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本書は、2009年と2011年の2回にわたり、ソマリアに渡航して現地を取材した高野秀行渾身のルポである。
ソマリアという国がある。↓この辺である。
大きな地図で見る
リドリー・スコットの映画「ブラックホーク・ダウン」で、アメリカ兵(特殊部隊)がボコボコにやられて殺されて裸に剝かれてつるし上げられた国である。
そのソマリアは、「ブラックホーク・ダウン」の内戦(1993年)以降、無政府状態になった国として知られている。昨今はイスラム法廷と名乗るグループが首都モガディシュを制圧したとの報道もあるし、海賊行為(アデン湾を通るオマーンやサウジアラビアの石油タンカーを狙っている)でも有名である。
ソマリアは、アメリカの特殊部隊をボコボコにしたことから、世界中の誰が行ってもボコボコにされて身ぐるみ剥がされるか、もしくはぶち殺される「リアル北斗の拳」国家として有名になった。知らない人も多いだろうが。
しかーし。
ソマリアはかなり前から、ソマリランドとプントランドと南部ソマリアの3つに分裂している。南部ソマリアが、国連が承認しているソマリア国である
ソマリランドは旧イギリス領、
プントランドと南部ソマリアは旧イタリア領。
で、ソマリランドは国際的に承認されていないけど、実質的に独立国家と同じ状態になっていて、自治が完成している。
しかも武装解除が終わっていて(進行形じゃなくて完了形!)、ソマリランド内は誰も武装していない。警察官ですら棍棒しか持っていない。
ホントか?
今までそれなりに世界情勢の本を読んできて、世界情勢のブログをたくさんRSSリーダーに登録して、まあそれなりに世界情勢を知っている気になってている私だが、ソマリランドが安全なのは間違いならしい。
たぶん著者も同じような情報を掴んだのだと思う。
で、経緯はともかくとして、著者はソマリランドに飛んだ。それが2009年。ソマリランドを取材して疑問が解けてすっきりして、さあ本を書くか!と思ったけど、大元の本国ソマリアを知らない。ソマリアの現状を知らないままソマリランドの本を書いて良いのか? すっきりしないので、改めてソマリアとプントランド取材に行ったのが2011年。で2009年と2011年の取材成果をまとめたのが本書。
で、今回の作品は内容的には大満足で、5ッ星で文句ない。
今回もいろいろ紹介しようかなと付箋をたくさん付けた。
で、まあ本書もいろいろ紹介しようかと思ったが、どうにもこうにもダメなのだ。
内容はすごいのだ。9点は付けて良い。
しかし、文章がダメだ。特に比喩。ソマリ人の氏族を源平合戦に比喩しているのだが、それがダメだ。
これで良いとする人もいるだろうが、私はダメだった。
ソマリランドは、
イサック奥州藤原氏系の
ハバル・アワル伊達氏
ハバル・ユニス武田氏
ハバル・ジャロ上杉氏
プントランドは
東国ダロッド平氏系の
マジェルテーン北条氏
ドゥルバハンテ里見氏
ワルセンゲリ三浦氏
南部ソマリアは
ハウィエ源氏系の
義経系ハバル・ギディル
頼朝系アブガル
モガディシュ以南は
農民系ラハウェイン尚氏
……こんなのがいっぱい出てくる。
この比喩がどうにもこうにも、受け入れられない。
何のためにこんな比喩をしたのか。
まあファンだから「ミャンマーの柳生一族」で受けた手法をそのまま用いたのだろうということはわかるが、今回は大失敗である。
ただでさえ分かりづらいソマリ人の氏族構成を、源平合戦の頃の日本に喩えるのである。
私は日本史が大の苦手で、源氏だ平氏だ藤原氏だと喩えられても、まったく一欠片も何のイメージも湧かなく、ソマリ人の名前に加えて源氏平氏の名前まで覚えなくてはならないから、徹頭徹尾苦痛だった。
しかも挙げ句の果てには源氏平氏の名前が尽きたから、適当なその頃の武将の名前を用いている。
ここまで来ると、何のために比喩したのか分からない。
読者にソマリ人社会を理解しやすいように比喩したはずなのに、ソマリ人の名前だけではなく、源氏平氏の名前まで覚えなくてはならない苦痛を強いている。
ルポの内容はすごく良い。
私はかなりの高野ファンだけど、これはダメだった。
5点(内容9点・比喩1点)/10点満点
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