カテゴリー「◇ビジネス書」の記事

2024/01/03

ジミー・ソニ/櫻井祐子訳「創始者たち」感想。2023年6月14日読了

ジミー・ソニ/櫻井祐子訳「創始者たち」

 

ペイパルの前身企業を創業した人たちと、

ほぼ同じ時期に同じようなことをやっていたイーロン・マスク(x.com)が、

結果的に合併して世界最強の決済会社ペイパルとなり、

その後の顛末(イーロン・マスク追放など)を含めて、多数の関係者に取材し記したノンフィクション。

ペイパルの操業にかかわった人たちは、みな数十億円以上の資産を持ち、

その後もベンチャー(スタートアップ)界隈で名をはせている人物ばかりで、

ペイパルマフィアと呼ばれている。

「とても良い」

 

8点/10点満点

 

| | | コメント (0)

2023/01/30

ケイシー・ミシェル/秋山勝訳「クレプトクラシー 資金洗浄の巨大な闇」感想。2022年12月23日読了。

 

千葉県の松戸の駅近ビルに「喜久屋書店」という本屋があり、ふらっと入ったら、めちゃくちゃ売り場の広い本屋だった。充実した本屋に入ると、本を探すのが楽しい。この時期、ニコラ・シャクソン「世界を貧困に導く ウォール街を超える悪魔」を読んでいたことから、関連した本を探していて見つけたのが本書。

 

読後の充足感として、ニコラ・シャクソン「世界を貧困に導く ウォール街を超える悪魔」より上だった。同じようなテーマなので、どちらを先に読んだかで印象は変わると思う。

 

本書のメイン登場人物は2人。
◆ウクライナのオリガルヒ(ソ連崩壊のどさくさに紛れて大儲けした成金)イーホル・コロモイスキーと、
◆赤道ギニアの独裁大統領テオドロ・オビアン・ンゲマ・ムバソゴの息子テオドリン(テオドリンは通称。テオドロ・ンゲマ・オビアン・マングリンク先は英語版)(BBCの参考記事)。

 

※ウクライナは、オリガルヒに政治を乗っ取られ、国中のありとあらゆる企業が寡占独占が当たり前(独禁法などないも同然)、賄賂が無ければ何も動かない国。ロシアのウクライナ侵攻後、ウクライナはEU加盟を直訴したが、EUは腐ったウクライナを知っているから「ウクライナ国内を何とかしてから出直してこい」というスタンス。ロシアに攻撃されて不憫な国だねえ、などと思ってはいけない。ウクライナを助ける意味ってあるのか?! というレベルで腐っている。そういう意味(ほっとけば自壊する)では、ロシアのプーチンは何で侵攻したのか私には分からん。廣瀬陽子センセや佐藤優氏やロシア通がこぞって読み間違ったのも理解できる。

 

※赤道ギニアは国である。旧ポルトガル領。アフリカ各国の独立機運に乗り独立。したのはいいけど何も産業が無い(カカオとコーヒーと林業)。建国時(1968年)の大統領マシアス・ンゲマが恐怖政治を敷き、反対するものは全員粛清。甥っ子のテオドロ・オビアン・ンゲマがクーデターを起こし(1979年)、マシアス・ンゲマ(叔父)を処刑。1979年以降、テオドロ・オビアン・ンゲマは43年間、赤道にギニアに君臨する独裁大統領。重要なのは、1990年代にギニア湾(赤道ギニアもその一部)で石油がザクザク見つかり、テオドロ・オビアン・ンゲマ一族は独裁大統領として、国庫の全てを自分と取り巻きのモノにした。国民には一円も使わん。

 

◆という2人を主軸に、奴らはどうやってマネーロンダリングしているのか、その一端を解き明かしたのが本書。

 

端的に言うと、ウクライナや赤道ギニアの国内にドルがあっても、いざというとき使えなければ意味がない。
なので、目に見える形でアメリカから実物を買う。

 

コロモイスキーはアメリカ・クリーブランド(オハイオ州)の寂れたビルをいくつも高額で買い、
テオドリンはマイケル・ジャクソンの遺品を買い漁った。

 

ウクライナや赤道ギニアでドルを持っていても、国際政治や国際金融が制裁を課せば、ドルそのものの移動が禁止されると同じなので、他国に持っていけなくなる(ただし自国では使える)。

 

しかし、アメリカ国内にあるビルを買ったり、マイケル・ジャクソンの遺品に変えたら、それらはいつでも売れる。

 

アメリカの不動産を売買するということに関しては、ドナルド・トランプ=トランプタワーがその一翼を担っていた。トランプは、誰にでもトランプタワー(の一室)を売っていた。

 

さらに、その手助けをしていたのはアメリカの弁護士税理士不動産業界だった。

 

