カテゴリー「■アフリカ」の記事

2022/01/03

上野庸平「ルポ アフリカに進出する日本の新宗教」感想。ルポ。2021年02月11日読了。

 

2016年に出版された本。
・ラエリアンムーブメント(宇宙人が人間を作ったと真珠ている団体。日本発祥ではない)
・幸福の科学
・真如苑
・崇教真光
・統一教会
・創価学会
らの宗教がアフリカ各地でどのような活動を行っているのかを、現地の事務所・施設に訪れ取材した記録。

 

著者は在外大使館の契約職員として、ブルキナファソ、ガボンに勤務。セネガルにも在住経験あり。

 

構成がいまいちで、突撃取材をただ一冊にまとめた感が否めない。構成が良ければもっと高い評価を得ていたことと思われる(アフリカ好きの私のアンテナにも引っかからなかったので、ルポとして厳しい眼で見られたのだろう)

 

ウガンダで幸福の科学が躍進中、ブルキナファソで真如苑信者(ブルキナファソ人)と偶然出会う、フランス国営ラジオRFI(西アフリカでリスナーが2億人)で紹介される崇教真光、どこにでもある創価学会などなどが紹介されている。

 

著者が暮らしていた関係でブルキナファソの話題が多い。これが構成の弱さで、宗教別にするより国別に紹介した方が良かったのではないだろうか。

 

巻頭に宗教地図が載っているのだが、それによれば、
・アンゴラにPL教団、生長の家、世界救世教、崇教真光
・ガーナに創価学会、日蓮正宗、生長の家
・ウガンダに統一教会、幸福の科学、天理教、バハイ教(イラン発祥)
など、いろんなところに進出していることが分かる。

 

ちなみにコンゴ共和国(紛争が多発しているコンゴ民主共和国の隣の別国)の首都ブラザヴィルには天理教が50年前から存在し、アフリカを旅する日本人バックパッカーの間で昔から有名だった。

 

6点/10点満点

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2018/09/22

服部正法「ジハード大陸 テロ最前線のアフリカを行く」感想。
ルポ。2018年06月12日読了。

◆内容(Amazonから引用)
「今そこにあるテロ」の現場を歩き、事件の歴史的・社会的背景を探るとともにジハーディストたちの真の姿に迫った戦慄のルポ!

イスラーム過激派がもっとも激しくテロ活動を展開しているのは、中東でもヨーロッパでもない。アフリカ大陸だ。たとえば、イスラム国(IS)が国家樹立を宣言した2014年にもっとも多くの人を殺戮したテロ組織はISではなく、ナイジェリアを中心に活動するボコ・ハラムである。西アフリカのマリでは2012年の一時期、アルカイダ系組織がフランスに匹敵する面積を支配下に置き、仏軍の介入を招く事態となった。アフリカはイスラーム過激派による「聖戦」の最前線なのだ。
本書は、毎日新聞ヨハネスブルク支局長としてジハーディストたちとそのネットワークを追い続けた著者による、四年に及ぶ取材の集大成である。アルカイダ系組織アルシャバブと軍が奇妙な共犯関係にあるケニア、無政府状態のソマリア、マリの砂漠、ボコ・ハラムが潜むナイジェリア北部のほか、あるテロリストを追う調査は北欧ノルウェーの田舎町にも及んだ。 被害の実態や事件の背景、歴史的経緯について詳しく言及しつつ、アフリカを舞台に暗躍するジハーディストたちの真の姿に肉迫した戦慄のルポ。高野秀行氏(ノンフィクション作家)推薦!

