胴体と切り離したら、果たしてその脳は生きているのか死んでいるのか? (脳には血液が行き届いているし、血液を通して必要な栄養素を送り込むことも出来る)」

という疑問が湧いた。


本書にその答えの一端が載っていて、つまり私と同じことを考える医学者は既に存在していて、


でもさすがに人体実験はできなくて、動物実験に留まっているのだけれども、2頭の犬の首のすげ替え実験を行った学者が居るのだそうな。(正確には、1頭の犬の首をぶった切り、別の犬の首に取り付け、双頭の犬に仕立て上げた)

その顛末は本書の第9章「頭だけ」に載っている。


この疑問が呈されたのは、フランス革命でギロチン刑が実施されたことに起因する。

ギロチンで首をぶった切られた犯罪者は、首を切られた直後は明らかに意識があり、しばらく経ってからようやく死ぬ、という証言があるのだ。


というような話を含め、本書は「死体」がどのように扱われているかを興味深くルポしている。

本書でルポされている一例。

故人の意思により献体された遺体数十体。

この数十体の遺体は顔面の美容整形外科のトレーニングに使われる。

トレーニングに胴体は不要なため、頭は首から切り離され、頭部(生首)だけ並んだ状態で研修室に並べられている。


献体だと知っていても、首から切断された頭部だけ数十体が並ぶ研修室に入り込む著者のルポ魂はすごい。


で、首と頭部を切り離す仕事をする医師も居るわけで、この医師はインタビューに拒否的な存在であったり。


そんなこんなで、面白い本です。


7点/10点満点

※ここ数年に読んだ製薬・臓器移植・臓器売買・医療関係の本
・相川厚「日本の臓器移植―現役腎移植医のジハード」臓器移植の現実。2012年05月28日読了。9点

・スコット・カーニー「レッドマーケット 人体部品産業の真実」臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。9点

・小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」生命倫理の書。2012年03月29日読了。8点

・広野伊佐美「幼児売買-マフィアに侵略された日本」ルポ。2011年09月10日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・粟屋剛「人体部品ビジネス」ルポ兼思想書。2011年09月06日読了。8点

・岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」講談社ブルーバックス。2011年08月29日読了。7点

・ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」ルポ?哲学?2011年08月23日読了。8点

・岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」エッセイ。2011年07月17日読了。6点

・デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」安楽死指南書。2011年08月06日読了。6点

・一橋文哉「ドナービジネス」ノンフィクション……?2011年02月16日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」言い訳本。2011年01月25日読了。3点

・城山英巳「中国臓器市場」ルポ。2011年01月24日読了。6点

・青山淳平「腎臓移植最前線」ノンフィクション。2010年10月17日読了。8点

・木村良一「臓器漂流」ルポ。2010年09月09日読了。4点

・佐藤健太郎「医薬品クライシス」いわゆる新書。2010年04月29日読了。7点

・里見清一「偽善の医療」エッセイ。2009年06月10日読了。8点

・小松秀樹「医療崩壊」医療ドキュメント。2007年06月22日読了。8点

・マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」製薬業界告発ドキュメンタリー。2006年09月04日読了。8点

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2012/05/30

相川厚「日本の臓器移植―現役腎移植医のジハード」感想。
臓器移植の現実。2012年05月28日読了。

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日本の臓器移植―現役腎移植医のジハード

臓器売買に興味を持って何冊か本を読んだけど、根本的なところを知ろうと思い、本書を買った。

著者はイギリスにも留学した現役の腎移植医師で、本書は腎移植を中心とした移植医療全般について書かれている。

人工透析は血液透析と腹膜透析があり、腹膜透析は腹からチューブを出しそこに透析液を入れ、腹膜を使って血中の老廃物を透析する方法だが、腹膜の透析能力は5年くらいで限界が来る。血液透析も5年を過ぎると、透析しきれなかった燐などが血中に貯まり、合併症発症の危険性が高まる。

なるほど。

日本の透析患者は27万5000人いて、透析にかかる医療費は年間1兆3000億円。一人当たり600万円かかっているが、特定疾病医療補助や高額医療補助など出、実質負担は年間12万円。透析患者が増えると国民健康保険の負担が増大する。

