松本仁一氏はアフリカを中心とした上質なルポを書く人。右サイドバーにカテゴリ松本仁一を設置しています。
本書は雑誌です。NHKカルチャーラジオの教本です。NHKラジオ英会話などの教材を売っているコーナーに、本書も置いてあると思います。
本書は「アフリカの今」について、NHKラジオのカルチャー番組を聴く層でも分かるよう、近現代史を交えながら易しく書かれた本です。
第1回(ラジオ講座がベースなので章立てではない)では、シエラレオネで誕生したこども兵について。
シエラレオネは、1787年にイギリスの解放奴隷が帰還し、フリータウンという町を作って、そこからイギリスの後押しもありシエラレオネという国に発展した経緯を持つ国。解放奴隷は、現地住民より格上であると特権意識を持ち、現地住民(黒人)を支配する政治を行った。
(同様の国として、リベリアはアメリカの解放奴隷が1816年に帰還しつくった国で、現地住民との軋轢がある)
シエラレオネの歴史は、ダイヤモンド利権の奪い合いである。
シエラレオネの反政府勢力RUFは、腐敗した政権の打倒を目的とした組織だったが、ダイヤ利権獲得の武闘組織へと変貌し、ダイヤ鉱山を襲ってダイヤを奪い、リベリアの反政府指導者(実態は武装強盗団)チャールズ・テーラーにダイヤを売り、テーラーはRUFに武器弾薬を渡す。
この過程で、使い捨ての特攻隊員こども兵がうまれていった。
第2回は、9世紀頃からアフリカ大陸の内陸部には巨大な帝国が幾つもあった話。中でもマリ帝国は、エジプトの金相場を破壊するほどの金を持つ巨万の帝国だった
第3回は、タンザニアの対岸にあるザンジバル島(タンザニア連邦の一角)や、その他多くの地域から奴隷貿易が行われていた話。
第4回は、南アフリカ、中でもケープタウンをめぐるオランダ入植民とイギリス入植民の争い(ボーア戦争)について。
ボーア戦争で負けたオランダ入植民(オランダに帰国できずアフリカ定住を覚悟し自らをアフリカーナーと呼ぶ)は、とにかくこどもをたくさん作った。やがてイギリス系より人口が増え、1948年に(白人だけで)選挙を行い、アフリカーナーは政権を握った。
黒人に選挙権を与えると、アフリカーナーも負ける。白人連合を組んでも負ける。やっとの思いでイギリス系から政権を奪還したのに、黒人に政権など譲れるか、とばかりにアフリカーナーは黒人差別政策をどんどん進めていく。
第5回は、南アのアパルトヘイト廃止に至る経緯。
こんな感じで進み、
第6回、ジンバブエ
第7回、ナイジェリア
第8回、アフリカの飢餓/農業無策
第9回、ルワンダ
第10回、ソマリア
第11回、中国の進出
第12回、イスラム過激派
第13回、ボツワナの発展
について書かれている。
コンパクトながら分かり易く、かつ押さえるべき所は押さえている。良書。
半年~1年くらい経った後、加筆の上、新書として書籍化されるような気がする。
8点/10点満点
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