カテゴリー「◇ノンフィクション」の記事

2023/03/26

河野啓「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」感想。2023年2月21日読了

栗城史多のエベレストチャレンジ(何回も挑んだ)と、エベレスト登山中に死んでしまったことを知っている人が読んだら、面白いノンフィクションだと思う。

*以下アマゾンより引用
第18回開高健ノンフィクション賞受賞作
「夢の共有」を掲げて華々しく活動し、毀誉褒貶のなかで滑落死した登山家。
メディアを巻き込んで繰り広げられた彼の「劇場」の真実はどこにあったのか。

両手の指9本を失いながらも〝七大陸最高峰単独無酸素〟登頂を目指した登山家・栗城史多氏。エベレスト登頂をインターネットで生中継することを掲げ注目を集めたが、8度目の挑戦となった2018年5月21日、滑落死。35歳だった。彼はなぜエベレストに挑み続けたのか? そして、彼は何者だったのか? かつて栗城氏を番組に描いた著者が、綿密な取材で謎多き人気クライマーの真実にせまる。
*引用終わり

イッテQのイモトアヤコが栗城にとどめを刺した的なことが書かれているが、実際そうなんだろうな。

 

8点/10点満点

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2023/01/20

野地秩嘉(のじつねよし)「ビートルズを呼んだ男」感想。人物伝。2022年6月19日読了。

 

1966年(私の生年)に、ビートルズは来日した。
ビートルズの来日公演を手掛けたプロモーターは永島達司(タツ)氏といい、本書の主人公である。
永島氏はキョードー東京、ウド―音楽事務所の創立者、音楽出版社大洋音楽の代表とのこと。

 

本書の著者野地氏は、本書の執筆にあたりポール・マッカートニーにインタビューしている(プロローグ)。インタビュー前年に妻を亡くしたばかりのポール・マッカートニーが、「タツ(永島氏)のためならいくらでも質問に答えよう」というくらい、永島氏はビートルズに信用されていた。これがプロローグである。

 

著者の筆致も心地よく、とても軽快である。音楽出版=著作権の世界は難しい(参考ビートルズの楽曲著作権がどのように売り買いされていったのかその詳細を書いた「ノーザン・ソングス」)のだが、本書はその難しさを表にあまり出さず、一般読者にわかるように丁寧に書いている。

丁寧かつ軽快。ノンフィクションの良いところがすべて詰まった、素晴らしいノンフィクションであった。

 

9点/10点満点

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2020/01/04

大西康之「ロケット・ササキ」感想。伝記。2019年05月07日読了。8点/10点満点

電卓の開発に全精力を注ぎ、シャープの礎を作った佐々木正氏の伝記。 台湾で育ち、李登輝(台湾総裁)と同窓。 ◆Amazonより 敗戦から高度成長期にかけて、デジタル産業の黎明期に、常に世界の最先端を突っ走ったスーパー・サラリーマンがいた。シャープの技術トップとして、トランジスタからLSI、液晶パネルと当時のハイテクを導入して苛烈な「電卓戦争」を勝ち抜き、電子立国・日本の礎を築いた佐々木正。インテル創業者が頼り、ジョブズが憧れ、孫正義を見出し、サムスンを救った「伝説の技術者」の痛快評伝。 ◆引用終わり 巻末で孫正義が賛辞を書いているので、間違いなく傑物である。 読み物として、素直に面白かった。伝記なので、都合の悪いことを省いた可能性はあるが。 8点/10点満点

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2018/09/23

トム・クラインズ/熊谷玲美訳「太陽を創った少年」感想。
人物伝。2018年06月23日読了。

◆内容(Amazonから引用)
「うん、核融合炉を創ったよ! 」。若干14歳の核物理学者はどうして生まれたのか?