引用終わり


◆感想
著者は、1970年生まれ、NHK、テレビ番組制作会社を経て99年毎日新聞社に入社。
2012/4-2016/3、南アフリカのヨハネスブルク支局長。現在は毎日新聞外信部副部長。

毎日新聞のヨハネスブルク支局といえば、藤原章生氏、白戸圭一氏が在籍していた部署である。


まず最初に、本書は良い。

毎日新聞社に在籍しながらの活動なので、フリーランスの特派員や外国の特派員に比べると制限が多い。その中で、できるだけの取材をし、それをまとめたのが本書。

以下、着印象に残った部分。

(p33)
ケニアに比べて非常に安価なソマリア産の砂糖は、ケニアに密輸出されることで莫大な利益を生む。

(p67)
ソマリアの首都モガディシオでは、ホテルに入るのが容易ではない。ホテルの敷地から100mも離れたところに1か所目の警備ゲートがあり、そこでホテルと無線交信し、不審者ではないことを確認出来てから通貨を許される。

(p97)
米陸軍のニダル・ハッサン少佐が基地内で銃を乱射し、13人が死んだ。発散少佐は、アメリカ出身のアルカイダ幹部アウラキと何通もメールのやり取りをしていた。

(p124)
著者がマリの首都バマコに入った2012年8月、マリ北部はジハーディストに占領され、マリ政府軍にはそれを奪回する能力はなかった。(その後旧宗主国フランスが軍事介入している)

(p136)
マリに住むトゥアレグ人は、昔から反政府組織を作り活動していた。マリが大干ばつに襲われた1983-84年に、トゥアレグ人の傭兵部隊が大量に隣国リビアに移住し、その後、移住を認めてくれた恩義のあるカダフィ大佐の傭兵として雇われた。

(p174)
南米からコカインをヨーロッパに輸出する際、荷揚げ港として有名だったのがギニアビサウ。

(p254)
2014年7月、ボコハラムは、カメルーン北部で、中国人労働者やカメルーン副首相の妻らを拉致する事件を起こした。

などなど。


繰り返す。本書は良い。


8点/10点満点(良いのだが、企業に所属している以上行動に制限があり、そこが、この手の本を何冊も読んでいる私としては物足りない)

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2018/09/21

小倉充夫編・眞城百華・舩田クラーセンさやか・網中昭世「現代アフリカ社会と国際関係」感想。
アフリカ社会学。2018年06月05日読了。

これまた大学院生向けの教科書のような本。

・エチオピアとエリトリアの100年史(エリトリアはエチオピアとの独立戦争を経て独立した国)

・アフリカに広く蔓延する国家ナショナリズムについて、ルワンダを事例に

・植民地支配と、ジンバブエの英国からの独立

・南アフリカ鉱山労働者の分断化

・南アフリカにおける女性の市民権(アパルトヘイト期から現在)

・ザンビアに見る、都市住民層の変化

・ザンビアに見る、ローカル言語の変化

などについて書かれている。

読了したのは6月5日だが、実は3か月くらいかけてちまちま読んでいた。なんというか、テーマに一貫性がなく、かなり読みづらかった。教科書的な内容なので、元から読みづらいというのもあるが。


6点/10点満点

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2018/09/20

平野克己「アフリカ問題 開発と援助の世界史」感想。
アフリカ経済。2018年06月04日読了。

アフリカに詳しい平野克己先生の本。

経済指標などの数字がとにかく多い。
大学院生向けの教科書なのだろう。

読書という範疇で読む本ではない。
アフリカの実態経済を数値で学ぶための本である。


6点/10点満点

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2017/06/13

前野ウルド浩太郎「バッタを倒しにアフリカへ」感想。
エッセイ。2017年06月12日読了。

アフリカのサハラ砂漠周辺国では、しばしばバッタやイナゴの大発生で農作物に被害が出る(蝗害=こうがい)。

著者は、バッタの研究で生計を立てたいと考えているポスドク(博士号を持っている)で、2年間の有期研究費支援を得て、サバクトビバッタの研究のため、2011年にアフリカのモーリタニアに移り住んだ。

モーリタニアの場所は下の地図をご覧ください。

本書は、モーリタニアで暮らした3年間の出来事(フィールドワークの方法等)と、研究費を獲得するためにいろんなことをしなければならずポスドクというのはとても大変なのですということを、何ごとも前向きに捉え、極めて明るく綴ったエッセイである。

