橘玲氏の中国見聞録。単行本は2015年に出版され、現在は「言ってはいけない中国の真実 (新潮文庫) 」という題名で文庫化されています。
著者が2010-2014年にかけて取材した中国事情を、著者の私見としてまとめた本。
私は橘氏の論理的な考え方に全面的に共感しているので、非常に興味深く読んだ。以下、引用ではなく、大まかな内容抜粋。
p54
(マレーシア最大の銀行メイバンク、の創業者の孫のアンソニー(華人)曰く)
中国人はあまりにもエゴイストなので、共産党が暴力をもって縛り付けないと国が崩壊してしまう。「中国人にデモクラシーは無理」なのだという。
註:エゴイスト→自分勝手な人、自分の利益のみを追求する人
→中国人が本気で民主主義を目指したら、世界は一体どうなるんだろう、と思うことはしばしばあるが、すでに民主主義を謳歌している華人(註:移住している中国人は華僑、移住先の国籍を取得した人が華人)の富豪から見るても、中国人は民主主義(デモクラシー)より自分の利益が最優先なのか。
p142
中国では、土地は私有できない。すべての土地は公有地(地方自治体が所有しているので国有地ではない)であり、普通の中国人は土地の使用権を借りているだけ。故に固定資産税が存在しない。そのため、固定資産税の引き上げで地価の高騰を抑えるという常套手段が中国では使えない。
→中国は実質資本主義経済なので、いまさら土地の私有を認めると、裏社会勢力が滅茶苦茶な地上げをするのが目に見えているので、もうこの状況は変えられないのだろう。
p164
「改革開放」というのは、中国の人々にとっては、「共産党の支配を容認する代わりに自分たちの金儲けには口を出せない」という暗黙の契約だった。
→なんかすごく腑に落ちる。
p181
中国の出生率は日本よりもはるかに酷い。
北京市は0.71
上海市は0.74
6番目の天津市1.0以下
→一人っ子政策の悪影響による中国の少子高齢化は、しばしば日本でも報道されている。あまり根拠はないが、2025年くらいから日本と同じように高齢者の医療福祉問題がすさまじい重荷になり始め(高齢者の自殺が多いなど、既にその傾向はみられる)、2030年代から中国経済は下落するんじゃないかと私は思っている。
p245-246
中国で民主主義が成立し、民主的な選挙が行われた場合、ポピュリズム(大衆迎合)を主張する政治家が上位を独占する。豊かな南部沿岸地域(上海、深セン、広州ほか)の人口は4億人、貧しい内陸部の人口は9億人。沿岸の富を内陸の貧者に分配する政策をすすめる政治家が当選してしまう。もし中国が民主主義政治にかじを切ったなら、上海など沿岸住民は、中国からの分離自治(もしくは独立)を要求することが目に見えている。
→それ(分離独立)はそれで面白いと思うので、是非とも重慶(3000万人)・上海・北京・成都・石家荘・広州・天津・保定・武漢・ハルビンなど1000万人以上の人口の市は独立を目指してほしい。アフリカのチュニジアは人口約1000万人で、国別人口80位である。
ま、私が橘氏のファンであることもあり、とても面白い本であった。
8点/10点満点
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