今年になってから読み出した、ISIS(イスラム国)の直接および間接的な解説本は本書を入れて7冊(下記※)。
国枝昌樹「報道されない中東の真実 動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動」2014年12月14日読了。10点満点
元駐シリア日本全権大使の著者が書くISISである。
読む前に過大な期待を抱いてしまったのか、内容的には他のISIS関連書と大差ない感じがしてしまった。まあ、これは私が同じような違う本を何冊も読んでいて、最後に読んだのが本書だったから、という理由によるので、ISISに関する本は本書しか読んでいない人には、十分な内容と思われる。
本書に書かれていたので思い出したのが、イラクにはチグリス川とユーフラテス川が流れており、土地は肥沃である。ということ。
ユーフラテス川は源流がトルコで、シリアのラッカ(ISISとシリア政府軍が奪い合いしている人口20万人くらいの都市)を通ってイラクに入り、バグダッドの横を抜けてペルシャ湾に。
チグリス川も源流はトルコで、シリアをかすめてイラクに流れ、モースル(ISIS占領下。人口170万人)を抜け、バグダッドの街中を縦断し、ペルシャ湾に。
ISISはイラクやシリアの都市を占領しているが、その統治方法は武力ではなく「イスラム法に基づいた」カリフ制である。ISISは金がある(サウジなどのスンニ派厳格主義者の金持ちからの援助金と、イラクの油田からとれる原油をシリアやトルコに密輸して得る金)ので、占領下の都市インフラは極めて真っ当に整備され、医療を筆頭とした公共サービスも無料で運営されている。
住民にとっては、汚職で腐敗したイラク政府が統治するのと、イスラム法に厳格かつ厳罰を課し、密告を推奨するISISのどっちが良いと言われても、どっちもどっちだと言うしかないらしい。
つまり、正規イラク政府はまったく信用されていない。これは、イラクは元もと宗派に関係ない世俗主義をとっていたサダム・フセイン(バアス党・スンナ派重用)がアメリカに殺され、アメリカ主導で民主的な選挙を実施したところ、人数で最大勢力だったシーア派がすべてのポジションを独占し、旧イラク軍のスンナ派全員と、スンナ派の公務員の全員を解雇してしまったため、職にあぶれて食うことすらできなくなった元軍人と元公務員がISISの軍事および統治の中核を握ることになりました。で、シーア派の現政権はみな汚職まみれで、イラク国内ではシーア派住民以外の支持はゼロ。
なので、シーア派が統治しようと、ISISが統治しようと大差ない、と。
というようなことが本書にも書かれています。
5点(期待が大きすぎた)/10点満点
※そんなこんなで、ISIS関連+便乗本を7冊読みましたが、お薦めは池内恵(さとし)「イスラーム国の衝撃」または、国枝昌樹「イスラム国の正体」です。
内藤正典「イスラム戦争」2015年01月31日読了。3点
池内恵(さとし)「イスラーム国の衝撃」2015年02月05日読了。7点
吉岡明子・山尾大編「「イスラム国」の脅威とイラク」2015年04月23日読了。8点(ただし初心者向けではない)
宮田律「イスラム潮流と日本」2015年07月23日読了断念。0点(酷い)
ロレッタ・ナポリオーニ「イスラム国 テロリストが国家を作る時」2015年09月27日読了。6点
菅原出「「イスラム国」と「恐怖の輸出」」2015年10月01日読了。5点(辛め採点)
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