バッタ研究の成果を記した本ではない、エッセイである。

バッタ研究者がなぜエッセイを書くのかというと、バッタに特化した研究費を獲得するためには、自分の研究はアフリカのバッタ被害を減らすために重要なのであるということを(研究費を配分する偉い人に)知ってもらわねばならない、それには普段の広報活動が大事である、セルフプロデュースである、ということでまずはブログを書き始め、それがなかかな好評で、ニコニコ超会議にお呼ばれしたりいろんなことをやっていたら、人脈が広がって出版に至ったのだそうだ。

文章が軽妙で、ツボにはまるととても面白い。私はツボにはまった。Amazonレビューを見るとツボにはまらなかった方もいるようで、こういうのは好き嫌いなのでしょうがない。


9点/10点満点


※次回更新は6/20頃の予定です。

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2017/04/24

ダヨ・オロパデ/松本裕訳「アフリカ 希望の大陸」感想。
アフリカ経済。2017年03月24日読了。

アフリカ経済に関する前向きな情報が満載の、とても良い本でした。

著者はナイジェリア系アメリカ人(親が移民)の女性ジャーナリスト。本書の原著は2014年に出版され、日本語版は2016年8月に出版。日本語版出版までに時間がかかっているため、本書に書かれているサービスのうち既に廃止に追い込まれているのもあり。

本書ではナイジェリアの公用語の一つヨルバ語の「カンジュ」という言葉をキーワードに設定し、アフリカ経済の行動様式を「カンジュ」で説明しようと試みています。「カンジュ」とはヨルバ語直訳で「焦る」「急ぐ」という意味。意味合いとしては「精を出す」「努力する」「ノウハウ」「やりくり」といったことになるとのこと。

非常に面白かった。が、あまりにも楽観的過ぎるので私的な評価は9点。


9点/10点満点


以下、つらつらと付箋をつけたところを列挙。

P21
2007年のケニアの大統領選挙で、キバキ派(キクユ族)とオディンガ派(ルオ族)に国内が分断され、暴力が渦巻き1200人の死者を出す事態になった。ケニアはアフリカの中でも(旧宗主国イギリスの流れを汲む)民主主義優等生と思っていた西欧の人は皆驚いた。TVやラジオなどマスコミは傍観していた。それに怒ったたケニアのソフトウェア技術者が、暴力行為を発見したら即座にマッピングできる「ウシャヒディ」というソフトを立ち上げた。そして秩序は回復に向かった。

「ウジャヒディ」は世界中に広がった。パレスチナのガザの混乱を監視し、スーダンや南米の選挙を監視し、
豚インフルエンザの蔓延を追跡し、メキシコ湾原油流出事故で流れ出た石油を監視した。


P39
アフリカでいちばん裕福なナイジェリア人のアリコ・ダンゴート
→調べたら、セメントで財を成した2兆円以上の超金持ちだった。


P41
スーダン生まれの億万長者で国際通信会社セルテルの創業者モハメッド・イブラヒム
→調べたら、この人も1000億円の桁の金持ちだった


P49
ナイジェリアは世界で2番目に映画が多く作られていて(私は知っていた)、オンライン配信はナイジェリアのNetflixといわれる「iROKOtv」という会社が最大手。ナイジェリア出身者で他国に出稼ぎに行っている人は多く、異国でこのサービスを楽しんでいるナイジェリア人も多いのだとか。


P93
1997年、ナイジェリアの繊維産業では137,000人が働いていた。6年後、57,000人にまで激減した。「太った国(=アメリカ)」からの善意の古着の寄付によって、繊維産業が壊滅してしまった。「善意の無償寄付」とは勝負にならない。

太った国の善意により、マラウィ最大の繊維メーカーが閉業した。エチオピアとエリトリアでは古着の輸入を禁止した。

サハラ以南で最大の綿生産国であるマリでは、国内では1枚もTシャツを生産していない。


P104
国連という、アフリカの普通の人にとっての部外者が勝手に立てたミレニアム開発目標で、万人の初等教育を充実させる、というのがある。

アフリカ各国は目標到達に尽力した。目標を達成したら国連からいろんな金がもらえるから。

その結果、「給料がろくに支払われない教師たちが」 「(教師なのに)学校に来なかったり」 「退屈で時代遅れのカリキュラムすら教えることができない」 という事態に陥った。