という内容が超濃密に書かれています。

 

9点/10点満点

| | | コメント (0)

2023/01/23

ニコラ・シャクソン/平田光美・平田完一郎訳「世界を貧困に導く ウォール街を超える悪魔」感想。2022年12月5日読了。

 

2012年に本書の著者ニコラ・シャクソンの「タックスヘイブンの闇」8点を読んだ。この本を読んだのは橘玲氏が推薦していたから(橘玲氏の著書を読み始めたのも2012年から)。

 

「タックスヘイブンの闇」では、バナナの国際取引についての事例が印象に残っている。(以下は例)
アメリカにバナナ会社の本社がある。
ホンジュラスに生産(収穫)子会社がある。
ルクセンブルクに金融子会社がある。
マン島(イギリス領)に輸送子会社がある。
ルクセンブルクからホンジュラスに50万ドル貸し付ける。
ホンジュラスはバナナを収穫し、20万ドルの価値とする。
ホンジュラスは50万ドルの借金から10万ドルをマン島に払って輸送してもらう。
ホンジュラスはルクセンブルクに金利7万ドルを払う。
ホンジュラスは残り3万ドルを現地従業員の給与とする。
ホンジュラスに利益は残らない。
アメリカは、マン島とルクセンブルクから株主配当(親会社なので100%株主)を受け取る。
というようなプロセスを、世界中どこの国の税法にも引っかからないようにしなが=払う税金を最小限にする=会社経営をしているのがグローバル企業である。アップルもグーグルもマイクロソフトもamazonもユニクロもソフトバンクもみなやっている手口である。
詳しくは「タックスヘイブンの闇」をご一読ください。

 

◆本書「世界を貧困に導くウォール街を超える悪魔」
本書が指摘している「ウォール街」を超える悪魔は、ロンドンの金融中心地「シティ」と、世界中に増殖しているプライベートエクイティファンドのことである。

 

500ページ近い本なのに、いまどき2200円+税という安価である(2200円が安く感じる出版不況の昨今である)
通常こういう翻訳書の場合「原注」が巻末に数十ページ載っていることが多いのだが、ばっさりカットしてWeb公開に踏み切っている。ページ数を切り詰める苦肉の策なのだろう。

 

以下、私が付箋を貼ったところから抜粋。

 

P87
本書の初めの方に出てくる興味深い点として、アメリカの各州・各市町村が、大企業を誘致するための減税合戦に陥っている点。Amazonの第2本社の誘致に際して「どれだけ魅力的な減税パッケージ」を提案するか入札したところ、238の市町村が候補地として名乗りを上げた。

 

P125
世界中の租税回避情報が詰まった「パナマ文書」の出どころ、パナマの法律事務所モサック・フォンセカは、太平洋の小さな島国ニウエ(人口わずか1,500人・一応独立国)でオフショア企業を登記する独占権を得て、ニウエの国庫収入の8割を生み出していた。

 

P168
パキスタン人銀行家アベディが1972年に作った「国際商業信用銀行(BCCI)」は、巨大なポンジスキーム(ねずみ講もしくは自転車操業)だった。

 

と世界のウラ的な話が一通り書かれた後、第5章から「シティの闇」や「アイルランドの見せかけの反映」、「世界4大会計事務所(デロイトトーマツ、アーンストヤング、KPMG、PwC)は脱税指南会社で、会計監査はしていない」、「信託の真実⇒プライベートエクイティファンドの闇」に迫っていく。実に様々な観点から、現代金融(業界)の不都合な部分を書き表している。ボリュームがあり過ぎて、私の読書ペース(ここ数連劣化が激しいが)で読了まで3週間かかってしまった。この手の本で読了まで3週間かかると、冒頭の話題は何だっけ?となってしまい、ときどき前の十数ページを読み返す必要も出てくる(私が老いただけかもしれないが)

 

P439

プライベートエクイティファンドを用いた減税効果が行き過ぎた世界では、企業の役員に払う報酬が高く、役員が所得税をたくさん払う必要がある場合、起業は役員個人に報酬を払うのではなく、役員が設立したプライベートエクイティファンドに払い込んだ方が税金が安くなる。というブラック(とは言えないあり得る)ジョークが載っていた。

 

著者の言わんとするところは、「全世界で公平な税制を」「金持ち企業だけが脱税指南会社(4大会計事務所)を雇えるのは不公平」的なことで、行き着く先は金。金のあるやつが偉い、それが今の世界であり、それを打破するには政治しかない。ということっぽい。

 

8点/10点満点

| | | コメント (0)

2023/01/22

リード・ホフマン他/大浦千鶴子訳「マスター・オブ・スケール 事業拡大の最強ルール」感想。2022年11月11日読了。

 私的10点満点。

「私がいままで読んだビジネス書の中で、もっとも良い本」

です。

 


