夢枕獏「サイコダイバー25 新・魔獣狩り13 倭王の城・下」感想。
伝奇小説。2011年01月14日読了。
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※ちょっと長いです。(少々追記アリ)
◆私自身の話
私は1966年生まれで、同級生の母親が町立図書館の司書だったこともあり、幼い頃から図書館によく通っていた。私が読んだ本で、タイトルを明確に覚えている最も古いのは、福島正実の「おしいれタイムマシン」(1977)である。まあ、タイトル通りのジュブナイルSF小説です。
で、翌1978年、スターウォーズが公開され、そして私は正真正銘のSFファンになった。
私の生まれ育った田舎町(当時で人口は1万人を下回っていた)の町立図書館には、ハヤカワSF文庫の8割2000冊くらいとと、創元SF文庫の5割1000冊くらい、が所蔵されていた。小さな町の図書館の書架2本分(といっても文庫本で書架2本ですよ)が、まるまるSF小説だったのだ。この理由は、SF小説好きの町民が、自分が買った早川と創元のSF文庫小説を、片っ端から寄贈してくれていたから(寄贈ペースは、どう考えても読むスピードより速かった)。友達と一緒に図書館に行く(友達の母さんが図書館司書だから)。図書館にはSF小説が山ほどある。こういう環境だったから、SF好きになるのも当たり前なのかも知れない。
私は図書館に通い、エドガー・ライス・バローズの火星シリーズや金星シリーズ、ターザンシリーズや地底世界ペルシダーシリーズを皮切りに、EEスミスのレンズマンシリーズ、エドモンド・ハミルトンのキャプテンフューチャーなどを次々と読み(注:シリーズ全部を読んだわけではありません)、
そして必然的に星新一、筒井康隆、半村良、平井和正、新井素子、眉村卓、光瀬龍、豊田有恒、安部公房(注:「第四間氷期」とか「砂の女」とか「箱男」はSF界で絶賛されていたんだよ)、荒巻義雄、田中光二、広瀬正、鏡明、川又千秋、横田順弥、堀晃、山田正紀、石原藤夫、野田昌宏、高千穂遙、矢野徹、神林長平、岬兄悟、火浦功、水見稜、谷甲州、ロバート・A・ハインライン、JGバラード、アシモフ、スタニスワフ・レム、ACクラーク、クリフォード・D・シマック、PKディック、ジェイムズ・ブリッシュ、フレデリック・ポール、ポール・アンダースン、ヴォネガットJr、フレドリック・ブラウン、トマス・M・ディッシュ、コードウェイナー・スミスなどを読み耽っていった。(注:小松左京や大原まり子は嫌いだった)(更に注:上記リストには漏れアリ。もっといろんなSF作品を読んでいます)
そしてこれまた必然的に、「SFマガジン」と「SFアドベンチャー」を毎月購読、たまに「SF宝石」、稀に「奇想天外」、お金があれば「スターログ日本版」、SFなので星にも興味が出てきて「天文ガイド」を買っていた。(注:私は中学生まで決まった小遣いがなく、「あれ欲しい」と母親に申告し、OKだったらお金が貰える家庭だった。本代と映画代は、なぜかほとんど満額OKだった。今考えたら素晴らしい両親だったと心底思う)
半村良の“元祖国産伝奇小説”「石の血脈」や「嘘部」シリーズ、平井和正の「ウルフガイ」シリーズ、新井素子の「グリーンレクイエム」と「星へ行く船」シリーズ、鏡明の全著作、ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」、シマックの「都市」、山田正紀の「最期の敵」、神林長平の「あなたの魂に安らぎあれ」、川又千明の「幻詩狩り」などがお気に入りである。
◆夢枕獏との出会い
で、夢枕獏。
夢枕獏の作家デビューは1977年。でもこの頃の夢枕獏は売れない作家で、1981年にフタバノベルズから出版された「幻獣変化」がSF雑誌で高評価だったので、取り寄せて読んだ。そしたら面白かった。でも売れていなかった。
1982年に、ソノラマ文庫からキマイラシリーズ第1巻「幻獣少年キマイラ」を出したあたりから少しずつ売れ始め、1984年ノンノベルから出たサイコダイバーシリーズの最初の物語「魔獣狩り」、そしてトクマノベルスから出た「闇狩り師」で人気作家となっていったのである。
翌1985年には、フタバノベルスから「餓狼伝」シリーズ、カッパノベルスから「獅子の門」シリーズ、1986年には講談社ノベルスから「黄金宮」第1巻、カドカワノベルスから「大帝の剣」第1巻、1988年には文春文庫から「陰陽師」シリーズが出て、この頃にはベストセラー作家になっていったのである。
こういう言い方はアレなんだけど、要するに私は夢枕獏が売れる前からファンだったのです。
◆サイコダイバーシリーズ
夢枕獏が人気作家になったきっかけのひとつであるサイコダイバーシリーズ。
サイコダイバーという「人の精神にダイブ」できる特殊能力を持った人物を主人公に据え、中身はSF伝奇エログロバイオレンス小説であり、話ごとに主人公が変わる連作シリーズである。
シリーズ12巻までは普通の連作小説であったが、1992年7月に出版された13巻目から「新・魔獣狩り」シリーズが始まった。1992年とは、携帯電話もインターネットも普及していなかった頃である。
1984年に世界観が作られたサイコダイバーシリーズ。
1992年から始まった「新・魔獣狩り」の話。
それまでに登場してきた全てのサイコダイバー主人公を総出演させ、次から次へと強く不気味な連中が出てくる展開。
しかしです。
18年前に始まった「新・魔獣狩り」シリーズは、世の中が大きく動いているのに、話の中の世界観は古くさいままなのです。しかも、巻を重ねるごとに、ただグロいだけの展開になっていく。
◆で、本作の感想
有り体に言えば、ちっとも面白くないのである。
あれだけ引っ張ってきた登場人物同志の因縁が、なぜこうも簡単に決着するの?
こんなで良いの?
風呂敷広げすぎて畳めなくなったから、慌てて全部強引にまとめちゃった、としか思えないんですけど。
もうちょっと何とかできなかったの?
18年も引っ張っといてコレかい。
ワクワクもしなけりゃハラハラもしないし、ドキドキもしない。
◆というわけで。
獏ちゃん、さようなら。
もうたぶん獏ちゃんの本を買うことはないと思うよ。
◆私自身の話の続き
20歳くらいで「SF狂」から「普通にSFも読みます」に変化し、SFばかり読む読書ライフからは変わっていった。25歳頃から冒険小説にはまりだし、大沢在昌、船戸与一、逢坂剛、宮部みゆき、佐藤賢一などをとことん読むようになり、30歳頃から時代小説を読み始め、35歳頃からノンフィクションやドキュメント系にシフト、今は小説よりも知的好奇心を満たす本が中心の読書ライフになっている。
もうちょっと具体的に書くと、サイバーパンクブームの頃、ギブスンの「ニューロマンサー」やスターリングの「スキズマトリックス」を読んだあたりでSF狂から抜け出しちゃったので、飛浩隆は一冊も読んだことがないし、伊藤計劃も最近まで知らなかった。
だからどうした、って話ですけど。
3点/10点満点
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