→その結果として、本書の違うページで、アフリカのスラム街で「1か月5ドル」の私立小中学校に入学させる親が滅茶苦茶増えているとのこと。こういう私立学校が保証するのは「教育の質」。やる気のない教師がいる公立学校(一応無料)よりも、金を払ってでも教育の質が高い学校に通わせる親が多いのだとか。

→P215に続報的に書かれていて、ケニアのスラムの40%、DRCコンゴの71%、ナイジェリアのラゴス州の3/4、ウガンダの中学校5600のうち4000が私立。


P125
アフリカ諸国では、隣人の噂、評判がかなり重要な情報源になる。これを「近傍情報」と呼び研究したところ、「xxさんはこの時期に種を撒いて大豊作だった」的な情報が集まった。

これってビジネスになるんじゃね?


P138
アフリカの優等生と言われているボツワナ。国債の格付けも高い。
しかーし、官僚の主要ポストはカーマ大統領の親族が占めている!!! マジで!!!


P140
頭脳流出について、まあ普通に優秀なアフリカ諸国の人たちはアメリカを目指す。
スーダン人はアトランタ。
ソマリ族はミネアポリス。
エチオピアとエリトリアはワシントンDC。
フランス語圏アフリカ人はニューヨーク。

→へえー。そうなんだ。つまり逆を言えば、そういう国とコネを持ちたいときはアメリカのそういう都市に行けばいいのね。


P145
ソマリア発祥の国際送金サービス「ダハブシール」。現在144か国で国際送金ができるとのこと。

→この手のサービスはウエスタンユニオン銀行(日本の代理店は大黒屋)しか知らなかったが、やっぱりこういう送金サービスってのは需要がすごいんだなあ。


P149
アルセロール・ミッタル(世界最大の鉄鋼会社。インドのミッタルスチールが買収に買収を重ねた結果出来た会社)がリベリアのグランドバッサ郡に拠点がある。

→西アフリカだって鉄鋼需要はあるんだろうけど、リベリアに工場があるというのは意外だった。


P170
Mペサ(知らない人はググってください)の成功を受けて、同様のサービスが世界中で広まった。

パガ、エコキャッシュ、スプラッシュモバイルマネー、ティゴキャッシュ、エアテルマネー、MTNモバイルマネー。

中でもセネガルのワリという会社は22カ国で使えるサービスを開発した。


P184
南アフリカで最大のSNSは「Mxit」。5000万人以上が利用している

→2017年3月に調べたら潰れていた


という話がまだまだたくさん載っているんだけど、書き飽きたのでこれでおしまい。

興味がある人は本書を定価で本屋から買って読んでください。(じゃないと翻訳者に印税が1円も入らない→こういう本を翻訳してくれる人が減る→日本語では情報入手が遅れてしまう→冗談抜きで日本国経済の危機)

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2017/04/06

米川正子「あやつられる難民」感想。
いわゆる新書。2017年03月08日読了。

著者の本は、米川正子「世界最悪の紛争「コンゴ」」2011年12月12日読了。7点 を読んだことがある。

著者は神戸女学院卒業後、南アフリカのケープタウン大学大学院で国際関係の修士を取得し、その後ボランティアでカンボジア、リベリア、南アフリカ、ソマリア、タンザニア、ルワンダで活動。その後、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)に11年勤務し、ルワンダ、ケニア、ザイールコンゴ(コンゴ民主共和国:通称DRC)で難民保護活動等に従事。現在は立教大学特任准教授。

本書の内容は大きく2つに分けられる。
(1-2)難民とは何ぞや。難民を保護するUNHCRの仕事は何ぞや。を著者が長年携わってきたアフリカ難民の例から解説。
(1-2)難民が発生する直接原因は内戦や戦争だが、そもそも国家が脆弱で政治の能力が低いから。
(2)ルワンダの現政権はアカン。人権侵害しまくりだ。