特に、スタートアップ企業が為すべきことについての指南書である。

著者はリード・ホフマン(LinkedIn創業者)と執筆サポート2名。

 

LinkedInを知らない人には届かないかも。

この本について知りたければ、「読め」と言うしかない。

 

10点/10点満点

10点の真意は9.5点⇒コロナ以降、ビジネスのやり方が急速に変わっている。その変化「後」も通用するならば10点満点。通用しなくても、現時点の分析として9点、いずれにせよ素晴らしい本だ。

| | | コメント (0)

2020/12/31

川田利明「してはいけない 逆説ビジネス学」感想。ビジネス書。 2020年12月19日読了。

 

プロレスラー川田利明がラーメン屋をやっているとは知らなかった。
で、儲かっていないらしい。
月の粗利でマイナスはないと思うが、利益計算だとカツカツっぽい。

 

1990年代、私はプロレスにドはまりしていた。中でも川田がいちばん好きなレスラーだった。(RINGSも良かったけどね)

 

そんな川田が書いた、ラーメン屋にだけはなるなよ!儲からないぜ!
という本。
内容は至極まっとうなビジネス本で、ストレートな言葉が多く、良い。

 

評点が低いのは、この程度の内容なら新書で800円で売れ!
と思うから。ワニブックス1300円+税は高いよ。

 

6点/10点満点

| | | コメント (0)

2020/01/05

フィル・ナイト/太田黒泰之訳「SHOE DOG」感想。ナイキ創業者自伝。2019年12月22日読了。8点/10点満点

 

ナイキ創業者が、1962年に創業してから、1980年に株式上場して1億7800万ドルの株(上場時)を手にするまでの自伝。ちなみに2019年10月現在の株価では376億ドル

 

フィル・ナイトは1938年生まれ。2019年現在81歳。ナイキを創業したのは24歳の1962年。私(53歳)が生まれたのは1966年。

 

自伝なので、自分に都合のいいことしか書いていない。でも読ませる。

 

この読ませるテクニック、たぶんオリジナルは自分で書いたかもしれないが、仕上げの執筆は文章に長けたゴーストライターが書いている(と思われる)というのは、日本にも必要な出版手法である。

 

日本にだって傑出したビジネスマンは多々いるのに、あまりにも表に出てこない。もっと表に出てきてもいいんですよ、と私は言いたい。

 

ちなみに本書は、普通に面白い。

 

8点/10点満点

| | | コメント (0)

橘玲「事実vs本能」感想。2019年09月02日読了。6点/10点満点

 

「言ってはいけない」シリーズと大差ないかも。

 

6点/10点満点

| | | コメント (0)

2020/01/04

ヤニス・バルファキス/関美和訳「父が娘に語る経済の話」感想。経済。2019年03月29日読了。10点/10点満点

 

著者はギリシャ経済危機(2015年)の時のギリシャ財務大臣。
原著はギリシャ語で書かれ(たぶん2013年)、英訳がたぶん2014年、英訳をもとに日本語版が2019年に出版された。

 

本書の面白さはあちこちに書かれているので、ここでは特記しない。
強制収容所ではタバコが貨幣と同じ働きをした、という部分は、貨幣経済を知るうえでとても分かりやすい例と思う。

 

陳腐な感想ではあるが、良い。またしても10点満点を付ける。

 

10点/10点満点

| | | コメント (0)

2020/01/03

ハンス・ロスリング(&オーラ、アンナ)/上杉周作・関美和訳「FACTFULNESS」感想。世界を現す客観データ。2019年01月26日読了。100点/10点満点

 

(2020/1/4修正)

 

10点満点で100点。我が読書人生史上、最高の一冊(のひとつ)。

 

思い込みや先入観を排除し、数値で世界を見ると、今の世界はいったいどういう状態なのか。を記した本である。各所で大絶賛されているので、詳しい内容は省く。

 

例)
スウェーデン。福祉大国である。政治的には社会民主主義(基本的には多数決=民主主義を採用しているが、高齢者や弱者救済のため高い税金を課し、富の分配を図る=社会主義的な要素を多々採用している政治制度)。
1800年代から1966年ころまで、スウェーデンは極度の貧困層が多く、人口の1/5が国外(主にアメリカ)に逃げ出した。戻ってきたのはそのうち2割。

 

1997年の段階で、インドと中国の極度貧困率はどちらも42%。2017年にはインド12%、中国0.7%と劇的に改善された。

 

まだ読んでいない人は、本屋や図書館で手に取って、冒頭のクイズ13問(p9-p13)をやってみることをお勧めする。いかに自分の頭が先入観で溢れかえっているのかが分かる。

 

100点/10点満点

 

| | | コメント (0)