9歳でロケットを実作した、アメリカ・アーカンソー州の早熟の天才、
テイラー・ウィルソンは11歳の若さでさらなる野心に燃えていた。
祖母がくれた本に刺激を受け、核融合炉を自宅で創ろうと決意したのだ。
危険と隣り合わせのそんな作業を、子どもがやってのけられるはずがないという大人の常識をしり目に、
彼には自分がやれるという自信と勝算、そして適切な知識があった。

「ギフテッド」といわれる天才児にもさすがにムリかと思えることが、なぜできたのか。
息子を見守る両親の苦労、大学教員をはじめとする教育関係者の奔走。
彼のそばで直接取材したジャーナリストが語るサイエンス・ノンフィクション。


◆感想
テイラー・ウィルソン氏は、2018年現在23歳である。

彼が14歳で核融合炉を作るに至った経緯が、本書には詳しく書かれている。

類まれなる才能を持った子供=ギフテッドと呼ばれる=が、その才能を開花させるためには、子供自身の努力に任せるのではなく、周囲の大人たちの適切な助力が必要である。

あまりにも頭が良すぎたテイラー少年には、コカ・コーラのボトラー会社を経営している父親(そこそこ裕福)はテイラー少年の投棄された放射性物質探しに付き合い、核融合を目指す物理学オタクが集まったオンラインフォーラムの発見と参加、実験器具を買うために協力してくれた薬剤師(例えばテキサス州では三角フラスコを買うのは許可制)、ギフテッドの子供集めて学年別カリキュラムではなく学力に見合った授業を展開するデイヴィッドソンアカデミー(ネバダ州)への入学、そこからネバダ大学リノ校の物理学教授陣との出会い、そういうラッキーな出会いがたくさんあって、優しい大人たちがテイラー少年を道を外さないよう指導していた。

テイラー少年は、理論物理学は嫌いで、実験(応用物理学)が好きだと言っている。

既に実用化が見込めそうなアイデアをいくつか披露している。

ガンの放射線治療に使う放射線源は、製造できる場所が限られており、また寿命も短いため、放射線源を作ったらすぐに飛行機で病院まで届けなければならないが、小型の核融合炉が完成すれば、病院で放射線源を作ることができるようになる。ほかにも空港の荷物検査のX線の代わりになるスキャナに関しても、本書に書かれている。

ノンフィクションとして間違いなく面白いのだが、ギフテッドの子供をどうやって教育すべきかという教育論にかなり多くのページが割かれていて、個人的にはそれが不満。


8点/10点満点

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2017/09/17

ジーン・マリー・ラスカス/田口俊樹訳「コンカッション」感想。
ノンフィクション。2017年08月07日読了。

脳震盪は今まで思われていた以上に、脳に深刻なダメージを与える。

脳震盪で脳にダメージを受けた人は、奇行が目立ち、死後に脳を解剖すると、特定の痕跡がみられる(CTEと呼ばれる)

本書は、ナイジェリアからアメリカに医学留学し、その後アメリカに定住、検視官の職を得、数多くの遺体を解剖してきたベネット・オマルが、偶然NFL(アメフト)のスーパースター(引退後奇行が目立った)の脳を解剖したところ、顕著な特徴がみられたことから、従来ボクシングのパンチドランカー特融と思われていた脳障害は、実は脳震盪によって引き起こされるということを突き止めた実話を、ベネット・オマルを主人公に据え、オマルの半生を描きながら、脳震盪が引き起こす様々な悪影響を解明したノンフィクション。

脳震盪に関する部分は面白いのだが、主人公があまりにも変人(人と接することが嫌いな鬱病持ちの異邦人)なので、イマイチのめりこめない。

悪くはないのだが。


6点/10点満点

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2017/09/10

加藤文元「ガロア 天才数学者の生涯」感想。
ノンフィクション。2017年08月04日読了。

1811年10月25日、パリ郊外で生まれたエヴァリスト・ガロア
公立学校の校長から町長になった父、教養がしっかり身についてラテン語が得意だった母、その母から教育を受け、11歳にはラテン語で読み書きができる賢い子であった。12歳の時、パリの寄宿制の学校に入学。校風が気に入らず反抗的だったガロアは2年生をやり直すことに(留年)。そこで補講として受けたのが幾何学。これに夢中になってしまったガロアは、2年分の教科書を2日で読んでしまった。