私はわりとこういう本を読んでいるが、(1)と(2)は別々の本にした方がテーマがすっきりして良いのではないか? と思った。

新書にしてはわりと分厚く、300ページを超える。しかし上記のように(1)と(2)が混ざっていて、どっちも中途半端な印象を受ける。

(1)の難民についての話と、難民が発生する背景については、著者の活動エリアがコンゴとルワンダとウガンダが中心なので、必然的にこれらの国の話を引き合いに出すことになる。著者の専門分野なので詳しい。しかし個人的に感じたのは、難民問題は一般化できない(=個々の事例により難民の発生原因が異なり、対処方法も異なる)ので、あくまでコンゴやルワンダの難民問題の説明である。

(2)のルワンダ現政権の糾弾に関しては、これ自体で1冊の本を書いた方が良いと強く感じた。

ルワンダのカガメ大統領は、アフリカの小国(面積は狭く資源は何もないが、気候が良くて人口密度はアフリカでいちばん高い)ルワンダを真の独立国家とするため、女性国会議員比率世界一の国会を作ったり、IT立国を目指している。それが故、アフリカでいちばん西洋諸国から注目されている国である。

が、著者によると、カガメ大統領は裏で言論弾圧や敵対勢力の暗殺を行っているという。この点に関し著者は、許されざる悪行、的な論調で非難している。

カガメ大統領(ツチ族・虐殺された方)はもともとRPF(ルワンダ愛国戦線)というゲリラ組織のトップで、フツ族が大虐殺を行っている隙をついてルワンダの首都キガリを制圧、そのまま新生ルワンダの大統領になった人物である。反対勢力は多数いる。


私は希望や願望を極力排除して物事を考える超リアリストで、今まで得た知識(主に本)を総合すると、アフリカ諸国の発展を阻害しているのは民主主義。選挙で票を獲得した人が議員や大統領になれる民主主義の根幹たる制度は、アフリカでは「選挙の勝者が総取り」する構図を生んでいる。これを無くするためには、深い見識を持ち自国の未来を発展させる断固たる決意を持った独裁者が必要。

世界でこういうタイプの独裁者が成功した例はシンガポールのリー・クアンユー。国全体の発展こそが国家存続の大前提である、自身の対抗勢力は国の発展の邪魔だから弾圧。結果として、シンガポールは世界有数の経済大国に発展した。シンガポールは今でも一党独裁(に近い)体制で、新聞やテレビは政府の検閲を受けている。

アフリカ諸国では、ガーナの初代大統領エンクルマや、ケニアの初代大統領ケニヤッタがリー・クアンユーに近いタイプの政治家だったが、どちらも対抗勢力を押さえるのに失敗し失脚。現在ではカガメ大統領がリー・クアンユーに近い政治を行っている。

発展途上国が中進国へと発展するためには、開発独裁というステップを踏むのが最も効率が良いというのが東南アジアの発展で見られた現象。
シンガポールではリー・クアンユーが59-実質2015年まで56年独裁し、
フィリピンではマルコス大統領が65‐86年の20年独裁し、
インドネシアではスハルト大統領が68‐98年の30年独裁し、
マレーシアではマハティール首相が81‐03年の22年間独裁し、
タイではサリット首相がもっと早い時期の58‐63年の5年独裁し、
それぞれ反対者は抹殺も厭わず弾圧する開発優先政策を行い、
上記すべての国が(いろんな犠牲の上に)発展した。

という点で考えると、ルワンダのカガメ大統領の評価を下すには時期尚早な気がする。

著者が言いたいのはそういうこっちゃない、というのを分かった上で、あえて時期尚早と言いたい。

ジンバブエのムガベ大統領(1980年からずっと独裁)も、最初の20年くらいはわりとまともな大統領だったし。


7点/10点満点

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2017/01/21

モハメド・オマル・アブディン「わが盲想」感想。
自伝エッセイ。2016年11月28日読了。

本書の著者は盲目のスーダン人で、19歳のとき国際視覚障碍者援護協会の招聘で来日。福井県立盲学校で日本語や、日本語の点字や鍼灸を学ぶ。その後筑波技術短期大学を経て東京外語大に入学。同大学院を経て、現在は同大学特任助教。