なるほど。

先天性低形成腎で両方の腎臓が殆ど機能していない生後11ヶ月の赤ちゃん(腹膜透析中)に、母親の腎臓を移植して成功。当然、11ヶ月の赤ちゃんに移植するには母親の腎臓は大きすぎ、血液を多く輸血して移植した母親の腎臓に血液がまわるようにしないとならないが、輸血量が多すぎると赤ちゃんの心臓が持たない、ので強心剤を使って赤ちゃんの心臓のドーピング、しかし強心剤も使いすぎると返って危険。

なるほど。

現在の免疫抑制剤は強力で、腎臓移植(や他の臓器でも)するのに、血液型が異なっても移植可能。

なるほど。

数年前、病気の腎臓を移植する手術で大問題が発生したが、ただ単に病腎移植することが問題なだけではなく、例えば癌になった腎臓の根治治療手術と、移植するための手術では、切り取る場所が違い、移植用の手術では癌の根治にはならない。病腎移植には問題があり賛成できない。

なるほど。

私は、透析が無くなるなら透析患者の負担が大幅に軽減されるから、少々病気の腎臓であっても移植するのはアリだと思っていたが、事はそれほど単純な話ではないのだな。

何はともあれ、個人的にとても参考になった本である。


9点/10点満点


※ここ数年に読んだ製薬・臓器移植・臓器売買・医療関係の本
・スコット・カーニー「レッドマーケット 人体部品産業の真実」臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。9点

・小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」生命倫理の書。2012年03月29日読了。8点

・広野伊佐美「幼児売買-マフィアに侵略された日本」ルポ。2011年09月10日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・粟屋剛「人体部品ビジネス」ルポ兼思想書。2011年09月06日読了。8点

・岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」講談社ブルーバックス。2011年08月29日読了。7点

・ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」ルポ?哲学?2011年08月23日読了。8点

・岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」エッセイ。2011年07月17日読了。6点

・デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」安楽死指南書。2011年08月06日読了。6点

・一橋文哉「ドナービジネス」ノンフィクション……?2011年02月16日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」言い訳本。2011年01月25日読了。3点

・城山英巳「中国臓器市場」ルポ。2011年01月24日読了。6点

・青山淳平「腎臓移植最前線」ノンフィクション。2010年10月17日読了。8点

・木村良一「臓器漂流」ルポ。2010年09月09日読了。4点

・佐藤健太郎「医薬品クライシス」いわゆる新書。2010年04月29日読了。7点

・里見清一「偽善の医療」エッセイ。2009年06月10日読了。8点

・小松秀樹「医療崩壊」医療ドキュメント。2007年06月22日読了。8点

・マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」製薬業界告発ドキュメンタリー。2006年09月04日読了。8点

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2012/05/01

スコット・カーニー/二宮千寿子訳「レッドマーケット 人体部品産業の真実」感想。
臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。

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レッドマーケット―人体部品産業の真実

ここ数年、製薬業界の実態や臓器売買に絡む本をそこそこ読んでいる(※)。2006年に、何かの書評(何かは忘れた)で取り上げられていたマーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」を読み、この本はアメリカの製薬業界の闇を露わにした本で、それどころか製薬業界だけではなく医者の世界もかなりどろどろしていることが書かれていて、以降、内戦とか紛争のルポ本ばかり読むのではなく、医療製薬業界の本もいろいろ読もうと思っているうちに、臓器売買のルポ系に興味の対象が移ってしまったのだ。

◆内容(紀伊國屋Bookwebより)
インド……経済的成長著しいこの国の、混沌とした片田舎で繰り広げられる骨泥棒。しかしそれは、骨だけではなかった。靱帯や角膜、心臓、肝臓、腎臓などの臓器、血液、さらには人間本体までが日々売りに出され、買い取られている。
インドだけではない。中国、ヨーロッパ、アフリカ……世界中で取引される人間の部品(パーツマーケット)の実態とは?
気鋭のジャーナリストが暴く、その驚くべき真実に迫る。

◆著者(紀伊國屋Bookwebより)
カーニー,スコット[カーニー,スコット][Carney,Scott]
調査報道を専門とするアメリカ人ジャーナリスト。インドにのべ10年滞在した経験を持ち、「ワイアード」「マザー・ジョーンズ」「フォーリン・ポリシー」などに寄稿する他、BBC、CBC、「ナショナルジオグラフィック」などのテレビ番組やラジオ番組のレポーターも務める。子供の拉致、売買を扱った報道では、2010年にジャーナリズムにおける倫理賞(The Payne Awards for Ethics in Journalism)を受賞


