本橋成一「屠場」感想。
食肉屠畜場のモノクロ写真集。2011年04月05日鑑賞。
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数年前、食肉は誰がどこでどうやって加工しているのか知りたくなって調べたことがある。きっかけは2005年4月に、エリック・シュローサー「ファストフードが世界を食いつくす」に書かれていた食肉加工場の劣悪環境の話を読んだから。
記憶に残っているのは、アメリカの牛肉加工大手タイソンフーズとナショナルビーフの食肉加工の現実。(Webにアップされているタイソンフーズの工場見学記などを読んだ)
おぼろげな記憶を元に食肉加工プロセスを書くと、成育した牛は一列に並べられ、一頭ずつ順番に食肉加工場に送り込まれ、送り込まれた肉牛は頭蓋骨に電動ピンポイントハンマーで一撃を与え気絶させ(ハンマーを打つ係の人がいる)、頸動脈を切って絶命させ(首を切る係の人がいる)、クレーンで後ろ足を釣り上げ(足をフックにかける係の人がいる)、大きなナイフを持った食肉職人が”たったかたー”と部位毎に切り分けていく。牛一頭を解体する時間は10分くらい(うろ覚え)の流れ作業で、アメリカ企業らしくこの10分をより短い時間に短縮し(食肉職人の動きの無駄を省く)いかにコストを下げるかが管理職の役割なんだとか。
ちなみに鶏肉の場合はもっとシステマチックで、生きた鶏の足をフックにかけると、ベルトコンベアが自動的に機械の中に鶏を吸い込み、機械から出てきたときには鶏の首ははねられ、毛は全部むしり取られている。らしい(うろ覚え)。
鶏のオートメーション加工はともかくとして、毎日牛を殺さなければならない加工場の人たちは大変な仕事だ、と思うのと同時に、こういう人がいるから私たちは肉が食えるんだな、と感謝するのである。米国食肉加工場の職場環境の劣悪さは置いといて。
で、その後2008年12月に内澤旬子「世界屠畜紀行」を読んで、やっぱり食える肉をつくる=生き物を殺して解体するというのは、生半可な事じゃないよな、と感じたのである。
何年か前から、教育に食育という概念を取り込もうなどという話が挙がっているけど、食肉解体工場を子供に見せるくらいのことをしないと本当の食育にはならんのじゃなかろか。と思ったりもした(私は子無しなので現実にどういう教育が行われているのか知らない)
で、本書。
前出の内澤旬子さんがtwitterで「本書は良い!」と断言していたので買ってみた。
本書は、大阪の松原というところにある食肉加工場に入り、食肉加工の現場を撮った写真集である。食肉加工につきものの”動物を殺す”事がメインではなく、どちらかと言えば、そこで働いている人たちが誇りを持って仕事をしている姿を捉えた写真集に仕上がっている。
写真そのものは良い感じなんだけど、本としての作りがあまりよろしくない。
まあ単純な話だけど、見開きで載っている写真の中央部、つまり写真にとっていちばん肝心なところが、本の折り返し(本の用語で「のど」の部分)に邪魔されて見づらいのだ。で、かなり多くのページが見開き写真なので、見づらく感じる写真が多いのだ。
写真も良いし紙質も良いし、何かもったいない。
7点/10点満点
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