本書は盲目のスーダン人が、盲人向けの日本語入力ソフト(漢字変換FEP)を使って日本語で書いたエッセイである。

スーダンは親族のつながりを重視するため、いとこ婚(=近親結婚)が多いため身体障碍者が生まれやすい環境にある。スーダンで先天的盲人は珍しい存在ではなく、それゆえ盲人の扱いや盲人の生き方は日本より進んでいる部分もある(らしい)。

著者は生まれたときは弱視だったが12歳で失明。

本書は、スーダンで大学に通っていた著者が、ひょんなことから日本が盲人留学生を募集していることを知り、意を決して応募。父親をなんとか説得して来日。日本の文化に苦しみながら馴染み、イスラム教徒でありながら酒におぼれ、これではいかんと兄弟経由でスーダン人在住のスーダン女性と電話でお見合い(見てはいないか)、猛烈アタックの末、結婚。奥さんも来日。

というようなことを、ぶれることなく徹頭徹尾面白おかしく綴っているエッセイである。

※スーダンは北部にある政権はイスラム教徒でイスラムごり押し。南部はキリスト教徒が多数派。それゆえ宗教対立が激しく、南部の一部は南スーダンとして独立した

エッセイなので内容は紹介できない(エッセイは著者が書く文章を楽しむジャンルなので、紹介しても意味がない)。

あまりに面白くて、読み始めたら止まらなくなり1日で読んでしまった。とだけお伝えする。


8点/10点満点

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2016/12/23

ピーター・ピオット/宮田一雄+大村朋子+樽井正義共訳「NO TIME TO LOSE エボラとエイズと国際政治」感想。
自伝ノンフィクション。2016年05月31日読了。

◆内容紹介(Amazonより)

アフリカの熱帯雨林から国際政治のジャングルへ――
元UNAIDS事務局長が綴る、波乱万丈の回想録。

1976年、ベルギーの若き医師ピーター・ピオットは、恐ろしい感染症を引き起こしていた未知のウイルスを調べるためアフリカ・ザイール(現コンゴ民主共和国)に赴いた。死と隣り合わせの任務のなかで、この「エボラ」がどう広がったのかを突き止めるべく現地の文化や風習に深く身を浸した彼は、感染症との闘いに一生をかけようと決意する。

その6年後、彼は再びザイールの地を踏む。もう一つの新たな流行病、「エイズ」の感染が広がろうとしていたためだ。世界的に流行が拡大した80年代から、彼は国際的なエイズ対策を先導する役割を担い始める。その後、UNAIDS(国連合同エイズ計画)の初代事務局長として、国際的な協力体制を築くためネルソン・マンデラ、フィデル・カストロ、温家宝ら世界の名だたる指導者たちと、あるときは盟友関係を結び、あるときはタフな交渉に臨んでいく。国際機関の非効率や官僚的対応に苦しみながらも少しずつ歩を進めていくその過程には常に、有名無名の人びととの力強く、そして広範な「連携」があった――。

21世紀を迎える激動の時代に、世界の仕組みを変える。ユーモアを交えながらもストレートに、そしてスリリングに綴られる三十余年の回想録は、今日もなお世界で猛威をふるう感染症と、個人そして社会がどう対峙すべきか、多くの示唆を与えてくれる。


◆感想

上記のように、UNAIDS(国連合同エイズ計画)の初代事務局長を任命されるなど、公衆衛生の改善に多大な貢献をした著者の自伝である。

自伝なので、自分にとって都合の悪いこと、自分と対立していた者の考え方、についてはあまり触れられていない。自伝だからしょうがないのだが、優秀なノンフィクションライターが対立している側にも取材して、本書と同じようなコンセプトの本を書いたら、もっと面白くなったと思う。(例:第4代世界保健機関(WHO)事務局長、中嶋宏博士は、著者の活動を妨害する国連関連組織内のダースベイダー的に書かれている。私は中嶋博士のことをよく知らないので、著者の見解が正しいのかどうかは判別できない)