◆感想

本書は、大学院で人類学を学び教職に就いたアメリカ人の著者が、

12人の学生を引率してインドに連れて行き、そのうち一人が死んだ。引率者として死んだ学生の遺体をアメリカに送り返すまでに、「遺体を引き取る権利は遺族のものとは限らない」と言う現実をたたきつけられた。そこから著者は、臓器だけではない、人体組織の売買に関する現実について理解し始め、調査した結果をまとめたのが本書である。

本書に記されていることの一部を記すと、

・ヒト成長ホルモンを製造するため、イギリスでは人間の死体から脳下垂体を盗む例が10万件を超える。つまり、ヒト成長ホルモンは人間の死体の脳下垂体から抽出される(一昔前までの話)

・髪の毛は、溶かしてアミノ酸にして、パンを発酵させる発酵剤になる(だから髪の毛はカツラやエクステ以外にも需要がある)

・インドや中国やサモアやザンビアやグアテマラやルーマニアや韓国の孤児は孤児院に入り、施設に入って間もない子供はアメリカやヨーロッパ諸国に養子として輸出される。孤児院には手数料が入る。

・アメリカでインドでも売血は合法だった。売られる血の品質が悪かったので、売血は禁止され、献血(無償提供)が中心になったが、インドでは未だに献血(というか血を抜かれること)に抵抗感を示す人が多く、惨めそうな男を誘拐して、監禁して、監視して、一年中誘拐してきた奴から血を抜き取る集団がいる。

・土葬されたばかりの墓から死体を盗んできて、死体を網でくるみ、おもりをつけて川に沈める。1週間もするとバクテリアと魚のおかげで骨はばらけ、肉片もどろどろになる。骨をこすったあと、苛性ソーダ水を入れた大釜で煮立てると、骨から肉片は無くなり、残った骨をキレイに磨けば(漂泊すれば)、世界中の医科大学に置いてある人骨標本の出来上がり。

スマトラ島沖地震 (2004年)で発生した津波は、インドやスリランカも襲った。津波に襲われたインド、タミルナードゥ州の村人は、「ツナミ・ナガール」という難民キャンプで被災生活をしていた。インド政府はろくな支援をしてくれない。村人の生活は困窮を極めた。そして、難民キャンプには腎臓売買を持ちかけるブローカーが跋扈するようになった。村人の多くが、腎臓を売った。

・イランでは、中央省庁の規制に従っている限り、臓器売買は合法である!

・キプロスは卵子売買が合法であり、ヨーロッパ諸国(卵子売買禁止の国が多い)の貧しい女性は、キプロスに来て卵子を売っている。卵子ドナー(売っている女性)の学歴が良ければ、取引価格は上がる。SAT(全米大学進学適性試験)スコアが100点上がる毎に、卵子の価格は2350ドル上昇する。

この他にも政府がほぼ公認している状態にあるインドの代理母の話、新薬の治験(実験台)プロフェッショナルの話、プロがいると治験の意味が薄れるので、インフォームドコンセント無しでインドや中国で新薬治験している話、

何かもう、てんこ盛り。


個人的には、医科大学の人骨標本が、(主にインドで)墓泥棒が土葬されたばかりの死体を盗んで加工して作られ、それが全世界にばらまかれている話には、かなり驚いた。

あと、髪の毛がパンの発酵剤になるのも(うげぇぇぇ)。ちなみに髪の毛のケラチンがLシスチンというアミノ酸になるらしい。


著者は延べ10年インドに住んでいたらしい。その関係もあり、紹介されている事例にはインドの例が多い。しかし、インドだけの実態ルポではない。

ある程度この手の知識を持っている私でも、本書に書かれていることはかなり衝撃的だった。

良書である。


9点/10点満点


※本書111ページに、アメリカの国連代表デイビッド・マータスと、カナダの元国会議員デイビッド・キルゴアによる論文「血塗られた収穫 中国における法輪功信者に対する臓器採取の報告」が紹介されていて、読んでみたくなったが原題が分からない。で、検索したら、
「戦慄の臓器狩り
中国における法輪功学習者を対象とした
「臓器狩り」調査報告書改訂版」

