カテゴリー「◇科学」の記事

2023/01/31

ジョフリー・ウェスト/山形浩生・森本正史訳「スケール (下)」感想。2023年1月25日読了。

 

哺乳類の血管は、心臓⇒大動脈⇒2つに分岐(細くなる)⇒2つが4つに分岐(更に細くなる)⇒4つがさらに分岐を繰り返し⇒最終的には毛細血管となる。毛細血管の太さは、ネズミも人もクジラも同じらしい(分岐する回数は異なる)。

 

都市の上水道は、集水地⇒都市の近郊まで運ぶ太いパイプ⇒いろんな地区に向け分岐⇒細かな地区に分岐⇒最終的には各家庭に細いパイプで運ばれる

 

上記二つはまったく異なることだが、その経路が細くなる点は一致している。(フラクタル幾何学的に見た相似)

 

というようなことが書かれているのだが、上巻の感想でも書いた通り、とにかく読みづらい。

 

読みづらい理由は山形浩生氏の「訳者解説」に書かれていた。訳者も相当大変だった模様。

 

 

本書に興味が湧いた方は、まず「訳者解説」を読んでから、読み進めるか否か決めた方がいいと思います。

 

本書に書かれていたことは、私の知識を豊かにしてくれた。それは間違いない。だがその喜びよりも、久々に感じた「読むのが修行」レベルのもったいぶった言い回しに辟易した(訳者解説を読む限り、翻訳の問題ではなく、原著が抱えている問題)

 

5点/10点満点

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ジョフリー・ウェスト/山形浩生・森本正史訳「スケール (上)」感想。2023年1月7日読了。

 

哺乳類(ネズミからヒト、ゾウ、クジラまで)は大きさが2倍になると、心拍数は25%減り、寿命は25%伸びる。”生命・組織・企業・都市・経済の成長と限界はすべて同じ統一原理で説明できる。コロナ後の未来を予言する画期的な文明論登場(福岡伸一)”と帯に書かれている。それは本書の冒頭に図示されており、「哺乳類体重」と「代謝率」の対数グラフ(両対数)が直線となっており、続く「企業の利益と従業員数(両対数)」も直線となっている。

つまり哺乳類と企業を数学的に調べると相関性がある。それどころか都市とも相関性がある。

 

なんと興味深いテーマなのだろう。なので上下巻即買い。

だったのだが、簡単なことを難しく言うのが私のスタイルです、的な文章と、

AはBの大学の研究室で学んだ優秀な学生であり、Bの指導の下に開花したAの論文は目を見張るものがある、的な研究者の個人情報が満載で、

とにかく読みづらい。

研究者のプロフィールに言及しているのは、本書が著者(1940年生)の回顧録(エッセイ)的な側面もあるからっぽいのだが、名前も知らない外国人研究者が、名前も知らないけど有名らしい誰か別の大物研究者の元で研究していた、なんて情報は要らん。

 

6点/10点満点

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2020/01/04

山田克哉「原子爆弾 その理論と歴史」感想。ブルーバックス。2019年03月26日読了。9.5点/10点満点

 

原子爆弾の理論と、実際の製造方法、それらがどのように発見され、改良され、実際に使用されるに至ったかを書いた、450ページを超える大著。

 

原子爆弾の理論は簡単である。純度の高い(90%以上)ウラン235の塊(11kgくらい)を2つ用意し、塊同士をぶつけたら、勝手に核分裂連鎖反応が起き、核分裂に伴うエネルギーは熱に変換され、数百万度となり、大気が大膨張して大爆発となる。

 

これは私が高専5年生の時(20歳)、理論物理学の卒論指導教官から教わった内容と同じ。

 

ちなみに原子力発電に使うウラン235は純度が20%くらいなので、核爆弾には転用できない(が、発電に使用した燃料棒にプルトニウム239が生成され、これが核爆弾に転用できる)。

 

爆弾化するには、天然にはウラン235がとても少ない(通常のウラン塊にはウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%)ことと、塊同士をぶつけるタイミングにずれが生じると連鎖反応が起きないことがネックとなる(イランが今やっているのはウラン235の濃縮)。

 

本書は、理論的に核分裂にはとてつもないエネルギーを秘めていることの発見、中性子(連鎖反応を起こす鍵となる物質)の発見、ウラン235の濃縮方法の発見、人工的に連鎖反応を起こす方法の発見、そして戦争により物理学を飛び越え、原子爆弾として製造するための政治家と物理学者の駆け引き、人間ドラマ、などが書かれている。

 

本書は、中性子の役割などについて懇切丁寧に書かれている。
本書を読み終えると、物理学に詳しくなった気になる(もちろんそれは勘違いなのだが)

 

非常に良い。が、物理学にも原子爆弾にも興味がなければ、毛ほども面白くないことも自明である。ゆえに9点以上10点未満の評点をつける。

 

9.5点/10点満点

 

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須藤靖「不自然な宇宙」感想。多元宇宙論。2019年03月05日読了。9点/10点満点