また本書は、国連に関する記述も多く、国際政治のど真ん中にいた人による国連という組織が機能不全に陥っている様を表した本ともいえる。

本書は450ページあり、内容の密度が濃く行間を飛ばして読むことはできず、しかし正直なところ翻訳が今一つで、読むのに大変苦労した。私はわりと多読な方と思っているが、本書は読むにに3週間もかかってしまった。


しかし、書かれている内容はエイズやエボラと真正面から戦った医学者の奮闘記であり、一行たりとも読み飛ばすことなくきちんと読了したいという気持ちが勝った。

良書である。


7点/10点満点

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2016/05/10

松本仁一「アフリカは今 (NHKラジオの教本・雑誌形式)」感想。
アフリカ概説。2016年04月15日読了。

松本仁一氏はアフリカを中心とした上質なルポを書く人。右サイドバーにカテゴリ松本仁一を設置しています。

本書は雑誌です。NHKカルチャーラジオの教本です。NHKラジオ英会話などの教材を売っているコーナーに、本書も置いてあると思います。

本書は「アフリカの今」について、NHKラジオのカルチャー番組を聴く層でも分かるよう、近現代史を交えながら易しく書かれた本です。


第1回(ラジオ講座がベースなので章立てではない)では、シエラレオネで誕生したこども兵について。

シエラレオネは、1787年にイギリスの解放奴隷が帰還し、フリータウンという町を作って、そこからイギリスの後押しもありシエラレオネという国に発展した経緯を持つ国。解放奴隷は、現地住民より格上であると特権意識を持ち、現地住民(黒人)を支配する政治を行った。

(同様の国として、リベリアはアメリカの解放奴隷が1816年に帰還しつくった国で、現地住民との軋轢がある)

シエラレオネの歴史は、ダイヤモンド利権の奪い合いである。

シエラレオネの反政府勢力RUFは、腐敗した政権の打倒を目的とした組織だったが、ダイヤ利権獲得の武闘組織へと変貌し、ダイヤ鉱山を襲ってダイヤを奪い、リベリアの反政府指導者(実態は武装強盗団)チャールズ・テーラーにダイヤを売り、テーラーはRUFに武器弾薬を渡す。

この過程で、使い捨ての特攻隊員こども兵がうまれていった。


第2回は、9世紀頃からアフリカ大陸の内陸部には巨大な帝国が幾つもあった話。中でもマリ帝国は、エジプトの金相場を破壊するほどの金を持つ巨万の帝国だった


第3回は、タンザニアの対岸にあるザンジバル島(タンザニア連邦の一角)や、その他多くの地域から奴隷貿易が行われていた話。


第4回は、南アフリカ、中でもケープタウンをめぐるオランダ入植民とイギリス入植民の争い(ボーア戦争)について。

ボーア戦争で負けたオランダ入植民(オランダに帰国できずアフリカ定住を覚悟し自らをアフリカーナーと呼ぶ)は、とにかくこどもをたくさん作った。やがてイギリス系より人口が増え、1948年に(白人だけで)選挙を行い、アフリカーナーは政権を握った。

黒人に選挙権を与えると、アフリカーナーも負ける。白人連合を組んでも負ける。やっとの思いでイギリス系から政権を奪還したのに、黒人に政権など譲れるか、とばかりにアフリカーナーは黒人差別政策をどんどん進めていく。


第5回は、南アのアパルトヘイト廃止に至る経緯。


こんな感じで進み、

第6回、ジンバブエ
第7回、ナイジェリア
第8回、アフリカの飢餓/農業無策
第9回、ルワンダ
第10回、ソマリア
第11回、中国の進出
第12回、イスラム過激派
第13回、ボツワナの発展


について書かれている。

コンパクトながら分かり易く、かつ押さえるべき所は押さえている。良書。


半年~1年くらい経った後、加筆の上、新書として書籍化されるような気がする。


8点/10点満点

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