というのが引っかかった。リンクはPDFファイルです。


※ここ数年に読んだ製薬・臓器移植・臓器売買・医療関係の本
・小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」生命倫理の書。2012年03月29日読了。8点

・広野伊佐美「幼児売買-マフィアに侵略された日本」ルポ。2011年09月10日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・粟屋剛「人体部品ビジネス」ルポ兼思想書。2011年09月06日読了。8点

・岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」講談社ブルーバックス。2011年08月29日読了。7点

・ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」ルポ?哲学?2011年08月23日読了。8点

・岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」エッセイ。2011年07月17日読了。6点

・デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」安楽死指南書。2011年08月06日読了。6点

・一橋文哉「ドナービジネス」ノンフィクション……?2011年02月16日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」言い訳本。2011年01月25日読了。3点

・城山英巳「中国臓器市場」ルポ。2011年01月24日読了。6点

・青山淳平「腎臓移植最前線」ノンフィクション。2010年10月17日読了。8点

・木村良一「臓器漂流」ルポ。2010年09月09日読了。4点

・佐藤健太郎「医薬品クライシス」いわゆる新書。2010年04月29日読了。7点

・里見清一「偽善の医療」エッセイ。2009年06月10日読了。8点

・小松秀樹「医療崩壊」医療ドキュメント。2007年06月22日読了。8点

・マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」製薬業界告発ドキュメンタリー。2006年09月04日読了。8点

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2012/03/30

小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」感想。
生命倫理の書。2012年03月29日読了。

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脳死・臓器移植の本当の話


本書も古本で買ってしまった。感想は少なめに。


◆本書の内容(紀伊國屋bookWebより)

脳死者は臓器摘出時に激痛を感じている可能性がある。
家族の呼びかけに反応することがある。
妊婦であれば出産もできる。
一九年間生き続けている者もいる―。
一般には知られていない脳死・臓器移植の真実を白日の下にさらし、臓器提供者の側から、「死」とは何か、「人間の尊厳」とは何かをあらためて問い直す。
一九九七年に「臓器移植法」が成立して以来、脳死・臓器移植は既成事実となった感が強いが、脳死を人の死とする医学的な根本が大きく揺らいでいるのだ。
脳死・臓器移植問題に関する決定版。

序章 「星の王子さま」のまなざし
第2章 脳死・臓器移植の「外がわ」
第3章 脳死神話からの解放
第4章 「脳死=精神の死」という俗説
第5章 植物状態の再考
第6章 脳死・臓器移植の歴史的現在
第7章 「臓器移植法」の改定問題
終章 旅の終わりに
脳死者をめぐる長年の論争に終止符を打つ論考。

脳死者の臓器提供をめぐる問題に何があるのか? 「臓器移植法」改定を前に、長年の論争の焦点を整理する。生命倫理の本質をえぐった渾身の大作。

「脳死者は臓器摘出時に激痛を感じている可能性がある」「家族の呼びかけに反応することがある」「妊婦であれば出産できる」「19年間生き続けている者もいる」――1997年に「臓器移植法」が成立して以来、日本でも脳死・臓器移植は既成事実となった感が強い。ところが近年、脳死を人の死とする医学的な根本が大きく揺らいでいるのだ! 本書は脳死・臓器移植の問題点を、歴史的、科学的に徹底検証。報道されない真実を白日の下にさらし、「死」とは何か、「人間の尊厳」とは何かをあらためて問い直す。68年に行なわれた和田移植、99年の高知赤十字病院移植の綿密な比較検討から浮かび上がる衝撃の新事実に、読者の目は大きく見開かれることだろう。

◆感想

脳死と判定された人間を、そのままの状態(人工呼吸器をつけた状態)にしておくと、いつの間にか動いている。脳死=死んでいると判定されたにもかかわらず、動くのである。これをラザロ徴候という。

それゆえ、脳死と判定された人間から移植臓器を取り出す際、患者が臓器を取り出されることに抵抗するかの如く見えてしまうため、麻酔をかけることが推奨されている。

このような現象や、その他様々なケースを検証し、著者は「脳死が本当に人間の死と言えるのか」と問いかける。

勉強になる部分多々あり。

このテーマに関心を持っている人なら、読んで損はない。

個人的には、第6章以降「脳死を人の死」とすることに反対的な立場を取る著者が、「脳死を人の死」と認めさせないための強弁が目についた。


8点/10点満点


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