そこから、学校の授業はほったらかしにして、数学と、そして政治活動に熱中しだした。

数学の習得能力、発想能力は異常なまでに高まり、1829年に最初の論文「循環連分数に関する一定理の証明」を発表。

後、父親が政治闘争に巻き込まれ自殺。これに憂いたガロアはますます政治にのめりこみ、ついには政治犯として逮捕収監されるにいたる。

そんな中、1931年1月17日に論文「方程式の冪根による可解条件について」を書く。この論文はあまりにも難解で、当時の著名な数学者からも理解されず、その重要性が数学界に認識されるのはガロアの死から50年も後のことである。この論文こそ、現代数学の重要な「ガロア群」の元となる論文であった。

1832年5月31日、ガロアは(女に関する名誉を賭けた)決闘に負けて死ぬ。まだ20歳であった。

歴史に「たられば」は禁物であるが、20歳で「ガロア群」を構築したガロアがせめて40歳まで生きていれば、数学会がどれだけ発展したことだろうか(数学は他の学問と異なり、経験よりも発想力がものをいうので、数学者のピークは35歳前後と言われている)

わずか20歳で数学史に残る偉業を成し遂げながら、生前は、あまりにも最先端をいきすぎていたため正当な評価を受けることがなく、決闘で死ぬという劇的な人生を送ったガロア。

ガロアの人生を書き記した伝記・ノンフィクションは、フランスを中心に何冊も書かれている。

本書は、数学者でガロア理論を研究している(でいいのかな?)著者加藤文元氏が、それら伝記や、原典をたどり、日本人向けに書かれたガロアの伝記である。

数学うんちくを増やしたい人は、ぜひとも手に取るべき一冊である。


8点/10点満点

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2017/09/06

溝口敦「闇経済の怪物たち グレービジネスでボロ儲けする人々」感想。
ゴシップ。2017年07月25日読了。

第1章 「裏」情報サイトの先駆者
第2章 出会い系サイトの帝王
第3章 堅気のデリヘル王
第4章 危険ドラッグの帝王
第5章 日本一のイカサマ・カジノディーラー
第6章 FXの帝王、仮想通貨に挑戦
第7章 六本木の帝王と関東連合
第8章 詐欺の帝王の新事業
第9章 ヤクザ界の高倉健

について、それぞれインタビューを行い、一冊の本にまとめたもの。

まあ、なんだ、アサヒ芸能(著者がかつて在籍していた雑誌)に載っている闇経済記事をまとめたような読み物。


5点/10点満点

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2017/03/04

ダニエル・カーネマン/村井章子訳「ファストアンドスロー(下) あなたの意思はどのように決まるか?」感想。
行動経済学。2017年02月25日読了。

下巻も非常に面白かった。読むのに時間がかかったが、とても有意義な時間を過ごせた。

この本(上下巻)は内容が詰まっている。詰まっているというのは、余計なことがあまり書かれていなく、斜め読みをすることができない状態のことである。一言一句、かみしめるように読み進めないと、次に書かれていることが理解できなくなるのである。

翻訳に関しては、無理に日本語化した部分が悪目立ちしたが、これだけの内容を伝えたという点では良い翻訳と言える。


下巻のポイント(ほぼ私的メモです。分かりづらくてすみません)

p53
アメリカでスタートアップ企業の存続率は35%である。しかし、スタートアップ(起業)する人のほとんどは、自分が成功すると信じ、失敗する側(65%である)になると思っていない。

p67
所属している会社で、ある新規事業を始めるとする。事業を進めたがる人たちは概ね自信過剰に陥っているので、そういう人たちに「いまが1年後だと想像してください。私たちは、先ほど決めた計画を実行し、大失敗しました。なぜ失敗したのか、簡潔に答えてください」と問うと、新規事業への楽観は消える。

これを「死亡前死因分析」という。


これから後は、ギャンブルをベースにした問いが増える。これこそがノーベル経済学賞を獲ったプロスペクト理論。

問1:あなたはどちらを選びますか
・確実に900ドル貰える。
・90%の確率で1000ドル貰える。

問2:あなたはどちらを選びますか
・確実に900ドル失う。
・90%の確率で1000ドル失う。

たいていの人は、問1では確実にもらえる方を、問2では損をしない可能性が少しでもある方を選ぶ。(期待値の考え方なら、どちらの選択肢も同じである。問1なら+900ドル、問2なら-900ドル)