2019/01/06

今まで読んだ中で最も優れたビジネス書は「ラーメン発見伝」

私は本をたくさん読んでいます。

そんな私が今まで読んできた中で、最も優れたビジネス書をご紹介します。まあ傲慢な言い方だけれども、私が言っている(書いている)ので、間違いないです。

マンガの「ラーメン発見伝」です(全26巻・既に完結)

主人公のラーメンバトルはどうでもよくて、ライバルラーメンチェーンの店主・芹沢さんのノウハウがとにかくすごい。芹沢さんは、なにかと対抗心をむき出しにする主人公を諭すように「ラーメン店経営の神髄」を教えるのですが、この神髄は「ラーメン店じゃなくても通用する、日本全般の会社経営ノウハウ」なのです。

このマンガがビジネス書として優れていると感じるのは私だけではなく、何人もの著名人が引き合いに出しています。

マンガ喫茶とかスーパー銭湯など、どこかで見かけたらご一読あれ。


◆全巻セットはこちら↓

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

00◆成田やトランジット(JFK・パリ・マドリッド) 01◆ブラジル(サンパウロ・サンルイス・レンソイス・マナウス) 02◆アルゼンチン(イグアス・カラファテ・ウシュアイア・ブエノス) 03◆チリ(サンチャゴ・イースター島・バルパライソ) 04◆ボリビア(ラパス・ウユニ) 05◆ペルー(クスコ・マチュピチュ・リマ) 06◆エクアドル(グアヤキル・ガラパゴス諸島) 07◆スペイン(マドリッド・バルセロナ) 08◆トルコ(イスタンブール・カッパドキア・パムッカレ) 09◆ヨルダン(ペトラ遺跡・アンマン) 10◆シリア(ダマスカス・パルミラ遺跡) 11◆エジプト(カイロ・アスワン・アブシンベル) 12◆モロッコ(マラケシュ) 13◆南アフリカ(ヨハネスブルク・ケープタウン) 14◆ナミビア(ウィントフック・ナミブ砂漠・スワコプムント) 15◆ジンバブエ(ヴィクトリアフォールズ) 16◆ザンビア(側のヴィクトリアフォールズ) 17◆ボツワナ(チョベ国立公園) 18◆香港・マカオ 19◆インド 20◆フィリピン留学記 21◆インドネシア・スラウェシ島・マナド10泊旅行 ★惚れ惚れするほどの駄作 ☆私の読書累計 ☆私的10点満点 ☆装丁がスバラシイ本 ■09年11月からの世界一周の小ネタ ■09年11月から世界一周! ■09年11月から世界一周!の準備 ■09年11月から世界一周!の近況 ■09年11月から世界一周!参考書籍 ■2006年夏・ケニアに行く ■2007年夏・アンコール遺跡に行く ■2008年1月・ボルネオ島に行く ■2008年4月・週末海外でベトナム ■2008年9月・週末海外で台湾 ■アフリカ □グインサーガ □三国志 ▲スティーヴン・キング ▲ドン・ウィンズロウ ▲京極夏彦 ▲佐藤賢一 ▲北方謙三 ▲夢枕獏 ▲大沢在昌 ▲天童荒太 ▲宮部みゆき ▲浅田次郎 ▲熊谷達也 ▲真保裕一 ▲神林長平 ▲福井晴敏 ▲船戸与一 ▲貴志祐介 ▲逢坂剛 ▲金庸 ▲隆慶一郎 △サイモン・シン/青木薫訳 △下川裕治 △堀田あきお&かよ △宮田珠己 △木村元彦 △松本仁一 △橘玲 △石井光太 △船尾修 △蔵前仁一 △高木徹 △高野秀行 ◆小説・ミステリ系統 ◆小説・伝奇小説 ◆小説・冒険小説 ◆小説・時代小説・歴史小説 ◆小説・武侠小説 ◆小説・純文学・青春小説 ◆小説・経済小説・現代小説 ◆小説・SFホラーファンタジー ◇いわゆる新書 ◇イスラーム他、宗教 ◇エッセイ・紀行文 ◇ガイドブック ◇スポーツ関連書 ◇テクノロジー ◇データブック・記録集 ◇ノンフィクション ◇パソコン関連図書 ◇ビジネス書 ◇ルポ・ドキュメンタリー ◇世界についての本 ◇国際政治・地政学 ◇実用書・ガイドブック ◇歴史 ◇科学 ◇臓器移植・臓器売買・人身売買 ◇語学などの勉強本 ◇雑学・蘊蓄 ◎写真集 ◎美術書・アートブック ●海外作品(原著英語) ●海外作品(原著非英語) アニメ・コミック 携帯・デジカメ 旅行・地域 日記・コラム・つぶやき 映画・テレビ 時事