 

宇宙に興味を持っている人が誰しも思うこと。
「宇宙に果てはあるのか」
「ビッグバン以前」
「そもそも宇宙はいったいどこに存在しているのか」

 

現在の科学技術では観測できないこれらの事柄について、物理学的アプローチ及び概念的アプローチで研究が進められている。

 

今我々がいる宇宙はレベル1ユニバース。
レベル1ユニバースとそっくりな別のレベル1ユニバースが、観測できないどこかにある。(p97他)
そのレベル1ユニバースの集まりが、レベル1マルチバース。(p64)

 

レベル1マルチバースが多数集まったものが、レベル2マルチバース。(p71)(p100)

 

こういうことを研究している人たちがいる。
こういう研究に資金を提供する人たちがいる。
素晴らしいな。

 

9点/10点満点

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大河内直彦「地球の履歴書」感想。地理学。2019年02月04日読了。9点/10点満点

 

◆Amazonより
熱球から始まったこの星はどのように冷え、いかにして生物は生まれたのか? 科学の発達とともに、私たちは少しずつ地球の生い立ちを解明してきた。戦争や探検、数学の進歩や技術革新などのおかげで、未知の自然現象の謎は氷解したのだ。海面や海底、地層、地下、南極、塩や石油などを通して地球46億年の歴史を8つのストーリーで描く。講談社科学出版賞受賞のサイエンティストによる意欲作。
◆引用終わり

地球という惑星はどのようにしてできたのか、科学者たちはどうやって調べてきたのか、を記した科学エッセイ。

どこかがピンポイントで面白いのではなく、全体的に良い。

地学が好きな人は読んでおくべき一冊。

 

9点/10点満点

 

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2020/01/03

マーク・ミーオドヴニク/松井信彦訳「人類を変えた素晴らしき10の材料」感想。科学エッセイ。2019年01月10日読了。8点/10点満点

 

復活します。

 

材料に関する科学エッセイ。
鋼鉄・紙・コンクリート・チョコレート・泡・プラスチック・ガラス・グラファイト・磁器・インプラント・材料科学の未来の11章からなる本。なんというか、一貫したテーマがあるように見えない並びである。

 

以下、興味を引いた部分の抜粋。

 

鋼鉄。石器時代に使えた金属は銅と金だけ。それ以外(鉄も)の金属は、鉱石から抽出しなければならなかった。酸化アルミニウム(Al2O3)の結晶は無色だが、不純物として鉄を含むと青くなり、サファイヤと呼ばれる。不純物としてクロムを含むと赤くなり、ルビーと呼ばれる。

 

紙。紙幣はコットン紙である。木を原料としていない。ヨウ素ペンで紙に何かを書くと、木(セルロース)のデンプンと反応し赤くなる。コットン紙はデンプンが存在しないので変色しない。

 

コンクリート。コンクリートは乾かない。水はコンクリートの主成分である。コンクリートは固まるときに水と反応して化学反応を起こし、内部に大量に水をため込んでいるのに乾かない。どころか耐水性を持つ。

 

著者はイギリス人であり、(個人的偏見であるが)イギリス人文筆家らしく文章がくどいのだが、10個の材料にまつわるエピソードがそれぞれ面白く、科学エッセイとして楽しく読めた。

 

 

8点/10点満点

 

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2019/07/21

スコット・ギャロウェイ/渡会圭子訳「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」感想。20190年01月05日読了。9点/10点満点。

 

噂に違わず良い。アップルは、アップルストアを展開することでルイヴィトンになろうとしている、という分析が良い。

 

9点/10点満点

※ココログが滅茶苦茶使いづらくなってしまって、ブログ移転を検討中なのです

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2019/01/05

松原隆彦「図解 宇宙のかたち」感想。
宇宙。2018年12月12日読了。

宇宙全体はいったいどんな形をしているのか、巨視的に見た場合の最新研究を一冊にまとめた本。

なのだが、数学的な理論話が多く(「図解」と銘打っているので図も豊富なのだが)、後半になればなるほど興味が持てなくなってしまった。


5点/10点満点

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藤岡換太郎「フォッサマグナ」感想。
地学。2018年11月27日読了。

フォッサマグナというのは、新潟から静岡にかけて存在する独特の地形のことで、その成り立ちはまだ解明されていない。

本書は、その謎に迫る著者の仮説である。

フォッサマグナの仮説を展開する前に、その前段階として地形に関する説明がいくつもなされているが、これが丁寧かつ図版も豊富で、分かりやすい(少なくとも一時的に分かった気になれる)。

だが残念なことに、私はフォッサマグナが一体どういう地形なのか、最後の最後までぴんと来なかった。

6点/10点満点

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山崎詩郎「独楽の科学」感想。
ブルーバックス。2018年11月22日読了。

4章までは、大人が読んでも十分楽しめる「独楽の科学」に関する話なのだが、5章以降、小中学生向けの内容にシフトしてしまって、個人的には肩透かしを食らった気分。


6点/10点満点

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