これは問題の内容をいろいろ変えても同じ結果になり、得をするときは確実な方を、損をするときは少しでも損する額が小さくなる方を選ぶ。


これは株式の売買にも通じ、

あなたは資産をすべて株で運用しています。突然1万ドルが必要になりました。現在儲かっている株を売りますか(利益確定)、それとも損している株を売りますか(損切り)?

多くの人が利益確定に走る。

人間の心理的に、損を確定させることは「自分の失敗を認めることになるので苦痛」に対し、利益確定は「自分の勘が正しかった確かめる作業なので精神的に楽」ということである。


p147
100万ドル貰えるかもしれない確率について、5%ずつ上昇するときの気分の変化
A) 0%から5%に上がる
B) 5%から10%に上がる
C) 60%から65%に上がる
D) 95%から100%に上がる

このうち最も嬉しいのはAであり、次に嬉しいのはDである。

Aは簡単に言うと宝くじ。当たる確率は低いけど、買わなければ絶対に当たらない。買えば買うほど当籤確率は上がる

Dの例は遺産相続。普通に考えたら遺産を全額相続できる立場にいるが、万が一、自分の知らない親族がいて、遺産の相続権を要求してきたら困る。そんな時、あなたの遺産相続権を満額の90%で買い取りますよ!と言ってくる弁護士が居たら、弁護士に権利を売る可能性が高い。


というようなことが満載で書かれている本書は、とにかく面白かった。


9点/10点満点

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2017/03/03

ダニエル・カーネマン/村井章子訳「ファストアンドスロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?」感想。
行動経済学。2017年02月15日読了。

本書の著者ダニエル・カーネマン氏は、心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞した(2002年)。氏の受賞により行動経済学という学問は一躍脚光を浴びるようになった。

本書はノーベル経済学賞を受賞した氏の研究「プロスペクト理論」を、なぜそのような研究をすることになったのか前後の研究を含め、一般読者にわかりやすく説明している本である。とはいえ、かなり難しい(例えば確率の計算で、計算式が省かれ答えだけが載っているのだが、その答えに至る式が全く見えてこない→巻末の注記に計算式が載っているのだが、それを見ても理解できない。など)。なお、「プロスペクト理論」の説明は下巻である。


以下、個人的メモ。(要約しようにも盛り込まれている内容が多すぎて…)

人間は、理路整然とした行動をとっているようでも、実はそうではない。


というのを様々な実験を経て立証したのが本書。


著者は本書で一貫して人間の脳の働きを二つのシステムとして表現している。(p41)

◆システム1:自動的に高速で働く。努力は全く不要か、必要であってもわずかである。また、自分の方からコントロールしている感覚は一切ない。

◆システム2:複雑な計算など頭を使わなければできない(=システム1ではできない)困難な知的活動を行う。基本的に怠け者で、システム1が導き出した判断に影響される。

音が聞こえた方角を感知する、2+2を計算する、簡単な文章を読む、空いた道を運転する、などはシステム1の仕事。

意外な音を聞いたときそれが何の音なのか記憶をたどる、17*24を計算する、複雑な論旨の妥当性を確認する、狭いスペースに注射する、などはシステム2の仕事。システム2を稼働させるには努力が必要である。努力すると脳が疲れる。


「SO□P」という単語の□に入る言葉を当てなさい。食べ物が目の前にある時や「食べる」という言葉を聞いた後ならSOUP(スープ)という単語を思い付く。風呂に入っている時や「洗う」という言葉を聞いた後ならSOAP(石鹸)を言う言葉を思い付く。

「食べる」はSOUPの、「洗う」はSOAPのプライム(選考刺激)といい、これらの現象をプライミング効果という。

プライミング効果を使えば、人々の思考を誘導できる。一例として、2000年にアリゾナ州で学校補助金の増額に関する投票では、学校が投票所だった場合、他の投票所より賛成票が多かった。学校補助金の増額という題に対し、学校という投票所がプライムになった。


「ニューヨークはアメリカの大都市である」「月は地球の周りをまわっている」「ニワトリの足は4本である」
最初の2つはすぐに正しいと理解できる。これはシステム1の働き。最後の文章はちょっとだけ悩む。システム1はたぶん正しいと思われるが念のため確認が必要であるとしてシステム2を呼び出す。システム2はほんのちょっと悩んだ後、正しいと判断を下す。これが「ニワトリの足は3本である」ならば、システム1が即座に間違いと判断を下せるが、4本の場合はシステム1は即座に判断を下せない。

見覚え、聞き覚えといった感覚は、単純だが強力な「過去性」を帯びていて、人間の脳は慣れ親しんだものが好きとのこと。

おしゃれなレストランで、隣の席の人がスープを飲んで不味そうな顔をした。こういう事態に遭遇したら「えっ?」と驚くが、別の席の客も不味そうな顔をしたら、2度目はそれほど驚かない。既に見覚えのある光景だから。


システム1は騙されやすく、信じたがるバイアスを備えている。疑ってかかり、信じないと判断するのはシステム2の仕事だが、システム2はときに忙しく、大体は怠けている。システム2は自分の信念に一致しそうなデータばかりを探す。

大統領の政治手腕が好きな人は、大統領の養子も声も好きである可能性が高い。これをハロー効果(後光効果)という。

パーティで気さくで感じの良い女性と知り合った。後日、募金を集める際、なぜかこの女性のことを思い出した。気さくで感じの良い女性ということしか知らないのに、なぜかこの女性のことを思い出した。これもハロー効果。

アラン:頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
ベン:嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい

どちらの人物に好感が持てるか。十中八九、アランに好感を持つ。挙げられている性格は全く同じなのに、語順が違うだけでこうも印象が変わる。

ということを突き詰めていくと、「自分の見たものがすべてだ」(p155)ということになる。


更に突き詰めていくと、これらは数字にすることができる。アンカリング率という。簡単な実験として、10人でやっているプロジェクトがあるとして、ミーティングで10人に自分のプロジェクトへの貢献度を%で書かかせ、一斉に提示させる。まず間違いなく貢献度は100%を上回る。


本書ではヒューリスティックという言葉が(最初から)出てくる。「近道の解決法」という意味になる概念だそうだ。

寡黙で、整理整頓が大好きで、ルーチンワークを苦にしない。

この人の職業は図書館司書でしょうか、それとも農家でしょうか。先入観で図書館司書と答えてしまいそうだが、実際は農家の方が就業人口が多いので、農家である可能性の方が高い。しかし先入観が働く。こういうのをヒューリスティックという。


軍の飛行機の訓練教官は、「素晴らしい飛行をしたので褒めると、次は必ずダメになる」「なので褒めない。失敗したときにめちゃくちゃ怒鳴る」という。

褒めると下手になり、𠮟るとうまくなるというのは間違いである。共感が観察したのは「平均への回帰」という現象である。

褒められるほ上手くできたのは、たまたまその時が良かっただけで、普段はもっと下手。だから次は下手になる。(下手なのが平均)

叱られるほど下手だったのは、たまたまその時が失敗しただけで、普段はもっと上手。だから次は上手になる。(上手なのが平均)


ということで非常に面白かった。下巻の感想は明日。


9点/10点満点

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2017/01/05

石川直樹「最後の冒険家」感想。
伝記。2016年08月23日読了。

熱気球で太平洋を単独横断する冒険にチャレンジし、そのまま行方不明となってしまった公務員冒険家神田道夫氏の足跡を追ったノンフィクション。

執筆者の石川直樹氏は、第1回目の熱気球太平洋横断にパートナーとして同乗し、太平洋上で墜落、運よく日本郵船のコンテナ船に救助された経歴を持つ。

本書は、熱気球に取りつかれた冒険家神田道夫氏の情熱を過不足なく伝えている。

一気に読み終えた。かなり完成度の高いノンフィクションである。


8点/10点満点

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